かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

森博嗣デビュー作「すべてがFになる」を読み終えました。

2007-06-17 22:54:11 | Weblog
 今日は久々に何も予定の無いまっさらな休日の一日、朝はしっかり寝坊して、昼間は溜まっているビデオの鑑賞や読書でまったりと過ごしました。ただ、やっぱりというか、寝坊はあまり良くないですね。惰眠をむさぼっているときは実に心地よいのですが、起きた後はどうも頭がぼうっとしてしまって、心なしか気分も今ひとつで、さまざまなやる気が抉り取られたような感じがします。でも、あの至福のひと時はどうにも堪えられない魔力です。多分気持ちよさを感じているときは脳内麻薬も結構出ていたのかもしれませんけど、後でひどい目にあう、とわかっていても止められないまさに麻薬のような魅力といえるでしょう。連続すればそれは間違いなく心身を蝕むことは間違いないので、土曜日自治会で早朝からたたき起こされたのは不幸中の幸いだったかもしれません。

 というわけで、今日森博嗣のデビュー作「すべてがFになる」を読み終えました。500ページを超える分厚い一冊でしたが、もう取り憑かれたようにひたすらページをめくり続け、一息に読んでしまいました。何もすることの無い朝に惰眠をむさぼるのも至福のときですが、こういう風に本にのめりこむのもまた、至上の快楽だといえるでしょう。
 私は活字が好きなくせに生来のものぐさのためか新しい作家や本に注目することはほとんど無く、森博嗣という作家も全然知りませんでした。私の本の買い方は、見つけたら無条件に買う、という一押しの作家さんのほかは、本屋さんや古本屋さんにふらりと立ち寄ったときに見かけた、面白そうな題名やちょっと気になる内容の本を拾って帰るに尽きます。また、薄い本ですと1日もちませんので、なるべく分厚い本、と言うのも選択するときの重要な要素になります。森博嗣はこれら条件に当てはまった典型で、たまたま古本屋さんで「地球儀のスライス」という題名の面白さに魅かれ、また400ページを超えるそこそこな厚さの短編集だったので、試しにもって帰ることにしたのがきっかけです。ただ、これを読んだときは2,3心引かれる内容の話もありましたが、もう一つピン、と来ることも無く、判断保留、といったくらいの評価でした。でも今回、「すべてはFになる」を読んで、評価は完全に+側に大きく振れました。私はミステリー小説、と言うやつは今ひとつ苦手で、あまりその面白さが理解できなかったりします。食わず嫌い、という点も否定はしませんが、トリックが強引だったり人物描写等が平板で甘かったり、というようなものが多かったような気がする、という偏見もまた大きく影響していると思われます。でも、この本の紹介にもある「新しい形の本格ミステリィ」というものは、そんな偏見や食わず嫌いをあっさりと処分してくれるほどの魅力があふれておりました。今回ミステリーの焦点となるヒトを超えた仙人か神の様な存在であるうら若き女性天才工学博士真賀田四季と、謎解き役の主人公であるN大学工学部助教授犀川創平と彼に思いを寄せる大富豪で女子大生の西之園萌絵といった魅力的な人物達、大学の研究室や図書館といった舞台も、理系の大学を卒業したヒトなら肌で感じられる現実感を持って描かれていますし、随所にちりばめられた理系のギミックもうれしい限りです。また、トリックも周到に計算されたすっきりするもので、読後の満足感と爽快さはここ最近あまり感じたことの無いすばらしさでした。
 本の解説がまた瀬名秀明というのも予測してなかったうれしい誤算です。
 そして何よりうれしいのが、この森博嗣なる作家が結構多作で、これからしばらく読む本に困らないですみそうだ、という点。ざっと30冊くらいありますでしょうか。更に森博嗣は現役の研究者ですので、読者によっては、森博嗣の原著論文や著作物など更に数十冊の本や文書に触れることができることでしょう。あるいは学会で講演を聴いたり、本人と話をしたりできるかもしれません。私は全く分野が違うのでさすがにそこまではできかねると思いますが、そんなことが可能な選ばれた読者が、本当に心底うらやましいと思いました。

コメント
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