5月17日、山形県南陽市『夕鶴の里』へ思いがけず縁あって連れて行ってもらいました。
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17日18日は1泊2日で新潟(瀬波温泉)へバス旅行でした。往路は、茨城より常磐道を北上し、磐越道から東北道、福島飯坂IC経由で米沢へ、南陽市から小国・赤芝峡をのぞみ関川村から新潟村上・瀬波温泉へ至るコース。昼食前の休憩を兼ね訪れたのが『夕鶴の里』。
古くから民話「鶴の恩返し」を開山縁起として伝承している“鶴布山珍蔵寺”が、山形県南陽市の西部、漆山地区を流れる織機(おりはた)川のそばにあります。寺の名前の“鶴布”は鶴が恩返しに羽を織った布に、そして“珍蔵”は鶴を助けた民話の主人公の名前に由来しているとのこと。さらにこの地区には、鶴巻田や羽付といった鶴の恩返しを思い起こさせる地名が残り、明治時代には製糸の町として栄えました。地域に口伝えで残されてきた鶴の恩返しをはじめとする多くの民話を、これからも伝えていくためにつくられたのが『夕鶴の里(資料館)(語り部の館)』。ここでは地元の語り部から実際に民話を方言を交え聞くことができます。我々は限られた時間しかなかったので、「鶴の恩返し」「白龍湖と琴の音」を、山形なまりが心地よく興味深く楽しく聞くことができました。「鶴の恩返し」は昔ばなしとして既知でしたし、木下順二氏の戯曲「夕鶴」の舞台は見た記憶あるはずで、おぼろげながら覚えています。この地で語り継がれる主人公は“金蔵”ですが、「夕鶴」の主人公は“与ひょう”と“つう”だったかなあなどと思いながら、資料館の展示物を拝観しました。話の終わりの決まり文句“とうびんと”というのは、頭(とう)から尾(びん)まですべて話しましたよという意味なのだそう。民話の語りに心ゆらぐのは歳のせいでしょうか。
“鶴の恩返し”
むがーしあったけずまなぁ
織機川のほとりは葦やぶばっかりで まぁだ谷地などいっぱいあったあだりの話だったど
そして新山ってどころあってな 金蔵ていう正直で働き者いだったけずま
いづだったが この金蔵は隣の町さ商いに行った帰り道
村境の田んぼ道あだりまで来たば
そこらのやろこめら おっきな鶴一ぴき 足 縄で縛って せめったけずま
棒でホーっていうど 鶴はそっちゃ行って 羽ばたばた
ホーっていうど こっちゃ行って 羽ばたばたばた あわれな音たでったけど
金蔵はもごさくなって その日焚き物売った金みなはだいで助けてけっちゃなだど
そして足縛ってだ縄ほどいでけっちぇ 放してけっちゃど
鶴は 金蔵さ ありがとう おしょうしなって言うように 何べんも頭下げで
金蔵のうえっか高く飛んで どごさがいねぐなってしまったずま
金蔵は 今日はちょっこっと損したげんど いいごどしたなと思って
家さ行ってその夜寝っかど思ったば
夜中に戸の口の戸 トントントン トントントン おばんでござりもす
道に迷った者だけっす 助けでおごえっすなていう音聞こえたんだど
金蔵は なんだべこげな時に 誰来たなべこ と思って起きでって戸を開けてみだば
とんないいおなご 足怪我して血など出して立ってだったけずま
金蔵は まず寄れ寄れ早ぐ家さ寄れって 家さ寄せで
戸棚から傷薬のおどぎり草つうな出して付けでけっちぇ
手ぬぐいで怪我したどごゆっつばいでけっちゃなだど
足のいってなも こうしておぐど 明日の朝げまで治っから
寒めどきは この薪物こさたいであだって寝ろ
とごろで腹減ってねぇが 腹減ったときままでもけー
冷たいご飯だったげんども あっついお茶などかけでままなどかせだんだど
ほーして われは奥さへっこんで 寝でしまったずま
次の朝げ 明るくなったもんだから 金蔵目覚ましたば
台所の方がら プーンとうめそな匂いしてきたんだど
なんだべこりゃ 金蔵起きて行ってみだば
囲炉裏さ鍋かがって うめそーな味噌汁クツクツクツクツ煮えったんだけずま
あら ゆんべなのおなご どごさ行ったべこりゃ
と思って外など見だば ほうきなどたがって外の聡怩ネどしったけもんだがら
まず 聡怩ネどいいがら家さ寄って あさげのまま喰えは
というごどで 二人であさげのおまま喰ったなだそうだ
そしたら そのおなごは言ったけど
だんな様 お陰様で足もいってぐねぐなったっす 治ったようだっす
おら、本当は機織りとんな上手なよっす
お礼にあるもの織りもすがら これがら機織ってたどご七日の間
決して見ねでおごえなっすというごどで 離れさ行って
コットンパタン コットンパタンという機織りの音聞こえだったずま
夜も 昼まも そして朝げも機の音聞こえっかたど
七日目のごど 金蔵は待っちぇらんにぇぐなって
はて 糸もねえのに何で機織ってだべこ
そーっと行って離れの戸を開げでみだなだそうだ
その途端 金蔵はたまげで うわー 大きな音たでだど
それもそのはず 中で機織ってだな おなごではねくって
いっぴきの痩せった鶴
我の羽 抜いでは織り 抜いでは織りして丸裸みだぐなってだったっけずま
金蔵のたまげだ音で 機パタっと止まったけぁ 羽のねえ鶴は寂しぐ言ったど
だんな様 なして見やったなやっす あげに見ねでおごえって約束してけば
おれぁ 本当は人間ではねえなだっす この間だんな様に助けておもらいした鶴だけす
今織ってだな お仏様のお姿のお曼荼羅という織物だっけす
今 織りあがったお曼荼羅を金蔵の目の前さ置いで これがお形見でござりもす
さいならーって言ったがど思うと 金蔵の前からすーっと消えでいねぐなってしまった
金蔵は さーわりごどしたなー 鶴でさえも助けらっちゃ恩忘ねで機織ってけるに
おりゃ鶴との約束破って 見でしまったなこりゃ
ということで そのお曼荼羅という織物を そごのどごさ小さいお寺を建てて
お納めしたなだそうだ
そこのお寺様のお名前は 最初は金蔵寺っていうがったんだげんども
いつの時代からか鶴の布がある山 珍しい物をしまっとく寺ということで
鶴布山珍蔵寺っていうお名前になったんだそうだ
とーびんと