孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

冬の悪天候で増える難民犠牲者「空爆で死ぬよりはましだ」 なかでも子供の犠牲者が増加

2016-02-10 22:02:41 | 難民・移民

(マケドニアから国境を渡りセルビアの雪に覆われた平原を歩く難民(2016年1月18日撮影)。【2月8日 AFP】)

【「海で溺れ死にする危険があるのはわかっていたが、空爆で死ぬよりはましだ」】
シリアなどから欧州を目指す難民らの問題は、依然として厳しく、冬の寒さのなかで深刻さを増しているとも言えます。受入国側の対応も冷え込む一方です。
(1月24日ブログ「寒波にも増して凍りつく難民をめぐる政治の雰囲気」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160124

海でも・・・・

****トルコ沖で移民船が転覆、子ども含む37人水死****
トルコ沖で30日、移民らを乗せてギリシャのレスボス島に向かっていた船が転覆し、トルコの沿岸警備隊はこれまでに女性や子どもたち37人の遺体を収容した。船には欧州を目指すシリアやアフガニスタン、ミャンマーからの移民らが乗っていた。

現地のAFPカメラマンによると、トルコ北西チャナッカレ県アイワジュック近くの海辺に打ち上げられた遺体のなかには幼い子どものものもあるとされ、昨年9月にトルコの海岸に水死体となって打ち上げられたシリア移民の男児、アイラン・クルディ君を思い起こさせるという。(中略)

欧州を目指す移民・難民らの水死は増加傾向にあり、国際移住機関(IOM)によれば2015年には、約4000人が死亡している。

さらにIOMは29日、2016年に入ってからの28日間で、すでに244人が水死、陸地に到達してからも、少なくとも10数人が死亡していると発表した。【1月31日 AFP】
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今月8日にも同じようなルートで密航を試みた船が沈没し、少なくとも子ども11人を含む24人が亡くなっています。

例年なら冬の悪天候から密航は途絶えるのですが、シリアでの戦闘が激しさを増し、受け入れ側のEUで門戸を閉すのではないかとの懸念が難民らの間で高まっていることから、悪天候を押して密航を試みる人々が絶えず、結果、犠牲者も増加しています。

すでに欧州に渡った家族や親族に呼び寄せられたケースが増えているため、幼児・赤ちゃんなどの犠牲者が増加しているとも。

「海で溺れ死にする危険があるのはわかっていたが、空爆で死ぬよりはましだ」(シリア北部アレッポから妻子と逃げて来たという男性)【2月10日 朝日より】

シリアのアレッポ周辺から押し寄せる難民について言えば、すでにトルコ国境の段階で足止め状態にあります。

****国連、トルコに国境開放を要請 シリア避難民殺到で****
内戦が続くシリアで、政府側部隊の猛攻により北部アレッポ県から多数の避難民がトルコとの国境付近の仮設キャンプに殺到している問題で、国連(UN)は9日、トルコに対し避難民に国境を開放するよう要請した。同時に、ロシアなどによるアレッポ県での空爆の停止も求めた。

シリア第2の都市アレッポ市一帯では、ロシアによる空爆支援を受けて政府側部隊が攻勢を強めており、反体制派が掌握している市東部に迫っている。

国連によると、一帯からは先週以降最大で3万1000人が避難した。しかし、同市の北にある主要な国境検問所は9日も閉鎖されたままで、女性や子どもを含む大勢の人々がテントや野外で寝泊まりすることを余儀なくされている。
 
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のウィリアム・スピンドラー報道官は「われわれはトルコに対して、危険を逃れ国際社会の保護を求めているすべてのシリア市民に国境を開くよう要請している」と述べた。

一方、国連のスティーブン・オブライアン緊急援助調整官(人道問題担当国連事務次長)は、ロシア軍による対アレッポ空爆を中止すべきかという質問に「最も必要とされている最上の人道的対応は空爆の停止だ」と答え、あらゆる空爆をやめる必要があると訴えた。【2月10日 AFP】
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EUは、トルコが欧州への難民流入抑制で協力する見返りに、トルコ国内にとどまるシリア難民の生活向上などに30億ユーロ(約3900億円)規模の援助を行うと約束してはいますが、トルコなどシリア周辺国の受入能力も限界にきています。

