“曼珠沙華
一むら燃えて秋陽つよし
そこ過ぎてゐる しづかなる径”
木下利玄『李青集』大正14年
歌人木下利玄は
曼珠沙華をこよなく愛したと言ふ。
“その紅の反くり返った花弁は
まだ炎威をのこしてゐる
秋陽に照り映えて
毒々しいまでに燃えてゐる。
それが夕方村を通り過ぎたりして
路傍の小高い丘の
日露戦役の戦死者の墓の処などに
かたまって咲いてゐるのを見かけると
赤い夕日に照らされてといふ
センチメンタルな唱歌の節などが
思ひ合はされて
不思議な淋しさを人の心に投げかける”
(同)
秋日和の日
港沿いの幹線道路脇の
植え込みで見つけた曼珠沙華。
燃えるような赤い群れなのに
どうして
不思議な淋しさを感じるのだろう。
■松山・高浜にて