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火事場泥棒の政策――東谷暁・ジャーナリスト
【「 今日の突破口 」産経新聞(2012/11/14) 】
いよいよ野田佳彦政権は追い詰められて、解散・総選挙に向かわざるを得なくなっている。ところが、ここにきて政策案の推進が急に活発になっているのだ。
解散すれば政権を失うことは確実なので、政権の座にあるうちに「駆け込み」で政策を進めておこうとの思惑と思われるが、いまの異様に低い支持率で政策に正当性が得られるわけがない。
たとえば、電力の「発送電分離」だが、この7日に経済産業省の「電力システム改革専門委員会」が再開して、電力会社の分社化による発電と送電の分離を推進するとの方針を強く打ち出している。
発送電分離は小泉純一郎政権のときに急浮上しながら、電力の安定供給の観点から否定されたものだ。それが、福島第1原発事故があってから登場した、東京電力の解体論に便乗するかたちで、急に注目されるようになった。しかし、原発事故といまの発送電一体の電力システムとの間には、なんら因果関係はない。
この点については、電力の発送電分離を主張する有力な論者ですら、「どさくさにまぎれて発電と送電の分離を進めるといった火事場泥棒てきな発想はよくない」と認めながら、それでも「電力自由化を進めるまたとないチャンス」だと論じているほどなのである。あまりに筋の悪い議論というしかない。
政権がもう終わりだというのに、発送電分離論が再浮上した背景には、経産省内の発送電分離派の復活がある。彼らはいま野田政権を駆り立てて推進しておかないと、自民党政権ができてからでは話が面倒になると踏んで、「いまのうちに」と、あわただしく動いているのだ。
もうひとつ、「駆け込み」で「火事場泥棒的」な動きを見せているものに、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加表明がある。野田首相はすでに参加表明を決意したといわれ、表明すれば民主党の分裂は必死だと報道されている。
しかし、いかにオバマ大統領が再選を果たしTPP戦略の継続が見込まれるといっても、クリントン国務長官は辞任する意向だといわれ、TPPを推進してきた中心人物、USTR(米通商代表部)のカーク代表もすでに辞任を決めている。
昨年の今ごろ、日本が早く入らないと取り残されると経産省や外務省はあおっていたが、TPP交渉はいまも停滞して、9月の参加国による総会では何も決まらず、今年中の参加国同意も絶望的だと米国の高官が認めている。そもそも総会で何か決めようにも、個々の国同士の2国間協定すら進展していないのだ。
米国国内ですら、自動車業界による日本参加反対だけでなく、政府によるTPP交渉の秘密主義が専門家や上院議員たちに激しく批判され、オバマ大統領による政治献金本位の例外品目選定が「ダブルスタンダード」として非難されている。
何も今あわてて参加表明する必要などないのだ。それなのに民主党分裂の危険も顧みず参加表明が推進されているのは、政治主導というより官僚主義だからに他ならない。
こんな「火事場泥棒」を許してしまえば、次の新しい生嫌悪とんでもない重荷になるだけでなく、日本の将来にとっても巨大な禍根を残すことになる。
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火事場泥棒の政策――東谷暁・ジャーナリスト
【「 今日の突破口 」産経新聞(2012/11/14) 】
いよいよ野田佳彦政権は追い詰められて、解散・総選挙に向かわざるを得なくなっている。ところが、ここにきて政策案の推進が急に活発になっているのだ。
解散すれば政権を失うことは確実なので、政権の座にあるうちに「駆け込み」で政策を進めておこうとの思惑と思われるが、いまの異様に低い支持率で政策に正当性が得られるわけがない。
たとえば、電力の「発送電分離」だが、この7日に経済産業省の「電力システム改革専門委員会」が再開して、電力会社の分社化による発電と送電の分離を推進するとの方針を強く打ち出している。
発送電分離は小泉純一郎政権のときに急浮上しながら、電力の安定供給の観点から否定されたものだ。それが、福島第1原発事故があってから登場した、東京電力の解体論に便乗するかたちで、急に注目されるようになった。しかし、原発事故といまの発送電一体の電力システムとの間には、なんら因果関係はない。
この点については、電力の発送電分離を主張する有力な論者ですら、「どさくさにまぎれて発電と送電の分離を進めるといった火事場泥棒てきな発想はよくない」と認めながら、それでも「電力自由化を進めるまたとないチャンス」だと論じているほどなのである。あまりに筋の悪い議論というしかない。
政権がもう終わりだというのに、発送電分離論が再浮上した背景には、経産省内の発送電分離派の復活がある。彼らはいま野田政権を駆り立てて推進しておかないと、自民党政権ができてからでは話が面倒になると踏んで、「いまのうちに」と、あわただしく動いているのだ。
もうひとつ、「駆け込み」で「火事場泥棒的」な動きを見せているものに、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加表明がある。野田首相はすでに参加表明を決意したといわれ、表明すれば民主党の分裂は必死だと報道されている。
しかし、いかにオバマ大統領が再選を果たしTPP戦略の継続が見込まれるといっても、クリントン国務長官は辞任する意向だといわれ、TPPを推進してきた中心人物、USTR(米通商代表部)のカーク代表もすでに辞任を決めている。
昨年の今ごろ、日本が早く入らないと取り残されると経産省や外務省はあおっていたが、TPP交渉はいまも停滞して、9月の参加国による総会では何も決まらず、今年中の参加国同意も絶望的だと米国の高官が認めている。そもそも総会で何か決めようにも、個々の国同士の2国間協定すら進展していないのだ。
米国国内ですら、自動車業界による日本参加反対だけでなく、政府によるTPP交渉の秘密主義が専門家や上院議員たちに激しく批判され、オバマ大統領による政治献金本位の例外品目選定が「ダブルスタンダード」として非難されている。
何も今あわてて参加表明する必要などないのだ。それなのに民主党分裂の危険も顧みず参加表明が推進されているのは、政治主導というより官僚主義だからに他ならない。
こんな「火事場泥棒」を許してしまえば、次の新しい生嫌悪とんでもない重荷になるだけでなく、日本の将来にとっても巨大な禍根を残すことになる。
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