難民らの犠牲は陸でも・・・・

****冬の寒さで移民女性2人死亡、ブルガリア山間部*****
ブルガリアの山間部で、移民の女性2人が寒さのため死亡した。ルミアヤ・バチュバロバ内相が7日、民放テレビ局bTVに明らかにした。欧州への移民・難民の流入は、厳しい冬の寒さの中でも続いている。

死亡した女性たちは、子ども11人を含む19人の移民グループに属しており、ブルガリア南東部の町マルコ・タルノボ近郊で国境警備隊に発見された。国籍は不明。チュバロバ内相によれば、国境警備隊が2人の救命を試みたが助けられなかったという。

この地域は、強風や約30センチの降雪、氷点下の気温といった冬の厳しい気象条件に見舞われていた。

内務省の声明によると、死亡したのは14~16歳の少女と30~40代の女性。
病院関係者は通信社フォーカス(Focus)に対し、この移民の一団に加わっていた4~16歳の子ども全員が凍傷のため病院に運ばれたと語った。また、大人2人が重体だという。

ブルガリアでは先月にも、寒さのため死亡したとみられる男性2人の遺体がセルビアとの国境に近い山間部で見つかっている。【2月8日 AFP】
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【「逆流」を恐れて国境管理を強化する通過国 迷走するEU
受け入れ側の対応は厳しさを増しています。

****逆流」恐れ、強まる国境管理****
大半の難民らはギリシャからバルカン半島を北上し、他のEU加盟国を目指す。だが、行く先々で受け入れは厳しさを増す。

昨年は約16万件の難民申請を受け入れたスウェーデンが今年に入って国境管理を強化。難民申請ができる国は事実上、1月からドイツとオーストリアの2カ国だけとなった。東欧など難民が通過してきた国々は「逆流」を恐れている。

ギリシャに上陸した人々が最初に通るEU域外のマケドニアもその一つ。昨年11月からシリア、アフガニスタン、イラク人以外の入国を認めなくなった。EU加盟国が「紛争地出身」とみなさない可能性の高い人の滞留を防ぐためだ。

国境では2重に書類の真贋(しんがん)をチェック。1月は連日千~3千人が国境通過を申請し、その1割前後がギリシャ側に戻された。

マケドニア内務省のアナスタジア・イリエスカ担当相は「我々が望んだわけではない」と強調する。EUが就労目的の移民を排除する姿勢を強めるなか、自国を通過する人々を選別せざるを得ないという。

通過国が難民らの通過を認めるのは欧州の受け入れが前提だ。スロベニアなどは、ドイツやオーストリアが難民の入国を制限すれば直ちに難民に対し国境を閉鎖することを明言する。

 ■EU迷走、受け入れ国に逆風
難民危機をめぐり、EUは迷走を続けている。

EUは昨秋、計16万人の難民受け入れを分担し、ギリシャの島に「ホットスポット」と呼ばれる登録所の設置を決めた。想定していたのは、上陸直後に就労目的の移民を排除し、保護が必要な難民だけを引き受けるしくみだ。

だが今も、ドイツなどを目指す人々はギリシャを素通りしているのが実態で、ホットスポットはほとんど機能していない。EUがこれまでに引き受けた総数は約500人にとどまる。

ハンガリー、ポーランドなど東欧のEU加盟国は受け入れを拒み続ける。EUの足並みが乱れるなか排外主義が高まり、各国は支援を減らすなど個別に流入を減らす措置を取り始めた。

難民にとって「最後の受け皿」も対応に苦慮。オーストリアは昨年、前年の3倍にあたる約9万件の難民申請を受理した。だが、地方選で排斥を訴える右翼政党が躍進。ファイマン首相は受け入れ数の削減を約束せざるを得なくなった。

一方、最大の受け入れ国であるドイツでも、州や自治体の保護施設がパンク寸前の状態だ。メルケル首相は、難民の受け入れに上限を設けるよう求める与党内の圧力に何とか抗しているが、閣内からも「世界に友好的な顔を見せるだけではどうにもならない」(ドブリント運輸相)と批判があがるようになった。【2月10日 朝日】
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高まる移民排斥
こうした欧州各国の対応の背景には、国内で高まる難民らへの反感があります。

