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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  「一人っ子政策」のもたらす歪 黒孩子(ヘイハイズ)に人口構成のゆがみ

2011-05-21 19:48:03 | 世相

(子供の代わりに犬・・・でしょうか? それにしても親子のように似ている・・・なんて失礼なことを言ってはいけません。 “flickr”より By \!/_PeacePlusOne http://www.flickr.com/photos/dragonpreneur/5725783824/

【“一匹政策”】
中国は、いろいろな変化の動きはあるものの、基本的には「一人っ子政策」を続けていますが、中流階級が増加する上海では、飼い犬についても「1世帯あたり1匹まで」とする条例が施行されたそうです。

****犬は1世帯1匹まで」、上海で新条例施行****
上海で15日、「飼育できる犬は1世帯あたり1匹まで」とする新たな条例が施行された。中国国営英字紙の上海日報などが16日、伝えた。

上海では、中流階級の急速な増加とともに犬を飼う家庭も急増している。犬の増加にともない、犬の吠え声や汚物放置などの問題、さらには犬が人を襲う危険性が高まっていたという。
上海市当局は市内に80万匹の飼育犬がいると公表しているが、これまでの報道によれば登録済みの犬は、そのうちのわずか4分の1程度だった。
当局は新条例の施行にあたり、飼い犬の登録を促進するため登録費用をこれまでの2000元(約2万5000円)から500元(約6200円)に大幅値下げした。

施行前から飼っていた犬については2匹以上の飼育も認められるが、全ての飼い犬を登録する必要がある。登録費用が安くなるまで登録を見合わせる人が多かったことから、この週末には多くの飼い主がマイクロチップの埋め込みやワクチン接種のため、飼い犬を連れて施設に殺到したという。
また当局は、登録費用の支払いを嫌って飼い犬を捨てる人も多いと予測して、動物保護施設も拡充した。【5月16日 AFP】
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飼い犬の“一匹政策”はともかく、「一人っ子政策」の方は、人口爆発を防止することができたものの、それにともなう歪も多く報じられています。

赤ん坊をさらって転売する中国の役人
センセーショナルなところでは、1人っ子政策の推進を担当する家族計画担当の地方当局者が、親から赤ちゃんを強制的に取り上げ、国際養子縁組で利益を得ていたという事件も明るみに出ています。

****一人っ子政策」悪用の赤ちゃん連れ去り、中国当局が捜査開始****
中国政府は10日、人口計画出産委員会の関係者が、1家庭の産児数を制限する「一人っ子政策」を悪用して子どもたちを人身売買していた疑いについて、調査を始めたことを明らかにした。
中国誌「財新」が、湖南省の同委員会当局者らが、子どもたちを連れ去り、米国やオランダ向けの養子縁組組織に売り飛ばしていた疑いがあるとの報道をうけたもの。
財新は、同省では20人前後の子どもたちが、「一人っ子政策」違反との理由で強制的に家族から引き離され、養子縁組組織に売られ海外に引き取られていったと報じている。

■出稼ぎ中に連れ去れた娘、米国で7歳に
被害にあったある夫婦は、「一人っ子政策」に違反していなかったにも関わらず、夫婦が広東省深センに出稼ぎにいっている間に、初めて生まれた女の赤ちゃんを当局に連れ去られてしまった。夫婦が娘の行方を捜したところ、娘は米国の家庭に引き取られていたことを突き止めた。娘は7歳になっていた。

湖南省隆回県の役人は、子ども1人につき養子縁組組織から1000元(約1万2500円)、海外への養子縁組が成立した場合には3000ドル(約24万円)を報酬として受け取っていた疑いがあるという。
人口計画出産委員会の関係者が、「一人っ子政策」を悪用して私腹を肥やしているとの批判は初めてではないが、財新の報道は同政策が不均衡に適用されている実態を改めて浮き彫りにした。
財新によると、子どもの連れ去り事件は2005年ごろをピークとして、10年あまりにわたって続いたという。
過去数十年で、養子として海外に出された子どもたちは約8万人に上るとみられ、その多くは米国の家庭に引き取られている。【5月11日 AFP】
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これは「一人っ子政策」の弊害、歪というよりは、最低限のモラルの欠如というべき社会の根幹的問題です。
1人っ子政策は導入から30年以上がたちますが、地方当局はこれを厳守して目標を達成するため、中絶の強要や不妊手術の強制など過激な手段を続けてきたとも言われています。
しかし、親から赤ちゃんを強制的に取り上げて海外に売り飛ばすというのは、まるで封建時代の極悪非道な役人のやり様です。
経済成長を遂げ、政治的にも存在感を強める中国への信頼感がいまひとつ持てないのは、カネ儲けのためなら何でもするという風潮が広がる中国社会のモラルの欠如が原因と思われます。

国勢調査で明るみに出る黒孩子(ヘイハイズ)の存在
「一人っ子政策」のもたらす歪として、しばしば取り上げられるのが、二人目以降の子供の出生登録をしないことから生じる、黒孩子(ヘイハイズ)または黒子(ヘイズ)と呼ばれる戸籍を持たない子供達です。
これまで、その数は数千万~数億人とも言われ、実数ははっきりしていませんでしたが、2010年の国勢調査は、戸籍のない人の数が総人口の約1%にあたる約1300万人に上るとしています。

****中国、一人っ子政策が招いた1300万人無戸籍*****
中国が2010年に行った国勢調査で、戸籍のない人の数が総人口の約1%にあたる約1300万人に上ることが分かった。
国家統計局の馬建堂局長が4月末、中国メディアに明らかにした。

無戸籍者の大部分は、国策による産児制限、通称「一人っ子政策」に違反したものという。中国では同政策の規定を上回る数の子供を出産した場合、多額の罰金を支払わなければならないため、無戸籍者が多い。同統計局などは調査実施にあたり、罰金の減額や分割払いを認める規定を示して無戸籍者のいる家庭に協力を促した結果、膨大な数の無戸籍者が判明した。

今回の国勢調査で、中国の総人口は13億3972万4852人となり、前回調査時(00年)に比べ7390万人増加した。農村からの出稼ぎ労働者(民工)などの流動人口は2億2143万人で、同1億36万人増となった。【5月11日 読売】
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戸籍を持たない黒孩子は、教育や社会福祉政策の枠組みから締め出され、当人にとっても、社会全体にとっても大きな問題となります。
今回国勢調査は“無戸籍者のいる家庭に協力を促す”ことで、この把握に努めたようですが、当然ながら、そうした“協力”を拒んで未だ闇にいる子供たちも多いと思われます。1300万人という数字は、実態より相当に小さい数字ではないでしょうか。

【「世界の工場」の終焉
「一人っ子政策」のもたらす最大の問題は、人口構成のゆがみでしょう。

****中国の青少年人口、総人口に占める割合が急減=社会問題へ発展の可能性も―ユニセフ****
2011年5月18日、国際連合児童基金(ユニセフ)はレポート「2011年世界の子供の情況(The state of the world’s children)」(中国語版)を発表した。中国の青少年人口が総人口に占める割合は、2000年の18%から、2009年には13%へと大きく減少した。19日付で中国青年報が伝えた。

レポートによると、09年の世界の青少年(10~19歳)人口は総人口の18%に当たる12億人に達し、1950年に比べ2倍以上に増加した。このうちの88%が発展途上国で生活し、半数以上は南アジアや東アジア、太平洋地域に集中している。

一方、中国の青少年人口は、00年の2億2800万人から、09年には1億8000万人へと減少している。こうした変化によって、中国の今後の労働市場は「世界の工場」から付加価値の高い産業を中心とする市場へと、構造的な変換が求められることになる。

中国の青少年人口の男女比も、男118:女100と大きく偏っており、適齢期青少年の結婚難など、今後大きな社会問題を引き起こすと予想されている。また、青少年期の男女が等しい教育機会や職業選択機会を得られるよう確保すること、都市化への過程で発生する留守番児童(両親の都市への出稼ぎにより農村で暮らす児童)や都市部での流動児童(出稼ぎの両親と暮らすが教育等で差別を受ける児童)の問題などが挙げられている。【Record China 5月21日】
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中国は近い将来、相対的に異常に少ない生産年齢人口で多くの老年人口を扶養していかねばならない、厳しい“少子高齢化”の問題に直面します。
問題は日本でも同様ですが、「一人っ子政策」によるゆがみがある分、中国の方が厳しいと言えます。
“少子高齢化”が深刻化するまでに、十分な豊かさを実現できるか・・・時間との競争です。
ここ当分は“中国の時代”ですが、やがてインドが中国にとってかわると見られるのも、こうした背景があります。

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パレスチナ  オバマ米大統領、占領地で入植活動を続けるイスラエルに譲歩を迫る

2011-05-20 21:16:46 | 国際情勢

(エジプト・カイロ 15日「ナクバ」の反イスラエル抗議デモ “flickr”より By Nicole Salazar http://www.flickr.com/photos/62920484@N07/5726169308/

イスラエルとアラブ諸国の対立が「地域全体に影を落としている」】
昨年秋以来、イスラエルが入植活動を止めないことがネックとなってとん挫している中東和平交渉ですが、オバマ米大統領は19日、ワシントンで行った中東政策に関する包括演説で、中東和平交渉に関し、将来のパレスチナ国家とイスラエルの国境は、第3次中東戦争(1967年)以前の境界を基本にすべきだとの考えを初めて表明しました。

****中東和平実現へ、イスラエルに譲歩迫る オバマ米大統領****
オバマ米大統領は19日、米ワシントンの国務省で中東政策の重要演説を行った。中東和平実現のため、イスラエルによるパレスチナ占領が始まった1967年の第3次中東戦争までの境界線を基本に、交渉を進めるよう提唱。占領地で入植活動を続けるイスラエルに譲歩を迫った。

米大統領が、占領以前の境界線を和平交渉の出発点とするよう、演説で明確に求めたのは初めて。この基本線通りに占領地から撤退することになれば、入植地を持ち続けることはできない。オバマ政権が求める入植活動の凍結に応じないイスラエルに対し、厳しい揺さぶりをかけた形だ。オバマ大統領は20日、ホワイトハウスでイスラエルのネタニヤフ首相と会談する。

オバマ氏は、中東や北アフリカ諸国での民主化の動きが加速する一方で、数十年に及ぶイスラエルとアラブ諸国の対立が「地域全体に影を落としている」と指摘。イスラエルとパレスチナの永続的な和平は急務とし、「2国家共存」による和平の実現に取り組むよう、双方に呼びかけた。【5月20日 朝日】
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オスロ合意の破綻
中東和平の枠組みには、クリントン米大統領時代に、イスラエル労働党政権のラビン首相、PLOのアラファト議長によって合意された93年のオスロ合意がありました。
イスラエルとPLOの相互承認、5年以内にヨルダン川西岸地区とガザに暫定自治政府を作り、イスラエルは占領地から撤退する・・・というもので、エルサレム帰属問題、パレスチナ難民帰還問題、ユダヤ人入植地問題など難問すべて先送りした形でした。

しかし、現実にはオスロ合意後も占領地へのイスラエル人入植活動は止まず、合意後の入植者人口は3倍に増加しています。
イスラエルはヨルダン川西岸が係争地だとして違法性を認めず、地域の「ユダヤ化」と安全保障上の理由から入植を進めました。西岸を「神がユダヤ入に約束した土地」と信じるユダヤ人入植者も少なくありません。
ただ、入植者の多くは、政治・宗教の信条と関係なく安価な住居費を求めて移り住んだ人々だとの指摘もあります。
政府公認の入植地約120カ所に約24万人が住み、人口は毎年約5%増加。加えて、非公認の入植地も約100カ所あり、推定約4000人が居住。西岸地区の面積の約9・3%が入植地となっています。

