孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  プーチン批判で長期勾留された女性バンド「プッシー・ライオット」、7年間の「流刑地」求刑

2012-08-03 22:12:27 | ロシア
【注】求刑内容については、その後の報道では“自由 剥奪 3年”【8月7日読売】となっています。(8月9日 追記)


路上パフォーマンスを繰り広げる「プッシー・ライオット」
赤の広場での、旗を振り、発煙筒をたいてのパフォーマンスは笑ってしまうぐらい圧巻です。プーチン大統領がキレるのも分かります。
若い女性の体を張ってのパフォーマンスというところにインパクトがあります。
“www.stern.de”より
http://www.stern.de/politik/ausland/prozess-gegen-punk-band-in-russland-pussy-riot-mitglieder-beschweren-sich-ueber-folter-1868632-video.html

強権支配色を強める復帰後のプーチン政権
再登場したロシア・プーチン政権は、デモ規制強化、インターネット規制強化、誹謗中傷や名誉毀損の罰則強化、NGOに対する外国資金規制強化など、政権批判勢力への締め付けを強化する変更を矢継ぎ早に実施しています。

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ロシアのプーチン大統領は8日、抗議デモなどでの違反行為に対する罰金の引き上げを柱とするデモ規制強化の改正法案に署名。同法案は9日、政府機関紙で公布され、発効した。
改正法は、デモ参加者に最大30万ルーブル(約73万円)の罰金などを定める。プーチン大統領は8日、英独伊などでのデモ規制法と比較し「それよりも厳しい条項は一つもない」と述べた上で、さらなる規制強化を行う可能性を示唆した。【6月10日 読売】
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ロシア議会は11日、不適切なウェブサイトをブラックリストに掲載するなどインターネット規制を強化する法案を可決した。与党・統一ロシアが推進する同法案については、以前から活動家らが懸念を示してきた。
あわせて同日の議会では、誹謗中傷や名誉毀損を犯罪行為とみなし、最大で禁錮5年の刑事罰を科すことを可能とする法案も可決された。【7月12日 AFP】
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ロシア上院は18日、外国から資金提供を受け、政治活動をしている非政府組織(NGO)を「外国の代理人」として扱い、監視を強化する改正法案を可決した。政権・与党は、一連の「反プーチン集会」を主導する野党勢力が欧米から多額の資金を得ているとみており、法改正で野党側の弱体化を図る狙いだ。【7月19日 朝日】
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大聖堂で「マリア様、プーチンを追い出して」】
復帰後のプーチン政権が強権支配色を強めるなかで、3月4日のロシア大統領選に先立つ2月21日にロシア正教会の大聖堂に侵入し、「マリア様、プーチンを追い出して」とプーチン批判の歌を演奏して拘束されている女性バンド「プッシー・ライオット」の扱いが注目を集めています。

バンドメンバー3名は裁判が開かれないまま4か月間勾留され続け、ようやく7月20日に開始された公判では、裁判官が来年1月までの勾留延長を認めています。
罪状は組織的集団行動によるフーリガン行為で、「流刑地」への7年間の収容が求刑されています。

****女性パンクバンド裁判が浮き彫りにしたプーチン政権とロシア正教の蜜月*****
2月、露モスクワのロシア正教会の大聖堂に5人の覆面女性が忍び込み外壁の上から演奏したのは、ウラジーミル・プーチン大統領を批判する歌だった。
女性ばかりのパンクバンド「プッシー・ライオット」の演奏は数分間しか続かなかったが、彼女たちの歌声は今後ロシアに何年も響き渡るだろう。

メンバーのうち3人は3月の大統領選の前に「フーリガン行為」の罪で逮捕され、裁判が開かれないまま4か月間勾留され続けてきた。今月20日にやっと開始された公判では、裁判官が早々に2013年1月までの勾留延長を認めた。

大統領に再び就任したプーチン大統領は、反政府的な活動に対する取り締まりを厳罰化する新法を成立させた。3人のメンバーには「流刑地」への7年間の収容が求刑されている。

