1960年代後半、東大安田講堂事件の後のこと。左派の週刊誌で働く沢田妻夫木聡は活動家たちの取材の中で梅山松山ケンイチと名乗る男と出会う。彼は赤邦軍という左翼団体で武装蜂起すると沢田に語る。
先輩記者の中平古館寛治には梅山は怪しいから近づくなと言われ、沢田自身も怪しいとは感じたものの、どこか人懐こく慕ってくる梅山に共感し彼を信じて取材を続けてしまう。沢田はこの仕事の前の東京のフーテンに潜入する取材でも、自分は所詮潜入取材しているだけで本物のフーテンの気持ちが分かったわけではないとか言って上司をあきれさせてしまうほど優しい性格の男だった。そこにふっと入ってきた梅山。自分は左派の運動を端から見ているだけで何もしていないという沢田の罪悪感も手伝ってか、妙に梅山に肩入れしてしまう。
この梅山という人物。沢田に語った「梅山」という名前ものちにウソだったことが分かるのだが、赤邦軍は京大全共闘の支援を受けていて、メンバーもたくさんいるかのように話していたが、京大全共闘とは沢田を介して議長の前園勇山内圭哉に会わせてもらっただけだったし、赤邦軍のメンバーと言えば梅山の他に3名くらいしかいなかった。しかし、口だけは妙にうまく恋人重子石橋杏奈のことも言いくるめていたし、沢田にもやたらと大きなことを話し、そのために資金を貸してくれとカネの無心をするのも平気なようだった。恋人にも平気でどっかでお金借りてきてなんて言っていたし、冷静な目で見れば最低な人間の部類だと思うんだけど、どこか人を惹きつけるところはあったのかなぁ。まぁ、そんなに大人数ではなかったから教祖様になれるほどってわけじゃなかったんだろうけど。
沢田は肩入れしていた梅山の赤邦軍が自衛隊に武器を奪取しに侵入して、自衛隊員を殺してしまったときもまだこれは思想犯であり、ただの殺人とは異なると信じていた。どこまでも優しい沢田とそれを利用した梅山っていう構図なんだけど、あの時代を背景にこういうことも起こり得たんだろうなという気がした。梅山に関しては間違いなくニセモノで、全共闘などに憧れ誇大妄想的に自分の活躍を夢見ていたのだろうけど、沢田にしてもある種の憧れを捨てきれずに、梅山に追随してしまったのかなという気がする。実際にもっとちゃんと裏を取ろうとすればできたと思うんですよね。なんか無意識下であえてそうしなかったのかなという気もしました。
かなり長い間梅山をかばっていた沢田だったけど、やはり最終的には自分の犯してしまった罪の重さに気付く。そして、それがあの最後の涙につながるんだと思うけど、やっぱり沢田は本当に心優しい男なのだなぁと感じた。きっと梅山のような人間はあんな涙を流す日は来ないと思う。あの時代を背景にこういうことも起こり得たと先に書いたけど、梅山のような人間はあの時代を背景にしていなくても何かしらやらかしていたんじゃないかなと思う。あーいう奴はどこにいても反省しないし、どこか病的な嘘つきって存在しますからね。梅山に関してはフィクション的に作り上げた人物みたいだけど、実際の基になった人はいまごろ何をしているのかなぁ。
ワタクシはあの時代の話が好きということもあって、彼らの衣装や車、タバコなどのアイテムも楽しみながら見ることができました。お話自体は決して明るいものではないんですが。ブッキーとマツケンの共演ってだけでも結構楽しめるし。2人とも自然体で演じているふうに見えたけど、リアリティがあってこうして自然に見えるのも2人がうまいからかなと感じました。梅山なんて本当に腹の立つ奴だったし。60~70年代の学生運動について知っておいたほうが楽しめると思います。
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