goo blog サービス終了のお知らせ 

オリオン村(跡地)

千葉ロッテと日本史好きの千葉県民のブログです
since 2007.4.16
写真など一切の転用、転載を禁止します

モダンタイムス

2017-07-01 00:01:44 | 読書録

モダンタイムス(上)

講談社

このアイテムの詳細を見る

モダンタイムス(下)

講談社

このアイテムの詳細を見る

何とも微妙な作品でした。
伊坂ワールドとはやや一線を画した作風ではありましたし、冗長にも思える描写がやや鬱陶しくもありましたが、それでもドキドキハラハラな展開はそれなりに面白かったです。
モダンタイムス、というチャップリンの映画は観たことはないのですがwikipediaで見てみればなるほど、そのタイトルにした理由も分かります。
前作、の位置づけであるらしい魔王とは別の角度から見た社会、「国」という意志を持たないはずのものが「国」を存続させることだけを目的に人々を操っていく、ヒトラーやムッソリーニにしても単なる人形でしかなかったという視点は新鮮でもありました。
それでも響いてくるところがあまり無かったのは、あるいは続編として期待をしすぎていたからなのかもしれません。

そもそも前作と関連づける必要があったのかどうかが疑問だったりもして、単体であっても充分に成立をするストーリーでしたし、そうであればむしろもっと楽しめたでしょう。
かなり早い段階で安藤潤也、詩織が出てきたので勝手に盛り上がりすぎた嫌いがあり、そしてその繋がりがあまりにふざけていたのには怒りすら覚えました。
結末の仕込みのためだけに紡いだのかと、主人公の周りに集うスーパーな人たちもご都合主義過ぎて、「そういうことになっている」のであっても高い評価は出来ません。


2017年6月28日 読破 ★★★☆☆(3点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


魔王

2017-06-20 00:35:29 | 読書録

魔王

講談社

このアイテムの詳細を見る

これまで読んできた中では、一番につまらなかった伊坂幸太郎かもしれません。
とは言いながらも「つまらない」はピッタリくる表現ではないかもしれず、消化不良、どこか不思議な伊坂ワールドは健在ながらもさすがにこの終わり方はないでしょう。
はしごを外された、レベルではない唐突な幕切れ、これでは何を語りたかったのかが全くわからず、時間を返してくれといったところです。
どうやら続編があるようなのでそこで種明かしでもしてくれるのか、ポリシーをねじ曲げて特攻します。

テーマ自体は興味深いものがありました。
大衆心理の危うさ、がタイムリーなのは共謀罪法が与党の強行採決で可決されたことに対する「自分には関係ないから」との、「普通の市民」の声を聞けば薄ら寒くなってしまいます。
自分にできることは選挙にかかさず行くことぐらいしか無い現実にも愕然としますし、世間の無関心が為政者の思うツボをもたらすのでしょう。
血税を使ったお友達優遇が明らかになっても、露骨なまでの安倍隠しに躍起となる自民党幹部の姿を見せつけられても40%を維持する内閣支持率は野党の不甲斐なさを考慮しても異常、異様で、小泉純一郎や橋下徹などムードに流されやすい国民性、日本人は怒りが持続しないので一度目は強く反対しても二度目はあっさり許してしまう、自分なら一回目は緩く通してそこから大きく育てる、といった主人公の言葉は伝え聞こえてくる政治家、官僚のそれと一致します。
作中の犬養首相が押し進める憲法改正、それに対する国民の反応、まるで未来を予測するような展開で結末が気になっただけに、その中途半端さに腹立たしくもなった魔王でした。


2017年6月17日 読破 ★★☆☆☆(2点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。

コメント (4)

戦国武将からの手紙

2017-06-17 00:04:51 | 読書録

戦国武将からの手紙

学習研究社

このアイテムの詳細を見る

戦国武将が遺した手紙をベースに、その武将の人となりを紐解いています。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗らの著名な武将がターゲットなのは週刊誌などの連載と思われるので当然な人選ではあり、そういう意味での新鮮さ、発見はありません。
ただ現代文に置き換えているなどハードルは低く設定してあり、気軽に読める仕立てとなっています。

それだけに奥深さが足りない、のは仕方がないのでしょう。
ページ数も限られてのそれでしょうからエッセンスになってしまっていますし、そして筋立てが気に入りません。
手紙からその真の姿を明らかにするのではなく、まず著者の思い描く人物像を語った後にそれを裏付けるような手紙を紹介している、そんな嫌いがあります。
苛烈ながらも実は細やかな配慮をしていた信長、単なるいい加減な性格でしかなかった秀吉、筆まめと言われながらも直筆のものは政略に上手く利用していた家康、実は母とは仲が良かった政宗、など面白い切り口ではありますが、やや我田引水なところが目に付いたのが残念ではありました。


