電脳筆写『 心超臨界 』

変化することは
真の学習がみな到達する最終結果である
( レオ・ブスカーリア )

不都合な真実 《 土田正顕――平成不況を作った張本人/谷沢永一 》

2024-08-08 | 05-真相・背景・経緯
電脳筆写『心超臨界』へようこそ!
日本の歴史、伝統、文化を正しく学び次世代へつなぎたいと願っています。
20年間で約9千の記事を収めたブログは私の「人生ノート」になりました。
そのノートから少しずつ反芻学習することを日課にしています。
生涯学習にお付き合いいただき、ありがとうございます。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■『小樽龍宮神社「土方歳三慰霊祭祭文」全文
◆村上春樹著『騎士団長殺し』の〈南京城内民間人の死者数40万人は間違いで「34人」だった〉
■超拡散『世界政治の崩壊過程に蘇れ日本政治の根幹とは』
■超拡散『日本の「月面着陸」をライヴ放送しないNHKの電波1本返却させよ◇この国会質疑を視聴しよう⁉️:https://youtube.com/watch?v=apyoi2KTMpA&si=I9x7DoDLgkcfESSc』
■超拡散『移民受入れを推進した安倍晋三総理の妄言』
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


平成2年3月27日、通称「総量規制」という通達を、この土田正顕が全金融機関に出した。(中略)この総量規制の通達は、例によってお役所用語で書いてあります。「各金融機関は、不動産業者ならびに不動産関連業者に対する貸出しの伸び率を、総貸出しの伸び率よりも下に抑(おさ)えねばならない。ことに不動産業者、建設業者、ノンバンクへの貸出しは、今後、当局が監視する」というのが、通達の趣旨(しゅし)でした。


◆土田正顕(つちだまさあき)――平成不況を作った張本人

『誰が国賊か』
( 谷沢永一・渡部昇一、文藝春秋 (2000/06)、p41 )

【谷沢】 ところが今回の、つまり平成不況は、従来の不景気とは大いに異なる二つの特色があるわけです。

一つは、この不況もなだらかに起きていれば、微調整が可能であった。洪水が大氾濫にならずにすんだ。それなのに、微調整ができないような、いわば崖(がけ)から突き落とすような劇的な不景気にしてしまった奴、つまり張本人がいるということです。

それをやってのけたのが、当時、大蔵省銀行局長であった土田正顕(つちだまさあき)なんです。今回の平成不況の根本の責任者、つまり戦犯第一号――いや、第一号ではすみませんね。一号も二号も三号も加えたぐらいの戦犯は土田正顕なんです。つい先ごろ、この土田は天下り先の国民金融公庫副総裁職を辞任したそうですが、この罪はそんなことで済まされる類(たぐい)のものではありません。

平成2年3月27日、通称「総量規制」という通達を、この土田正顕が全金融機関に出した。ただし、この通達には例外があった。後になって「自分の管轄(かんかつ)外だったから」と弁明しておりますが、住専7社だけは例外で、これが将来の大問題に繋(つな)がるわけです。これについては後ほど、あらためて申しあげることにして今は話を進めましょう。

この総量規制の通達は、例によってお役所用語で書いてあります。「各金融機関は、不動産業者ならびに不動産関連業者に対する貸出しの伸び率を、総貸出しの伸び率よりも下に抑(おさ)えねばならない。ことに不動産業者、建設業者、ノンバンクへの貸出しは、今後、当局が監視する」というのが、通達の趣旨(しゅし)でした。

これは「通達」であります。つまり、法律ではない。衆議院も通っていないし、いわんや参議院も通っていない。閣議にも諮(はか)られていない。公的な政治決定機関のいかなるところにもいっさい語らずに、ただ大蔵省銀行局長なるものの権限で発せられたものなんです。

そこで、土田は後に「この通達は各金融機関に対するお願いでありまして」と弁明しております。つまり、「悪いのは、私の個人的なお願いを拳々服膺(けんけんふくよう)した銀行のほうだ」と暗に言っているわけです。