ネタニヤフ首相「イスラエルの安全を守れない」】
イスラエルに譲歩を迫る今回のオバマ大統領の演説に、イスラエル側は当然ながら強く反発しています。
****イスラエル:「国土の安全守れぬ」 米大統領演説に反発*****
オバマ米大統領が演説で、イスラエルが第3次中東戦争(67年)で占領した土地を原則として新パレスチナ国家の国土とする案を支持したことに対し、ネタニヤフ首相は声明で「イスラエルの安全を守れない」と反発した。首相は安全保障の観点からヨルダン川西岸への大規模入植地をイスラエル領に組み込みたい考えだからだ。

演説は一方で、パレスチナ側にも厳しい内容だ。イスラエル紙ハーレツ(電子版)は演説を巡り「ネタニヤフ首相の外交的大勝利」との論評を掲載。演説で大統領は、イスラエルの占領地のうち、パレスチナ側が首都に想定する東エルサレムの帰属やパレスチナ難民の帰還については後回しにすると提案した。またパレスチナが国連総会で独立国家の承認決議を求める方針にも反対したからだ。
パレスチナ解放機構(PLO)幹部のエラカト氏によると、PLOは20日にも幹部会を開き、協議した上で談話を発表する。同氏は記者団に「交渉再開に向けオバマ大統領が尽力していることに、アッバス議長は感謝している」と述べるにとどめた。【5月20日 毎日】
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また、ネタニヤフ首相は声明で、2004年にジョージ・W・ブッシュ米大統領(当時)が、1967年の境界線への「完全なる撤退」は「非現実的」だとする見解を示していると指摘しています。
イスラエルのネタニヤフ首相は20日、ホワイトハウスでオバマ大統領と会談予定で、こうした懸念を伝えるとみられています。

オバマ大統領としては、来年の大統領選を前に、行き詰まり状態の和平交渉を打開することで成果をあげたい思惑があります。

イスラエルに“逆風”の最近の情勢
最近の中東パレスチナ情勢の変化で、イスラエルを取り巻く環境は厳しくなってきています。
約4年にわたり分裂状態が続くパレスチナ主要組織ファタハとガザ地区を実効支配するイスラム急進派ハマスの指導者が今月4日、暫定統一政府の発足などを盛り込んだ和解案に最終合意しました。
一応、これで西岸地区とガザ地区に分裂していたパレスチナ側の統一がはかられた形ですが、対イスラエル政策などをめぐる双方の隔たりは大きく、今後の対応は未知数です。

また、パレスチナ自治政府は進展しないイスラエルとの交渉に見切りをつける形で、今年9月にも国連総会で独立国家の承認決議を求める方針に出ています。
“国連加盟192カ国のうち中東や南米などを中心に100カ国以上が賛成し、承認される見通しだ。イスラエルが主張する「係争中の領土」でなく「国家」が占領されている実態を明確にすることで、国際的な圧力を高め、交渉を有利な状況で再開するのが主眼。イスラエルに大きな影響力のある欧米の賛成を得ることに力を入れている。”【4月25日 毎日】

更に、これまでイスラエルと親密な関係を維持してきたエジプト・ムバラク政権の崩壊により、エジプトの「イスラエル離れ」が進んでいます。ファタハとハマスの和解もエジプトの仲介によるものでした。

****エジプト「イスラエル離れ」 相次ぐデモ、民意に配慮****
アラブ世界で米国の“代理人”としてイスラエル寄りの姿勢を保ってきたエジプトが、ムバラク前大統領の退陣後、イスラエルと距離を置き始めている。イスラエルや米国が「テロ組織」とみなすイスラム原理主義組織ハマスとパレスチナ主流派ファタハの和解交渉を仲介したほか、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区との検問所開放を決定。国内各地でデモが続く中、根強い反イスラエル感情という民意を政府が無視できなくなっているとの事情がある。

ハマスへの武器流入を懸念するイスラエルは、ガザへの物資搬入を厳しく管理している。ムバラク政権は、東部シナイ半島ラファハからガザへの人道支援物資搬入などを一部認めてきたものの、基本的にはガザとの往来を大幅に制限し、イスラエルのハマス封じ込め策に協力、国内では「パレスチナ抑圧を助けている」との批判が強かった。
ところが、ムバラク氏退陣後に就任したアラビ外相は4月29日、「ラファハ検問所を恒常的に開放する」と表明。実際に開放されれば、事実上の最大野党であるイスラム原理主義組織ムスリム同胞団などからの大量の物資がガザに運び込まれるとみられる。

こうした動きについて、エジプトの元外交官でカイロ・アメリカン大学のアブドッラー・アシャアル教授は「政府が民衆デモで示された国民の力を無視できなくなったためだ」と指摘、「ムバラク路線の“修正”が始まった」とみる。
シャラフ内閣は4月、国民に不人気だったイスラエルへの天然ガス輸出の見直しを発表。今月には、ハマスとファタハの和解を仲介し、前政権時代に頓挫していた交渉をまとめ上げた。

イスラエルや米国はエジプトの変化に神経をとがらせながら、いまのところ表立った批判を控えてはいる。だが、あるイスラエル政府高官はAP通信に「最近のエジプトには頭が痛い」と強調した。
イスラエルはこれまで、アラブ諸国で初めて平和条約を結んだエジプトとの良好な関係を維持することで、後顧の憂いなくハマスやレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに戦力を集中してこられた。
しかし、エジプトとの関係が冷え込めば中東での孤立がいっそう深まるのは必至だ。アシャアル教授は「イスラエルは今後、シナイ方面により多くの兵員と注意を割かざるを得なくなる」と分析している。【5月12日 産経】
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また、中東・北アフリカにおける民主化運動の高まりを受けて、パレスチナや中東各地での反イスラエル抗議行動も高まっています。
16日ブログ「パレスチナ “ナクバ”の15日、各地で抗議行動、イスラエル軍発砲で死傷者多数」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110516)でも取り上げたように、15日のナクバ(大惨事、大破局、大災厄)には各地で激しい抗議行動が見られました。
エジプトの首都カイロでもイスラエル大使館付近で15日から16日未明にかけ、パレスチナの占領終結を求める数千人規模のデモがあり、治安部隊が催涙ガスや実弾などで鎮圧、エジプト保健省は少なくとも350人が負傷したと発表しています。

****中東デモの波、パレスチナ自治区にも*****
イスラエルのネタニヤフ首相がワシントンでオバマ米大統領と中東和平を巡り協議する20日に、パレスチナ自治区や中東各国のパレスチナ難民による反イスラエルデモが呼びかけられている。
15日にパレスチナ自治区だけでなく中東各国のパレスチナ難民も参加して発生したデモは今後、拡大する様相を見せており、中東・北アフリカ一帯で起きた民衆蜂起の波がパレスチナにも波及し始めた格好だ。

「チュニジアやエジプトの政変後、多くのパレスチナ人が『我々もデモで抗議すべきだ』と思っていた」
ラマッラの理髪店主マフムード・アブラティファさん(30)は、こう話す。15日にイスラエルとの境界にある検問所近くでイスラエル治安部隊に投石した一人だ。この日は例年、1948年のイスラエル建国に伴う紛争でパレスチナ難民が発生したことへの抗議デモが行われているが、今年は、自治区だけでなくシリアとレバノンでも難民ら数百人が故郷への帰還を求めてイスラエルとの境界に集結する異例の事態となり、越境阻止のためイスラエル軍兵士が発砲して少なくとも計12人が死亡した。【5月19日 読売】
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こうした“逆風”の情勢を受けて、イスラエル側がどのような対応を示すかが注目されています。
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タイ  タクシン元首相派、タクシン氏の妹を首相候補へ

2011-05-19 23:11:56 | 国際情勢

(9人兄弟のタクシン元首相の一番末の妹、インラック・シナワトラ氏(43) タイ初の女性首相を目指します。)

赤シャツ 昨年の占拠を再現
タクシン元首相派と反タクシン派が対立を続けるタイですが、タクシン派の「反独裁民主戦線」(UDD いわゆる“赤シャツ”)は、バンコク都心部占拠終結から1年の19日、軍との衝突に伴う死者を追悼するため、占拠の現場となったラチャプラソン交差点で大規模な集会を開きました。

****タイ:赤シャツの波再び…タクシン派・都心部占拠から1年*****
・・・・この日は7月3日投票の総選挙へ向け、各党の比例代表選候補者の届け出開始日でもあり、当局は多数の警官を動員して不測の事態に備えた。
UDDは昨年占拠した交差点にステージを設置。「テロリストではない。平和的な抗議だ」との横断幕を掲げ、UDDの一部幹部をテロ容疑で拘束する政府を批判した。トレードマークの赤シャツ姿のタクシン派市民は、1年前に暴徒化したUDD支持者の放火で焼け落ちた大型商業施設前の通りを埋め、昨年の占拠を再現した。

集会は政治目的ではないとされ、タクシン派野党「タイ貢献党」の首相候補に決まったタクシン氏の妹、インラック氏ら同党幹部は参加しない見通し。しかしこの日の同党比例候補者届け出リストでは、昨年の占拠を指揮したUDD幹部らが当選確実な上位に位置付けられている。
タクシン氏による論功行賞とみられるが、貢献党が、軍や王室に近い枢密院など旧来の支配勢力への敵対姿勢を明確にするUDDと一体であることを示す結果となり、同党が政権を奪取すれば、軍との緊張が高まるのは必至だ。

昨年の衝突では、日本人カメラマン、村本博之さん(当時43歳)を含む91人が死亡した。軍は兵士の発砲で死者が出たことを認めず、貢献党は軍や政府の責任追及を公約に掲げている。【5月19日 毎日】
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【「兄(タクシン氏)を信頼したように私を信頼してほしい」】
上記記事でも触れられているように、タクシン元首相派野党「タイ貢献党」は、タクシン元首相(61)の末妹で会社役員、インラック・シナワトラ氏(43)を同党の首相候補とすることを決めています。
これにより、“総選挙はタクシン氏本人と、軍や枢密院など反タクシンの旧来の支配勢力との「代理対決」の様相がさらに色濃くなった”と見られています。

****タイ:総選挙 タクシン元首相の妹が野党の首相候補に****
タイのタクシン元首相派野党「タイ貢献党」は16日、7月3日投票の総選挙へ向けてタクシン氏(61)の末妹で会社役員、インラック・シナワトラ氏(43)を同党の首相候補とすることを決めた。タイの憲政史上、女性が主要政党の首相候補となるのは初めて。反タクシンの現政権与党「民主党」は、現職のアピシット首相(46)を首相候補とする方針で、総選挙はタクシン派、反タクシン派双方が40歳代の首相候補で激突する構図となった。

タイの総選挙は比例代表・選挙区並立制。党の比例代表候補者リスト1位に掲載された候補者がその党の首相候補となり、総選挙で勝利した場合組閣に着手する。インラック氏は党の決定後、「兄(タクシン氏)を信頼したように私を信頼してほしい」と、タクシン氏個人への支持が根強い農民層などに訴えた。
新鮮な印象がある女性首相候補だが、インラック氏の登場で総選挙はタクシン氏本人と、軍や枢密院など反タクシンの旧来の支配勢力との「代理対決」の様相がさらに色濃くなった。

インラック氏はタクシン氏のファミリー企業で要職を歴任してきたビジネスウーマンで、政治経験は皆無。首相候補とすることに貢献党内に異論もあったが、海外逃亡中のタクシン氏自身が強く推した。タクシン氏に、自身の意の通りに動く身内を首相の座に据え、悲願である帰国、復権の足がかりにしたいとの思惑があるのは明らかだ。

一方、旧来の支配勢力は「タクシン氏は王制転覆を狙っている」と強い警戒感を抱いている。アピシット首相は若さや聡明(そうめい)さで国民に一定の人気があるものの、自身の支持基盤である軍などの意向に逆らってまで、懸案であるタクシン支持層との「国民和解」を推進する指導力はない。総選挙後にどちらが新政権を樹立しても国民間の分裂修復は困難で、タイは不安定な情勢が続きそうだ。【5月16日 毎日】
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インラック氏は、ケンタッキー州立大学で政治学の修士号を取得した後、タイのモバイル通信大手AISと、不動産大手SCアセッツで要職を歴任した女性です。
アピシット首相の“若さや聡明さ”にひけをとらない、美しいキャリアウーマンではあります。

