かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

新作短編 その15 +お知らせも少し

2008-09-14 23:52:03 | 麗夢小説 短編集
 連載小説、今日からいよいよ麗夢ちゃん戦闘シーンに突入! なるべく盛り上げて行きたい訳ですが、あれもやりたい、これもやりたい、と結構考えることばかり先走って、書き込むのが大変です。話の流れから出来ないこともありますし、多少無理しても入れたいものもあれば、それ程こだわりの無いものもあり、まだまだ終盤のクライマックスは始まったばかりですので、これからそれらを整理整頓した上、きっちり話をつめて行きたいと思います。

 ところで、本編に入るまでに少しご紹介をば。
 「ドリームハンター麗夢」のDVD企画を実現された敏腕プロデューサーの松本竜欣様が、このたび、実写特撮に進出、素晴らしい企画を進行中です。
詳しくは「オフィス・ファンタム」ブログhttp://blog.livedoor.jp/kimidori1983/を参照願いたいのですが、その名も『ビットバレット』という、女子高生同士のバトルを描いた物語です。女優陣には今をときめくジュニアアイドル達を配し、監督は『時空警察ヴェッカーシグナ』の畑澤和也、 デザインワークスには我らが谷口守泰&毛利和昭 という豪華メンバーです。これから「オフィス・ファンタム」ブログを初め、ネットでも色々な仕掛けをされていかれるはずですので、今年後半は大変面白いことになりそうです。

詳報はまた改めて随時お知らせしていきたいと思います。
では、本編いきます!

