ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『君に捧げる初恋』

2006-05-10 22:35:13 | 新作映画
「韓国のラブ・ストーリーには、
ある一つのパターンができあがったみたいだね。
最初は笑わせて、途中から涙モードにギアチェンジ」

----そう言われてみれば多いよね。そのパターン。
「しかし、この映画まで、そうなるとは思わなかった。
冒頭から
イルメ(ソン・イェジン)にメガホンで求愛する
テイル(チャ・テヒョン)のけたたましい叫びが炸裂。
しかも彼が、“あること”を証明するべく、
あろうことかズボンをおろすと、
その下には『出前一丁』の柄のトランクス。
どう考えたってこれはコメディにしか見えない」

----チャ・テヒョンって『猟奇的な彼女』の?
「うん。
前半は奇妙なパーマ頭。
もっともプレスにはこの写真はほとんど載っていないけどね」

----ほんとだ。ストレートヘアばかり。
日本の観客を意識したのかな?
で、どういうお話なの?
「イルメの父親から
全国の高校生中3000番台になったら、
娘と結婚していいと言う約束を取り付けたテイル。
それまで30万番台だった彼の成績は、
わずか2年の間にぐんぐんアップ。
もともとIQが高かった彼は見事その課題をクリアする。
ところがイルメの通う女子大は、
在学中に結婚すると退学になるという厳しい大学。
そこで父親はテイルに『司法試験一次試験に合格せよ』
『それまで他の男を寄せつけるな』と、
新たなミッションを次々に投げかける。
しかし、やっと合格したテイルに対し、
イルメは思わぬ言動に出る……という話だ」

----ふむふむ。つまりそこから“泣き”モードってわけだ。
「いや、周りには泣いていた人もいると言うだけで、
ぼくはまったく泣けなかったよ。
というのも、それまでの描き方が戯画的すぎる。
これぞコリアン・ハイテンション・クライング・コメディ
この言葉で、映画の雰囲気わかるかな」

----スゴい言葉だね(笑)。
韓国映画って、言葉のせいもあるかもだけど、
感情むき出しで叫ぶように喋ること多いものね。
そういえば、ソン・イェジンの初めてのコメディ映画なんだって?
「うん。あと見どころは彼女のビキニ姿かな。
そう言えばこの映画で、彼女は作詞家デビューも果たしているよ」

----つまり、これはそれぞれのファンのための映画ってことだね。
 
        (byえいwithフォーン)

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猫ニュー


『母たちの村』

2006-05-09 23:44:16 | 新作映画
----この映画の監督、ウスマン・センベーヌって83歳にもなるんだって?
「そう。<アフリカ映画の父>と呼ばれている。
その彼が3年もの月日を完成させて作ったのがこの作品。
原題は『モーラーデ』と言って、
フルベ語で"保護"を意味しているんだ 」

----ということは、テーマもその"保護"?
「うん。アフリカでは現在でもおよそ38カ国で女子割礼が行われている。
この映画はそれを嫌がり4人の少女が逃げ出してきたことから物語が始まる。
モーラーデというのは、何かに脅かされたときに、
自分を守ってくれそうな人に保護を頼むこと。
このモーラーデの掟に背いたものは、
急死、狂気などの報いを受けるとされている。
この4人の少女たちは、
かつて慣習に立ち向かい、自分の娘の割礼を拒んだ過去を持つコレに
自分たちの保護を求めたわけだ」

----ちょ、ちょっと待って。そのカツレイって何?
「性器切除だよ」
----ひぇ~っ。それ怖い。
あれっ、でもぼくも手術しているよ。
「……。(汗)まあ、その話はおいといて。
この映画によると、アフリカの国には、その施術をする女性たちがいて、
ナイフだけでやるみたい。
麻酔もなさそうだし、
これが元で女性が死んでしまうことも多いらしい」

----ぼくは、お医者さんだったし、麻酔もあった。
「だから、それはおいておいて。
この割礼を受けていない人は"不浄"という概念に結びつけられ、
ビラコロと呼ばれ、
結婚相手にはふさわしくないとされる。
さて、この映画では
コレの娘アムサトゥの婚約者イブラマヒがパリから帰ってきたことから
物語は広がりを見せてゆく。
彼の父である村の長老は息子をビラコロと結婚させるわけにはいかないと言う。
しかし、モーラーデをやめさせるわけにはいかない。
そこで村人たちは、コレの夫に、
その権威を示せとコレを鞭打たせるんだ」