対立鮮明化で和解は困難
インラック氏は首相候補の指名を受け、バンコクの党本部で立候補予定者らを前に演説。タクシン派と反タクシン派で分断されたタイの現状について、「選挙に出るのは和解を求めているから。対立を乗り越え、未来へ前進するときだ」と訴えていますが、タクシン元首相が妹を首相候補にすえたことに、与党民主党など反タクシン勢力は「海外から政治を操っている」と批判を強めており、タクシン派対反タクシン派の対立の構図はより鮮明化しそうです。【5月16日 朝日より】

“タクシン氏は汚職罪で有罪判決を受け海外逃亡中。身内を首相の座に就けることで恩赦や裁判のやり直しなどに道を開き、復権を容易にしたい思惑があるとみられる。
地元記者は、タクシン氏個人への支持が依然として根強い北部や東北部では、同氏の肉親が首相候補となれば、貢献党はさらに支持拡大が見込めると分析。しかし同党が事実上、「タクシン氏の個人政党」であることがより鮮明となり、タクシン派によるバンコク都心部占拠などに反発を強める、比較的裕福な中間層などの間で反感が一層高まる可能性があると指摘する。”【5月13日 毎日】

タクシン元首相としては、信用できるのはやはり“身内”の人間ということでしょうか。
タクシン首相には、タクシン色を薄めて、両派の対立を和解へ導こうといった発想はないようです。あくまで力で権力を奪取する意向です。
一方のアピシット首相は、“自身の支持基盤である軍などの意向に逆らってまで、懸案であるタクシン支持層との「国民和解」を推進する指導力はない”とのことですので、選挙結果に関わらず、「国民和解」実現は難しそうです。

なお、世論調査によると、両党の支持率は伯仲しており、いずれも過半数に届かず、他党と連立を組む可能性が指摘されているとのことです。
ただ、途上国の世論調査は大きくはずれることも多々ありますので、どうなるか・・・。
もし、インラック氏が首相になれば、タイ初の女性首相となります。

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ルワンダ  大虐殺を裁く、草の根レベルの裁判制度「ガチャチャ」

2011-05-18 20:02:42 | 世相

(ルワンダのある村での「ガチャチャ」 “flickr”より By The Advocacy Project http://www.flickr.com/photos/advocacy_project/3700966191/

【大虐殺の“けじめ”】
1994年に起きた、3か月余りで80万人の住民が死亡したとされるアフリカ・ルワンダでの大虐殺(ジェノサイド)については、これまでも何回か取り上げてきましたので、その内容・経緯は省略します。
この大虐殺が恐ろしいのは、その規模の大きさもさることながら、それまで隣人として暮らしていた普通の人々がこん棒や鉈を手にして突然襲い掛かってくるという点にあります。人間の心の奥に潜む闇が一気に噴き出たのがこの大虐殺でした。

現在、ルワンダは旧反政府軍指導者のカガメ大統領のもとで、驚異的な経済成長を遂げています。(一般には、政策的にも、人格的にも、その功績が高く評価されているカガメ大統領ですが、その政治手法を強権的と批判する向きもあります)
そうしたなかで、大虐殺の“けじめ”をつける裁判が今も続けられています。

****ルワンダ大虐殺、当時の軍幹部に禁錮30年の実刑判決****
1994年に起きたルワンダ大虐殺を受けて国連が設置したルワンダ国際犯罪法廷(ICTR)は17日、元ルワンダ軍大将、アウグスティン・ビジムング被告に、禁錮30年の実刑判決を言い渡した。大虐殺では3か月余りで80万人が死亡したとされる。
当時の民兵組織の幹部、アウグスティン・ンディンディリイマナ被告についても、虐殺に関与した罪で有罪が宣告された。ただ国際犯罪法廷は、同被告が逮捕後、既に11年服役したことを理由に釈放を認めた。
 
今回の判決は、ビジムング被告が虐殺において軍を完全に掌握していた一方で、ンディンディリイマナ被告の統率力は限定的なものであり、虐殺に反対していたとの判断に基づいている。
同じく、裁判にかけられていた偵察大隊の元司令官とその部下は、それぞれ禁錮20年の刑が言い渡された。

ルワンダ国際犯罪法廷は、大虐殺において重大な責任を有する者を訴追するため、国連が1994年に設置。タンザニア・アルーシャに置かれている。
虐殺に関与したとされる政府の上層部以外や一般市民は、ルワンダにおいて、通常の裁判制度やガチャチャと呼ばれる草の根レベルの裁判制度で裁かれている。

ガチャチャ裁判は、村のもめ事を解決するための村人たちの集会が発展したもの。被告に弁護士がつかないことなどから人権団体から批判を浴びているが、ルワンダ政府当局によると、虐殺への関与の罪で100万人を超える被告人の裁判を行えるようになった。【5月18日 AFP】
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【「ガチャチャ」とは
草の根レベルの裁判制度“ガチャチャ”の簡単な説明は以下のとおりです。
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2002年6月、ルワンダ政府によって「ガチャチャ」という裁判制度が設置されました。1994年のジェノサイド(大量虐殺)について未処理の件数が多いため、地域共同体でジェノサイドの容疑者を裁くことを目的としています。「ガチャチャ」の由来は、もともと地域にあった、家族内や世帯間のもめごとを解決するための慣習的な集会をさしていますが、新しい「ガチャチャ」は、より西欧に近い司法制度となっています。ルワンダ最高裁と司法省が管轄し、その裁判官は、もっとも重い判決で終身刑をいいわたすことができます。
「ガチャチャ」の構成員は、住民の投票によって選ばれます。2002年10月には約26万人の素人裁判官が選出され、法律、裁判官としての倫理、心的外傷カウンセリングなど数日間の基本研修を受けました。【アムネスティ年次報告書2005より】
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【「ガチャチャ」の運用と問題点
ガチャチャのより詳しい説明、実際の運用、問題点などについては、武内進一氏のレポート「ガチャチャの開始-ルワンダにおける国民和解の現在-」(http://www.ide.go.jp/English/Researchers/pdf/takeuchi_shinichi01_4_2005b.pdf)が参考になります。

以下は、武内進一氏の同レポートから、個人的判断で抜粋したものです。
同レポートでは、罪を認めれば刑期が半減されるなど犯罪者に甘い,容疑者の権利保護が不十分である等々,ガチャチャに対する一般的批判の他、実際の運用において、判事団側の能力不足(読み書きのできない者が多い)、住民にガチャチャを欠席する者が多いこと、判事団が無償の労働を強いられていることが指摘されています。
多くは、日本の裁判員制度を考えても、容易に理解できる点でもあります。

また、武内氏は、「異常な虐殺をくぐり抜けて生き延びた人々にとって,地域住民との関係を再び構築し,そのなかで暮らしていくためには,虐殺にかかわる犯罪に関してなんらかの「けじめ」が絶対に必要である。」としてガチャチャの意義を評価しながらも、それが「勝者の裁判」になっていることを最大の問題点として指摘しています。

*****ガチャチャの開始-ルワンダにおける国民和解の現在*****
ガチャチャとは,通常の司法手続きではなく,地域社会レベルで,民衆の意見に基づいて実施される,ジェノサイド罪容疑者に対する裁判である。
内戦によって国内司法組織が破壊され,またジェノサイドに関与した容疑者の数がきわめて多いために選択された方法であり,末端地方行政レベルで裁判を行うことから,「村の裁判」とか「伝統的司法」と説明されることもある。ルワンダ政府はガチャチャのため準備を重ねてきたが,2005 年3月から全国で一斉にこれを開始するに至った。

現在,ジェノサイド罪容疑者に対する裁判は,主として,国連安全保障理事会が設立したルワンダ国際刑事裁判所(ICTR),ルワンダ国内の通常の司法手続き,そしてガチャチャという三つのレベルで行われている。
ICTRが審理の対象としているのは100人に満たないが,ガチャチャでは地方でジェノサイドに関与した者がすべて審理対象となり,その数はおそらく10万人を超える。
ジェノサイドを計画,煽動,推進した中心的人物がICTRや通常の司法手続きで裁かれるのに対して,各地で実際に殺害や暴行,略奪に荷担した者がガチャチャの審理対象となる。
ガチャチャは生活を共にする近隣住民の罪を裁く裁判であり,大衆にとって非常に身近なものである。ガチャチャの手続きは法的に細かく定められているが,その大筋は,地方行政機構に沿って設置されたガチャチャの判事団が,住民の証言に基づいて罪状を確定するというものである。

ルワンダの地方行政機構は,最小レベルのセル(人口規模1000 人程度)から始まり,セクター(同数千人),県(同数万人),州(同数十万人)によって構成される。
ガチャチャの基本はセルに置かれ,そこで住民の間から選出された判事団(9名,および5名の補助役)が,住民の証言をもとに,ジェノサイドにかかわった容疑者とその容疑内容を確定する。
容疑内容は,三つに大別される。
第1に,ジェノサイドを計画,煽動,主導した者であり,これにあたると判断された容疑者は,ガチャチャではなく通常の司法ルートで裁かれる。ここでの最高刑は死刑である。
第2に,ジェノサイドの主導者ではないが,殺人や暴行,強姦など重大な犯罪を行った者であり,これについてはセルの上位の地方行政機構であるセクターのガチャチャ判事団が判決を下す。
第3に,ジェノサイドの際に略奪を行い,物的な損害を与えた者であり,これについてはセルの判事団が裁く。

ガチャチャには死刑判決は存在せず,判決に不満がある場合は県レベルに設置された上告審に持ち込むことができる。このように,判決自体は必ずしもセルでなされるわけではないが,容疑の確定という重要なプロセスがセルのレベルで,住民の参加の下に行われることが,ガチャチャの顕著な特徴である。

ガチャチャがルワンダ全土で開始されて以降,各地方自治体は毎週1回,定例のガチャチャ開催日を定めている

ガチャチャについて意見を聞こうとすると,それまで雄弁だった人が急に寡黙になることがしばしばあった。
人々がガチャチャに対してセンシティヴな理由は,それが殺人という重大な犯罪にかかわるからというだけではない。「村の裁判」,「伝統的な裁判」といった一部の理解とは裏腹に,ガチャチャは現政権の肝いりで進められており,その意味できわめて政治的な側面を有している。

このようにガチャチャは事実上,政府が設定した枠組みのなかで遂行されており,司法の行政からの独立は,ここでは問題にされていない。

こうした政治的な動きに巻き込まれることを,一般の人々は本能的に恐れているのであろう。

筆者が,現在ガチャチャが抱えている問題は何かと尋ねたところ,ニリマナ氏は三つの点を挙げた。第1に,判事団側の能力不足である。判事たちは確かに正直で誠実だが,読み書きのできない者が多すぎる。現在Sセルの判事団14名のなかで,読み書きができるものは4名にすぎないと彼はいう。

第2点として彼が挙げたのは,ガチャチャを欠席する者が多いことである。

最後にニリマナ氏が挙げたのは,判事団が無償の労働を強いられていることである。ガチャチャでは,住民はもちろん,判事団に対しても一切報酬は支払われない。

Mセクターにおいても,トゥチの殺戮に対して,地域住民の一部がなんらかの形で関与したことは間違いない。異常な虐殺をくぐり抜けて生き延びた人々にとって,地域住民との関係を再び構築し,そのなかで暮らしていくためには,虐殺にかかわる犯罪に関してなんらかの「けじめ」が絶対に必要である。