■「厳罰」にかえって支持広がる
しかし、当局が最大限の厳罰を科そうとすることによって、無名だった「プッシー・ライオット」の名は逆に知れ渡った。その結果、世論がプーチン大統領とロシア正教会に不利な方向へと大きく傾く可能性を指摘する声もある。

露独立系調査機関レバダ・センターが今月行った世論調査では、公判を支持する人が36%だったのに対し、批判的に見る人は50%を超え、以前の調査よりも被告らに対する支持が広がっていることを示した。
6月には100人を超えるロシアの俳優や文化人が被告の釈放を求める公開書簡を発表。その中には大統領選でプーチン氏を支持した人々も連なっていた。ロシア国外でも英ミュージシャンのスティングや、米ポップバンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズらがこの問題を取り上げて発言している。

この事件は、大手石油企業だったユコスのミハイル・ホドルコフスキー元社長が反プーチン派を支持した後、横領などで有罪判決を受け、服役している状況と酷似してきた。「ホドルコフスキーの裁判よりも露骨で、大きいかもしれない」と被告の1人の夫は言う。

■プーチン政権とロシア正教会の蜜月時代
この女性パンクバンドをめぐる事件があぶり出したのは、ロシア正教会と政府の緊密な関係だ。「プッシー・ライオット」が歌った歌詞は、聖母マリアに「プーチンを追い出して」と願い、教会はプーチンではなく神を信じるべきだと皮肉った内容だった。

ロシア正教会の最高位、キリル総主教は、大規模な野外ミサを開いて事件を大きく取り上げ、バンドの女性たちが聖なる場を汚したと非難した。一方で検察当局は、起訴状で「冒とく的行為」や「正教徒に対する深い霊的な傷」といった宗教的な言語を用いた。
 
政治工学センターのアナリスト、アレクセイ・マカルキン氏は、次のように批判する。「教会は完全に政府に寄り添う姿勢を鮮明にした。反政府派と対立する立場にあると自認し、抗議行動は社会への脅威だと表明したのだ。政府は恩義さえ感じているだろう」

露非営利組織「ソバ情報分析センター」のアレクサンデル・ベルコフスキー所長は「ある意味、政府が教会を利用している」のだと説明する。ロシア正教会は広大な支持を集めることができる。前年11月、ギリシャからモスクワに聖遺物がやって来た際には300万人が集まり、5キロの列ができた。

■教会にはマイナス、でもプーチン氏には影響なし?
だが、最終的に正教会は敗者になるだろうとヴェルコフスキー氏は述べる。「この事件は正教会にとってマイナスになる。深く入り込んだことは、キリル総主教の大きな失敗だ」。マカルキン氏もこの事件が「教育を受けた人、現代的な人たちを教会から遠ざけている」と指摘する。

けれども、「プッシー・ライオット裁判」はプーチン大統領個人にはそれほど悪影響はもたらしていないともマカルキン氏は言う。というのもプーチン氏の支持者は、厳罰を積極的に支持しているか、単純に関心を持っていないかのどちらかだからだ。

「プッシー・ライオット」は以前、厳重警備の赤の広場(Red Square)でも政治的な抗議ソングを歌ったことがあるが、その時は罰金を科されただけだった。【7月30日 AFP】
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ニックネームしか明かさず目だし帽で覆面をして蛍光色のミニドレス姿で活動する「プッシー・ライオット」(メンバー8人)は、大統領選前の時期に赤の広場などモスクワ市内の公共の場所でプーチン氏の大統領復帰に抗議する即興演奏を盛んに行い、注目されるようになっていました。

検察当局は、起訴状で「反プーチン大統領、反政府的な活動」、「神への冒とく的行為」や「正教徒に対する精神的な苦痛を与えた」といった理由を挙げています。
一方、被告側は7月31日の公判で、拘留中寝ていないこと、食事を与えられていないことを訴え、また、10時間にもわたる公判で1度も飲食を許されず、トイレにも行かせてもらえなかったなどと、拷問を受けたと非難したと報じられています。【8月2日 サーチナニュースより】

