孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アフリカ諸国の混迷  ブルンジ・南スーダン・ナイジェリア・ブルキナファソ

2016-02-02 23:16:43 | アフリカ

(ブルンジの騒乱 【2015年8月12日 VICE NEWS】)

ブルンジ:AUの平和維持部隊派遣は見送り
いつも言うように、ニュースとなるのは大体「悪い話」で、「良い話」は話題となりにくいということがありますので、報じられていることだけでイメージすると、実際の姿から乖離したものにもなりがちです。

アフリカについても、報じられるのは内戦、テロ、貧困、飢餓・・・といった話ばかりですが、アフリカは世界で最も経済成長率が高く、急速に変化している地域でもあります。

ただ、それにしても・・・・ということで、今日も「悪い話」の方です。

昨年12月18日ブログ「混迷を続ける中部アフリカ諸国・・・・中央アフリカ、コンゴ、ブルンジ」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20151218でも取り上げたブルンジ。

多くの武装集団が跋扈するコンゴ民主共和国の東側に接する小国ブルンジは、昨年7月に憲法規定の独自解釈で3選を決めたヌクルンジザ大統領の去就を巡り、当局と反大統領派の市民が衝突を繰り返し、不穏な情勢となっています。

国連等が危惧しているのは、現在の政治危機が、かつてのフツ・ツチの衝突という悲劇を再燃させかねないということです。国際社会には隣国ルワンダでの同様の大虐殺を放置してしまった苦い経験があります。

****国連安保理各国代表 混乱続くブルンジ訪問へ****
アフリカ中部のブルンジで、政治の混乱が民族間の対立に発展することが懸念されることから、日本を含む国連安全保障理事会の各国の代表が現地を訪れることになり、大統領らと会談して、混乱に歯止めをかけたい考えです。

ブルンジでは去年、ヌクルンジザ大統領と対立する軍の一部がクーデターを図ったのをきっかけに、大統領派と反大統領派との衝突が続いて、国連によりますと、これまでに400人以上が死亡し、22万人以上が難民として周辺国に逃れています。

さらに、大統領の出身母体である多数派のフツ族と少数派のツチ族との間でも緊張が高まり、20年以上前に隣国のルワンダでフツ族がツチ族を大虐殺した当時のような民族間の対立に発展することも懸念されています。

このため、国連安全保障理事会の各国の代表が、21日からブルンジの首都ブジュンブラを訪れ、ヌクルンジザ大統領らと会談することになり、事態の収拾に当たるよう働きかける方針です。
訪問団には、今月から安保理の非常任理事国を務める日本の岡村善文国連次席大使も参加しています。

安保理では、かつてルワンダでの大虐殺を防げなかった教訓から、ブルンジの現状を放置すれば事態が急速に悪化しかねないという危機感が広がっていて、今回の訪問を通じてブルンジ政府に圧力をかけ混乱に歯止めをかけたい考えです。【1月21日 NHK】
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アフリカ連合(AU)も、平和維持部隊の派遣を含めて、危機回避に向けて動いています。

****ブルンジ危機の対応焦点=部隊派遣で表決へ―AU首脳会合****
アフリカ連合(AU)首脳会合が30日、2日間の日程でエチオピアの首都アディスアベバで開幕した。政情不安が続くブルンジ危機への対応が主要議題の一つ。

AUが計画する平和維持部隊の派遣をブルンジ政府は一貫して拒否しており、会合で打開策を見いだせるかが焦点となる。(中略)

AFP通信によると、開会式に出席した潘基文国連事務総長は、ブルンジ情勢に関して「最も緊急で真剣な対応が必要とされている。民間人が虐殺されるのを傍観している指導者たちは、責任を負わなくてはならない」と演説し、事態解決へ早期行動を迫った。

AUは昨年12月、事態沈静化に向け5000人規模の部隊派遣を発表し、ブルンジに受け入れを要請したが、同国は強く反対した。

AUは首脳会合で派兵の是非について表決を行う方針。当事国の同意なしで派遣を決めるのはAUで初の事例で、承認には3分の2の賛成が必要となる。【1月30日 時事】 
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アフリカ諸国には独裁・人権弾圧などの問題を抱える国が多く、他国の問題に関与するのに「腰が重い」ところがあります。財政的に苦しい国が多いことも腰を重くする理由となっています。