------------------------------本編開始---------------------------------
「あなたは誰なの?」
 構えた銃口の先に佇立する白い塊。咄嗟に連想されるのは、そう、それはまさに、雪だるまであった。ただし、目も口もなく、バケツもかぶっていない。ただ白色の雪の塊が、人の背丈ほどに雪原の上へ積み重なっているに過ぎない。それでも、それが一つの意志を体現するかのように、強烈な殺気をまとう圧倒的な存在感が、その白い塊に凝集しているのは間違いない。
『百有余年前の約定、その成就を妨げる者は、その身を以て罪を購うがいい』
 言い分に耳を傾ける気など露ほどもなかったに違いない。その言葉が放たれた瞬間、雪の塊に凝集していた殺気が言葉と共に急激に膨れ上がったかと思うと、さきに倍する勢いの突風が、猛烈な吹雪となって麗夢に襲いかかってきたのである。
「きゃあっ!」
 麗夢は思わず前屈みになって風圧に耐えた。腰まで届く碧の黒髪が千路に乱れて風に巻かれ、ウィッグとスカートが引きちぎれんばかりにはためく。咄嗟に顔をかばった両腕や露出した太股にもたちまち雪が分厚くへばりつき、瞬く間に風上の半身が雪のオブジェへと変化していく。一点集中した吹雪が、瞬く間に麗夢の腰まで雪を積み上げ、更にそのけして大きくはない身体を呑み込んでいく。もちろん、今もこの夢の幻覚に対抗して、麗夢の力は全力を振り絞っている。それでも、恐らくは本体であろうこの白い脅威が吹き出してくる吹雪の姿、そしてその凍え切った冷気の強さは、麗夢の力をじわじわと押し返し、その肉体から確実に体温を奪っていくのだ。
「・・・っの! いい加減にして!」
 麗夢は目を開けるのさえ困難な正面をぐっとにらめ付けると、付着した雪ですっかり真っ白に変じた銃を構え直し、気力を振り絞って引き金を引いた。
 耳を聾する銃声が、正面から襲い来る吹雪を切り裂いた。両側を高い崖に挟まれた谷間に反響した炸裂音がどこまでも木霊し、満ち満ちた殺気さえ、一瞬で吹き飛ばす。まるで神の怒りを鎮める乙女の祈りが届いたかのように、辺りに再び静寂を取り戻した河原で、麗夢は原型を留めることなく崩れた雪の塊に目をやった。
「終わった・・・訳ないか!」
 麗夢は、きっと右手の崖を見上げると、その光景に思わず息を呑んだ。崖の稜線に、はるか彼方までずらりと並ぶ白い姿。振り返ってみれば向かいの崖上にも、いつの間にか無数の白い雪だるまが立ち並び、麗夢を見下ろしている。麗夢は銃を構えたまま、崖の上目がけて呼びかけた。
「あなた、何者なの?! どうして朝倉さんにこんな悪夢を見せるの? 答えて!」
『・・・我が雪に触れ、我が冷気に晒されて、何故凍らない。貴様、何者だ・・・』
 頭上から降り注ぐ強烈な怒りに、ほんの僅か、戸惑いと疑念が混じり込んだ。頭上をとられ、状況は圧倒的に不利ではあるが、少なくとも今度こそは話をすることができそうである。相手の正体も不明な今、このチャンスを逃しては、勝機を見いだすことすらできない。麗夢は一旦銃を降ろすと、改めて語りかけた。
「私は、ドリームハンター、綾小路麗夢! 私立探偵よ!」
『あやのこうじ・・・そうか貴様、夢守か・・・』
 どうやらこれ以上の自己紹介は不要らしい。麗夢は少しほっと息を付くと、改めて頭上の雪だるま達に語りかけた。
「どうやら私のことはご存知のようね。だったら次は、あなたのことを教えて頂戴! 朝倉さんを狙うのは何故? 約定って、何を約束したの!」
 だが、気を許すのはまだ早すぎた。
『何を約束したか、だと・・・。夢守風情が、出しゃばるでない!』 
 一段と怒りの気が高ぶったかと思うと、上から叩きつけるような大音声で、狼の咆哮のごとき声が谷全体に鳴り響いた。
『これ以上の邪魔は許さぬ! 早々にこの場から立ち去れい!』
 その途端、遠目にも、ぐらり、と雪だるまが一体、傾くのが見えた。更に一体、また一体と、雪の塊がその身を傾け、やがて次々に谷底目がけダイブを始めたのが見えた。大半は斜面を転げ落ちてくるが、中には途中で跳ね上がり、そのまま宙を飛んで直接河原目がけて落下してくる。更にその後を追って、陸続と落ちてくる多数の雪だるまが砕けながら一つになって、雪崩と化して谷底目がけ流れ落ちてきた。
「んもう! どうしてこっちの話は聞いてくれないのよ!」
 麗夢は改めて銃を構え、落下してきた雪玉を二つ撃ち崩した。だが、今度は何より数が多い。しかも、右からも左からも際限なく落ちてくる雪玉と雪を見れば、たとえ避け続けていたとしてもいずれこの谷その物が埋め尽くされるのは時間の問題のように思われた。
「朝倉さん! 危ない!」
 そんな最中、殺気の突風に尻餅をついたままだった朝倉の頭上に、一際大きな雪玉が転げ落ちてきた。朝倉も頭を抱えてその場に伏せたが、間一髪、雪玉は朝倉のすぐ右脇に落下して崩れた。その隙に麗夢が駆け寄って、朝倉に手を貸してともかくも立たせる。すると、周囲に充満した怒りが一段と沸き立ったように、谷全体が鳴動した。その怒りに身をすくめた朝倉は、狼狽も明らかに叫んだ。
「誤解だ! 私はちゃんと約束を果たしに来たじゃないか! 彼女は関係ない!」
 だが、その言葉は単に怒りを掻き立てただけだった。谷を走る雪崩が次々と麗夢達の足元に波のごとくうち寄せ、その動きを封じるや、少なく見ても十は下らない雪玉が次々と跳ねて、頭上から襲いかかってきた。
「こうなったら!」
 麗夢は拳銃をしまい込むと、最後の奥の手とばかりに両手をまっすぐ頭上に掲げた。
「はああああああぁっ!」


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