****欧州各地で反難民デモ=反イスラム団体企画****
中東などからの難民らの流入に反対するデモが6日、欧州各地で行われた。ドイツ・メディアによると、独東部ドレスデンやチェコの首都プラハ、英バーミンガムなど10都市以上で、参加者が気勢を上げた。

ドレスデンでデモを続ける反イスラム団体「ペギーダ」が企画し、各地の右派組織などが呼応した。ドレスデンのデモには数千人が参加し、「国境の封鎖を」「故郷を守ろう」と訴えた。同市では、難民支援に賛成する市民らの大規模な対抗デモも行われた。

AFP通信によると、フランス北部カレーでは、当局の禁止命令を無視して開かれた反難民集会の参加者に警官が催涙ガスを放ち、約10人を拘束した。【2月7日 時事】
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****難民施設襲撃を計画、ポーランド人14人逮捕 スウェーデン****
北欧スウェーデンの警察当局は9日、難民申請者の収容施設への襲撃を計画していた疑いで、ポーランド人の極右活動家14人を逮捕したと発表した。容疑者の車からはおのやナイフ、鉄パイプが見つかったという。

警察発表によると、首都ストックホルムの南約60キロに位置するニュネスハムンの収容施設に対する襲撃計画の情報提供を受け、容疑者らは8日に逮捕された。

地元日刊紙アフトンブラデットは、容疑者の一部はスウェーデン国内で就労、居住していると伝えている。

ストックホルム中心部では先月、フーリガンもしくはネオナチとみられる覆面の男数十人が移民の若者に対する襲撃を呼び掛けるパンフレットを配布する出来事があった。警察は逮捕した14人のうち3人がこの配布にもかかわっていたとみている。

人口980万人のスウェーデンは昨年、難民認定申請者約16万3000人を受け入れており、国民1人当たりの受け入れ率は欧州連合(EU)諸国の中でも最高水準にある。【2月10日 AFP】
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政治的に追い込まれるメルケル首相
最大の受入国ドイツ・メルケル首相も流入抑制方向へ政策転換を余儀なくされています。特に、昨年末大晦日のケルン等での集団暴行事件が世論の方向を大きく変えました。

****<独首相>難民抑制策 暴行事件後、流入反発の世論拡大*****
昨年大みそかのケルン集団暴行事件以降、中東などからの難民流入に反発する世論が拡大するドイツで、受け入れを進めてきたメルケル首相が相次いで流入抑制策を打ち出している。一方で国内の難民収容施設が攻撃される事件が発生し、極右によるテロの恐れが現実味を帯びてきた。

ドイツの与党保守派では、難民受け入れ上限の設定や国境閉鎖などの即効策を求める声が拡大している。このためメルケル氏も30日の党支部大会で、「シリアに平和がもたらされ、イラクで過激派組織『イスラム国』(IS)を破れば、難民は故郷に帰るだろう」と言明。1990年代の旧ユーゴスラビア紛争終結後、難民の7割が帰国した例を挙げ、受け入れ政策への理解を求めた。

メルケル氏は28日の与党3党党首会談で、ケルンの事件で容疑者の出身国として挙がったモロッコ、アルジェリア、チュニジアの3カ国を「安全な送り出し国」に指定し、送還の迅速化を目指すことに合意した。また、難民条約の適用対象外ながら、身の危険などから滞在許可が出された人については、2年間家族を呼び寄せることを禁止することでも合意。急速な流入増に歯止めをかける目的で、近く関連法案が閣議決定される。

また27日には、犯罪を起こした難民を送還しやすくする法改正案を閣議決定した。議会承認を経て成立すれば、殺人や傷害、性的暴行などで禁錮1年以上の判決を受けた難民申請者は、執行猶予の有無に関わらず原則強制送還できるようになる。これまでは禁錮2年以上が対象だった。

一方で難民104人が滞在する南部バーデン・ビュルテンベルク州の一時収容施設に29日未明、手りゅう弾が投げ込まれた。爆発は起こらず、けが人も出なかったが、独メディアは「難民への暴力が新たな局面を迎えた」と報じている。【1月31日 毎日】
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ドイツでは3月30日には、バーデン・ヴュルテンベルク、ラインラント・プファルツ、ザクセン・アンハルト三州で、州議会選挙が行われます。この選挙前に受け入れ上限を設定する更に大きな政策転換をするか、そうでなければ「引責辞任」を迫られる・・・・との見方すら出ています。

