孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  制裁緩和で勢いづく経済開発 急増する外国企業進出 民主化との調和が必要

2012-08-28 23:22:59 | ミャンマー

(大量の札束を配送するヤンゴンの銀行の様子 “flickr”より By -AX- http://www.flickr.com/photos/axelrd/7766600884/in/photostream/
ミャンマーでは今年度から管理フロート制が導入されることになり、二重為替制度や闇為替市場がなくなるそうです。
10年前のミャンマー旅行では、入国時に200ドルをFEC(外貨兌換券)に強制的に両替させられたり(5年前の旅行ではもうなくなっていました)、ドアの覗き窓からチェックされてから入れてもらえるといった、怪しげな両替所で「大丈夫だろうか?」と不安を抱えながら両替したり・・・といった思い出もあります。)

【「アジアにおける次代の星になり得る」】
ミャンマーは、テイン・セイン大統領のもとで民主化に着手し、これまでの経済制裁の緩和によって急速な経済成長が期待されています。
順調に進めばアジア最貧国の現状を脱して、中所得国への移行もそう遠くないとか。

****ミャンマー:30年までに中所得国に移行…ADB報告書****
アジア開発銀行(ADB)は20日、東南アジア諸国連合(ASEAN)の最貧国であるミャンマーの経済改革が順調に推移すれば、2030年までに1人当たり国内総生産(GDP)が2000ドル(約16万円)以上の中所得国に移行するとの報告書を発表した。

ミャンマーは天然資源に恵まれ、中国やインドに隣接するなど地理的優位性を持つことから、ADBは「成長可能性は高く、アジアにおける次代の星になり得る」としている。
ミャンマーでは、欧米諸国の経済制裁などによる投資冷え込みが経済成長を阻害してきたが、民主化進展を受けた制裁緩和で外国企業の進出が急増している。〖8月20日 毎日〗
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そんなに順調に進むだろうか?・・・という疑問も感じましたが、最近の外国企業の進出はただならぬ勢いがあるようです。
“天然資源に恵まれ、中国やインドに隣接するなど地理的優位性を持つ”ことの他、圧倒的に低い賃金水準が進出企業にとっては魅力となっています。
一般労働者の月額基本給は、中国が536ドル、マレーシア・フィリピン・タイが300ドル前後、インドネシアが200ドル程度、ラオス・ベトナム・カンボジアが100ドル前後、これに対しミャンマーは68ドルだそうです。【8月28日 朝日より】
話がそれますが、中国の賃金水準上昇も注目すべきところです。

【「いまミャンマーは、えり好みできる立場にある」】
ミャンマー(旧ビルマ)とは以前から政治的・経済的に深い繋がりを持っていた日本ですが、2003年5月に民主化運動指導者スー・チーさんが拘束されて以降の状況を受けて、緊急性が高く人道的な案件を除き、新規ODAの実施を見合わせていました。
欧米の経済制裁や日本のODA抑制の結果、ミャンマー軍政は中国への依存を強めることにもなりました。

しかし、最近の民主化進展を受けて、欧米諸国の経済制裁緩和に先駆ける形で今年4月、テイン・セイン大統領来日の際に、過去の債権3000億円を放棄したうえで、25年ぶりにミャンマーへの円借款を本格的に再開することで合意しています。

ただ、“台頭する新・新興国の新星、ミャンマーには資金がなだれ込んでいる”という状況で、日本の支援・日本企業の進出も厳しい競争にさらされているようです。

****ミャンマー開発、難題抱える日本 アジア最後の未開拓地****
軍事独裁に区切りをつけ、民主化と開国に踏み出したミャンマーに、アジア有数の工業団地を造るプロジェクトが動き出した。官民一体で支援に乗り出した日本に、難題を突き付けるミャンマー政府。台頭する中国や韓国との競争が影を落としていた。

■「日本だけで無理なら中韓にも」
最大都市ヤンゴン市街から車で約1時間のティラワ地区。見渡す限り草地と水田が続く一帯を総面積2400ヘクタール、東京ドーム500個分という巨大工業団地に一変させる話が浮上したのは昨年10月だった。
ミャンマーを訪問していた元郵政相の渡辺秀央氏(現・日本ミャンマー協会会長)に、20年来の付き合いのテインセイン大統領が「日本が開発しませんか」と持ちかけた。渡辺氏は1980年代後半の官房副長官時代からミャンマーとの交流を続けていた。

