猫弁と魔女裁判 |
猫弁シリーズの最終作です。
前作と上巻下巻の関係にあるストーリーは今回に初めて猫が事件に絡まず、百瀬太郎の生い立ち、母親、そして大福亜子との結婚がどうなるのか、引き続きテーマは家族です。
やはりシリーズの登場人物がその最後を飾るかのように登場をして、そしてそれぞれの人生の一つの節目を迎える徹底ぶりは見事でもありました。
そこに必然性はないのですが収まりがいいと言いますか、作者の丁寧さ、一人ひとりの登場人物への愛情が感じられる締めくくりです。
マスコミに魔女、とも報じられた企業スパイの裁判、取り憑かれたようにそれに没頭する猫弁に何かを感じなければ嘘でしょう。
つまりは流れがある程度は読めてしまうのですが伏線もきれいに回収をしていますし、意外性はなくとも充分に楽しめる作りとなっています。
これまでの茫洋としたキャラクターだった猫弁が英語を駆使し、海外を飛びまくり、まるで別人のような仕事ぶりに亜子ならずとも違和感があって猫弁らしくはありません。
その雰囲気が作品を重くしてしまっているようでもありますが、それが逆にドキドキ感を高めるのですから分からないものです。
個人的にはテヌーの憂鬱がグッときて思わず涙、は言い過ぎではありますが、それなりにページを割いただけの価値のある独白でした。
2017年4月14日 読破 ★★★★☆(4点)