20年に及ぶブログ活動の集大成 → <a href=https://blog.goo.ne.jp/chorinkai/e/3d8eb22fad45ce7b19d6a60e8a70b7e7" target="_blank">★仏様の指
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東京裁判史観の虚妄を打ち砕き誇りある日本を取り戻そう!
そう願う心が臨界質量を超えるとき、思いは実現する
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■超拡散記事『石平氏の虚偽発言「帰化人第1世はやっぱり(選挙に)出ない方が良い』【「水間条項」国益最前線ブログ】
■超拡散記事『十倉経団連の「選択的夫婦別姓」は戸籍廃止を目論む中国政府の意向』【「水間条項」国益最前線ブログ】
■国内外に拡散宜しく『安倍晋三ファン必見10連発動画』
■超拡散記事『上限の無い特定技能外国人(移民)に認めるバス運転手・鉄道運転手に貴方の命を預けられますか!』
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又右衛門が居ずまいをただそうとするのを、庄九郎はおさえた。「おぬしは天下の岡部又右衛門ではないか。たかが一国の小守護が来たからといって、居ずまいをただす必要はない。わしは一代で死ぬ。おぬしの仕事は百世に残る。どちらが上か」。「さ、さいとうさま」と、又右衛門はこの一言で参ったようであった。むりもなかった。たれがいままで、この無名の若い工匠に「天下の岡部又右衛門」といってくれたか。
「国盗り物語(二)」
( 司馬遼太郎、新潮文庫、p282 )
やがて、酒宴をはじめた。ふたりのひざの前にころがっている肴(さかな)は、庄九郎がふところに用意してきた干魚である。香ばしくあぶられている。
「神人(じにん)殿。しかしおぬしはどこからみても、油売りの神人だな」
「そうさ。これでもむかしは、街道を歩いては油を売ってまわっていた」
「あ、それでは」
と、岡部又右衛門は身をのりだした。いかにもこの男が世間知らずでも、隣国の美濃の小守護様が、むかしは油売りだったという奇話は聞きおよんでいる。
「しかし、……まさか」
と、又右衛門は庄九郎の顔をじっと見た。
「そう、見つめるな」
庄九郎は、この男にしてはめずらしく照れた。相手の目が、あまりにあけっぴろげな好奇心にあふれていたからだ。
「まさか」
「いや、そのまさかの人間だ。斎藤秀竜という。見知りおかれたい」
「こ、これは、不調法つかまつった」
と、又右衛門が居ずまいをただそうとするのを、庄九郎はおさえた。
「おぬしは天下の岡部又右衛門ではないか。たかが一国の小守護が来たからといって、居ずまいをただす必要はない。わしは一代で死ぬ。おぬしの仕事は百世に残る。どちらが上か」
「さ、さいとうさま」
と、又右衛門はこの一言で参ったようであった。むりもなかった。たれがいままで、この無名の若い工匠に「天下の岡部又右衛門」といってくれたか。
「あ、あぶら売りどの。わしはいままで感激薄く生きてきた。いまお前様がわしひとりをめあてに、命がけで尾張に忍び参られ、しかも天下の、と申してくだされた。もはやこれだけで命も要らぬ。この絵図はお前様の城か。いや、そうであろう。わしは即夜、尾張を逃散(ちょうさん)して美濃へ行ってもよい。能のあるかぎりを出して手伝いまする」
「ありがたい」
と、庄九郎は絵図に灯を近づけ、「物足らぬところはないか」とたずねた。
「ある」
又右衛門は、山頂の西北麓(せいほくろく)につき出た高地を指でたたいた。そこに美濃では有数の古社といわれる伊奈波明神(いなばみょうじん)の社殿がある。
「これは目ざわりだな」
と、又右衛門はいった。
「ああなるほど、北に大手門を設けるとすると目ざわりでもあり、要害もわるい。さればさっそく移そう」
余人が聞けば、神威のおそろしさを知らぬ、と慄(ふる)えあがるような会話だが、二人は城作りの設計に夢中になってそれどころではないらしい。もっとも神仏などは人間の臆病(おくびょう)につけ入るものだ。この二ひきの鬼にかかっては、神のほうからへきえきして避けるかもしれない。
のち、庄九郎は伊奈波明神の当時の井ノ口洞(いのくちほら=現在の岐阜市内伊奈波町)に移して壮麗な社殿を営んでいる。