罪を認めれば刑期が半減されるなど犯罪者に甘い,容疑者の権利保護が不十分である等々,ガチャチャに対する批判は多い。

いかに不十分であっても,ルワンダのジェノサイドのような異常な状況の後でこうした試みは必要だし,その意義を評価すべきではないだろうか。

最大の問題は,それが「勝者の裁判」になっていることである。
先述したように,ルワンダのジェノサイドにかかわってさまざまなレベルで裁判が行われているが,そのいずれにおいても紛争当事者の一方(旧ハビャリマナ政権側)しか裁かれていない。
RPFも内戦時に戦争犯罪に関与した疑いがあるが,現政権は,これについては軍法裁判で決着し
たとして,それ以外の裁判にかけることを一切拒んでいる。それどころか,RPF側の戦争犯罪を裁こうとしたルワンダ国際刑事裁判所の検事総長を,現政権は友好国英米の圧力で交代させた。
ジェノサイドが最大級の犯罪であることに異論の余地はないが,自らの過ちを認めない態度は,国民和解の進展にプラスになると思えない。
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ロシア  プーチン首相「国民戦線」創設 メドベージェフ大統領との“すきま風”云々も

2011-05-17 22:54:38 | 国際情勢

(ロシア・モスクワの赤の広場で9日に行われた大祖国戦争(旧ソ連の対ドイツ戦)の戦勝66周年を祝う軍事パレードを、そろって参観するメドベージェフ大統領とプーチン首相 “flickr”より By urbancn http://www.flickr.com/photos/urbancn/5702760487/

プーチン首相は使徒パウロの生まれ変わり?】
さしものプーチン首相の支持率も最近低下してきているとの調査もありますが、一方で、プーチン首相を使徒パウロの生まれ変わりとして崇める新興宗教も登場したとか。

****プーチン首相を聖人と崇めるロシアの新興宗教****
キリスト教初期の歴史に足跡を残す使徒パウロの生まれ変わりとして、ロシアのウラジーミル・プーチン首相を崇める新興宗教の一派が同国に登場した。

11日の週刊誌Sobesednikによると、ロシア西部ニジニーノブゴロドに拠点を置くこの宗派は、地元鉄道の元職員で前科のある「聖母フォティーナ」と名乗る女性が率いている。
この創始者によると「聖書によると使徒パウロは最初は軍の司令官だった。プーチン首相もKGB時代には邪悪なことをしていた。しかし大統領になって彼はパウロのように聖なる精神で満たされ、自分の仲間たちを導くようになった」のだと言う。

信徒の数は報じられていないが、同誌が取材したドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「こういう宗教集団は聞いたこともない。彼らがそれほどまでに首相の仕事を高く評価しているとは素晴らしい」と、ロシアで最も支持率の高い政治家への個人崇拝を、驚きを持って受け止めた。ぺスコフ報道官はさらに「けれど大事な十戒のひとつも覚えておこう。『誤った偶像を崇拝してはならない』」と付け足した。

旧KGBの元スパイで前大統領、現在は首相のプーチン氏に対する尊敬を示すグループや組織はロシアに多く、さらにプーチン氏について歌ったポップスや、プーチン・ブランドのウォッカ、プーチン氏をテーマにしたクラブ・パーティーまで登場しているが、ペスコフ報道官がやんわり説明したところによると、プーチン氏本人はあまりこうした状況を喜ばしく思っていないそうだ。【5月12日 AFP】
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“プーチン首相もKGB時代には邪悪なことをしていた”というのも、第三者的には面白いところですが、プーチン氏本人はあまり面白くないかも。

本格的な「政治の季節」】
それはさておき、相も変わらないメドベージェフ大統領とプーチン首相による「双頭体制」の行方の話。
12月の下院選と来年3月の大統領選に向けた本格的な「政治の季節」が始まり、動きも出てきたようです。

****プーチン氏動いた 選挙見据え「国民戦線」創設へ*****
年末の下院選と来春の大統領運を視野に、ロシアのプーチン首相が動き出した。自ら党首を務める最大与党「統一ロシア」を核に幅広い社会層の結集をめざす運動体「全ロシア国民戦線」の創設を表明。メドページェフ大統領との主導権争いとの臆測も出ている。

大統領へ布石?
プーチン氏は12日に南部ソチで開いた会合で、下院選での「統一ロシア」の比例代表名簿作りに「国民戦線」も加わるなどの基本原則を打ち出した。6月中の旗揚げを目指す。統一ロシアは今年に入って支持率を下げており、「国民戦線」の創設は下院選で安定多数を確保するための苦肉の策との見方が出ている。
統一ロシア幹部のグリズロフ下院議長は「国民戦線に約100の社会団体が加わる。大統領選での基盤にもなる」との見通しを示した。労組や退役軍人組織から富裕層の産業企業家同盟にまで及ぶが、「雑多な寄せ集め」との批判も強い。

プーチン氏は12日の会合で「大統領も国民戦線創設を支持している」と述べ、「双頭体制」の合意を強調。メドベージェフ氏も同日、国営テレビ局での会見で「戦線創設は正常な選挙手法だ。私の任務は国内政治に競争をもたらすことにあり、他の政治勢力にも同様の動きを促すだろう」と述べた。
ただ、次期大統領選にプーチン氏とメドベージェフ氏のどちらが出るかが最大の関心を集める中で、プーチン氏による突然の「国民戦線」主導は、大統領ポスト復帰への布石といった見方など、様々な臆測や批判も呼んでいる。(中略)

「次の大統領は私だ、というメッセージにほかならない」(反政権紙ノーバヤ・ガゼータのラトゥイニナ評論員)との受け止めも強い。プーチン氏が「大統領も支持している」と述べたことは、「双頭」間の意見の不一致をぼかすためだとの指摘も出ている。【5月15日 朝日】
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こうしたプーチン首相の動きの背景には、プーチン首相自ら党首を務める「統一ロシア」の支持率が低下していることがあると指摘されています。
“統一ロシアは下院450議席のうち315議席を占めるが、3月の地方選では得票率が50%を割り込み、07年の下院選当時に比べて20ポイント近く下げた。国民の間でプーチン氏と周辺が権力をたらい回しにしている現状に批判が強まっていることなどが原因とみられる。”【5月9日 毎日】

【「双頭体制」の“すきま風”】
“プーチン氏は12日の会合で「大統領も国民戦線創設を支持している」と述べ、「双頭体制」の合意を強調”とありますが、メドページェフ大統領は批判的との報道もあります。

****ロシア下院選、大統領選へ新組織 プーチン氏始動****
・・・・統一ロシアは下院で約7割の議席を握るが、最近の世論調査や地方選挙の結果からは12月の下院選での現状維持が困難な情勢とみられていた。首相は人民戦線の創設で統一ロシアの支持層を広げ、下院選での圧勝につなげる考えだ。

 ◆現大統領は批判
メドベージェフ大統領は13日、「権力の過度の集中は危険であり、過去には停滞か内戦につながった。特定の個人の下に権力を打ち立てる試みは近い将来、国とその個人に大きな問題をもたらす」とプーチン氏の動きを暗に批判した。

プーチン氏が現時点で権力基盤のてこ入れに動いた背景には、メドベージェフ氏が2期目続投への意欲をほのめかし、とりわけプーチン前大統領期に築かれた国家資本主義的な経済体制を批判して独自色を強めていたことがある。
たとえば大統領は4月、主要経済分野を牛耳る国営企業の民営化を加速するべきだとし、政府の閣僚が国営企業の幹部兼任をやめるよう命じた。これは国営石油ロスネフチの会長を兼ねていたセチン副首相ら忠実なプーチン派の面々に打撃を与える行為でもある。

これに対し、プーチン首相は下院の演説で「必要なのは何十年にもわたる安定した静かな発展だ。後先を考えない行動や、自由主義と社会的デマゴギーの混ざった軽率な実験ではない」とリベラル派への警戒をにじませ、国家主義の基本路線を強調していた。

 ◆狙いは実権保持
次期大統領選をめぐっては、「双頭政権」の両者が出馬の可能性を排除しておらず、観測筋の間では(1)プーチン氏の返り咲き(2)メドベージェフ氏の続投(3)双方の出馬(4)第3の候補擁立-と見方が錯綜(さくそう)している。
ただ、プーチン氏にとって重要なのは、大統領選のあり方について自らが裁量をもち、選挙後も実権を保持することだ。
「人民戦線」運動の成否はなお不透明ながら、メドベージェフ氏が特定の支持基盤をもたない状況で、プーチン氏が「双頭政権」の重心をいっそう自らの側に動かしつつあるのは間違いない。【5月16日 産経】
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上記記事にもあるように、経済の在り方については、両氏の考えには差があるようです。
メドベージェフ大統領は先月25日、モスクワ近郊スコルコボに先端技術産業の集積地を建設する計画の加速を指示するなど、資源輸出に依存してきた産業構造の改革に取り組む独自の姿勢をアピールし始めています。

“これまで二人は次期大統領選の候補者を話し合いで一本化する方針を繰り返してきたが、メドベージェフ氏は先月、中国テレビ局との会見で自らの判断で出馬を決める考えを表明。これをプーチン氏が「時期尚早」とたしなめるなど、微妙なすれ違いが関心を呼んでいる。”【5月9日 毎日】とのことです。

15日は、ロシアのイワノフ副首相ら5閣僚が北方領土の国後、択捉両島を訪問し、東日本大震災への人道支援など日本への友好姿勢を見せていたロシアが、領土問題では譲歩しない姿勢を改めて示していますが、これについても、“ロシアでは今年12月の下院選、来年3月の大統領選をひかえ、プーチン首相が今月6日、超党派が結束する「全ロシア国民戦線」の発足を呼びかけるなど存在感を強めている。主導権を握られた形のメドベージェフ大統領には、今回の政府代表団の国後、択捉島への派遣で指導力を誇示する狙いがあるとの見方もある。大統領は昨年11月、旧ソ連・ロシアの国家元首として初めて北方領土の国後島を訪れ、北方領土対策を積極的に進める姿勢を印象づけたが、この時も次期大統領選への再選出馬をにらんだ動きとの指摘が出ていた。”【5月15日 毎日】と、両氏の主導権争いが背景にあるとの指摘もあります。

メドベージェフ大統領とプーチン首相両氏は「対独戦勝記念日」の9日、モスクワ中心部の「赤の広場」で、恒例の軍事パレードをそろって参観しましたが、これについても“二人の間のすれ違いもささやかれるなか、協調路線の堅持を内外に示す狙いがあるとみられる。”【5月9日 毎日】とも。
ただ、軍事パレードをそろって参観するのは当然のことで、これ自体はそれほど深読みすることでもないでしょう。

いずれにしても、結論は、相も変わらず“よくわからない”というところです。
ただ、メドベージェフ大統領誕生の頃の“プーチン首相の操り人形”というイメージからすれば、最近の大統領の続投への意欲、プーチン首相との“すきま風”云々は、やや意外な感もあります。

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パレスチナ  “ナクバ”の15日、各地で抗議行動、イスラエル軍発砲で死傷者多数

2011-05-16 20:38:04 | 国際情勢

(15日、イスラエル軍が警備するヨルダン川西岸地区のカランディア検問所での衝突 イスラエルの治安部隊がデモ隊に催涙弾を発砲するなどし、70人以上が負傷したとも報じられています。 “flickr”より By activestills http://www.flickr.com/photos/activestills/5726062236/

【“ナクバ”(大惨事、大破局、大災厄)】
イスラエルは1948年5月14日に建国を宣言しましたが、これによって76万人を超えるパレスチナ人が、住む地を追われた難民となりました。
こうしたパレスチナ人を祖先とするパレスチナ難民の数は現在480万人に上るとみられ、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の推計では、ガザ地区に約100万人、ヨルダン川西岸に約75万人、ヨルダンに約200万人、シリアに約47万5000人、レバノンに約40万人が存在するとされています。【5月16日 AFPより】

