ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『日本沈没』

2006-05-30 23:41:57 | 新作映画
※映画の核に触れる部分もあります。
鑑賞ご予定の方は、その後で読んでいただいた方がより楽しめるかも。


----これって小松左京のベストセラーだよね。
日本列島が沈没・消滅すると言う
タイトルそのままの物語。
確か1973年にも映画化されている。
「うん。でも時代が変わるとこうも違ってくるのかって、
少し複雑な気になったね」

----それはそ仕方ないでしょ。
いまの特撮技術はあの頃と段違い。
しかも監督が平成『ガメラ』シリーズの
特技監督樋口真嗣とくれば、
全然違うのはあらかじめ想像ついてしまう。
「確かに、古都の名所旧跡や
都心のランドマークが次々と崩壊する映像や、
大津波が小樽の街を襲う映像は大迫力。
でも、ぼくが言いたいのはそんなことじゃないんだ。
同じ原作からの映画化でありながら
テーマとして打ち出されているものが
新旧でまったく変わってきているんだ」

----今回のキャッチコピーは
「いのちよりも大切なひとがいる。
1億2000万人、すべての日本人に捧ぐ---」だっけ。
「うん。
ところが原作は元々、
日本人が放浪の民族となったら----と言うところから発想されている。
この映画でも、最初の方で描かれるのは国民と資産の海外脱出。
しかし途中からは、
この『大切なひとを守る』話になってくるんだ。
ヒロイン玲子(柴咲コウ)の設定が
ハイパーレスキュー隊となっているのが象徴的。
彼女は幼い頃に阪神・淡路大震災で両親を失っている。
一方、主人王の潜水艇パイロット・小野寺(草弓剪剛)は
イギリスのチームから誘われ、日本を離れることを決意する。
一緒に行こうと玲子を誘う小野寺。
しかし玲子は自分だけが幸せになるわけにはいかないと、
日本に踏みとどまろうとする」

----へぇ~っ。確か前作での玲子は
自由奔放に生きる伊豆の令嬢という設定だったよね。
「そう。しかも日本の黒幕までも出てきたりしていた。
ところが今回は、この小野寺、玲子の生きざま、
そして田所博士(豊川悦司)と
その元妻・鷹森危機管理担当大臣(大地真央)の
エピソードが軸となっていく」

----前作では、地下鉄のシーンが怖かったよね。
「そこなんだよね。
今回の映画は、火山の噴火やビルの崩壊など
巨視的な部分での特撮は目を見張るものがあるんだけど、
そこに住む個人の視点からの恐怖が意外と少ない。
避難する人々が地割れに飲み込まれるシーンとか、
一応は入れてあるけども……」

----そうか、都会ではそれこそ阿鼻叫喚の地獄のはずだ。
「だよね。
ところが無人となった廃墟の都会には
死体ひとつ転がっていない。
クリーンなんだね。
そしてそのことは映像のみならず
テーマとしても本作を特徴づけている」

----どういう意味?
「一部、利己主義の政治家もいるけど、
それ以外の人たちは<清く正しく美しく>という感じ。
山本総理大臣(石坂浩二)も
この未曾有の危機に『一番大切なのは我々の心』と説くしね。
そう言えば冒頭、玲子が爆発炎上の中から、
ヘリにぶら下がって小野寺を救い出すシーンもまるでスーパーマン。
爆風に巻き込まれるのではと、
珍しくツッコミを入れてしまった

----あらあら?
「思うにこれも『LIMIT OF LOVE 海猿』と同じで
焦点を当てているのは“脱出”ではなく“救出”。
そこに人としての<使命>を
<日本人の心>と重ねて描いたわけだ。
この傾向、しばらく続きそうだな。
個人的にはシンプルな“脱出”アクションが観たいけど……」

          (byえいwithフォーン)

日本沈没 TDV-2731D日本沈没 TDV-2731D
※こちらが1973年版

※前作とは全然違う度
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