かっこうのつれづれ

麗夢同盟橿原支部の日記。日々の雑事や思いを並べる極私的テキスト

マスコミの人々は科学と魔法の区別も付かないんでしょうか?

2005-10-20 21:18:39 | Weblog
 いわゆる匠の技術には、現在の科学分析では解析しきれない要素が多々あるようです。酒造りの杜氏の仕込みの技とか、天体望遠鏡の鏡を磨くのも最後の仕上げは手作業だそうですし、そう言えば私の親父様も、現役の旋盤工時代は、指先で材料を触るだけで0、01ミリ単位で金属板の厚さの変化が判ったと言います。藤原拓海操るハチロクの「人間ABS」なんてのもそう言う部類の技術なんでしょうね。五重塔などの木造高層建築がなぜ地震に強いのか、も諸説ありながらまだ決定的なことは判っていない様に、昔の匠の技も未解明なものが結構あります。そう言う謎に挑戦している科学者もたくさんおられるのですが、こういった「技」は関係するファクターが多く、そのそれぞれを人間が総合的かつ直感的に判断して様々な操作を加えることで生まれるものなので、なかなか科学のメスできりさばくことが困難なようです。そんな中、備前焼という陶芸品の特徴とされる緋襷(ひだすき)という、炎のような赤い模様が出来る仕組みが解明された、というニュースが新聞に出ておりました。緋襷と言うのは、500程年前に、焼き物同士が触れあわないように稲わらを置いたのがきっかけになって出来るようになったそうなんですが、きれいな色を出す技術は、匠の経験と勘に頼っていました。その素人にはさっぱり見当も付かない「技」の条件が判ったというのは、大変な成果だと思います。それでも9人の研究者が4年がかりだったと言うのも頷けると言うものです。その努力と成果は素直に御言祝ぎ申し上げたいのですが、それを伝える新聞記事の内容には、思い切りでかい「?」を差し上げたいと思います。全体に文章が練り切れてないみたいでヘンなのですが、何よりおかしいのはそういった作文技術の問題ではなく、その内容です。
「・・・赤色は、カリウムと鉄分などが酸化アルミニウムの結晶に変化し、その周りを酸化鉄が覆うことで発色する・・・」
と書いてあったのです。これを私は、カリウムと鉄が反応するとアルミニウムが出来るのか、と読んだのですが、当然そんな反応でアルミニウムを生み出すことは出来ません。もしそれが出来るとしたら、それは錬金術や魔法と言うべき代物でしょう。私自身、一応科学の末席でご飯を食べる身でありながら日々易占を水先案内にして暮らしている訳ですから、ひょっとして9人の研究者の中に魔術師の類ががいないとは限りません。でも、幾ら事実が往々にして小説よりも奇なる結果を見せることがあるからと言って、このような「奇蹟」はさすがにありえないでしょう。きっとこの記事を書いた記者が、説明された研究者の言葉を咀嚼しきれないまま書いたためにこんな書き方になってしまったんでしょうけど、その記者の基礎的な知識の貧弱さもさることながら、これをチェックできずにそのまま通した編集の側の責任も大きいと言えます。
 今科学者には、一般の人にもその研究を理解してもらえるようにやさしく分かりやすく説明する能力が必要とされているのですが、聞いてもらう側がここまで基礎的な部分をも理解いただけないんだとしたら、一般の人が科学者の言葉を理解するのはほぼ絶望的です。今回の記事は単なる誤植であって欲しいものですが、なんとかもう少しマスコミ側にも「理科」のお勉強をしてもらいたいと思います。

コメント
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