土地を追われたパレスチナ人側はこれを“ナクバ”(大惨事、大破局、大災厄)と呼び、15日が記念日となっています。
この“ナクバ”の経緯については、“パレスチナ難民の発生原因については、当時は、ユダヤ人軍事組織によって追放されたというパレスチナ側の主張とパレスチナ人が自発的に立ち去ったというイスラエル側の主張があった。現在では、イスラエルの政府資料や米国の諜報資料が公開され、イスラエル側の主張が虚構であり、大多数のパレスチナ難民は、ユダヤ人軍事組織による大量虐殺(イスラエルの歴史学者イラン・パペによれば、総計2千人~3千人が犠牲になった)、銃器による脅迫、また、ユダヤ人軍事組織による攻撃を恐れて、難民となったことは、学術的に明らかになっている。現在の学術的な争点は、パレスチナ人の追放が予め計画されたものか、それとも戦闘激化に伴った偶発的なものかという点である。”【ウィキペディア】とのことです。

ゴラン高原でも衝突
このナクバの15日、ヨルダン川西岸、ガザ地区やゴラン高原など各地でパレスチナ人による帰還を求める抗議行動が起きており、死傷者も多数発生しています。

****パレスチナ:難民デモ 「大災厄」記念日で帰還の権利訴え****
1948年5月のイスラエル建国に伴い、70万人を超すパレスチナ人が土地を追われ難民となった「ナクバ(大災厄)」記念日の15日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ラマラなどで大規模な街頭デモが行われた。故郷へ難民が帰還する権利を訴えた。

ラマラのデモには、難民キャンプなどから数千人が参加。48年に難民として西岸へ逃れたムハンマド・ザドゥクさん(68)は「親族はバラバラになり、その後いとこには一度も会えていない。戻ることで、自らの尊厳を守りたい」と話した。AP通信によると、ガザではデモ隊がイスラエルとの境界に近づき、同国軍が発砲、少なくとも15人が負傷した。

一方で、イスラエルが占領するシリア領ゴラン高原のマジダルシャムスへシリア側からパレスチナ難民とみられるデモ隊の数十人が進入し、イスラエル軍が発砲。4人が死亡したとの情報がある。
東エルサレムでは13日にデモ行進があり、そばにいた17歳のパレスチナ人少年が銃弾を受け死亡した。ユダヤ人が入植している建物にデモ隊が投石し、警備員が発砲したとの目撃情報がある。翌日には、葬儀に参列した若者と警察が衝突した。事態を受け、イスラエルとパレスチナ自治政府は15日、各地で厳戒態勢を敷いた。

イスラエルとの中東和平交渉では、難民帰還権が中核的な議題の一つだが、交渉は昨年9月から途絶えている。イスラエルは48年5月14日に建国を宣言した。【5月16日 毎日】
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イスラエルが実効支配し、シリアが返還を求めているゴラン高原でこうした衝突が起きるのは異例のことです。
“シリア側から数千人規模のデモ隊が流入しようとしたため、イスラエル兵が発砲。1974年に両国が兵力引き離し協定に合意して以来、最悪の事態となった。”【5月16日 AFP】

****ゴラン高原で衝突 数十人死傷****
イスラエルが実効支配するゴラン高原北部で15日、パレスチナ難民中心の反イスラエルのデモ隊がシリア側からイスラエル側へ越境、同国軍部隊からの発砲を受け、フランス通信(AFP)によると2人が死亡、数十人が負傷した。ゴラン高原で衝突が起きるのは異例。

ゴラン高原は1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領、74年に停戦ラインが引かれた。事件について同国当局者は「シリア政府が(越境を)組織している」と指摘、シリアはイスラエル軍の発砲を「犯罪行為」だと非難した。
レバノン国境付近でも同日、パレスチナ難民とイスラエル軍が衝突し、ロイター通信によると10人が死亡した。この日は、イスラエル建国に伴い大量のパレスチナ難民が発生した「ナクバ(大惨事)」記念日で、パレスチナ自治区でも反イスラエルデモが相次いだ。【5月16日 産経】
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シリア政府は、流血の事態に対する「犯罪」行為については全面的にイスラエルに責任があると、イスラエルを非難する声明を発表しています。
また、レバノン政府も「ユダヤ人国家による侵略と挑発を阻止するため」との理由で、国連に苦情申し立てを行っています。

これに対し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、テレビ演説のなかで、「彼らの闘争は1967年に画定した国境をめぐるものではない。彼らが絶対に解決せねばならない大惨事と呼ぶものは、イスラエルの存在そのものを問題視することにほかならない」と述べ、「破壊を企てる者から、断固として国境と主権を守る」と言明しとのことです。【5月16日 AFPより】

現実的には殆んど解決不可能な帰還問題
中東和平交渉は、イスラエル側の入植問題で、昨年9月から途絶えていますが、難民帰還問題は大きな問題のひとつです。
ただ、現実問題としては、ユダヤ人国家を目指すイスラエル側が多数の難民を受け入れることは考えられず、今や解決が殆んど見込めない問題でもあります。
表向きの発言は別にして、パレスチナ自治政府側にも、交渉を現実に進めるためには一定に譲歩せざるを得ないとの認識もあるようです。

****難民帰還権でも譲歩と報道=パレスチナ内部文書―英紙****
英紙ガーディアン(電子版)は24日、中東の衛星テレビ局アルジャジーラが入手したとする2009年3月24日付のパレスチナの内部文書で、アッバス自治政府議長が「500万人はもとより100万人のパレスチナ難民の引き受けをイスラエルに求めるのは論理的でない」と述べ、中東和平交渉の最大の争点の一つ、「難民問題」で、難民の帰還数制限を認めていたと報じた。
同紙はアルジャジーラと協力し、内部文書に関する報道を行っている。【1月25日 時事】
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次期フランス大統領有力候補、強姦未遂で逮捕 フランス政界の魑魅魍魎

2011-05-15 21:31:34 | 国際情勢

(今年4月14日 IMF本部での記者会見で質問に答えるストロスカーン専務理事 “flickr”より By International Monetary Fund http://www.flickr.com/photos/imfphoto/5618949897/

欧州諸国支援策協議は停滞、仏大統領選挙へも影響
IMFのトップであり、次期フランス大統領に最も近い位置にいるとも思われていたストロスカーン専務理事がアメリカで“強姦未遂”で逮捕されました。
事件というものはすべて唐突に起こる・・・とは言うものの、にわかには信じ難いニュースです。

****IMF専務理事、性的暴行などの容疑で逮捕*****
米ニューヨーク市警は14日、国際通貨基金(IMF、ワシントン)のトップでフランス人のドミニク・ストロスカーン専務理事(62)がニューヨークの繁華街タイムズ・スクエアにある宿泊先ホテルで女性従業員(32)に性的暴行を加えたとして身柄を拘束、専務理事は15日未明(日本時間同日午後)、性的暴行、強姦未遂、監禁の容疑で逮捕、訴追された。

米メディアによると、専務理事は女性従業員が部屋の清掃に入ったところ裸で応対。女性を寝室に引きずり込み、さらにトイレで乱暴しようとした疑い。女性は軽傷を負った。
専務理事は直後にホテルを出て、ケネディ空港初のパリ行き航空便に乗ったが、ホテルから通報を受けた港湾・空港当局者が同便の離陸直前に専務理事を連行した。弁護士はロイター通信に「専務理事は無罪を主張する」と語った。IMF広報担当者は本紙の取材に「ノーコメント」と答えた。

専務理事の逮捕により、財政危機に直面する欧州諸国への支援策をめぐる協議は停滞しそうだ。来年の仏大統領選への出馬も取り沙汰されていたため、選挙戦に影響が出るのは確実だ。【5月15日 読売】
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“ストロスカーン専務理事は2008年10月にも部下の女性との関係が明るみに出て、女性の処遇に地位を悪用したかどうか、調査対象になったことがある。
専務理事はIMFトップとして、ギリシャ財政危機問題をめぐり、15日にベルリンでメルケル独首相との会談、16日からはブリュッセルで欧州各国の財務相との会合を予定していた。
ストロスカーン専務理事は、2007年11月から現職。経済学者出身で仏政界きっての財政通といわれ、90年代に仏財務相などを経て、07年の大統領選でも一時社会党から立候補を目指した。仏政界の左派の中では、最も大統領に近い政治家と指摘され、出馬表明が取りざたされていた。”【5月15日 朝日】

地位を利用した関係強要と、“裸で応対。女性を寝室に引きずり込み、さらにトイレで乱暴”というのは全く異なります。イタリアのベルルスコーニ首相ならあるかもしれませんが・・・。
AP通信によると、専務理事は事情聴取に対し、供述を拒んでいるそうです。

【「DSKは出るのか出ないのか」】
不人気にあえぎ、極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首からも保守票を食われそうなサルコジ大統領にとって、左派のストロスカーン専務理事が次期フランス大統領選挙に出馬すれば最大のライバルになるはずでした。
欧州経済危機への対処でIMFが前面にでることを、IMFトップのストロスカーン氏の株が上がるとして、サルコジ大統領が嫌がったという話もあります。
下記はひと月ほど前の大統領選挙予想記事です。大統領選挙は12年4月に第1回投票が予定されています。

****候補者乱立気味の仏大統領選*****
「DSKは出るのか出ないのか」-約1年後に迫ったフランス大統領選で注目を一身に集めているのが仏社会党の重鎮、ドミニク・ストロスカーン国際通貨基金(IMF)専務理事(61)。DSKは名前の頭文字。
専務理事の任期は2012年11月まで。社会党は公認候補を7月の予備選で決めるので出馬するなら、その前に辞任する必要がある。IMF専務理事は通常2期が約束されているとされる。国家元首級の座を捨てて、確実な勝利が約束されていない大統領選に出馬するのか否か-。
DSKの支持率は週刊誌パリ・マッチの最新の世論調査では前月比6%減とはいえ69%で4位(シラク前大統領が75%で1位)。元人気キャスターの夫人がブログで「専務理事として2期目は狙わない」と書いたところから出馬説が濃厚になっている。

社会党の予備選出馬表明組はフランソワ・オランド前第1書記(56)が65%で9位。前回07年の社会党公認候補のセゴネル・ロワイヤル氏(57)は35%で35位。(中略)マルチヌ・オブリ第1書記(60)は未表明で支持率も56%で12位とふるわない。

一方、再選を狙うニコラ・サルコジ大統領(56)は33%で42位。他の世論調査では07年5月の就任以来、最低の27%を記録したが、世論調査は得票率とは直結しないといわれるだけに意欲満々だ。
ただ、「大統領党」といわれる与党の右派政党、国民運動連合(UMP)から最近、ジャンルイ・ボルロー前エコロジー・エネルギー・持続的開発相(60)が離党。中道右派政党の急進党党首として出馬の可能性が指摘されている。支持率は68%で7位と好位置についているだけに出馬すればサルコジ氏を脅かす存在になりそうだ。

極右政党、国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(42)は34%で39位。02年の大統領選では父親のジャンマリ・ルペン氏が決選投票に進出してシラク氏と争ったが、今回も決選進出を予測する調査結果がある。(後略)【4月20日 山口昌子 産経】
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これまでのフランス大統領は、アメリカ大統領とは比べられないものの、国際政治における存在感は格別のものがあります。イギリスと異なり、アメリカに安易に追随しない姿勢がアメリカからは煙たがられることも多々ありましたが、欧州だけでなく、旧植民地が多いアフリカでの影響力も大きなものがあります。
当然、現在のIMFトップという地位からも、欧州経済危機への対応に大きな影響が予想されます。
下ネタ的な三面記事のようですが、今後の世界へ影響は小さくありません。

スキャンダルが続く仏政界
それにしても、フランス政界は有力政治家のスキャンダルが続いています。
かつて与党内でサルコジ大統領のライバルだったドビルパン前首相も、サルコジ大統領との確執を背景に、虚偽告発の罪に問われました。

台湾へのフリゲート艦輸出に絡む裏金がルクセンブルクの金融機関クリアストリームの口座に振り込まれたとして捜査当局が入手した口座リストにサルコジ氏(当時は内相)の名前が含まれていましたが、後にリストは偽造と判明。当時のドビルパン外相がサルコジ氏失脚を狙って偽リストを当局に流すよう命じたと疑われた事件でした。