----ひぇ~っ。男尊女卑。父権社会だ。
「そう。なにせ一夫多妻制だからね。
このコレは<第二ママ>で、
他に<第一ママ><第三ママ>がいる。
イスラム教徒が多い国では4人まで妻を持つことが認められるんだ」

----ということは、その女子割礼というのもイスラム文化からきているの?
「いや、そうじゃないんだね。
割礼の言葉を使っているため宗教的に思われがちだけど、
これは土着的なもの。
前置きが長くなったけど、
この映画は、その悪しき慣習に立ち向かう女性たちの勇気を讃えた
<女性讃歌>とも呼べる作品なんだ。
鞭打たれても一言も言葉を発さずに耐えるコレを励ます女性たち。
ガンジーを思わせるその気高さには涙を禁じ得なかった。
実際、このあたりから場内にはすすり泣きが…」

----なるほど、古い慣習を打ち破る映画なんだ。
でも、この情報社会。
アフリカにもラジオとかあるんじゃないの?
「そう。実は女性たちはラジオでいろんな情報を入れていて、
コレもこの女子割礼が宗教的なものではないことを知る。
ところが、男たちはラジオを集め焼いてしまう。
焚書ならぬ焚ラジオだ」

----ひどいね。とても今の話とは思えない……。
「うん。この映画を観ながら
中東の映画を観た時のことを思い出した。
知らない国のことだけに、
どこまでが現実でどこまでがフィクションか、
思わず考え込んでしまうんだ。
言い換えれば、それだけ、そこで描かれていることが
ぼくらの日常の常識からはかけ離れているということなんだけど…。
しかし、今日頭に浮かんだのが日本の今村昌平」

----それはまたなぜ?
「たとえば彼の『神々の深き欲望』だって、
ぼくらが観ると、完全にフィクションだと分かるけど、
もしかしてヨーロッパの人が観たら、
『日本の南の方の地域では、
あんなことが風習として残っているのか!?』と信じかねない。
ここは少しネタバレチックだけど、
集団でよそ者を殺しに向かうシーンなんて
それこそ『神々の深き欲望」のクライマックスそっくり。
みんなが同じ顔となることで
殺人を、個ではなく集団の統一意志によるものへと変えてしまう。
いわゆる殺人の匿名性-------
その裏には個人の罪の意識を軽くすることもあるのかも」

----おやおや暗い話になったね?
「でも、最後は本当に感動的。
女性たちが『やった!』と勝利の歓びの声を上げ、
それが歌声のように広がってゆく風景は、
最近のミュージカルを遥かに凌駕する興奮、
胸の昂りをぼくに与えてくれたよ」


                   (byえいwithフォーン)

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猫ニュー

※画像はスペインのオフィシャルより。

『ウルトラヴァイオレット』

2006-05-08 21:15:07 | 新作映画
「ここまでくると、もう映画という感じはしなくなるね」
----あらら、いきなりだニャ。
それってどういうこと?
「う~ん。物語の骨子を語ることは
ほとんど意味を持たないという気がする。
監督もビジュアルを魅せることに気を使っているんじゃないかな」

----でも『グロリア』が下敷きにあるとか言っていなかった?
「うん。
それはそうだね。
じゃあ、やはり少しだけ物語を話しておこう。
舞台は21世紀末の近未来。
新種のウィルスに冒された世界では、
感染した超人間<ファージ>と、
彼らを抹殺しようとする人間政府の激しい戦いが繰り広げられていた。
驚異的能力を身につけたファージに恐れを抱く人間政府は、
彼らを一瞬で絶滅させる最終兵器を開発。
ファージの地下組織は、その兵器を奪うべく
最強の兵士ヴァイオレットを送り込む……」

----わかった。それがミラ・ジョヴォヴィッチの役というわけだ。
「そういうこと。
ところが最終兵器として渡されたスーツケースの中には
まだあどけない少年が瞳を閉じて眠っていた。
少年は、血液中にファージを殺す抗原を培養されていたわけだ。
かつて、わが子を失った過去を持つヴァイオレットは、
仲間たちを裏切り、少年の手を取って逃げる」