世論を配慮して軟化、「厳しすぎる罰を与えるべきではない」】
前出記事にもあるように、世論は今回の強硬な対応に批判的で、そうした世論を配慮したようで、オリンピックでロンドン訪問中のプーチン大統領は「彼女たちの行いに対し厳しすぎる罰を与えるべきではない」との柔軟発言を行っています。

****プーチン露大統領、抗議ソングの女性バンドに「寛大な判決を****
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は2日、モスクワの大聖堂でプーチン政権を批判する歌を演奏して逮捕された女性パンクバンドの裁判について、厳罰を望まないとの考えを明らかにした。

報道によればプーチン大統領は訪問先の英国で、ロシアの女性バンド「プッシー・ライオット」のメンバー3人の抗議パフォーマンスについて「決して善行ではない」としつつも、「彼女たちの行いに対し厳しすぎる罰を与えるべきではない」と述べた。

3人の裁判をめぐるロシア国民の意見は割れており、世界を代表する音楽界の大物アーティストや西側諸国からの抗議の声も上がっている。こうした中、出されたプーチン大統領のコメントは、寛大な判決を提案するものであった。(中略)

プーチン大統領は、英ロンドンで行われたデービッド・キャメロン英首相との会談後に記者団の取材に答え、3人が「自分たちなりの結論を導き出し」、過ちから学ぶことを期待すると述べた。【8月3日 AFP】
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“政権が司法に影響力を持つ同国で公判の行方を左右する可能性がある”【8月3日 時事】とのことです。
“影響力”以上のものがあるように思えますが、それはともかく、強硬姿勢が無名の女性バンドを世界配信される反政権スターにしてしまったのは、プーチン大統領にとっても誤算だったのではないでしょうか。

政治事件における逮捕の指示が「プーチン氏から直接下されている」】
世論を気にしてか「プッシー・ライオット」には対応を緩めたプーチン大統領ですが、反汚職運動で著名なカリスマ弁護士のナバルニー氏が横領罪で起訴され、これも「プーチン氏から直接下されている」との指摘があります。

****ロシア当局、反プーチン運動指導者を横領罪で起訴****
ロシアの連邦捜査委員会は7月31日、ウラジーミル・プーチン露大統領を公然と批判するカリスマ的な反政権運動指導者のアレクセイ・ナバルニー氏(36)を横領の罪で起訴した。有罪となれば最大10年の禁錮刑が言い渡される。
連邦捜査委員会によると、2009年の地方政府高官による材木契約においてナバルニー氏が非公式な顧問として果たした役割が捜査の対象となっている。また、捜査中、ナバルニー氏がモスクワから出ることが禁止された。

反汚職運動でその名を知られた人気企業弁護士のナバルニー氏は、捜査当局者による聴取後に、青ざめた顔で記者団の取材に応じた。この聴取で、ナバルニー氏に対する罪状は、重大な経済犯罪に格上げされたという。
ナバルニー氏は、記者団に「何か完全におかしな、とても奇妙なことが起きた。というのも彼らは起訴の背後にあるストーリーをまるっきり変えてきたからだ。捜査当局者がこのストーリーを証明できるとは思えない。だがおそらくできるのだろう」と語った。

連邦捜査委員会はウェブサイトで、追加の「経済的な研究」により、ナバルニー氏が横領を行う犯罪集団を組織していたことがわかったとして、ナバルニー氏の罪状を最高刑禁錮5年の罪から最高刑禁錮10年の罪に変更したと発表した。
ナバルニー氏の弁護士Vadim Kobzev氏は、ロシアの司法関連通信社RAPSIに対し、「まるでナバルニー氏が禁錮7年を言い渡されるかのような様相だ」と語った。

3回目の大統領就任に抗議デモが相次いだプーチン氏は、活動家を投獄するために司法制度を利用しない考えを強調している。しかし独立系のDozhdテレビのインタビューに応じたナバルニー氏は、政治事件における逮捕の指示が「プーチン氏から直接下されている」ことは間違いないと指摘した。

またナバルニー氏は、モスクワで5月6日に行われた大規模な反政権デモを組織した罪にも自分が問われる可能性があると述べた。同デモは機動隊とデモ隊の衝突に発展し、デモ後の捜査でこれまでに14人が拘束されている。【8月1日 AFP】
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