昨年1月にドビルパン前首相は無罪判決を勝ち取り、12年大統領選立候補に向けて動き出したとも報じられていました。
“ドビルパン氏はシラク前大統領の直系。02~04年に外相を務め、米英のイラク攻撃に反対する外交活動を展開して注目を集め、シラク氏の後継者として急浮上した。05~07年には首相を務めた。サルコジ氏と07年大統領選での右派候補の座を争ったが、首相として打ち出した若者向け雇用政策に反発したデモに見舞われて人気を落とし、立候補を断念した。だが、次期大統領選への意欲を隠さず、パリ郊外の移民街で住人と対話するなど、数カ月前から活発な活動を展開している。”【10年1月28日 朝日】

なお、ドビルパン前首相は昨年6月に新たな政治勢力「連帯の共和国」の創設を宣言。事実上の新党の結成といえ、中道に軸足を置く政治勢力の結集を呼びかけました。
“ドビルパン氏は現時点では右派与党の民衆運動連合(UMP)に籍を置いているものの、中道政党や社会党などからも参加をつのり、UMPの分裂を促す構えだ。2012年の大統領選出馬への土台づくりだが、UMP内でサルコジ離れの動きはまだ広がっていない。”【10年6月20日 朝日】とのことでしたが、最近あまり話題を目にしません。失速したのでしょうか。

ドビルパン前首相が師事していたシラク前大統領も、サルコジ氏をひどく嫌っていたそうですが、そのシラク前大統領も、パリ市長を務めていた際、自身の政党(共和国連合)の党員をパリ市の「架空職員」として雇用し、給与を党の資金に流用したとされる職員架空雇用疑惑で09年10月に起訴されています。

また、日本の旧東京相和銀行(現東京スター銀行)に巨額の隠し口座を持っていたとされる疑惑もありました。ドビルパン前首相のクリアストリーム疑惑の捜査過程で、「シラク前大統領が東京相銀に92年から口座を所有していた」「シラク氏は同口座に定期的な振り込みを受け、総額3億フラン(約65億円)に達していた」との書類・メモが出てきたのが発端となりました。
過去に秘密口座の存在を調べた関係者が不審な自動車事件に遭遇するなどのこともあったようです。

相撲好きの親日家として有名なシラク前首相ですが、昨年2月頃には、この事件でフランス判事が日本側に捜査協力を要請しているという記事もありました。その後の展開は把握していません。

政界に魑魅魍魎が跋扈しているのは日本も同様ですが、フランス政界も暗い闇を抱えているようです。
そうしたものが今回のストロスカーン専務理事の強姦未遂事件と関連しているとは言いませんが。

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台湾  強い親日的傾向 現在の関心事は中台接近 総統選挙で与野党拮抗

2011-05-14 21:20:36 | 国際情勢

(中国の台湾進攻を想定して、高速道路での発着訓練を行う台湾戦闘機 4年ぶりの訓練ですが、経済的に中国に接近しても「台湾の主権は守る」という国民党・馬政権のアピールだそうです。“flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/5621896956/

日本好きの国民性や、企業のメンツ
台湾が日本による統治の歴史のためと言うか、それにもかかわらずと言うべきか、親日的であることは周知のところであり、先の東日本大震災でも突出して多くの義援金が寄せられたことも話題になっています。

****台湾:震災支援、突出の謎…親日派多く企業のメンツも*****
東日本大震災で台湾からの義援金が今月13日までに48億5374万台湾ドル(約139億円)になり、1人当たりでは恐らく世界最大とみられる。日本への支援の背景には、日本好きの国民性や、企業のメンツなどがありそうだ。

台湾の人口は2300万人で1人当たりの義援金は約600円。人口約4900万人の韓国が聯合ニュースの集計で計556億ウォン超(約42億円超、4月中旬現在)、人口3億人の米国で同国赤十字社に寄せられた義援金が1億2000万ドル(約99億円、3月末現在)であるのに比べても台湾の突出ぶりが目を引く。

台湾は1895~1945年まで日本が統治した。李登輝元総統のような日本語教育を受けた世代が今も活躍し親類関係も多い。経済的な結びつきも深く、長い。対日貿易総額は中国に次ぐ2位、日本からの輸入額は1位だ。「台湾企業は日本のおかげで大きくなれたという意識が強い」(外交関係者)。義援金は恩返しの意味を含む。また、寄付は実名公表が多く、企業のメンツもあって額が増えた。

昨年の訪日者数は、韓国、中国に次いで多い約127万人。人口の5・5%が日本に行ったことになる。3時間前後で気軽に行ける日本は、身近で治安が良く、漢字が読めて便利なのだ。昨年1月の世論調査では、52%が「最も好きな国」に日本をあげ、2位の米国(8%)、3位の中国(5%)を大きく引き離した。

台湾(中華民国)は72年に日本、79年に米国と外交関係が無くなった。しかし、経済や安全保障の面で日米は特別な存在のままだ。重要性と親近感から海外ニュースは日本や米国関連ばかり。地元テレビ局と同様にNHKも見られる。東日本大震災の当日、台湾人の多くは深夜までNHKの生中継を見ていた。

台湾の世新大学放送管理学部の羅慧※助教授は支援拡大の背景を、台湾でも地震が頻発することによる日本への共感のほか▽情報発信力の高い芸能人によるチャリティー番組▽台湾メディアの特徴でもある扇情的な報道--が影響し「日本を助けなければ、と感情的に揺さぶられた」と分析する。民衆の反応を受け、馬英九総統ら政治家たちが熱心に支援したのも効果的だった。

中国の存在感の陰に隠れがちな台湾にとって、人道支援は国際社会で存在感を示す重要な機会でもある。今年2月のニュージーランド地震の際は、日本より先に救助隊を現地に派遣した。
 ※は「雨」の下に「文」【4月18日 毎日】
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東日本大震災の被災者への台湾からの巨額の義援金の御礼ということで、ゴールデンウイーク期間中には多数の国会議員が謝礼のため訪台したそうです。

業績もさることながら、人柄によるところも大きい
そうした中で、ひときわ日本とのつながりを印象づけたのが、日本統治時代の八田与一技師の功績をたたえる記念公園完成に関するニュースでした。

****八田与一技師:「台湾農業の恩人」…台南に記念公園****
日本統治時代の台湾南部で、アジア一の規模を誇った烏山頭(うさんとう)ダムなどのかんがい施設を建設した八田与一技師(1886~1942年)の功績をたたえる記念公園が8日、台南市官田区嘉南村のダム近くに完成した。式典には、馬英九総統や八田技師の故郷・石川県出身の森喜朗元首相ら日本の国会議員20人以上が駆け付けた。
記念公園は馬総統が日台関係重視の象徴として計画。2年がかりで完成した。土台だけ残っていた八田技師の住んでいた日本家屋を復元し、一帯を公園とした。

馬総統は「不毛地帯を穀倉地に変えた八田技師の偉業をしのびたい。八田技師の物語と記念公園が新たな日本との懸け橋となる」と述べた。
東日本大震災では、台湾からの義援金が8日までに約58億台湾ドル(約163億円)に上り、日台のつながりの深さが注目されている。森元首相は「日本を友人として大事にしている証し」と感謝した。

八田技師は干ばつに悩む嘉南平野に1930年、10年がかりで烏山頭ダムと網の目の広がる給排水路のかんがい施設を建設。嘉南平野を台湾最大の穀倉地帯に変えた。八田技師は「台湾農業の恩人」と敬愛され、地元小学校の教科書でも紹介されている。【5月8日 毎日】
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日本では“八田与一技師”はあまり馴染みがない人物です。
戦前、女学校時代まで台南・嘉義で生活していた知人女性に訊くと、嘉南平野一帯に16,000kmにわたって細かくはりめぐらされた水利設備“嘉南大圳(かなんたいしゅう)”の名前は承知していましたが、“八田与一”の名前には覚えがないとか。

台湾での評価については、“現在烏山頭ダムにある與一の銅像はダムの完成後の昭和6年(1931年)に作られたものであるが、中華民国の蒋介石時代に日本の残した建築物や顕彰碑の破壊がなされた際には、地元の有志によって隠され、昭和56年1月1日(1981年)に再びダムを見下ろす元の場所に設置された。このように與一が顕彰される背景には、業績もさることながら、土木作業員の労働環境を適切なものにするため尽力したこと、危険な現場にも進んで足を踏み入れたこと、事故の慰霊事業では日本人も台湾人も分け隔てなく行ったことなど、彼の人柄によるところも大きく、エピソードも多く残されている。”【ウィキペディア】とのことで、誠実な人柄だったようです。

現場の最前線に立って自らも汗をかきながら、現地の人々と寝食を共にする働きぶりは日本人に共通する特徴のようで、スリランカを旅行した際も、現地の人がODA事業などにあたる日本人技術者のその点を、他の外国人とは違うとしきりに褒めていました。
信頼というのは、こういうところから生まれるのでしょう。

支持率拮抗
かつての日本とのつながりに対し、現在の台湾の最大の関心事は、大陸・中国との関係です。
経済的中台接近を強力に進めて、台湾経済の浮揚をはかる国民党政権・馬英九総統ですが、来年1月14日の投開票が予定されている台湾総統選での争点は、この中国との距離をどう保つかという点にあります。

****台湾総統選:民進党、蔡主席を擁立…馬総統と一騎打ち*****
来年1月14日の投開票を予定する台湾総統選で27日、与党・国民党は馬英九総統(60)を、野党・民進党は同党主席の蔡英文氏(54)をそれぞれ総統候補に決定した。総統選初の女性候補となる蔡氏は、過去1年半にあった立法委員(国会議員)補欠選挙や地方首長選挙などで善戦を続けており、支持率低迷にあえぐ馬総統は苦戦を強いられそうだ。

 ◇初の女性候補
民進党は、総統候補決定のための世論調査を25、26の両日に実施。蔡氏の支持が元行政院長の蘇貞昌氏(63)と元同党主席の許信良氏(69)を上回った。同時に行われた蔡氏と馬総統の勝利予想を聞いた調査では、蔡氏42.50ポイントに対して馬総統35.04ポイントと蔡氏が優勢だったという。
民進党候補に決まった蔡氏は27日、「皆で団結して勝つという目標が今、始まった」と意気込んだ。一方、再選を目指す馬総統は同日、「並大抵でない困難な責任を感じている」と危機感を強めた。

馬総統は08年5月の就任以来、中国との関係改善を進めてきた。対中貿易に支えられた好調な経済などを背景に国際的な活動の幅が広がるなど成果は大きい。しかし、急速な対中傾斜に民衆から懸念が上がり、09年8月の大水害の対応の遅れから指導力と人気に陰りが出始めた。

蔡氏は総統選に向けて「改変」と「新」をスローガンに掲げ、貧富の格差の是正を訴える。対中政策では「安定、平和的な関係維持」を主張するが、過去の中台間の取り決めに「とらわれない」としている。また、民進党は「台湾独立」を綱領に掲げており、中国との関係悪化も予想される。

しかし、中国は既に民進党の2度目の政権交代も織り込み済みとみられる。民進党の地盤が固い台湾南部で経済交流の推進を図るなど、民進党支持層の取り込みを図っているとされる。【4月27日 毎日】
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昨日のTV報道では、最新世論調査で両候補の支持率は1ポイント差しかなく、殆んど拮抗しているとのことでした。
【朝日】報道によれば、支持層にかなり違いが見られるとか。

****女性は馬氏、若者は蔡死 台湾の総統選 傾向くっきり*****
再選をめざす馬英九(マー・インチウ)総統(国民党)は女性に人気で、対する蔡英文(ツァイ・インウェン)・民進党主席は若者が支持している。来年1月の台湾総統選について、こんな世論調査の結果が出た。