2017年6月14日 読破 ★★★☆☆(3点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


思い出のとき修理します 4

2017-06-15 00:04:12 | 読書録

思い出のとき修理します 4

集英社

このアイテムの詳細を見る

せっかくなので、立て続けの飯田時計店です。
話の流れ的には最終巻でしょうか、整いすぎた感があるのはこのシリーズの持ち味っぽかったりもして、それは各々のショートストーリーにも活かされています。
逃げるでもなく、しかしバラ色に解決をするでもなく、背負ってきたものと正面から向かい合うことで乗り越えるきっかけ、力をもらう、そんなほっこりストーリーでした。

ただどうなんでしょう、心に響くかどうかは年代によって差があるような気がします。
寂れた商店街ではありながらも古くから住む人たちの心の繋がり、物語としてはよく見る風景ですが平成の世になった今からすれば現実味はありません。
自分が都会に住んでいるからかもしれませんが、しかし子供のころにはそれに近いコミュニティがあったはずで、そのあたりの経験で作品の評価が変わってくるような気がします。
秀司と明里の今後もそう、歯が浮くような展開には好き嫌いがあるでしょう。
相手を想う気持ち、大判焼きのエピソードなどはぐっときましたが、それよりも太一のオチにがっかりとしたツクモさんでした。


2017年6月13日 読破 ★★★☆☆(3点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


思い出のとき修理します 3

2017-06-13 00:19:23 | 読書録

思い出のとき修理します 3 空からの時報

集英社

このアイテムの詳細を見る

前作で秀司、明里ともに過去との折り合いをつけて次への一歩を踏み出しましたので、そこで止めておくのも一つの選択肢ではありました。
興行的な都合でダラダラと続けて一部に評価を落としたドラゴンボールのような例もありますし、しかし心配無用、そのテイストは失わずにしっとりとさせてくれる飯田時計店です。
新たに家族をテーマとした秀司と明里との距離感を軸に、時計にまつわるエピソードが静かに流れていきます。

どこかファンタジーな雰囲気がありながらも論理的な決着がありますので、偶然はさておき、ご都合主義になっていないのがよいように思います。
それぞれが抱える現在、過去、そして未来、ミステリーとは違いますが「どうなるんだろう」と先の読めない展開でもあり、興味深く読ませていただきました。
必ずしも八方にハッピーエンドではありませんが、それでも登場人物が前を向いて歩いて行ける終わり方に安心できるのでしょう。
時計そのものがきっかけでしかなく、それがメインにならないのが物足りなくもありますが、修理をするのは「時計」ではなく「とき」ですから脇役としての輝き、温かな光です。


2017年6月9日 読破 ★★★★☆(4点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


戦国鬼譚 惨

2017-06-02 01:09:11 | 読書録

戦国鬼譚 惨

講談社

このアイテムの詳細を見る

武田の滅び、を彩る武将の進退を描いた短編集です。
この作家らしく地味と言いますかマイナーと言いますか、あまり他では取り上げられない主人公なのが個人的には嬉しかったりもします。
木曾義豊、下條頼安、武田信廉、仁科盛信、穴山梅雪は国衆だったり一門衆だったり、危機の際に武田家中でのそれぞれの立ち位置により進退が変わるのは当然と言えば当然、しかしそれを超越した人間模様、心の動きを鮮烈に描く様はいつものごとくさすがでした。

その行動規範、力により傘下に取り込まれた国衆が領国の民のことを第一に考え、一方で一門衆は自らの栄華、あるいは矜恃を優先しているところなどが面白いです。
後者は逆にそれが弱みにも繋がり、そこを突かれたことで結果的に無様な終わり方をするなどは人の世の難しさなのでしょう。
戦国期のことと単なる読み物とせずに自分だったらその場でどう考え、どう判断し、そしてどう行動をしたか、などを当てはめながら読むとさらに楽しめます。


2017年5月31日 読破 ★★★★☆(4点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。

コメント (2)

雪が降る

2017-05-26 00:34:05 | 読書録

雪が降る

講談社

このアイテムの詳細を見る

どうしたらこれをミステリーのくくりで売り出せるのか、さっぱり理解ができません。
テロリストのパラソルシリウスの道、これらとは一線を画した作品であり、どうなるのだろうとのドキドキ感はありますがミステリーでないことは断言できます。
しかし藤原伊織らしさ、短編集ながらもそれぞれの登場人物を魅力的に描いているところに変わりはなく、人間ドラマという切り口からすれば秀逸と言えます。