工匠の岡部又右衛門はその後、美濃に居つき、庄九郎の建築はほとんどかれの手でおこなわれた。
たとえば、庄九郎は、又右衛門に美濃可児(かに)郡兼山(かねやま)の鳥峰(からすみね)に、一城を建てさせた。
この城は後年、犬山に移され、その遺構はいま日本ラインの犬山城天守閣として残っている。
「百世に残る」
と庄九郎のいったことばは、あたったわけである。
なお、岡部又右衛門は、庄九郎の築城術を知っているということで、後年、信長の安土(あずち)城をも建てた。修辞ではなく、天下の岡部又右衛門になったわけである。
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又右衛門が居ずまいをただそうとするのを、庄九郎はおさえた。「おぬしは天下の岡部又右衛門ではないか。たかが一国の小守護が来たからといって、居ずまいをただす必要はない。わしは一代で死ぬ。おぬしの仕事は百世に残る。どちらが上か」。「さ、さいとうさま」と、又右衛門はこの一言で参ったようであった。むりもなかった。たれがいままで、この無名の若い工匠に「天下の岡部又右衛門」といってくれたか。
「国盗り物語(二)」
( 司馬遼太郎、新潮文庫、p282 )
やがて、酒宴をはじめた。ふたりのひざの前にころがっている肴(さかな)は、庄九郎がふところに用意してきた干魚である。香ばしくあぶられている。
「神人(じにん)殿。しかしおぬしはどこからみても、油売りの神人だな」
「そうさ。これでもむかしは、街道を歩いては油を売ってまわっていた」
「あ、それでは」
と、岡部又右衛門は身をのりだした。いかにもこの男が世間知らずでも、隣国の美濃の小守護様が、むかしは油売りだったという奇話は聞きおよんでいる。
「しかし、……まさか」
と、又右衛門は庄九郎の顔をじっと見た。
「そう、見つめるな」
庄九郎は、この男にしてはめずらしく照れた。相手の目が、あまりにあけっぴろげな好奇心にあふれていたからだ。
「まさか」
「いや、そのまさかの人間だ。斎藤秀竜という。見知りおかれたい」
「こ、これは、不調法つかまつった」
と、又右衛門が居ずまいをただそうとするのを、庄九郎はおさえた。
「おぬしは天下の岡部又右衛門ではないか。たかが一国の小守護が来たからといって、居ずまいをただす必要はない。わしは一代で死ぬ。おぬしの仕事は百世に残る。どちらが上か」
「さ、さいとうさま」
と、又右衛門はこの一言で参ったようであった。むりもなかった。たれがいままで、この無名の若い工匠に「天下の岡部又右衛門」といってくれたか。
「あ、あぶら売りどの。わしはいままで感激薄く生きてきた。いまお前様がわしひとりをめあてに、命がけで尾張に忍び参られ、しかも天下の、と申してくだされた。もはやこれだけで命も要らぬ。この絵図はお前様の城か。いや、そうであろう。わしは即夜、尾張を逃散(ちょうさん)して美濃へ行ってもよい。能のあるかぎりを出して手伝いまする」
「ありがたい」
と、庄九郎は絵図に灯を近づけ、「物足らぬところはないか」とたずねた。
「ある」
又右衛門は、山頂の西北麓(せいほくろく)につき出た高地を指でたたいた。そこに美濃では有数の古社といわれる伊奈波明神(いなばみょうじん)の社殿がある。
「これは目ざわりだな」
と、又右衛門はいった。
「ああなるほど、北に大手門を設けるとすると目ざわりでもあり、要害もわるい。さればさっそく移そう」
余人が聞けば、神威のおそろしさを知らぬ、と慄(ふる)えあがるような会話だが、二人は城作りの設計に夢中になってそれどころではないらしい。もっとも神仏などは人間の臆病(おくびょう)につけ入るものだ。この二ひきの鬼にかかっては、神のほうからへきえきして避けるかもしれない。
のち、庄九郎は伊奈波明神の当時の井ノ口洞(いのくちほら=現在の岐阜市内伊奈波町)に移して壮麗な社殿を営んでいる。
工匠の岡部又右衛門はその後、美濃に居つき、庄九郎の建築はほとんどかれの手でおこなわれた。
たとえば、庄九郎は、又右衛門に美濃可児(かに)郡兼山(かねやま)の鳥峰(からすみね)に、一城を建てさせた。
この城は後年、犬山に移され、その遺構はいま日本ラインの犬山城天守閣として残っている。
「百世に残る」
と庄九郎のいったことばは、あたったわけである。
なお、岡部又右衛門は、庄九郎の築城術を知っているということで、後年、信長の安土(あずち)城をも建てた。修辞ではなく、天下の岡部又右衛門になったわけである。