台湾民意学会が5月6、7日に電話で調査し、13日発表した。女性の支持率は馬47・3%、蔡33・7%で、はっきり差がついた。男性の支持率は馬41・1%、蔡42・9%。「台湾初め女性総統」を狙う蔡主席だが、昨年、新北市長選に立候補した際も女性の支持が意外に伸びなかった。
年齢別支持率は20~29歳の層で差が開き、蔡50・9%、馬33・6%。これもかねて両党の傾向として指摘される。30、40歳代では馬総統支持が多い。選挙では政策が問われる一方、容易には変わらない支持構造もある。【5月14日 朝日】
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馬総統の甘いマスクが女性に受けるのか、女性は同性候補に厳しいのか・・・。
それはともかく、馬政権の対中接近政策もあって台湾経済は2010年の成長率が10%を超えるそうです。
ただ、一般労働者の所得はここ数年殆んど増加しておらず、日本同様“所得格差”が問題化しています。
また、工場の大陸移転や大陸からの製品流入で、中小企業や貧困層では中台接近政策への批判が強いとのTV報道も目にしました。

【「台湾の主権は守る」と「中国台湾省」の間
対中関係については、経済面での中台接近で、将来台湾は中国に呑みこまれてしまうのではないか・・・という安全保障上の不安が最大の問題となります。
国民党・馬政権は、先日、中国軍の台湾進攻を想定して高速道路を滑走路として代用し戦闘機を発着させる訓練を4年ぶりに実施しました。これは、経済的に中国に接近しても、安全保障面では「台湾の主権は守る」との姿勢を有権者にアピールする狙いと見られています。

一方、野党・民進党側は中国との対立激化が懸念されていますが、これを打ち消す狙いもあってか、中国への柔軟な姿勢を見せています。

中国は上記記事にあるように、“中国は既に民進党の2度目の政権交代も織り込み済みとみられる” 【4月27日 毎日】と、用意周到ですが、相変わらず強硬な姿勢も崩してはいないようです。

****台湾:「中国台湾省」名称 WHOに抗議****
台湾野党・民進党は9日、世界保健機関(WHO)が昨年9月に加盟国に対し、台湾の名称について中国の一部であることを意味する「中国台湾省」を使うよう求める内部文書を配布したことを明らかにした。台湾外交部(外務省)は同日中にWHOに「台湾の主権をないがしろにしている」と抗議した。
さらに馬英九総統は10日、「我々を矮小(わいしょう)化する名称だ」とWHOに強い不満を表明。中国にも「WHOに圧力をかけたのは明らかで、台湾人の感情を傷つけた」と批判した。

この内部文書には、WHOと中国との間で05年に「中国台湾省」の名称を使う密約が交わされていたことが記されていた。文書には名称のほか「台湾を中国とは別の国と見なすべきでない」とも書かれていたという。
馬総統は08年の就任後、対中関係の改善を進めてきた。中国とWHOとの協議の末、09年からWHO年次総会へのオブザーバー参加を果たした。公式の場では、中国が台湾に配慮する形で、五輪参加の際の「中華台北」という名称が使われてきた。しかし、中国は各国に「一つの中国」を認めるよう圧力をかけ続けてきた。

一方、馬政権は内部文書の配布を当初から知っていたが、WHOへの参加を「国際社会での孤立から脱却する成果」と評価しており、公表しなかったようだ。民進党の暴露を受け、馬総統がすぐに抗議を決定した背景には、来年1月の総統選を控え、台湾人にとって最も敏感な主権問題に絡んで「中国に対して弱腰だ」との批判をかわす狙いとみられる。【5月10日 毎日】
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「中国台湾省」とは、随分刺激的な呼称です。

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パキスタン ビンラディン容疑者殺害で軋む対米関係 中国が接近 印パ関係悪化も再燃

2011-05-13 20:48:54 | 国際情勢

(急襲作戦中に故障し爆破されたヘリコプター残骸(後部回転翼) 特殊部隊がよく用いているUH-60 ブラックホークを改良してステルス性能とエンジン音静粛性を供えた、これまで公開されていない機種ではないかと話題になっています。事故の現場からは「分厚くコーティングされた布のような物」がたくさん発見されているとも。また、残骸の一部がパキスタンから中国に渡る危険も・・・との警戒もアメリカにあるとか。それにしても最新秘密技術にしては、保管状況がぞんざいに見えます。
76年にソ連から当時の最新鋭機のミグ25で亡命してきたベレンコ中尉亡命事件でも、自衛隊がスクランブルをかけたものの途中で見失い、函館着陸まで亡命機を補足出来なかった・・・ということがありましたが、あのときも空港に置かれたミグはこんな感じでした。 写真は“flickr”より By asia blues http://www.flickr.com/photos/asiablues/5697378496/ )

【“無能”なだけか、それとも“裏切り”か?】
パキスタンの行動にはわかりにくいものが多いことは、このブログでも再三取り上げています。
アメリカの要請に応じてイスラム過激派掃討作戦を実行しながらも、軍部とイスラム過激派の繋がりが常に噂されること。国内の強い反米世論に配慮しつつも、最大の支援国であるアメリカとの関係は維持せざるを得ないことなど・・・。

政治的基盤の弱いザルダリ大統領より国軍の方が実権があり、更に、軍のなかでもイスラム過激派との強い繋がりが指摘されるパキスタン軍情報機関(ISI)の力が強いという事情も、上記の“わかりにくい”行動の背景にあります。

ウサマ・ビンラディン容疑者殺害でも、予想されたようにパキスタンの関与が話題を集めています。
ビンラディン容疑者が首都近郊の軍事都市に住んでいたことを知らなかったのか、知っていたとしたらどのレベルまでか?軍トップのキヤニ陸軍参謀長は?ザルダリ大統領は?
また、アメリカ軍の襲撃を事前に了解していたのか?

ビンラディン容疑者の存在を知らなかったと言えば“無能”ということに、知っていた、あるいはかくまっていたということになると“アメリカへの裏切り”となります
アメリカの襲撃についても、知らなかったとして“主権侵害”を主張すれば、これまた“無能”との評価にもなりますが、知らされていたとすれば、国内的に対米従属の批判にさらされます。
反米世論を考慮して「パキスタン領内に入ってウサマを捕まえてかまわない。ただし、重大な国家主権の侵害行為だから、我々は何も知らなかったと言わせてもらう」という対応が考えられますが、オバマ米大統領は急襲作戦にあたり、パキスタン軍や警察との交戦を想定して米軍特殊作戦チームの要員増強を指示していたとの報道もあります。

パキスタンに限らず、どこの国でも相矛盾するような行動、不可解な行動は常にあります。
ですから、これが内戦のニュースなどでしか名前を聞くことがないような国際的影響力の小さい国であれば、「よくわからない」ですみますが、パキスタンはアメリカの進める対テロ戦略の要となる国であり、何よりれっきとした核保有国です。しかも隣国の同じく核保有国インドと歴史的対立関係にあり、これまでも軍事衝突を繰り返している国です。「よくわかない」ではすまされないものがあります。

当然ながら、これまでも無人機攻撃、民間人犠牲者の増大などで悪化していたアメリカとの関係は、一層緊張したものになっています。

****パキスタン:きしむ対米関係 ビンラディン容疑者潜伏で*****
国際テロ組織アルカイダの最高指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者(54)の殺害を巡り、同容疑者が潜伏していたパキスタンと、殺害を単独で強行した米国の関係がきしみを立てている。「対テロ戦」の盟友である米国とパキスタンの相互不信が噴き出した形だ。しかし、米国はアフガニスタン安定や大量破壊兵器の拡散防止に核保有国パキスタンの協力を必要としている。パキスタンも、中国やロシアとの接近をちらつかせるが、米国の援助を必要としている。米・パキスタン両国は腹の探りあいを続けながら、殺害で傷を負った関係の修復を図ることになりそうだ。

 ◇国軍のメンツつぶされ「主権侵害だ」
殺害作戦はパキスタン軍のメンツをつぶした。潜伏先が首都イスラマバード近郊の軍駐屯地の街だった上、急襲作戦を実施した米軍ヘリの飛来をパキスタン軍が見逃したからだ。軍トップのキヤニ陸軍参謀長は5日、軍幹部会議で「主権侵害だ。同様の事件が再発したら対米協力関係を見直す」と警告した。ギラニ首相も9日の議会演説で「主権侵害」に言及し、軍の反米的な姿勢を踏襲した。
インドのシンクタンク「防衛研究分析研究所」(IDSA)のスムルティ・パタナイク上席研究員は「潜伏はパキスタン軍トップの了解なしにはあり得ない。オバマ米大統領はそんな相手国(パキスタン)を信用しておらず、事前通告なしに作戦実施に踏み切ったのだ」と分析する。(中略)

 ◇離反はせず?
だが、パキスタンが今後、米国からの離反を目指すかどうかについては懐疑的な見方が多い。インド政府筋は「米・パキスタン関係は曲折はあるものの50年代から続いてきた。(世界最大の軍事大国である)米国からの支持を維持することが国益にかなうとパキスタン軍側も考えている」と指摘する。
敵対する隣国・インドも米国のパキスタンへの関与継続を望んでいる。「ソ連のアフガン撤退(89年)後に米国がこの地域への関与をやめ、その後の混乱をもたらした教訓を米国の政策決定者たちは肝に銘じている。ビンラディン容疑者がいなくなったからといって、米国がこの地域から撤退するのは危険だ」(インド政府筋)との認識があるからだ。

 ◆圧力と同盟継続 米国は両面にらみ
米政府はビンラディン容疑者殺害後、パキスタン政府に対して国内の「テロ支援ネットワーク」の解明を求めるなど圧力を強める一方、同盟継続のメッセージを送り続けている。国際テロ組織による「核テロ」の可能性を警戒する米国にとって、核保有国パキスタンの協力が欠かせないためだ。(後略)【5月12日 毎日】
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【「中国は、パキスタン国民にとって刺激と力の源泉だ」】
悪化する対米関係の一方で、中国がパキスタンに接近しています。パキスタン側も、アメリカを牽制するうえで中国との接近をちらつかせているとも見えます。
更に、こうした動きは、パキスタンの宿敵でもあり、中国とも領土問題を抱えるインドを刺激しています。

****中国、孤立するパキスタンに接近 印が強い警戒感****
国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者の殺害をめぐり、容疑者のパキスタンでの潜伏生活を支援していたのではないかとしてパキスタンが国際的に孤立感を強める中、中国が友好国パキスタンへの強力な支持を表明し、両国関係の蜜月ぶりをアピールしている。中パ両国と微妙な関係にあるインドは警戒感を強めている。

「米国とパキスタンが不和の中、存在を見いだす中国」。インドでは、今週に入ってから、ビンラーディン容疑者殺害をめぐる中国のパキスタン支持を注視する報道が相次いでいる。
きっかけは、中国のトーンの変化にある。中国外務省報道官は2日の会見で、容疑者の殺害を「国際的なテロとの戦いにおいて重要で前向きな展開だ」として米政府に理解を示した。しかし、「パキスタンの立場を理解し支持する」(3日)、「主権と領土は尊重されるべきだ」(5日)と、徐々にパキスタンの主張に歩調をあわせていった。
中国の支持表明に対し、ギラニ首相は9日の演説で、「中国は、パキスタン国民にとって刺激と力の源泉だ」と中国を持ち上げた。また、政府が同容疑者殺害以降「機能マヒ」(パキスタン紙)と揶揄(やゆ)される中、ギラニ首相は17日から4日間の訪中を予定通り行い、民生原子力協力などについて協議するという。

今回の中国によるパキスタン擁護について、インド国内では「驚きに値しない」(外務次官経験者)などとして冷静に受け止められている。だが、内心穏やかでないはずだ。
中国問題に詳しい関係筋は、インドが警戒する背景のひとつとして、同国北部カシミール地方のパキスタン管理地域における最近の中国の開発加速をあげる。中国の投資は2000年代後半に飛躍的に増加したという。「将来的に中国が同地域統治を視野にいれた動き」ともいわれ、今回の支持表明も、パキスタン内の親中ムード醸成の一環ではないかとの見方も出ている。