私はあるとき都市銀行で講演をする機会がありました。講演後、そこの頭取と雑談しているときに申しました。

「頭取、大蔵省銀行局長の名前で出される通達というのがありますね」

「ああ、あります。あります」

「あれは法律ではありませんね」

「ええ、そうです。法律ではありません」

「法律でないということは、罰則は付いてないのですね」

「はい、罰則はありません」

「なら、頭取、そんな罰則もないような通達なら、ぐっと握り潰(つぶ)したらどうですか」と私が申しましたら、悲鳴をあげるように、

「そんな怖ろしいこと、ようしません。銀行局長の通達を金融機関が一厘(りん)一毛(もう)でも背(そむ)こうものなら、大蔵省を上げて意地悪をされます。私どもの銀行は三日で潰れるでありましょう」

まあ、こういう話でありました。

◆「総量規制」で何が起こったのか

【谷沢】 ともかく、この通達によって日本中の金融機関は、平成2年4月1日から、不動産業者ならびに不動産関連業者に対する融資をストップしたわけです。

というのも、この通達には「不動産関連融資の伸び率は、総貸出し額の伸び率以下に抑えよ」とまず書いてあります。

これが「総量規制」と呼ばれるゆえんでありますが、これは、要するに不動産に対する融資が全融資の中で突出しないようにしなさいということでありますから、別に土地に対する融資全部をストップしろとは書いてありません。ことに問題とすべきようには思われないでしょう。

しかし問題は、この通達の最後のところに添(そ)えられている、次の文章なんです。

「また、上記の趣旨に鑑(かんが)み、不動産業及(およ)び建設業、ノンバンクの三業種に対する融資の実行状況を報告するよう併(あわ)せて貴傘下(きさんか)金融機関に周知徹底方(かた)願いたい」

総量規制という通達の本当の狙い目は、この、あたかも付足(つけた)しのように書かれておる一文にあるわでです。つまり、これは要するに「不動産業者、建設業、ノンバンクには今後いっさいカネを貸すことまかりならぬ」ということを、きわめて婉曲(えんきょく)に言っているわけです。

これに対して、土田は「いや、あれはノンバンクなどに貸すのは控(ひか)えるようにと言っただけであって、止(や)めろと言った覚えはない」というでありましょう。いや、実際に彼はそのようにあちこちで弁明しております。

たしかに、文面だけを読むと彼の言うとおりです。三業種に対して、カネを貸したらいけないとは書いてありません。

しかし、これを受け取ったほうの銀行はどう思うか。書面には「三業種への融資は、銀行局が監視する」という趣旨のことが書いてあります。しかし、その結果、銀行局長・土田が個々の融資案件に対して不快に思ったら、どのような事態が出来(しゅったい)するかは書いてありません。

監視するというからには何らかの目的があるはずだし、その反作用として何かが起こると判断して間違いない。大蔵省がただバカのように突っ立って、融資が行われているさまを眺(なが)めているはずはない。

「ということは、これは要するに『三業種に対する融資はまかりならん』ということだな」と銀行が受け取ったのも、きわめて論理的な結論でありましょう。ここは何もせんほうが身のためだというわけです。

実際、この通達を境(さかい)にして、日本中の銀行が不動産業者、ノンバンクなどに対する融資のチャンネルを事実上、断絶いたしました。

◆日本の富を吹き飛ばした大蔵官僚の犯罪

【谷沢】 さて、その結果、何が起こったか。

そもそも、この世の中には、カネが余って使いみちがないから土地を買ったという人は一人もおりません。つまり、土地を取得して、それを持っておれば、やがて価値が上がって儲(もう)かるという前提のもとに、みな買っているわけです。自分が住むために土地を買うという人ですら、本心では土地の値上がりをどこか期待しておりました。でなければ、借家でいいわけですからね。

要するに、日本中の人が、土地の値上がりを目指しておったわけです。

で、私が不動産業者で、土地を買ったとします。商売で持っているわけですから、この土地を黙って値上がりするまで待つのでは、単なるバカで、商人(あきんど)失格です。そこで、ただちに買った土地を担保に入れて、カネを借りる。そのカネで次なる有望な土地を買う。そして、その土地をまた担保に入れてカネを借りて、次の土地を探す。

