----この映画って先日なくなった黒木和夫監督の遺作なんでしょ?
「そうなんだけどね……」
----どうしたの?歯切れ悪いなあ。
「う~ん。
この映画、いま一つノレなかったんだ」
----えっ、どうして?
最近の黒木監督って、
戦時下、銃後で生活する人たちや
戦後、生き残った者たちの心情を描いて
すこぶる評判いいじゃない?
「そこなんだよね。
ぼくは前作『父と暮せば』でもまったくノレなくって
そのことを人に話したら、
『あの映画をいいと思わない人がいるなんて信じられない』
とまで言われてしまった。
でも、ぼくはいわゆるテーマ主義じゃないから……。
第二次世界大戦をモチーフに描くことは
もちろん意義があると思うけども、
でも、黒木監督の話法には映画としての魅力を感じられないんだ。
この映画も、映画というよりかはお芝居を観ているみたい、
冒頭は病院屋上の老夫婦(永瀬正敏&原田知世)の回想。
ここも淡々と会話が交わされ、じれったくなってくる。
もっとも原作は、この映画の脚本をも担当した劇作家・松田正隆の戯曲。
佐藤忠男氏の解説によると
その戯曲を観た黒木監督が感動して
『美しい夏キリシマ』を共同で脚色。
一方の松田正隆も黒木監督の『TOMORROW/明日』を観て感動。
その影響のもとでこの戯曲を書いたらしい」
----つまり、ふたりはもとより共通項があったわけだ。
まさに運命的な出逢いだね。
「うん。そういうことになるだろうね。
周りでは、上映中、くすくす笑いが絶えなかった。
それは主に年配の方たちなんだけど、
もしかしたら、その人たちだけに『分かる分かる』とうなずける、
ある世代特有の共通体験・感情があるのかも知れない」
----う~~ん。でもこれってどういう内容なの?
「じゃあ、少し話してみるかな。
舞台は第二次世界大戦末期の1945年春。
両親を失ったばかりの紙屋悦子(原田知世)は
兄(小林薫)とその妻(本上まなみ)とともに暮らしている。
そこに、悦子の縁談話が持ち上がる。
それは彼女がもとより意識していた明石少尉(松岡俊介)ではなく、
明石の親友・永与少尉(永瀬正敏)。
明石は自身も悦子を好きでありながら
特攻により明日をも知れぬ自分よりも、
戦場に赴く可能性が低い整備担当の永与に
悦子を託そうというわけだ」
----なるほど。ここに一つの時代が浮かび上がるわけだ」
「この映画で中心のドラマとなるのは、
悦子の兄夫婦がいない間に行われることになった
永与と悦子のお見合い。
彼らふたりだけにしようと、
隙あらば席を立とうとする明石の真意が読めず
ドジなことばかり言う永与が場内の笑いを誘ったわけだ。
でも、現代の感覚からすれば
ここまで鈍感な若者はいない。
もしかしたらそれによって
あの時代特有の
<個よりも全体>が前提としてあり、
自分を主張することには
まったくというほど慣れていない若者を描こうとしていたのかも」
----なあんだ。聞いていると良さそうじゃない?
「う~ん。永瀬正敏を始め俳優はみんな巧いしね。
でも、くどいようだけど映画である魅力が感じ取れない」
----ありゃりゃ。公開前にそんなこと言っていいの?
「だから喋るのを迷ったって言っているじゃない。
でも、このコーナーでのぼくのお喋りを
いつも『つまらないこと喋っているヤツ』と思っている人がいるとしたら、
逆にその人にとっては
これはきわめて魅力的な映画である可能性も……。
あたりまえだけど、
ぼくの喋っていることなんて、
あくまで一つの観方にすぎないわけだから」
----う~ん。なんか巧くはぐらかされたような……。
(byえいwithフォーン)
※ぼくにはお手上げだ度
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「そうなんだけどね……」
----どうしたの?歯切れ悪いなあ。
「う~ん。
この映画、いま一つノレなかったんだ」
----えっ、どうして?
最近の黒木監督って、
戦時下、銃後で生活する人たちや
戦後、生き残った者たちの心情を描いて
すこぶる評判いいじゃない?
「そこなんだよね。
ぼくは前作『父と暮せば』でもまったくノレなくって
そのことを人に話したら、
『あの映画をいいと思わない人がいるなんて信じられない』
とまで言われてしまった。
でも、ぼくはいわゆるテーマ主義じゃないから……。
第二次世界大戦をモチーフに描くことは
もちろん意義があると思うけども、
でも、黒木監督の話法には映画としての魅力を感じられないんだ。
この映画も、映画というよりかはお芝居を観ているみたい、
冒頭は病院屋上の老夫婦(永瀬正敏&原田知世)の回想。
ここも淡々と会話が交わされ、じれったくなってくる。
もっとも原作は、この映画の脚本をも担当した劇作家・松田正隆の戯曲。
佐藤忠男氏の解説によると
その戯曲を観た黒木監督が感動して
『美しい夏キリシマ』を共同で脚色。
一方の松田正隆も黒木監督の『TOMORROW/明日』を観て感動。
その影響のもとでこの戯曲を書いたらしい」
----つまり、ふたりはもとより共通項があったわけだ。
まさに運命的な出逢いだね。
「うん。そういうことになるだろうね。
周りでは、上映中、くすくす笑いが絶えなかった。
それは主に年配の方たちなんだけど、
もしかしたら、その人たちだけに『分かる分かる』とうなずける、
ある世代特有の共通体験・感情があるのかも知れない」
----う~~ん。でもこれってどういう内容なの?
「じゃあ、少し話してみるかな。
舞台は第二次世界大戦末期の1945年春。
両親を失ったばかりの紙屋悦子(原田知世)は
兄(小林薫)とその妻(本上まなみ)とともに暮らしている。
そこに、悦子の縁談話が持ち上がる。
それは彼女がもとより意識していた明石少尉(松岡俊介)ではなく、
明石の親友・永与少尉(永瀬正敏)。
明石は自身も悦子を好きでありながら
特攻により明日をも知れぬ自分よりも、
戦場に赴く可能性が低い整備担当の永与に
悦子を託そうというわけだ」
----なるほど。ここに一つの時代が浮かび上がるわけだ」
「この映画で中心のドラマとなるのは、
悦子の兄夫婦がいない間に行われることになった
永与と悦子のお見合い。
彼らふたりだけにしようと、
隙あらば席を立とうとする明石の真意が読めず
ドジなことばかり言う永与が場内の笑いを誘ったわけだ。
でも、現代の感覚からすれば
ここまで鈍感な若者はいない。
もしかしたらそれによって
あの時代特有の
<個よりも全体>が前提としてあり、
自分を主張することには
まったくというほど慣れていない若者を描こうとしていたのかも」
----なあんだ。聞いていると良さそうじゃない?
「う~ん。永瀬正敏を始め俳優はみんな巧いしね。
でも、くどいようだけど映画である魅力が感じ取れない」
----ありゃりゃ。公開前にそんなこと言っていいの?
「だから喋るのを迷ったって言っているじゃない。
でも、このコーナーでのぼくのお喋りを
いつも『つまらないこと喋っているヤツ』と思っている人がいるとしたら、
逆にその人にとっては
これはきわめて魅力的な映画である可能性も……。
あたりまえだけど、
ぼくの喋っていることなんて、
あくまで一つの観方にすぎないわけだから」
----う~ん。なんか巧くはぐらかされたような……。
(byえいwithフォーン)
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