力強さがありながらもどこか弱さを併せ持っている、これまでの主人公はそういったタイプでしたが、この作品では揺れ動く弱さが前面に出ています。
それでいて秘めた芯の強さが自然にあふれ出る、そのバランスが絶妙で引き込まれてしまい、心情を自分に照らし合わせてしまう読者が多かったのではないかと思います。
最後まで描かずにその後を読み手に任せることで無限のストーリーが広がっていく、全体的には切なさが胸を締め付けるようなものが多いですが、しかし後味は悪くありません。
ただ数ページと一番に短いストーリー、トマト、だけがさっぱり意味が分からなかったのが残念、それが無ければ満点でした。


2017年5月24日 読破 ★★★★☆(4点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


落日の鷹

2017-05-18 01:14:53 | 読書録

落日の鷹

講談社

このアイテムの詳細を見る

龍造寺氏、鍋島氏にかかる著作の多い作家ですが、なかなかに興味深い人物を引っ張り出してくれました。
多久安順は前名が龍造寺家久で父の長信は肥前の熊と呼ばれた隆信の同母弟、つまりは隆信の甥にあたる人物です。
龍造寺氏は本家が村中龍造寺氏、分家が水ヶ江龍造寺氏で隆信は水ヶ江龍造寺氏から出て本家を継いだことで大きく飛躍をしましたが、その跡を継いだのが長信です。
長信の嫡男である家久が「水ヶ江の鷹」と呼ばれるほどに優秀な人物だったかどうかは承知をしていませんが、隆信が討ち死にをしたことで傾いていく龍造寺氏、それを乗っ取る形で佐賀藩の主となった鍋島氏、この微妙な関係の中で起きた「鍋島騒動」が舞台となっています。

家久、物語の中では大半が安順とされていますので、こちらが適当なのでしょう。
かつての家臣筋だった鍋島氏に組み込まれた龍造寺一門の中でも安順は直茂の娘を娶って筆頭家老になったのはその手腕が評価をされてのことだと思われますが、おそらくは龍造寺氏の中でもピカイチな血筋であったことも無縁ではなく、それが結果的に安順を苦しめることになります。
鍋島氏の家臣からは嫉妬とともに疑いの目で見られ、龍造寺氏に心を寄せる人々からは裏切り者と目され、辛い立場でもあったことは想像に難くありません。
この作品でもそれが為に家中で孤立をする安順が主筋である龍造寺伯庵との関係に悩み、苦しむ姿が描かれています。
ただどこかきれい事と言いますか手前勝手なご都合主義な面が否めず、思いがけない人間関係がありましたがそれもどこか無理があり、また言い訳じみた述懐がややくどいです。
せっかく魅力的な人物を登場させながらもその魅力を引き出しきれなかった、残念な鷹の懊悩でした。


2017年5月17日 読破 ★★★☆☆(3点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。

コメント (2)

QED 河童伝説

2017-05-11 01:10:40 | 読書録

QED 河童伝説

講談社

このアイテムの詳細を見る

基本的には話が繋がることのないQEDシリーズですが、なぜか神山禮子にこだわるここのところです。
それでいてストーリーの軸に据わるわけではないので、もう一つ作者の意図が掴めません。
毒草師とともにとりあえず登場をさせてみました、みたいな感じでもあり、シリーズのファンとしては嬉しいのかもしれませんが、しかしその関わり方が中途半端ではあります。

久しぶりの殺人事件!なんて言ってしまうと不謹慎ではありますが、事件を引き寄せる体質の棚旗奈々の面目躍如だったりもします。
河童なる空想とも言える存在の紐解き、これが権力者から虐げられた民であるということでは鬼や天狗などと同じ存在であり、またしてもタタラが絡んでくるところなどは執拗でもあり、これだけ繰り返されるとなるほどと思えてしまうのが不思議なところで、徐々にすり込まれてきたということなのでしょう。
実際にどこまで信憑性があるのか、天照大神や素戔嗚尊など例によって古代の神々についての知識が限りなくゼロに近いために定かではなく、また夢がある話でもありません。
むしろ暗くなってしまうほどの闇、しかし日本人としては意識をしておきたい、そんな河童伝説です。
ちなみに殺人事件は単なるツマでしかありませんので謎解きは無理、その楽しみは皆無に近いことをご承知おきください。


