楽園のカンヴァス |
山本周五郎賞を受賞した、美術ミステリーです。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)のアシスタント・キュレーターである主人公が、自分と一字違いのチーフ・キュレーターへの宛先間違いと思われる招待状を受けとります。
それは伝説のコレクターからアンリ・ルソーの作品の真贋を鑑定して欲しいとの依頼状で、ルソー研究に情熱を傾けてきた主人公は上司の振りをするリスクを承知でその招待を受け、同じく招待をされていたルソー研究の第一人者である日本人女性と七日間の鑑定を行うことになります。
しかしその鑑定は作品を見てのそれではなく、与えられた古書の七章を毎日一章ずつ読むことで真贋を見極めるという不思議なもので、そこからルソーの画家としての生き様、パブロ・ピカソとの交流、そしてルソーの最後の作品となった「夢」にまつわる謎と対峙をしていくといったストーリーです。
美術には疎いのでルソーという画家は知らなかったのですが、この「夢」という作品はどこかで見た記憶があります。
ただその程度でしかなく、やや面倒ではあったのですがwikipediaなどでいろいろと調べながら読み進めていくのも知識が広がるような感じがして悪くはありません。
その謎解きだけではなくルソーへの思いが前面に強く出ているのは作者がやはり同じキュレーターだからかもしれず、ここのところはそういった作者によくあたります。
ミステリーとしては比較的に流れを掴みやすいので過大な期待は禁物ですが、どこまでが史実でどこからがフィクションかが分からないような展開は秀逸です。
楽園のカンヴァスにルソーが描いたのは夢だったのか、それとも夢をみた、だったのか、その結末をお楽しみください。
2013年10月31日 読破 ★★★★☆(4点)