----つまり彼女は両方を敵に回してしまったわけだね。
我が子を失った哀しみが甦ったわけだね。
「うん。でもそういった感情の推移はあまり描かれていない。
この後は、もうアクションに次ぐアクション。
そのざらついて、二次元劇画チックな映像のせいかも知れないけど、
映画と言うよりかは<進化したゲーム>と言う感じがしたな。
すべてが悪夢の中の出来事って感じ。
モノローグでも繰り返されるように、
そこは<あなたの想像のつかない世界>。
ツッコミたくても、
『ここはなんでも起こりうる世界だから』と切り返されそう。
そうそう、剣の使い方がどことなく日本っぽいと思ったら
監督が『リベリオン』のカート・ウィマー。
なるほどって感じだったね」


         (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そう言えば『セクシャルバイオレットNo.1』という歌、あったニャあ…。
それにしても目が疲れた(涙)」もう寝る

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猫ニュー

※画像はアメリカのオフィシャル壁紙より。

『紙屋悦子の青春』

2006-05-06 23:26:04 | 新作映画
----この映画って先日なくなった黒木和夫監督の遺作なんでしょ?
「そうなんだけどね……」
----どうしたの?歯切れ悪いなあ。
「う~ん。
この映画、いま一つノレなかったんだ」

----えっ、どうして?
最近の黒木監督って、
戦時下、銃後で生活する人たちや
戦後、生き残った者たちの心情を描いて
すこぶる評判いいじゃない?
「そこなんだよね。
ぼくは前作『父と暮せば』でもまったくノレなくって
そのことを人に話したら、
『あの映画をいいと思わない人がいるなんて信じられない』
とまで言われてしまった。
でも、ぼくはいわゆるテーマ主義じゃないから……。
第二次世界大戦をモチーフに描くことは
もちろん意義があると思うけども、
でも、黒木監督の話法には映画としての魅力を感じられないんだ。
この映画も、映画というよりかはお芝居を観ているみたい、
冒頭は病院屋上の老夫婦(永瀬正敏&原田知世)の回想。
ここも淡々と会話が交わされ、じれったくなってくる。
もっとも原作は、この映画の脚本をも担当した劇作家・松田正隆の戯曲。
佐藤忠男氏の解説によると
その戯曲を観た黒木監督が感動して
『美しい夏キリシマ』を共同で脚色。
一方の松田正隆も黒木監督の『TOMORROW/明日』を観て感動。
その影響のもとでこの戯曲を書いたらしい」

----つまり、ふたりはもとより共通項があったわけだ。
まさに運命的な出逢いだね。
「うん。そういうことになるだろうね。
周りでは、上映中、くすくす笑いが絶えなかった。
それは主に年配の方たちなんだけど、
もしかしたら、その人たちだけに『分かる分かる』とうなずける、
ある世代特有の共通体験・感情があるのかも知れない」

----う~~ん。でもこれってどういう内容なの?
「じゃあ、少し話してみるかな。
舞台は第二次世界大戦末期の1945年春。
両親を失ったばかりの紙屋悦子(原田知世)は
兄(小林薫)とその妻(本上まなみ)とともに暮らしている。
そこに、悦子の縁談話が持ち上がる。
それは彼女がもとより意識していた明石少尉(松岡俊介)ではなく、
明石の親友・永与少尉(永瀬正敏)。
明石は自身も悦子を好きでありながら
特攻により明日をも知れぬ自分よりも、
戦場に赴く可能性が低い整備担当の永与に
悦子を託そうというわけだ」

----なるほど。ここに一つの時代が浮かび上がるわけだ」
「この映画で中心のドラマとなるのは、
悦子の兄夫婦がいない間に行われることになった
永与と悦子のお見合い。
彼らふたりだけにしようと、
隙あらば席を立とうとする明石の真意が読めず
ドジなことばかり言う永与が場内の笑いを誘ったわけだ。
でも、現代の感覚からすれば
ここまで鈍感な若者はいない。
もしかしたらそれによって
あの時代特有の
<個よりも全体>が前提としてあり、
自分を主張することには
まったくというほど慣れていない若者を描こうとしていたのかも」

----なあんだ。聞いていると良さそうじゃない?
「う~ん。永瀬正敏を始め俳優はみんな巧いしね。
でも、くどいようだけど映画である魅力が感じ取れない」

----ありゃりゃ。公開前にそんなこと言っていいの?
「だから喋るのを迷ったって言っているじゃない。
でも、このコーナーでのぼくのお喋りを
いつも『つまらないこと喋っているヤツ』と思っている人がいるとしたら、
逆にその人にとっては
これはきわめて魅力的な映画である可能性も……。
あたりまえだけど、
ぼくの喋っていることなんて、
あくまで一つの観方にすぎないわけだから」

