電脳筆写『 心超臨界 』

見事になされた仕事への報酬は
すでにそれを達成したことにある
( エマーソン )

人類の可能性の限界を1㍉でも広げよう―― 本庄丕さん/三浦雄一郎さん

2008-12-17 | 03-自己・信念・努力
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科学者と父の約束――三浦豪太
【「探検学校」08.12.13日経新聞(夕刊)】

今週、スウェーデンでノーベル賞授賞式が開かれた。化学賞に輝いた下村脩さんを見て、ある人のことを思い出した。下村さんと米プリンストン大で交流のあった、米ウッズホール海洋研究所の本庄丕(すすむ)名誉教授だ。

1971年秋、僕の父の雄一郎は大学の同級生の本庄さんが米国に研究者として旅立つのを羽田空港で見送った。37年後の今年、くしくも父が75歳でエベレスト登頂を果たしたのと前後して、本庄さんの研究成果が海洋学会で世界的な関心を集めた。

――水深の深い海には「生物ポンプ」とでも呼ぶべき特殊な生態系が存在する。その生態系は、地球温暖化の一因になる空気中の余剰炭酸ガスをポンプのようにして間断なく深海層に運んでおり、地球の気温上昇を抑えるのに役立っている――。本庄さんは20年前から立てていたこんな仮説をついに数値で実証しました。この発見は学会でも画期的なもので、地球温暖化の将来予測にも影響を与えるだろう、といわれているそうだ。

50年前、本庄さんと父は北海道大学のスキー部の合宿所でいつも大きな夢を語っていた。夢が大きすぎて、周囲から“どうしようもないはみ出し奇人”と見られることもあったようだ。本庄さんは父に「だまされて入った」というスキー部でマネジャーも経験。「資金調達をやらされたのが一番役に立った」と言う。研究に必要な資金を政府や企業から引き出してくるのも教授の大事な役目だからだ。

今年、父がエベレスト山頂へ向かう前夜、本庄さんから励ましのメールが届いた。「科学は人類の想像力を宇宙の限界にまで広げ、技術の進歩は電子の動きを徹底的に制御して、今や人類の計算能力はテラフロップ(毎秒1兆回の浮動小数点演算=筆者補足)単位になりました。

しかしながら加齢に伴う精神的、肉体的な低下を克服することは、人類の可能性の限界を広げようとする数々の努力、例えば100㍍の移動を10秒以下で行う試みと同様、あるいはそれ以上に人類の進化にとって大きな意義があります」

米国に旅立つ本庄さんと父は羽田空港でこんな約束を交わした。「人類の可能性の限界を1㍉でも広げよう」。父は今でも色紙にサインをする時は必ず「夢、いつまでも」と記す。親友同士は今でも身をもってそのときの約束を貫いている。

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