そのアフリカ連合(AU)が、当事国が同意していない平和維持部隊派遣を「表決」で決める・・・・AUにしては随分と思い切った対応で、本当だろうか?と思っていましたが、やはり平和維持部隊派遣は見送られたようです。

****ブルンジ問題で特使派遣へ=部隊派遣決定は見送り―アフリカ連合****
エチオピアで開かれているアフリカ連合(AU)首脳会合は31日、政情不安が続くブルンジへの平和維持部隊派遣をめぐる決定を見送り、協議継続へ特使を送る方針を決めた。ブルンジ政府が部隊受け入れを拒否したため。AFP通信が報じた。

首脳会合では部隊派遣に関する表決が予定されていたが、AU高官は記者団に「ブルンジ政府と話し合いを持ちたい」と述べ、協議のため「高位の代表団」を送る方針だと説明。その上で「(ブルンジを)侵略したり、攻撃したりする意思は全くない」とし、ブルンジ側が同意すれば将来的な派遣はあり得ると付け加えた。

ブルンジでは昨年4月以降、ヌクルンジザ大統領派と反大統領派が衝突し、400人以上が死亡するなど混乱が続いている。

AUは昨年12月、平和維持部隊派遣を発表したが、ブルンジ側は一貫して拒否。国連の潘基文事務総長は30日、首脳会合の開会演説で、部隊派遣を支持する考えを示すとともに、「(危機解決のため)行動が必要だ」と訴えていた。【2月1日 時事】
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まあ、そうでしょう。当事国の同意がなければ、政府軍との戦闘も想定されますから。

ただ、ジェノサイドの現実性が高まるようなら、放置もできません。
ブルンジの情勢が現在どうなっているのか・・・情報があまりありませんが、「高位の代表団」等の政治的働きかけと併せて、今後、危機が更に更に高まるようなら速やかな介入も辞さない用意も必要でしょう。

南スーダン:内戦でないがしろにされる住民の生命
内戦が続く南スーダンでは、和平協定が締結されたあとも衝突が止まず、混乱が収まる気配がありません。

****南スーダン 統一政府実現のめどたたず****
アフリカの南スーダンでは、政府軍と反政府武装勢力との間で和平協定が締結されたあとも各地で武力衝突が続いていて、統一政府を樹立するはずの期限であった22日を過ぎても実現のめどはたっておらず、多くの市民が飢えや命の危険にさらされています。

南スーダンでは、キール大統領が率いる政府軍と、前の副大統領を支持する反政府武装勢力との間で激しい武力衝突が続き、去年8月に和平協定が締結されたあとも各地で衝突が繰り返されています。

22日には、和平協定に基づいて統一政府を樹立する期限を迎えましたが、大統領側が一方的に州の数を増やし知事を任命したことに反政府勢力側が反発し、実現のめどはたっていません。

国連によりますと、南スーダンでは、2年におよぶ激しい武力衝突によって数千人が殺害され、240万人が家を追われるとともに、深刻な食糧危機が広がっています。

さらに国連人権高等弁務官事務所などによる21日付けの報告書では、戦闘に伴って、虐殺や、女性への性暴力が相次いでいるうえ、多数の子どもが少年兵として戦うことを強制されるなど、重大な人権侵害が起きていると指摘されています。

現地では、日本の陸上自衛隊も参加して国連のPKO=平和維持活動が展開していますが、国民をないがしろにして紛争が続くなかで、多くの人たちが飢えや命の危険にさらされています。【1月24日 NHK】
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内戦状態にあっては、住民の生命・生活は顧みられることはありません。
悲惨なニュースも。

****南スーダン軍、民間人50人をコンテナ詰めで窒息死させる****
2年にわたり内戦が続く南スーダンで、政府軍が民間人約50人を運搬用のコンテナに詰め込み窒息死させたと、停戦監視機関がアフリカ連合(AU)へ提出した報告書で明らかにした。

1月31日に公表された合同監視評価委員会(JMEC)の報告では、今回の虐殺を「ユニティ州における民間人殺害の懸念」と名付けて、政府軍および反政府軍双方の停戦協定違反の一例として挙げるとともに、「10月22日ごろ、約50人がコンテナの中で窒息死した。長引いた捜査の結果、その責任は政府軍に属する」と報告している。現時点で政府軍からの反応はない。