日本政府はアクセルを踏んだ。電気や上下水道が整った経済特別区をつくれば、海外からの投資が増えて雇用が伸び、国民が民主化を強く支持するようになる。それは「日本企業の競争力強化のため」(経済産業省の村崎勉・戦略輸出交渉官)でもあった。日本は少子高齢化で国内市場は先細り。ならば、約6200万人の人口を抱え、労賃も割安なミャンマーを生産拠点にして東南アジアの成長力を取り込んでもらおうというわけだ。

4月には、円借款による債権約3千億円を放棄して新たな円借款を出す大盤振る舞いを決めた。開発を資金面からバックアップする狙いだ。両国の政府や企業で合弁会社をつくり、実際の工事は日本勢が手がけるという方向性も固まった。

ところが現地では「想定外」の事態が起きていた。日本側は過去の工業団地の開発経験から20年はかかるとみていた。ミャンマー側は違った。有力閣僚が「2015年までに全部整地され、工場が立ち並んでいてほしい」と繰り返していた。15年には総選挙が予定され、政権与党はアウンサンスーチー氏率いる野党との対決を迫られる。「日本だけで無理なら四つに分けて中国や韓国にもまかせる」との分割論が消えては浮かんでいた。

中国とインドに挟まれ、地政学的にも重要な「アジア最後の未開拓地」に、どの国も食い込みたがっていた。なかでもティラワ開発のプランを先にミャンマー政府に持ち込んだ中国や、29年ぶりの大統領のミャンマー訪問をテコに関係強化を図ろうとしていた韓国は強い関心を示していた。
前代未聞の「大突貫開発」の旗を降ろそうとしないミャンマー。日本では「開発の主導権をとれないなら円借款は出さない」(経産省幹部)とのいらだちが広がった。

■埋没恐れて巻き返し
地域でのパワーバランスの変化も日本をせき立てた。日本にとって東南アジア外交は「十八番」だった。1960年代以降、政府の途上国援助(ODA)をつぎ込み、政治面での協力関係も深めてきた。
90年代末から変化が起きた。デフレに苦しむ日本を横目に、中国は高成長を続けて地域各国との貿易が急増。「微笑外交」を展開し、地域での存在感が飛躍的に高まった。韓国は韓流ブームを追い風に文化面でも影響力を強めた。

そこに飛び込んできたのが「ミャンマー開国」だった。日本は、欧米の経済制裁とは距離を置いた付き合いをしてきた。「親日国のミャンマーが羽ばたこうとしているときに大きな役割を果たせないなら、日本は東南アジア外交で隅っこに追いやられる」(外務省幹部)。ミャンマー支援の柱、ティラワは日本外交の正念場でもあった。 (中略)

攻防は翌26日にようやく落ち着く。仙谷由人・民主党政調会長代行も加わった午前10時からのテインセイン大統領との会談で、大統領はあっさりと「他国からも話があるが、すべて日本にまかせる。15年までに400ヘクタールを優先的に開発してほしい」。前日のティンナインテイン氏の会談から急転直下の「満額回答」に、日本の出席者は高揚感に包まれたという。
ミャンマー政府高官は「最初から日本にすべてまかせたら、議会や国際社会から『なぜ日本にだけ?』と問われる」と釈明する。

翌27日、日本政府は関係省庁によるティラワ開発の作業チームを創設。事業には民間のほか国際協力機構や国際協力銀行なども加わる。官民挙げての国家プロジェクトがようやくスタート台に立った。
ただ、火種はくすぶる。日本政府関係者は「開発があまり進まなかったら分割論が再燃してもおかしくない」と指摘する。「いまミャンマーは、えり好みできる立場にある」(日本の大手商社幹部)

■資金、西から東へ
日米欧の先進国は低成長にもがき、欧州危機の震源地ギリシャからはマネーや人が逃げ出している。一方、台頭する新・新興国の新星、ミャンマーには資金がなだれ込んでいる。西から東へ、世界経済の重心は加速度的に移っている。

ヤンゴン北郊のミンガラドン工業団地。3年前まで閑古鳥が鳴いていたが、民主化の動きとともに台湾や韓国の企業が相次いで入り、今春までに全41区画が売り切れた。東南アジアの周辺国もミャンマーでの事業拡大を表明。米国のゼネラル・エレクトリック(GE)なども名乗りを上げている。日本勢は欧米の制裁に配慮して投資を控え、圧倒的に出遅れていたが、続々と進出準備に入った。