****独メルケル首相の「退陣」濃厚****
「難民問題」EUの漂流が本格化

ヨーロッパを指導してきたアンゲラ・メルケル独首相に、退陣の時が近づいた。

「難民受け入れ」政策で、世界の共感を集め、昨年末には各国紙誌の「今年の人」に選ばれてから、わずか一カ月あまり。

難民・移民たちの奔流に、与党のドイツキリスト教民主同盟(CDU)、同社会同盟(CSU)、大連立を組む社会民主党(SPD)から四面楚歌に陥った。

退陣時期については「三月末まで」を示唆する声もある。ユーロ危機や難民危機で、欧州の大黒柱である「ドイツ国民の母」は、移動の自由を定めたシェンゲン協定が崩壊していくのを目の前で見ながら、一時代の幕引きに向かっている。(後略)【選択 2月号】
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メルケル首相の「難民受け入れ」策の誤算としては、次の4点が指摘されています。

第一は、「難民受け入れを、EUで分担する」という構想の頓挫
第二は、難民流入の「蛇口」(トルコ・ギリシャでの対応)をふさぐ政策のもたつき
第三は、シリア安定化のシナリオが消えたこと
最も深刻なのが、シェンゲン協定の形骸化 
“実はメルケル首相が「難民上限設定」を言えないのも、ここに理由がある。ドイツが「上限」を設けたとたんに、国境審査を復活せざるを得ない。それは瞬時に、周辺国に検問復活のドミノをもたらす。メルケル首相は、EUの移動の自由の最後の砦になってしまったのだ。”【選択 2月号】

メルケル首相がそうそう簡単に退陣に追い込まれるとも思えませんが、厳しい政治状況にあることは間違いありません。

欧州に入った後に行方不明となる子供たち
「出口」が見えないなかで(最初に行うべきことは、何にもまして、シリア停戦でしょう。アサド大統領がどうこうといった、これまでの政治的しがらみを切り捨てでも・・・・)、問題点の羅列ばかりになってしまいますが、最後にもうひとつ。

先述のように、最近は子供の難民らが増加していますが、欧州に入ったのちの行方がわからなくことが多いとか。密航業者と、難民らを性的に搾取したり奴隷としたりする人身売買組織との結びつきを示す証拠も挙がっています。

****欧州入り目指す難民らの3割以上が子ども、ユニセフ警告****
国連児童基金(ユニセフ)は4日までに、エーゲ海経由などでトルコからギリシャへの渡航を試みるシリアなど中東や北アフリカ諸国の難民や移民らの3分の1以上を子どもが占めているとの現状を報告した。女性の増大も指摘した。

半年前と比べ子どもや女性が大半を占める状況は異変と指摘。半年前は難民らの70%は男性で、10人のうちの1人のみが保護者のいる子どもだったという。

欧州への流入が依然続く難民らの問題担当のユニセフ特別調整官は、子どもや女性の増大は冬期に天候が荒れる海上でのリスクの高まりを意味し、上陸した陸地での保護策拡充も迫られると指摘した。

国際移住機関(IOM)は先月、トルコからギリシャへ海路での入国を図る最中に水死した5人に1人が子どもだったと報告。先週も地中海でボートが転覆し、24人が死亡したが、うち10人が子どもだった。

欧州入りを目指す難民らの多数はトルコからギリシャへの渡航ルートをたどる。IOMによると、このルートでは昨年、計3811人が命を落としていた。

欧州連合(EU)の欧州警察機構(ユーロポール)は最近、同行者なしで欧州に入った最大1万人の子どもの行方がわからなくなっている可能性があるとの報告書を公表。密航業者らの搾取や虐待に遭っていることへの懸念を示した。

一方、生命の危険を賭して海路で欧州を目指す難民らの数が減速する兆しはまだない。IOMによると、欧州諸国にたどりついた難民らは昨年通年で100万人以上。今年の最初の28日間における人数は推定で5万5000人以上となっている。この過程で死亡したり行方不明となったのは366人。

この中でユニセフは国際社会に対し女性や子どもの保護を最優先課題にするよう要請。付き添いのいない子どもの最善の利益を考慮した措置を何らかの行動を起こす前に講じるようにすべきだと訴えた。【2月4日 CNN】
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