南スーダンでは金属製コンテナが仮設の刑務所としてしばしば用いられている。戦闘が起きているユニティ州北部では、日常的に気温が40度を超える。

報告書では他にもレイプや殺人、国連(UN)の運搬船の捕捉や略奪といった犯罪が挙げられている。

南スーダンでは昨年8月に和平協定が結ばれたにもかかわらず戦闘が続いており、書類上の和平交渉を気にも留めない複数の民兵部隊が、各地域の問題や復讐を動機として戦闘に加わる状況になっている。【2月2日 AFP】
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ナイジェリア:襲撃犯らは車やバイクで村に乗り付け、銃を乱射したり建物を焼き払ったり・・・・
イスラム過激派「ボコ・ハラム」との戦闘が続く西アフリカのナイジェリア。

****ボコ・ハラムが村を襲撃、85人死亡 ナイジェリア****
ナイジェリア北東部の村で1月30日夜、銃や爆発物で武装したイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」の戦闘員らによる襲撃があり、地元当局によると少なくとも85人が死亡した。

ナイジェリア北東部では1月末、これに先立って自爆犯による襲撃が2件相次ぎ、合計で少なくとも24人が死亡したばかりだった。

ナイジェリア軍の発表によると、今回襲撃に遭った村は北東部の主要都市マイドゥグリの北にあるダロリ。村は戦闘員らによって焼き払われ、住民らは村の外へ逃げ出した。

死者数は当初、50人とみられていたが、地元ボルノ州当局によると、これまでに75人の遺体が病院に搬送され、さらに10人の遺体が埋葬されたという。

一帯はイスラム教徒が住民の大半を占める。地元の指導者はAFPの取材に対し、「夜の礼拝を終えた直後、家の外に座っていたら銃声が聞こえ、数分後に襲撃犯が現れた」と証言。車で村に乗り付けた戦闘員らが発砲してきたため、多くの住民が村の外に逃げ出したと話した。朝になって村に戻ると、村全体が破壊されていたという。

ナイジェリア軍の報道官は、襲撃者らは複数のバイクと車2台で同村に乗り付けて発砲した後、家屋に放火し始めたと説明。女の自爆犯3人が当初、村民の間に紛れ込もうとしたが、制止されると自爆したという。【2月1日 AFP】
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“銃や爆発物で武装した襲撃犯らは、車やバイクで村に乗り付け、銃を乱射したり建物を焼き払ったりした”【2月1日 時事】・・・・映画などでよくみるシーンですが、まさに現実に起きています。

南スーダンにしても、ナイジェリアにしても、人々の命のなんと軽いことか・・・・。

【「飢餓ベルト」サヘル地域に住む最大4,100万人の若者が、教育と雇用機会の欠如により過激化の危険にさらされている
西アフリカのマリやブルキナファソでもイスラム過激派のテロが絶えません。

****ブルキナファソの高級ホテル襲撃、20人以上が死亡*****
西アフリカ・ブルキナファソの首都ワガドゥグで15日夜(日本時間16日早朝)、外国人らが宿泊する高級ホテルがイスラム過激派の武装勢力に襲撃された。

武装勢力は宿泊客を人質にとってホテルに立てこもり、駆けつけた治安部隊と銃撃戦になった。治安部隊は16日早朝、ホテル内に突入し、過激派4人を殺害、宿泊客らを解放した模様だ。

AFP通信などによると、宿泊客ら20人以上が死亡。30人以上が負傷した。犠牲者の国籍は十数カ国にわたるとみられる。国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)」が犯行声明を出した。(中略)

ブルキナファソでは2014年10月、27年間実権を握ったコンパオレ前大統領が市民の反政府デモを受けて退陣。昨年11月の大統領選挙で元首相が当選したばかり。

西アフリカでは昨年11月にも、ブルキナファソの隣国マリの首都バマコで高級ホテル「ラディソンブル」が武装集団に襲撃され、宿泊客ら約20人が死亡。アルカイダ系の武装勢力が犯行声明を出した。【1月16日 朝日】
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この襲撃事件について、コンパオレ治安相は1月16日、死者は29人、負傷者は約30人だと発表しています。

