ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ココシリ』

2006-05-01 23:37:14 | 新作映画
----“ここ尻”?ぶっ。変なタイトルだね。
そう言えば以前にも『シリアナ』なんてのもあったよね。
「あれとはまったく関係がないよ(笑)。
原題は『マウンテン・パトロール』。
“ココシリ”というのはチベット語で“青い山々”、
モンゴル語で“美しい娘”を意味するらしい。
要するに地名だね」

----ふうん。と言うことは中国映画になるの?
「うん。
中国とチベットの間には
政治的にも複雑な問題が横たわっているよね。
そこを深く考えちゃうと、
この映画に付いてもいろんな憶測が生まれてくるけど…。
そうだね。
誤解がないように
まずは簡単なプロットを説明しよう。
舞台は海抜4700mのココシリ。
そこでは最高級毛織物の元になるチベットカモシカの密猟が横行していた。
そのため彼らを取り締る民間パトロール隊が結成。
しかし、民間パトロール隊の一人が密猟者に殺される事件が発生。
この映画は、それを取材にきた記者ガイの目を通して
17日間の追跡の旅が語られていく。
ここの描き方は、まるで西部劇。
馬上で銃を構えるマウンテン・パトロール隊員たちの姿は
実に颯爽としている」

----ん?これは冒険映画なの?
「いや。実話に基づいているし、
どちらかと言えば社会派映画。
かつて100万頭いたチベットカモシカは
密猟者の横行によって100分の1に激減。
その事態に立ち上がったのが
ここに描かれている民間パトロールというわけだ。
(以下,5行プレスより)
彼らの活動がマスコミにとりあげられたことから政府が対策に着手。
1997年末、ココシリ国家級自然保護区管理局を設立して
チベットカモシカの保護を強化したのに続き、
98年には、中国チベットカモシカ保護白書を公表し、
国際社会への協力を呼びかけた……ということらしい」

----そうか。確かに微妙だね。
「映画では
無給で命懸けの任務につく隊員たちが
密猟者と険しい自然に加え、
資金難とも戦わなければならない姿が描かれる。
『押収したチベットカモシカの毛皮を売り、治療費と追加物資の金を捻出しろ』
と言う隊のリーダーの言葉を聞き、ショックを受けるガイの姿も描かれる。
経費を得るために毛皮を売ることの是非を問いただされ、
リーダーは『非合法は承知の上。そうしなければ部下とココシリを守れない』と答え、
自分たちの立場をチベットの巡礼者にたとえるんだ。
『手に泥はついているが、魂は清らかだ』と……」

----う~~む。観ていないから簡単には言えないけど、
よくある「自然を守ろう!」だけの映画じゃないわけだ。
「そうなんだよね。
このあたりは、観る人によって抱く感想がまったく違ってくると思う。
だけどぼくはそういう部分よりも,
この映画に携わったスタッフ・キャストの映画魂に目が行った。
途中、密猟者たちを負う隊員たちが
氷河から流れてきた冷たい川の中に下着姿で入るシーンがある。
なんとこの水の温度が摂氏3℃。
川の傍に救急車を待機させて1日3テイク撮影。
そして病院へ運び点滴を受けてまた翌日も3テイク…」

----うわあ、壮絶だ。
似た場所でごまかせばよかったのに。
ハリウッド版『南極物語』みたいに……。
「そういうごまかしをしないのが
中国映画のよさだろうね。
そのロケ場所と言うのが
実際のマウンテン・パトロール隊員が
密猟者をつかまえた場所。
だから俳優たちにもできないわけはないと言うんだね。
100名ほどのクルーがほぼ全員(!)高山病になったらしいけど、
その気概は見事スクリーンに映し出されている。
苛酷な大自然の中で体を張って演技する俳優たち。
ここに映画の一つの原点を見た気がしたな」



         (byえいwithフォーン)

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※画像はドイツのオフィシャルより。


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