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志の輔らくご 「大忠臣蔵&中村仲蔵」

2019年05月13日 | Live Theater
5月13日『志の輔らくご〝大忠臣蔵&中村仲蔵〟』TBS赤坂ACTシアターにて。
今年に入り、志らくさん、談春さんの独演会を聞き、この日は落語立川流の重鎮・志の輔さん恒例の『志の輔らくご』を堪能しました。休憩を挟んだ2部構成の前半は、本編の落語「中村仲蔵」を楽しむための「大忠臣蔵~仮名手本忠臣蔵のすべて~」と題した歴史講座。まずはノンフィクションの「赤穂事件」と、幕府の検閲を避けフィクションへ仕立てた全十一段の歌舞伎「忠臣蔵」のお話。スクリーンを使ったり、浮世絵をパワーャCントで分析したり、時より再現ドラマ風に語りがあったり、面白おかしく「忠臣蔵」を通しで解説。全十一段の内、本筋から離れた五段目はなくても良い段なのだと。終日興行の歌舞伎では、お昼の"弁当幕"と云われていたのだそう。さて、前半を踏まえて後半は、古典落語「中村仲蔵」をたっぷりと。階級制度が厳しい江戸時代の歌舞伎界で、並外れた才能をみせ名題(なだい)に昇進した中村仲蔵。しかし、周囲のやっかみから与えられた役は、「五段目」の斧定九郎。なんとか画期的なこしらえが浮かぶように願鰍ッをするも、何も浮かばぬまま満願の日。参詣の帰りに大雨に出くわし、そば屋で雨宿りをすると、駆け込んできた浪人風の武士。黒羽二重の紋付きに茶献上の帯。大小を落とし差しに尻はしょり、伸びた月代からは水がしたたり落ちるという有様。「これだ!」とひらめく仲蔵。さて、いよいよ初日。全身白塗の定九郎。しかも頭から水をかぶり、しぶきをあげ、水をしたたせながら、大見得をきる、口から血紅を吐くという演出も、場内は静まりかえったまま。これは舞台をしくじったと仲蔵は、旅支度をし家を出ます。道すがらの人々からは今日の芝居の話。恐る恐るその声に耳を傾けると仲蔵の定九郎へ大絶賛の嵐。家に戻ってみると、名題にまで引き上げてくれた團十郎に、師匠の中村傳九郎が、「おまえは歌舞伎、芝居の神になる男だ」と。すると仲蔵「し~んとなるのはこりごりです」。志の輔さんのライフワーク「中村仲蔵」。"凄かったなぁ!"の感動のひと言。画期的な芝居で自らの才能を万人に知らしめた「中村仲蔵」。一方、志の輔さんは、前半の「大忠臣蔵~仮名手本忠臣蔵のすべて~」の解説を伏線とし、古典落語「中村仲蔵」を、別次元へ引き立ててみせました。新たな試みへのチャレンジという点で「斧定九郎」と「志の輔さん」とが、また、「中村仲蔵」と「志の輔らくご」とが、シンクロしているかのような何とも奥深いエンターテインメントショーでした。


立川 志の輔 (本名:駐 照雄)

昭和29年2月15日生 富山県射水市(旧新湊市)出身
昭和51年 明大卒 劇団所属&広告代理店に勤務
昭和58年 立川談志門下入門
平成元年 にっかん飛切落語会奨励賞受賞
平成 2年 文化庁件p祭賞受賞 立川流真打ち昇進
平成19年 文化庁件p選奨文部科学大臣賞受賞
平成27年 紫綬褒章受章
平成30年 初主演映画「ねことじいちゃん」公開
毎年、新作落語の会"志の輔らくご"を開催し、好事家だけのものではない新感覚の落語を提案している。