電脳筆写『 心超臨界 』

人生は良いカードを手にすることではない
手持ちのカードで良いプレーをすることにあるのだ
ジョッシュ・ビリングス

修復するのは総重量16㌧に及ぶ膨大な量の土地台帳だった――坂本勇さん

2009-01-26 | 03-自己・信念・努力
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文化を守る覚悟問う――坂本勇さん
【「うたた寝」09.01.22日経新聞(夕刊)】

22万人以上の犠牲者を出したスマトラ沖地震から4年余。古文書修復の専門家、坂本勇さん(60)の脳裏には自ら指揮して、2年半に及んだインドネシアでの古文書修復プロジェクトの記憶が焼き付いている。

総重量16㌧に及ぶ膨大な量の土地台帳だった。泥にまみれた帳面を洗って冷凍した後、真空状態で乾燥させた。首都ジャカルタにあるマグロ冷凍倉庫を借り、真空凍結乾燥機を日本から運んだ。3億円近い費用は日本の政府開発援助(ODA)をとりつけ、コンテナに詰めた台帳を空軍機で被災地のバンダ・アチェからジャカルタに空輸する“大作戦”だった。

外国人として最初に現地に入ったのは震災後1カ月以上経た2005年2月。土地の位置や所有者を記した土地台帳の修復が最重要と分かった。が、地元の人たちは天日乾燥させようとしていた。「そんなことしたら泥で固まってしまう」。一刻を争った。

が、いくら説明しても日本の大使館員うなずくばかり。救助の対象が人命でなく資料だったうえ、想定できる予算を超えていた。たまたま空港で出会った世界銀行の幹部と国際協力機構(JICA)の助け舟がなければ実現できなかっただろう。わずか1週間で話はまとまった。

遠いアジアの国の資料修復劇。日本には何の影響もないかもしれない。が、土地台帳も日々の暮らしから生まれた文化の一つ。「文化を残す」と言うのは簡単だが、「同じ事が日本でできただろうか」。自ら定めた領域に安住し殻を打ち破れない今の日本。この国を覆うのはやはり場のない閉塞(へいそく)感だ。28日、資料保存の専門家を集めて東大で行う講演で、坂本さんはそう問いかけるつもりだ。

(編集委員・松岡資明)

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