ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『深海 Blue Cha-Cha』

2006-05-21 14:43:30 | 新作映画
----変わったタイトルの映画だね。
どういう意味があるの?
「『深海』というのは文字通り<深い海>。
ここではヒロイン、アユーの<海よりも深い愛情>を意味すると同時に、
監督の海への思い、尊敬と恐れを表している。
一方の『Cha-Cha』は映画の中にあるセリフ、
『人生が思い通りに行かない時には、チャチャを踊ろう』と繋がる。
この映画のヒロイン、アユー(ターシー・スー)は
ある犯罪を犯してようやく出所してきたところ。
彼女は姉のように慕うアン(ルー・イーチン)の元で働くが、
自分に優しくしてくれる客チェン(レオン・ダイ)と関係を持ち、
以後、その愛情を常に抱きしめたくて
執拗に彼につきまとうようになる。
実はアユーは鬱病を抱えていて、
それが元でか、
ひとたび愛を掴むと自分がコントロールできなくなる。
ところがそんな彼女に魅力を感じた
シャオハオ(リー・ウェイ)は
『ぼくを信じて。すべてうまくいくから』とアユーにメール。
しかし、彼女のイメージする<愛>とは
シャオハオが思っているような
そんな甘いものではなかった……」

----『Cha-Cha』の意味になっていないよ?
「ごめんごめん。
この映画ではアユーやアンがチャチャを一人で踊るシーンがある。
監督いわく
『このタイトルが人生では逃れられないちょっとした悩みや、
ブルーなことがあるのを象徴している。
でも、人生が思い通りにいかない時、チャチャを踊れば、
そこから解放され、家に籠って息詰まることもないと思う』だって。
なぜ、それが他のダンスでなくチャチャかは
ぼくには説明されてもよく分からないけどね。まあそういうこと」

----ニャるほど。映画の中身をそのまま表しているんだニャ。
「うん。このアユーが実に痛々しく、
突然ヒステリックに声を上げたり、
ストーカーのように男にまとわりついたりする。
常連客だったチェンとのことで
一緒に住んでいるアンに迷惑をかけながら、
新しい男シャオハオができると
彼女からプレゼントされた携帯にも出ないで、
その男と同棲すると言う。
しかもアンの部屋では掃除一つしなかったのに、
シャオハオの部屋では甲斐甲斐しく奥さんのようにふるまう。
なのに、ちょっとでもクールな態度を取られると、
もう自分を愛していないと泣き始める」

----あらら、厄介だね。
「そうも言えるよね。
共演のリー・ウェイは、
もし自分の生活の中でこれほど執拗に付きまとう女性が現れたら
絶対に別れるだろうと強調。
アユーと最初に関係を持つチェンを演じた
レオン・ダイも似たような発言をしている。
この映画が不思議なのは、
そういう<困ったちゃん>を主人公にしているところ。
しかも何が彼女のトラウマかなど、
その背景が説明されているわけでもなく、
ただ鬱病という設定を持たせてしまったことにより、
アユーの心理に観客が寄り添う術が難しくなっている。
彼女のヒステリックな発作も
男たちの落ち度によって引き起こされるというわけでもないし……」

----少し秋吉久美子の『赤ちょうちん』を思い出したけど…。
「あの映画ではヒロインの<狂気>が<生活の重み>の中で
徐々に現れてきたけど、
これはそういったストレス的なところを描かずに最初からだからなあ。
う~ん。アユーのような女性がいることは分かるけど、
映画を楽しめるかと言うとこれはまた別問題。
観客を選ぶ映画と言えるだろうね」

                    (byえいwithフォーン)

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