2017年5月9日 読破 ★★★☆☆(3点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


QED 御霊将門

2017-05-02 01:04:17 | 読書録

QED 御霊将門

講談社

このアイテムの詳細を見る

QEDシリーズがすっかりとタタルこと桑原崇の蘊蓄開陳の場と化して久しいですが、ここにきてさらにパワーアップです。
さすがに一般人の周りに殺人はおろか事件がぶち当たりすぎるのが拙いとでも思ったのか、今回はただ棚旗奈々、沙織の姉妹との花見の予定がいつの間にか平将門ツアーとなって黙々と、淡々と、その人生、御霊伝説を紐解いていく、怨霊ではなく御霊なのがキモなのですが、そんなストーリーとなっています。
ただ叙述トリックを絡めながら前々作、前作に続いて神山禮子を登場させたことで、辛うじてミステリーの体を成していると言えなくもありません。
どうやらこの流れで相馬野馬追、次の作品に突入をするようですので、せっかくですので立て続けにいくことにします。

その将門は怨霊として名高いと言いますか、いろいろと祟る逸話がゴロゴロとしていますが、そのからくりをタタルがいつもどおりに「鉄」「朝廷」を軸に、いつの間にやらすっかりとそこいらの学者よりも詳しいのではないかと思えてしまう棚旗姉妹の相づちとともにQEDに導きます。
言うほどに将門の首が飛んできた、塚を壊そうとした人たちを呪い殺した、などの話は知らないものの、幽霊の正体見たり枯れ尾花、といったところなのでしょう。
いつものごとく古代の神々が全くと言っていいほどに分からないのでそれを持ってこられるとしんどいのですが、それはそれ、心は福島に飛んでいます。


2017年5月1日 読破 ★★★☆☆(3点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


最後の忠臣蔵

2017-04-30 00:33:11 | 読書録

最後の忠臣蔵

角川書店

このアイテムの詳細を見る

忠臣蔵は吉良上野介の屋敷に赤穂浪士四十七士が討ち入るところがメインイベントですが、しかし浅野内匠頭の松の廊下での刃傷沙汰から討ち入り前夜に至るまでの苦難こそが本質でもあり、強硬派、穏健派、いろいろなしがらみから脱盟をしていく人間ドラマが日本人の心を打ち続けるのでしょう。
しかし忠臣蔵のその後、ある意味で華々しく腹を切った大石内蔵助らとは違って生き残った人々の、その生き様を描いたのがこの作品です。

四十七士の全員が切腹をしたのだと思っていたのですが、ただ一人、泉岳寺に向かう一行から抜け出した寺坂吉右衛門なる人物がいたことを初めて知りました。
それを逃亡と見る向きがあり、また何らかの密命を負ったとの説もあり、この作品では後者を採って吉右衛門の忠義一筋の、しかし苦しく孤独な後半生が迫り来ます。
旧赤穂藩の家臣、その家族らが見苦しい振る舞いをしないことこそが討ち入りの最後の始末、それを見越した内蔵助の深謀遠慮を支えたのが吉右衛門です。
そして赤穂浪士の名が上がることを苦々しく見ていた柳沢吉保との暗闘は、なかなかに痛快で読み応えがありました。
それだけにやはり討ち入り前に逐電をした瀬尾孫左衛門を引っ張り出す必要があったのかどうか、結果的にそれが余韻とはまた違った中途半端さを残した感は否めません。
吉右衛門にこれまでの人生を述懐させて終えるのではダメだったのか、チープなお涙ちょうだいの終わり方だけが残念でした。


2017年4月28日 読破 ★★★★☆(4点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


死神の精度

2017-04-25 00:12:57 | 読書録

死神の精度

文藝春秋

このアイテムの詳細を見る

読み始めと読み終わりでこれほど印象の変わる作品はあまりありません。
主人公の「千葉」は死神、とは言っても人に死をもたらすわけではなく、何らかの法則で死の候補に挙げられた人に近づいて一週間、可か見送りかを判断する存在です。
そんな死神が出会った人との物語、連作短編集となっています。

全編を通して共通をしているのはどこか胸を締め付けられるような、そんな切なさです。
死とは何なのか、人にはいずれ訪れる死も死神には無縁のことで、その死、あるいは生に対する人の感じ方、受け止め方に首を傾げる「千葉」の独白こそがテーマなのでしょう。
それでいて各話とも最後まで語らずに読み手にその後を任せることで余韻が残り、しかしもわっとした感じのもどかしさがある意味で不愉快だったりもしたのが読み始めです。
それが最後の老婆との会話で180度の大回転、印象がガラッと変わってそういうことだったのかと、連鎖をする生と死にさらに切なさが増した伊坂幸太郎でした。


2017年4月24日 読破 ★★★★☆(4点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。

コメント (3)