こういうふうにして、「融資、融資、また融資」と借りていくから不動産業は動いているわけです。悪く言えば、自転車操業ではありますが、不動産に限らず、商人はみな大なり小なりそうやっておるのです。

不動産業者に限らず、日本中のありとあらゆる経営者は、自分のメイン・バンク、取引銀行が明日も明後日(あさって)も、合理的な水準において融資をしてくれるという前提でやっているわけです。だから、夜も安らかに眠れる。

明日の朝になって、取引銀行の支店長から、突然、電話がかかってきて、

「おたくとは長いお付合いでしたが、私どもの都合で、以後いっさい、おたくとは融資関係を持たないことにいたしました。ついては担保をお返ししますから、これまで貸したカネ全額を耳を揃(そろ)えて、本日正午に持ってきてください」

なんてことは、絶対に起きないと思っているから寝ていられるんです。そんな落雷のごとき、ひといことを言われる心配はないという前提で、みんな事業をしているわけです。

ところが、平成2年4月1日を境にして、不動産業者はそんなひどい目に遭(あ)うわけです。融資規制でビタ一文貸してくれない。そうなると、もともと自前のカネで土地を持っている不動産業者などおりません。これは、小さな町工場の社長で、自前のカネで機械設備を買っている人がいないのと同じことです。

となると、不動産業者はたちまち干上(ひあ)がってしまいます。次に買う土地を担保にして、また借りるという前提でやっているわけですから、もう持ちこたえられません。保有している土地を売るしかない。だけれども、日本中の同業者が同じ境遇なんですから、誰も買ってくれない。

そこで、総量規制から1ヵ月か2ヵ月で、全国平均、土地の価格が約三割――今はもっとだと思いますけれども――当初において三割下がったわけです。

最盛期において日本中の土地の担保価格は2200兆円ありました。それが三割下がったとすると、660兆円の担保価格が空中にバーンと消えてしまったということです。日本の経済を支えておった富が660兆円、瞬間に消えたわけです。

これはもう、天人(てんじん)ともに許されざる、大悪行(あくぎょう)です。日本中のどんな悪人を探してきても、平清盛(たいらのきよもり)といえども、ここまで酷(ひど)いことはやらなかった。660兆円をパーにしたんですよ。3億円盗んだところの騒ぎじゃない。

【渡部】 田中角栄だって、問題にされたのはピーナッツ5億円ですからね。

【谷沢】 桁(けた)が違うところの問題じゃありません。これは経済犯罪です。ものすごい犯罪です。

というのも、経済という観点から見ると、3億円盗もうが泥棒はマイナスにならないんです。

たとえば、佐藤さんという人が1億円持っていて、それを鈴木さんが強奪した。これは人間関係としては、また刑法としては罪であるわけです。

しかし、純経済の観点から見ますと、佐藤さんが使うはずだった1億円を鈴木さんが代わりに使うわけで、消費行動という点においてはまったく同じことです。だから、経済から考えると、泥棒は悪ではない。

【渡部】 ましてや、田中角栄なんてアメリカから5億円持ってきたとされているわけですから――。

【谷沢】 経済から見れば、よその国から貰(もら)ってきて5億円分、日本の富を増やしたんだから、これは立派な行為である(笑)。

これに対して、総量規制をやった土田正顕(まさあき)は、一瞬にして日本の富を660兆円減らした。660億円ではありませんよ。これだけの富を煙にしたということは、それだけ日本経済の規模を縮小したわけで、これは大犯罪です。

ずいぶん長くなりましたが、この平成不況を特色付けているのは、この土田正顕という一人の官僚が、自分の職権を濫用した結果生まれたものであるということを忘れてはなりません。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 不都合な真実 《 自衛隊と政... | トップ | 不都合な真実 《 「ディープ... »
最新の画像もっと見る

05-真相・背景・経緯」カテゴリの最新記事