一方、インドにとって、同容疑者殺害はパキスタンが「テロリストの聖地になっている」との確信を強くするものだった。だが、パキスタンを必要以上に追い込めば、軌道に再び乗りつつある印パの対話路線にパキスタンが反発し、結果的に中国がさらなる影響を及ぼす余地を作りかねない。インドは当面抑制的な対応を迫られそうだ。【5月12日 産経】
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【「インドには米軍のような作戦をする能力がないのか」】
こうしたパキスタン・中国接近を牽制するかのように、インドはシン首相がアフガニスタンを訪問して関係強化を図っています。アフガニスタンについては、パキスタンも対インド戦略から、米軍撤退後の影響力強化を狙っており、パキスタン軍がタリバンなどとの関係を維持しているのはそのためと見られています。
結果的に、印パ関係悪化といういつもの流れになっています。

****印パ関係また悪化****
テロ対策巡り不信再燃
国際テロ組織アルカイダの指導者オサマ・ビンラディン容疑者がパキスタンで殺害されたことで、同国とインドの雪解けムードにブレー牛がかかっている。インドのシン首相が12目、アフガニスタンを6年ぶりに訪問した。パキスタンに不信感を抱くインド・アフガン両国で関係強化を図る狙いがあるとみられる。

容疑者殺害の直後、パキスタンと歴史的な対立関係にあるインドでは、国内でのテロ行為が疑われるパキスタン在住の過激派指導者らに対し、「インドには米軍のような作戦をする能力がないのか」(地元紙パイオヰマハ)などと、強硬手段を求める声が出始めだ。
名前が挙がっているのは、2008年11月のムンバイ同時テロの首謀者とされるパキスタンのイスラム過激派「ラシュカレトイバ」の創始者ハフィズ・サイード氏や、犯罪組織の首領でテロヘの関与も疑われるダウド・イブラヒム容疑者ら。いずれもパキスタンで訴追を免れている。

硬化する世論に押されて、インド陸軍のシン司令官は「陸海空軍には米軍同様の作戦を行う能力がある」と発言。政治判断次第で作戦実行が可能であると強調した。この発言に、パキスタン側が軍の声明で「インドによるいかなる愚かな冒険に対しても、強い反撃が加えられることになる」と強く反発。インド側では「パキスタン軍は、インドの脅威に世論を向けることで、失われた威信の回復を狙っている」(タイムズ・オブ・インディア紙)などと警戒感が広がった。

両国関係はムンバイテロ以降、インドがパキスタン当局の関与を疑い悪化。和解のための包括対話も中断した。しかし、相次ぐ汚職事件で逆風にさらされているシン首相はパキスタンとの関係改善で劣勢の打開を模索し始め、2月には対話再開を宣言。3月末には、パキスタンのギラニ首相を招いてクリケットの試合を観戦するなど友好ムードを演出した。

ところが、ビンラディン容疑者殺害で、インドではパキスタン当局のテロヘの関与を疑う見方が再燃。野党・インド人民党は「パキスタンがテロを支援する限り、まともな対話はできない」と批判を強める。当面は両国関係の改善は停滞しそうな見通しだ。

一方、シン首相は12日、アフガンを訪問。カルザイ大統領らと会談し、13日には議会での演説を予定している。外国首脳のアフガン訪問は、治安上の懸念から、短時間、電撃的に行うのが一般的で、今回は異例の長時間滞在となる。
カルザイ政権は元々、パキスタンに警戒感を抱いてきた。しかし、反政府武装勢力タリバーンとの和解を目指す中で、タリバーンに影響力があるとされるパキスタンと和解に関する協議機関設置で合意するなど連携強化にかじを切っていた。
ビンラディン容疑者殺害で、米軍のアフガン撤退へ弾みがつく。インドとしては、撤退後の「力の空白」を突いてパキスタンが影響力を拡大するのを阻止したい考えだ。【5月12日 朝日】
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“インドで爆弾テロなどを実行するためパキスタンで訓練されたテロリストのインドへの越境を、パキスタンの情報機関、3軍統合情報部(ISI)が手助けしていることが分かった。内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米外交公電から判明した。”との報道もインドではなされています。【5月9日 毎日】

インドがアメリカと同様な、パキスタン国内のテロ容疑関係者に対する襲撃作戦を行えば、印パ関係は一気に火を噴きます。今回のアメリカの急襲作戦とは全く異なる、核戦争の危険すらはらんだ展開になります。
さすがにインドもそんな危険を冒すことはないでしょうが、物騒な話です。

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ボスニア・ヘルツェゴビナ  セルビア人共和国で分離志向の住民投票実施の動き

2011-05-12 21:36:20 | 国際情勢

(ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボの内戦犠牲者の墓地 その多くは若者であり、家族のために食料や水を求めて外出しようとして殺された人々です。 “flickr”より By Graham Spicer http://www.flickr.com/photos/grahamspicer/4956069549/

映画「サラエボの花」と「ノー・マンズ・ランド」】
旧ユーゴスラビアの解体によって生まれたボスニア・ヘルツェゴビナは、その成立において“ボスニア内戦”という過酷な運命にみまわれました。
“ボスニア内戦”を扱った映画「サラエボの花」は、収容所でセルビア人勢力にレイプされ身ごもった女性の苦しみ、そうして生まれた娘と母との確執を扱ったものでした。

先日、TVで偶然、やはり“ボスニア内戦”を扱った映画「ノー・マンズ・ランド」の後半部分を見る機会がありました。
“1993年6月。ボスニア紛争の最前線。霧で道に迷ったボスニア軍の兵士たち。いつの間にか敵陣に入り込み、気づいたときにはセルビア軍の攻撃が始まっていた。唯一の生存者チキは、なんとか塹壕にたどり着き身を隠す。そこは、ボスニアとセルビアの中間地帯“ノー・マンズ・ランド”。偵察に来たセルビア新兵ニノと老兵士はボスニア兵の死体の下に地雷を仕掛けて引き上げようとする。その瞬間、隠れていたチキが二人を撃ち、老兵士は死に、ニノは怪我を負う。チキとニノの睨み合いが続く中、死んだと思われていたボスニア兵が意識を取り戻す。しかし、少しでも体を動かせばさっき仕掛けた地雷が……。チキはまさに身動きできない仲間を気遣いつつも敵兵ニノに眼を光らせるのだったが……。”【allcinemaより】

映画は、少しでも体を動かせば地雷が爆発するという極限状態のもとで、ボスニア・セルビアの対立だけでなく、国連PKOの無責任ぶり、事件に群がるマスコミなどを含めて、戦争の愚かさ・不条理をブラックコメディ的に描いています。

【ボスニア内戦とデイトン合意】
“ボスニア内戦”の経緯を10年10月6日ブログ「ボスニア・ヘルツェゴビナ 紛争から15年、分断か融和か?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20101006)から再録すると以下のとおりです。

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【三つ巴の紛争から15年】ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争を【ウィキペディア】から概略すると、“ユーゴスラビア解体の動きの中で、ボスニア・ヘルツェゴビナは1992年に独立を宣言したが、独立時に約430万人の人口のうち、民族構成の33%を占めるセルビア人と、17%のクロアチア人・44%のボシュニャク人(ムスリム人)が対立し、セルビア人側が分離を目指して4月から3年半以上にわたり戦争となった。両者は全土で覇権を争って戦闘を繰り広げた結果、死者20万、難民・避難民200万が発生したほか、ボシュニャク人女性に対するレイプや強制出産などが行われ、第二次世界大戦後のヨーロッパで最悪の紛争となった。”ということになりますが、対セルビア人だけでなく、クロアチア人とボシュニャク人の間の争いもあり、三つ巴の争いでした。

この紛争は95年の「デートン合意」で一応終結しました。
「デートン合意」では、ボスニア・ヘルツェゴビナはイスラム教徒(ボシュニャク人)とクロアチア系勢力で構成する「ボスニア・ヘルツェゴビナ連邦」とセルビア人の「セルビア人共和国(スルプスカ共和国)」が並立する単一の主権国家とされ、国会や行政府は両勢力の共同運営で、議会議員も連邦と共和国の各議会から選出、内閣は連邦と共和国の3民族代表で構成する幹部会により指名される形になっています。
現実的には二つの「国家内国家」に分割され、今も中央政府の基盤強化は進んでいません。
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1995年7月には、国連によって「安全地帯」に指定されていたスレブレニツァで発生した大量虐殺事件「スレブレニツァの虐殺」も起きています。この事件では、ラトコ・ムラディッチに率いられたスルプスカ共和国軍によって推計8000人のボシュニャク人が殺害されたとされています。彼らを保護する立場にあったオランダ軍の国際連合平和維持活動隊が、軍事的に威嚇するセルビア人勢力のスルプスカ共和国軍にボシュニャク人を引き渡さざるを得なかったという点で、国連PKOに関しても問題も提起した事件です。

住民投票は「憲法とデイトン合意に対する明らかな挑戦」】
分離志向の強い「セルビア人共和国(スルプスカ共和国)」においては、以前から「デイトン合意を支持できるか、国民の声を問う必要がある」として住民投票を実施しよういう動きがあり、デイトン合意の枠組みを守ろうとする国際機関・上級代表事務所と対立があります。
そのあたりの事情も、10年10月6日ブログでも取り上げていますが、再び同様の住民投票実施の動きが顕在化して緊張が高まっているようです。

****ボスニア・ヘルツェゴビナ:再び緊張 和平合意の是非問う住民投票巡り****
民族対立の火種を抱えるボスニア・ヘルツェゴビナが再び、混迷の度を深めている。ボスニア和平の枠組み「デイトン合意」(95年)の是非を巡り、分離志向のセルビア系議会が住民投票の実施を承認。同国を管理する国際機関のインツコ上級代表が撤回を求めて「最後通告」を突き付けるなど、緊張が高まっている。

住民投票はセルビア人共和国のドディック大統領が提唱。同氏は、ボスニア内戦(92~95年)の戦犯などを扱う中央政府の裁判所が、セルビア系住民への偏見でゆがめられていると主張。共和国議会は先月、裁判所の正統性を問う住民投票の実施を賛成多数で承認した。投票は6月中旬の予定。
中央政府の裁判所はデイトン合意に基づき、上級代表事務所の主導で設置、運営されてきた。このため、インツコ氏はセルビア人共和国の住民投票を「憲法とデイトン合意に対する明らかな挑戦」とみなしている。

地元メディアによると、インツコ氏は今月5日、首都サラエボで開かれた和平履行協議会で、セルビア人共和国に住民投票の撤回を要求し、受け入れなければ投票を無効化すると通告したことを明らかにした。上級代表事務所の報道官は9日、「代表は米ニューヨークの国連安保理協議から戻る今週末ごろに行動を起こすだろう」と毎日新聞に語った。
ボスニア和平の最高責任者であるインツコ氏にはデイトン合意の最終解釈権など強力な権限が与えられている。ただ、セルビア人共和国が同氏の権限を無視して住民投票を強行する可能性もある。

ボスニア・ヘルツェゴビナは、ボスニア人(イスラム教徒)とクロアチア系住民を中心とする「ボスニア連邦」と、セルビア人共和国で構成。クロアチア系住民にも自治拡大などを求める動きがある。旧ユーゴスラビアの解体に伴い3民族が争ったボスニア内戦は死者20万人、難民200万人といわれるなど、第二次大戦後の欧州で最悪の紛争と呼ばれる。【5月10日 毎日】
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同様の動きは以前からありますので、今回の住民投票が実施されるのかどうかはわかりません。
ただ、一旦憎しみあい、恐れあうようになった人々を従来の国家の枠組みに閉じ込めておいても混乱しか生まれてこないのでは・・・・、一緒に暮らすのがいやな住民が、なにも無理してひとつの国家にこだわることもないのでは・・・、所詮国家は個人が生きやすいようにいくらでも作り変えればいいのでは・・・というようなことを08年2月27日ブログ「ボスニア・ヘルツェゴビナ コソボ独立はパンドラの箱をあけたのか?」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080227)で書きましたが、今でも大体同じように考えています。

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