----う~ん。なんか巧くはぐらかされたような……。

                    (byえいwithフォーン)

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猫ニュー

『幸せのポートレート』

2006-05-03 22:47:56 | 新作映画
----この映画、「全米で『ラブ・アクチュアリー』を超えた」
というのがウリになっているみたいだけど、
何か関連性はあるの?。
「う~ん。特にないなあ。
強いていえば、クリスマス前後の物語、
多くの人々にスポットを当てたハートウォーミングな
ラブストーリーということかな」

----でもヒロインはサラ・ジェシカ・パーカーで
間違いないんだよね?
「うん。でもヒロインらしくないところがこの映画の特徴かな。
これほど周りから嫌われるヒロインも珍しい」

----ん?ヒロインが嫌われる……。最近のあの日本映画みたいだね?
「(笑)ちょっと意味合いが違うけどね。
彼女が演じるのはニューヨークのキャリア・ウーマン、メレディス。
スタイリッシュなピン・ヒールとテーラード・スーツが
彼女のキャリアを示している。
そんなメレディスが招待されて
恋人エヴェレット(ダーモット・マローニー)の家族、
ストーン家の人々に会いにきたところから物語は始まる。
彼らはなぜかメレディスに意地悪ばかり。
それでもどうにかして溶け込もうとするメレディス。
しかし、その几帳面さが逆に空回り。
事態は泥沼化してゆく」

----ふうん。でもどうして意地悪するの?
「このストーン家というのが信じられないほどオープンなんだね。
マリファナの喫煙から初体験についての会話までタブーはまったくない」

----それはまたスゴいね。どうしてそんな家族ができたんだろう?
「彼らは、おそらくあのフラワーゼネレーションの時代に
青春を送っている。
ラブ&ピースというヤツだね。
母親シビル役をダイアン・キートンというのもハマりだ。
そんな両親に育てられているだけに、
子供たちにも自由な気風がある。
西海岸で映画の編集の仕事をしている
次男のベン(ルーク・ウィルソン)なんて超カジュアル。
そんな中でメレディスに対して最も露骨な敵意を見せるのが
娘のエイミー(レイチェル・マクアダムス)」

----へぇ~っ。それはなぜ?
「ストーン家はメレディスにエヴェレットと一緒の部屋を用意する。
ところがまじめなメレディスは結婚していないのにそれはよくないと、
エイミーの部屋を借り受けたわけだ。
成功したヤッピーというイメージの彼女とは
肌が合わない上に自分の部屋まで取り上げられたんだから怒り心頭ってわけさ。
母親は息子に『あなたと寝たくないのね』(笑)。
あまりにも歯車が噛み合わないことから
メレディスは自分の味方を得ようと
妹のジュリー(クレア・デインズ)を呼び出すんだ。
このジュリーは姉とは違ってスムーズに一家に溶け込んでいく。
これで少しは事態が緩和されたかと思いきや、
物語はこの映画のクライマックスとなる
ある緊張の瞬間を迎える」

----えっ、なになにそれ?
「ストーン家の息子のひとりサッドは聾者。
みんなは手話混じりで会話をしている。
そしてその恋人が黒人男性パトリック。
そう、彼らはゲイなんだ。
そんなふたりを前にして
メレディスは養子にもらう人種の話や
ゲイの話をし始める」

----えっ、でもオープンな家庭だからいいんじゃニャいの?
「いやいや。
彼女の論理は、
どんな親でも子供には幸せな一生を送ってもらいたい。
だから子供は黒人でない方がいいし、ゲイでない方がいいと思っている……
なんてことを言い始めるんだ。
しかも『自分は差別していない。世の中がそうだから』と
付け加えながら」

----ははあ。
「これに対して、
母シビルは『息子はみんなゲイの方がいい。
女の子に取られないから』
『どの息子にもゲイかどうか訪ねた』と
息子への気遣いを見せるんだけど、
自分のことを主張するのに精一杯のメレディスは
まったく気づかず、ついには父親の逆鱗に触れてしまう」