BBC放送などによれば、これまでにカナダ人6人、ブルキナファソ人5人、フランス人、スイス人各2人、オランダ人、米国人各1人などが各国政府により確認されたとのことで、犯人グループは欧米人を狙って殺害していたと伝えられています。

サハラ砂漠の南側に広がるサヘル地域(ブルキナファソ、チャド、モーリタニア、ニジェール、マリなど)には、最も貧しい国々が連なり、4100万人の若者が過激派に加わるリスクにあると言われています。

国連事務総長サヘル地域特使のイルーテ・ゲブレ・セラシは国連安全保障理事会に対して、サヘル地域の若者が「絶望に直面」し「大規模な移住や、テロ集団や個人の活動への勧誘、訓練の温床」となる危機にあると訴えています。【2015年11月27日 Newsweekより】

今回のホテル襲撃事件を機に、ブルキナファソと北の隣国マリは、この地域で活動を活発化させている武装グループとの戦いに共同で取り組むことになった、とロイターが報じています。

****マリ北部はテロ集団の温床****
両国が位置するサハラ砂漠南部のサヘル地域では、武装グループの脅威が増大している。北のサハラ砂漠と南の熱帯アフリカの間でアフリカを横断するこの一帯は、乾燥して食糧生産に向かないことから「飢餓ベルト」とも呼ばれる貧しい地域。

同地域を担当するイルーテ・ゲブレ・セラシ国連特使は2015年11月、サヘル地域に住む最大4,100万人の若者が、教育と雇用機会の欠如により過激化の危険にさらされていると警告した。

マリ北部は、数年前から武装グループの温床になっている。2012年に遊牧民のトゥアレグ武装勢力が自治拡大を求めて反乱を起こすと、AQIMなどの過激派勢力がこれに乗じてマリ北部の大部分を制圧。2013年にフランス軍に撃退された。

ブルキナファソのワガドゥグに到着したケイタは、マリは「こうした出来事を経験してきたし、今も経験し続けている」と語り、ブルキナファソと共に「テロとイスラム過激派と戦う」のがマリの義務だと述べた。

ブルキナファソのホテル襲撃事件では結局、フランス軍とアメリカ軍の支援を受けた治安部隊が犯行グループからホテルを奪還した。AQIMは1月18日に犯行声明を出し、この敗北を「地球規模のジハードという大海に落ちた水滴のようなもの」と表現した。

リスクコンサルタント会社「アフリカ・マターズ・リミテッド」で政治アナリストを務めるイマド・メスドゥアは、サヘル地域の国々が協調することは、武装グループに立ち向かう上で非常に重要であるものの、各国にどれだけ協力の政治的意志があるかどうかは不明だと語った。

「協調の掛け声はこれまでもずっとあった」と、メスドゥアは言う。「今回は正式に協調が表明されたが、それをどのように実行に移すかという具体的な内容はほとんど語られなかった」【1月19日 Newsweek】
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貧困の問題にしても、治安対策にしても、根底には当事国指導者の統治能力というか、なんとか改善しようという統治への意思の問題があります。アフリカ諸国にそれがないと言う訳ではありませんが・・・・。能力・意思を十分に発揮できない厳しい現実環境があるのでしょう。

****首相、アフリカ行脚へ 国連改革の味方作り/中国に対抗 8月に会議****
日本が主導し、アフリカ諸国が参加する第6回アフリカ開発会議(TICAD6)が8月、ケニアで開かれる。アフリカでの初開催で、安倍晋三首相も出席し、周辺国の訪問も検討する。中国がアフリカで影響力を強めるなか、日本の存在感を高める狙いがあるが、課題も多い。(後略)【2月2日 朝日】
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国連安全保障理事会の常任理事国入りを目指して支援国の獲得とか、中国との影響力競争とか・・・そういう話はともかく、混迷するアフリカ諸国の状況改善に日本が資することができればいいのですが・・・・。
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