ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『トランスアメリカ』

2006-05-12 22:45:48 | 新作映画
----これって、主演のフェリシティ・ハフマンが
オスカーにノミネートされた話題作だよね。
「うん。ゴールデングローブ賞のドラマ部門で受賞しただけに
一部では本命視されてもいた」

----確か、ちょっと変わった役柄だった気が…。
「そうだね。性同一性障害の男性の役。
以前、ヒラリー・スワンクもこの障害を持つ女性を演じてオスカーを獲得。
でも今回は女性ではなく男性。
つまりハフマンは自分は女優でありながら、
その役として、
自分の本質は女性だと思っている男性を演じるわけだ」

----それは大変そうだ。
「ハフマンは自分自身に尋ねたらしい。
『女はどうやって立ったり座ったりするんだっけ?』って」

----この画像を見ると、
ハフマンの前にディカプリオ似の青年がいるけど、
ふたりはどういう関係なの?
「そこが、この映画のオモシロいところ。
彼はなんと、このハフマン扮するブリーの息子トビー(ケヴィン・ゼガーズ)。
かつて、ブリーが男性として、
ただ一度だけ関係を持った女性との間にできた子なんだ。
つまりブリーはトビーの父親と言うわけだね。
ロスで、女性として慎ましやかに住んでいるブリーは、
肉体的にも女性となる最後の手術を目前に控えている。
ところが、そんな彼女にニューヨークの拘置所から電話が入ってくる。
息子トビーはまだ見ぬ父親を探していると言うんだ。
過去に背を向けようとするブリーに対して
セラピストは、彼に会わなければ手術のサインをしないと言い放つ」

----あらら。これはややこしいことに。
「いやいや。まだまだこんなもんじゃないよ。
仕方なくブリーはニューヨークへ。
ところがトビーはブリーを教会から派遣されたボランティアの女性と思い込む。
その勘違いを利用してブリーは自分の正体を偽り,
ロスへ出て生活を変えたいと言うトビーを連れてアメリカ横断の旅に出る……
男娼の仕事によって金を稼ぐなど
生活が荒れまくっている息子トビーを
さすがにそのままにはしておけなかったわけだね」

----ニャるほど、見えてきた。
果たしてトビーは、
いつブリーが男性であることに気づくのか、
そして彼は息子に自分は父親だと名乗り出るのか、
それとも最後まで黙りとおすのか、
これが物語のポイントだね。
「うん。そういう意味でもこれはロードムービーのお手本のような映画。
傍目から見たら凸凹なコンビが、
いくつもの事件を経て近づいたり離れたり。
ある決定的瞬間に向けて、その関係性はさまざまに変容していく」

----突然の息子の出現とロードムービー。
少し『ブロークン・フラワーズ』にも似ていない?
「そうとも言えるかな。
でも、中年男の心情にスポットを当てたあの映画とは異なり,
この映画は息子にも重きをおいた描き方がなされている。
父と子の旅を通して、
トビーがなぜ大人の男相手に体を売って金を稼ぐような青年になったか、
そのひりひりするような心の傷の痛みが、
次第次第に浮かび上がってくる。
彼はいつも猿のぬいぐるみを手放さない。
それがまた観ていてせつない。」

----あらら、ブリー中心の話かと思ったら、
様子がだいぶ違ってきた。
「もちろん。基本はそうだよ。
でも、それに対峙するくらい彼も印象に残ったってこと。
この映画、脇を固める他のスターも素晴らしい。
息子の変貌を恥じ入りながら
孫の出現に目を輝かせるブリーの母にフィオヌラ・フラナガン。
実権を握っている妻の下で目立たぬ存在の父にバート・ヤング
ブリーの妹にはキャリー・プレストン。
目をぎょろぎょろさせ、
そのエキセントリックさの中に、
自らもこの家の犠牲であることを巧みに演じてみせる。
あっ、ブリーとトビーが途中で出逢うカルヴィンも印象的。
演じるのはオネイダ族の俳優グレアム・グリーン。
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』の“蹴る鳥”以来の
当たり役と言えるだろうね。
この父と子のロードムービーに
西部の詩情を添えてくれたよ」

 
        (byえいwithフォーン)

危険な年(期間限定) BEP-65068危険な年(期間限定) BEP-65068
※そう言えばこの映画では"女優"リンダ・ハントが
男性カメラマン役でアカデミー助演女優賞を受賞。

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※画像はフランスのオフィシャルより。