----それは辛いなあ。
そんなんじゃ、エヴェレットも結婚しにくいだろうね。
「そこでいたたまれず外へ飛び出すメレディス。
さて、彼女を追っていったのは?
そして事態は思わぬ方向へ(と言っても予想はつくけどね)。
そして生まれる新たないくつかの愛………。
この映画、最後はタイトルに絡めて
きっちり泣かせるエピソードも飛び出すし、
これは観た人の記憶に長く残る一本となるんじゃないかな」


                  (byえいwithフォーン)

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『ココシリ』

2006-05-01 23:37:14 | 新作映画
----“ここ尻”?ぶっ。変なタイトルだね。
そう言えば以前にも『シリアナ』なんてのもあったよね。
「あれとはまったく関係がないよ(笑)。
原題は『マウンテン・パトロール』。
“ココシリ”というのはチベット語で“青い山々”、
モンゴル語で“美しい娘”を意味するらしい。
要するに地名だね」

----ふうん。と言うことは中国映画になるの?
「うん。
中国とチベットの間には
政治的にも複雑な問題が横たわっているよね。
そこを深く考えちゃうと、
この映画に付いてもいろんな憶測が生まれてくるけど…。
そうだね。
誤解がないように
まずは簡単なプロットを説明しよう。
舞台は海抜4700mのココシリ。
そこでは最高級毛織物の元になるチベットカモシカの密猟が横行していた。
そのため彼らを取り締る民間パトロール隊が結成。
しかし、民間パトロール隊の一人が密猟者に殺される事件が発生。
この映画は、それを取材にきた記者ガイの目を通して
17日間の追跡の旅が語られていく。
ここの描き方は、まるで西部劇。
馬上で銃を構えるマウンテン・パトロール隊員たちの姿は
実に颯爽としている」

----ん?これは冒険映画なの?
「いや。実話に基づいているし、
どちらかと言えば社会派映画。
かつて100万頭いたチベットカモシカは
密猟者の横行によって100分の1に激減。
その事態に立ち上がったのが
ここに描かれている民間パトロールというわけだ。
(以下,5行プレスより)
彼らの活動がマスコミにとりあげられたことから政府が対策に着手。
1997年末、ココシリ国家級自然保護区管理局を設立して
チベットカモシカの保護を強化したのに続き、
98年には、中国チベットカモシカ保護白書を公表し、
国際社会への協力を呼びかけた……ということらしい」

----そうか。確かに微妙だね。
「映画では
無給で命懸けの任務につく隊員たちが
密猟者と険しい自然に加え、
資金難とも戦わなければならない姿が描かれる。
『押収したチベットカモシカの毛皮を売り、治療費と追加物資の金を捻出しろ』
と言う隊のリーダーの言葉を聞き、ショックを受けるガイの姿も描かれる。
経費を得るために毛皮を売ることの是非を問いただされ、
リーダーは『非合法は承知の上。そうしなければ部下とココシリを守れない』と答え、
自分たちの立場をチベットの巡礼者にたとえるんだ。
『手に泥はついているが、魂は清らかだ』と……」

----う~~む。観ていないから簡単には言えないけど、
よくある「自然を守ろう!」だけの映画じゃないわけだ。
「そうなんだよね。
このあたりは、観る人によって抱く感想がまったく違ってくると思う。
だけどぼくはそういう部分よりも,
この映画に携わったスタッフ・キャストの映画魂に目が行った。
途中、密猟者たちを負う隊員たちが
氷河から流れてきた冷たい川の中に下着姿で入るシーンがある。
なんとこの水の温度が摂氏3℃。
川の傍に救急車を待機させて1日3テイク撮影。
そして病院へ運び点滴を受けてまた翌日も3テイク…」

----うわあ、壮絶だ。
似た場所でごまかせばよかったのに。
ハリウッド版『南極物語』みたいに……。
「そういうごまかしをしないのが
中国映画のよさだろうね。
そのロケ場所と言うのが
実際のマウンテン・パトロール隊員が
密猟者をつかまえた場所。
だから俳優たちにもできないわけはないと言うんだね。
100名ほどのクルーがほぼ全員(!)高山病になったらしいけど、
その気概は見事スクリーンに映し出されている。
苛酷な大自然の中で体を張って演技する俳優たち。
ここに映画の一つの原点を見た気がしたな」



         (byえいwithフォーン)

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※画像はドイツのオフィシャルより。