電力や道路などインフラは貧弱で、総選挙の結果次第では政治が不安定になる可能性もある。それでも、銀行業や建設業を手がける中国系実業家、サージ・パン氏は「だれもが予想できないスピードで改革が進んでいる。90年代に改革開放路線を推進した当時の中国に似ている」と言う。(後略) 【8月28日 朝日】
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求められる、民主化と調和した海外支援・海外企業進出
1989年~2012年3月に認可された外国投資累積額に占める割合で見ると、中国が34.27%で1位、次いでタイの23.51%、香港の15.5%となっています。これに対し日本は0.53%と1%未満。この数字は韓国の7.23%はもちろん、イギリス6.78%、フランス1.15%より少ない数字となっています。
経済制裁を行っていた英仏より少ないというのは、よくわかりません。

いずれにしても、殆んどゼロからの再スタートといったところです。
ミャンマーでは電力が絶対的に不足しており、停電が恒常化しています。5年ほど前にマンダレーを旅行したときは、通電時間帯より停電時間帯の方が長い状況でした。こうした電力や道路などのインフラ整備が今後の急務となっています。
また、軍部独裁や中国のなりふり構わない進出などのもとで広まった腐敗・汚職や縁故主義などの是正も、経済成長には不可欠です。日本などの経済援助・外国企業進出が一部特権階層を利する形となっては、ミャンマー民主化の阻害要因ともなります。

ミャンマー民主化については、全出版物の事前検閲廃止が報じられています。
“これまでは検閲があるため、日刊紙は国営3紙のみで、民間の新聞・雑誌は週刊や月刊に限られてきたが、今後は民間による日刊紙発行に道を開くことになる”【8月20日 朝日】
しかし、情報省による事後のチェックはるとのことで、完全な「報道の自由」が確保されたわけではないそうです。

****ミャンマー、全出版物の事前検閲廃止 「新報道法案」焦点に****
ミャンマー情報省は20日、全出版物の事前検閲を廃止した。政府はメディアの活動を厳しく規制し禁錮刑などの罰則を規定した、1962年の印刷・出版登録法に代わる「新報道法案」を準備中で、今後の焦点は法案の内容に移る。

政府はこれまで段階的に、芸術やスポーツ、ビジネスなど5分野、約200の定期刊行物の事前検閲を廃止してきた。これに加え今回、20日付で政治、宗教分野の86週刊紙、55の月刊誌についても廃止した。

軍事政権時代から厳しい言論統制国家として知られるミャンマーで、事前検閲が廃止されたことは画期的だといえる。だが、新聞などは刊行物を事後に、情報省の報道検閲登録局(PSRD)に提出し、チェックを受けることが義務づけられている。

従って、検閲そのものがなくなり、完全な「報道の自由」が確保されたわけではない。7月には週刊紙2紙が、テイン・セイン政権の閣僚交代の見通しを報じ、発禁処分を受けてもいる。
新報道法案は印刷・出版登録法を事実上、改訂した内容で、メディアの権利、義務、倫理、罰則などが規定されているという。【8月21日 産経】
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また、改革路線に弾みをつける方向での内閣改造も行われています。

****ミャンマー政権が初の本格改造 経済改革へ弾み狙う****
ミャンマーのテインセイン大統領は27日夜、内閣の一部改造を発表した。政権が最重要課題として取り組む経済改革や少数民族との和解を担当する4大臣を大統領府付の大臣とした。大統領直轄にすることで改革に弾みをつける狙いがあるとみられる。

昨年3月の民政移管後に発足したテインセイン政権にとって、初の本格的な改造。大統領府相に新たに就任するのは、フラトゥン財務、ソーテイン工業、ティンナインテイン国家計画経済開発の各大臣。少数民族との政府交渉団を率いるアウンミン鉄道相も大統領府相になった。

守旧派の代表格とされるチョーサン情報相は協同組合相に横滑りした。事実上の更迭との見方が出ている。後任には軍政当時、軟禁下にあった民主化運動指導者のアウンサンスーチー氏との政府窓口だったアウンジー労働相がつく。【8月28日 朝日】
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民主化・改革への動きが順風満帆という訳でもなく、8月19日ブログ「ミャンマー イスラム教徒ロヒンギャ族問題で強まる海外からの圧力」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120819)でも取り上げたように、ロヒンギャ族問題の他、少数民族との和平協議がこのところ停滞しているという問題もあるようです。
また、海外企業進出による経済開発が地元住民の権利を脅かすという問題もあります。
日本などの海外支援・企業進出が、ミャンマー民主化を促進する方向で進むように注視する必要があります。



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