猫弁と魔女裁判

2017-04-18 00:21:05 | 読書録

猫弁と魔女裁判

講談社

このアイテムの詳細を見る

猫弁シリーズの最終作です。
前作と上巻下巻の関係にあるストーリーは今回に初めて猫が事件に絡まず、百瀬太郎の生い立ち、母親、そして大福亜子との結婚がどうなるのか、引き続きテーマは家族です。
やはりシリーズの登場人物がその最後を飾るかのように登場をして、そしてそれぞれの人生の一つの節目を迎える徹底ぶりは見事でもありました。
そこに必然性はないのですが収まりがいいと言いますか、作者の丁寧さ、一人ひとりの登場人物への愛情が感じられる締めくくりです。

マスコミに魔女、とも報じられた企業スパイの裁判、取り憑かれたようにそれに没頭する猫弁に何かを感じなければ嘘でしょう。
つまりは流れがある程度は読めてしまうのですが伏線もきれいに回収をしていますし、意外性はなくとも充分に楽しめる作りとなっています。
これまでの茫洋としたキャラクターだった猫弁が英語を駆使し、海外を飛びまくり、まるで別人のような仕事ぶりに亜子ならずとも違和感があって猫弁らしくはありません。
その雰囲気が作品を重くしてしまっているようでもありますが、それが逆にドキドキ感を高めるのですから分からないものです。
個人的にはテヌーの憂鬱がグッときて思わず涙、は言い過ぎではありますが、それなりにページを割いただけの価値のある独白でした。


2017年4月14日 読破 ★★★★☆(4点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


猫弁と少女探偵

2017-04-14 00:37:27 | 読書録

猫弁と少女探偵

講談社

このアイテムの詳細を見る

ほんわか猫弁です。
猫弁だけに今回も事件は猫がらみ、行方不明になった猫を探す少女探偵、それを手伝う猫弁、しかし話は猫ではなく家族がテーマになっています。
過去の作品に登場をした人物やエピソードも持ち出して大団円に向かっている雰囲気もあり、吉岡秀隆と杏の今後からも目が離せません。

どうやら次作が最終作のようで、それもあって手仕舞に向けた構成になっているのでしょう。
謎のままになっている弟の存在や母の行方、など持ち越しとなった話題もあり、上巻下巻にした方がしっくりくるのかもしれません。
これといったひねりがあるわけでもなく、ご都合主義な世間の狭さが爆発をしているのもいつもどおりながらも「普通」が一番、亜子のこの言葉こそがこのシリーズの持ち味です。
おそらくはオールスターキャストになるであろう最終作、間をあけるのももどかしいので立て続けにいくことにします。


2017年4月11日 読破 ★★★★☆(4点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。


水軍遙かなり

2017-04-06 00:01:24 | 読書録

水軍遙かなり(上)

文藝春秋

このアイテムの詳細を見る

水軍遙かなり(下)

文藝春秋

このアイテムの詳細を見る

戦国期の水軍と言えば村上水軍が有名ですが、志摩の鳥羽に拠った海賊の名の方がぴったりくる九鬼水軍も忘れてはなりません。
その九鬼水軍を率いた嘉隆ではなく、嘉隆の嫡男である守隆が主人公となれば興味津々、かなりな期待を持って読み始めました。
しかしその期待は裏切られて半ばからは苦痛すら伴い、守隆に「自分の人生は全て中途半端だった」と語らせていましたが、いやいや、中途半端だったのは作者の構想です。

出だしこそ海を眺めることで地球が丸いことを理解するなど俊英さをアピールした守隆ですが、しかしその後が続きません。
そもそもが九鬼水軍の生き様ではなく、単に守隆、あるいは嘉隆の目を通した戦国史でしかないのが看板に偽りあり、と叫びたい次第です。
九鬼親子としては避けて通れない本家との確執、関ヶ原合戦で東西陣営に分かれた嘉隆と守隆の心の動き、戦後に嘉隆が自害をするに至る顛末、などをメインにすれば面白い作品になったはずなのですが、これらをあっさりと、話題の言葉で語れば「ナレ死」のような扱いでしかないのでは何を描きたかったのかが見えてこないのも当然でしょう。
最後にお茶を濁すかのような大御所家康の構想を持ち出すもこれまた中途半端、それっぽく登場をさせた風魔然り、小浜民部然り、書き出す前に構想を練っていたとは思えない場当たり的な小話を、しかも本筋からすればどうでもよいようなそれを積み重ねているだけです。
主人公を例えば筒井定次とかにしても大して手を入れずに再構成できそうな、そんなテンプレートみたいな船旅でした。


2017年4月4日 読破 ★★☆☆☆(2点)


ブログランキング・にほんブログ村へ
一日一クリック応援をお願いします。