孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  プーチン首相「国民戦線」創設 メドベージェフ大統領との“すきま風”云々も

2011-05-17 22:54:38 | 国際情勢

(ロシア・モスクワの赤の広場で9日に行われた大祖国戦争(旧ソ連の対ドイツ戦)の戦勝66周年を祝う軍事パレードを、そろって参観するメドベージェフ大統領とプーチン首相 “flickr”より By urbancn http://www.flickr.com/photos/urbancn/5702760487/

プーチン首相は使徒パウロの生まれ変わり?】
さしものプーチン首相の支持率も最近低下してきているとの調査もありますが、一方で、プーチン首相を使徒パウロの生まれ変わりとして崇める新興宗教も登場したとか。

****プーチン首相を聖人と崇めるロシアの新興宗教****
キリスト教初期の歴史に足跡を残す使徒パウロの生まれ変わりとして、ロシアのウラジーミル・プーチン首相を崇める新興宗教の一派が同国に登場した。

11日の週刊誌Sobesednikによると、ロシア西部ニジニーノブゴロドに拠点を置くこの宗派は、地元鉄道の元職員で前科のある「聖母フォティーナ」と名乗る女性が率いている。
この創始者によると「聖書によると使徒パウロは最初は軍の司令官だった。プーチン首相もKGB時代には邪悪なことをしていた。しかし大統領になって彼はパウロのように聖なる精神で満たされ、自分の仲間たちを導くようになった」のだと言う。

信徒の数は報じられていないが、同誌が取材したドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「こういう宗教集団は聞いたこともない。彼らがそれほどまでに首相の仕事を高く評価しているとは素晴らしい」と、ロシアで最も支持率の高い政治家への個人崇拝を、驚きを持って受け止めた。ぺスコフ報道官はさらに「けれど大事な十戒のひとつも覚えておこう。『誤った偶像を崇拝してはならない』」と付け足した。

旧KGBの元スパイで前大統領、現在は首相のプーチン氏に対する尊敬を示すグループや組織はロシアに多く、さらにプーチン氏について歌ったポップスや、プーチン・ブランドのウォッカ、プーチン氏をテーマにしたクラブ・パーティーまで登場しているが、ペスコフ報道官がやんわり説明したところによると、プーチン氏本人はあまりこうした状況を喜ばしく思っていないそうだ。【5月12日 AFP】
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“プーチン首相もKGB時代には邪悪なことをしていた”というのも、第三者的には面白いところですが、プーチン氏本人はあまり面白くないかも。

本格的な「政治の季節」】
それはさておき、相も変わらないメドベージェフ大統領とプーチン首相による「双頭体制」の行方の話。
12月の下院選と来年3月の大統領選に向けた本格的な「政治の季節」が始まり、動きも出てきたようです。

****プーチン氏動いた 選挙見据え「国民戦線」創設へ*****
年末の下院選と来春の大統領運を視野に、ロシアのプーチン首相が動き出した。自ら党首を務める最大与党「統一ロシア」を核に幅広い社会層の結集をめざす運動体「全ロシア国民戦線」の創設を表明。メドページェフ大統領との主導権争いとの臆測も出ている。

大統領へ布石?
プーチン氏は12日に南部ソチで開いた会合で、下院選での「統一ロシア」の比例代表名簿作りに「国民戦線」も加わるなどの基本原則を打ち出した。6月中の旗揚げを目指す。統一ロシアは今年に入って支持率を下げており、「国民戦線」の創設は下院選で安定多数を確保するための苦肉の策との見方が出ている。
統一ロシア幹部のグリズロフ下院議長は「国民戦線に約100の社会団体が加わる。大統領選での基盤にもなる」との見通しを示した。労組や退役軍人組織から富裕層の産業企業家同盟にまで及ぶが、「雑多な寄せ集め」との批判も強い。

プーチン氏は12日の会合で「大統領も国民戦線創設を支持している」と述べ、「双頭体制」の合意を強調。メドベージェフ氏も同日、国営テレビ局での会見で「戦線創設は正常な選挙手法だ。私の任務は国内政治に競争をもたらすことにあり、他の政治勢力にも同様の動きを促すだろう」と述べた。
ただ、次期大統領選にプーチン氏とメドベージェフ氏のどちらが出るかが最大の関心を集める中で、プーチン氏による突然の「国民戦線」主導は、大統領ポスト復帰への布石といった見方など、様々な臆測や批判も呼んでいる。(中略)

「次の大統領は私だ、というメッセージにほかならない」(反政権紙ノーバヤ・ガゼータのラトゥイニナ評論員)との受け止めも強い。プーチン氏が「大統領も支持している」と述べたことは、「双頭」間の意見の不一致をぼかすためだとの指摘も出ている。【5月15日 朝日】
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こうしたプーチン首相の動きの背景には、プーチン首相自ら党首を務める「統一ロシア」の支持率が低下していることがあると指摘されています。
“統一ロシアは下院450議席のうち315議席を占めるが、3月の地方選では得票率が50%を割り込み、07年の下院選当時に比べて20ポイント近く下げた。国民の間でプーチン氏と周辺が権力をたらい回しにしている現状に批判が強まっていることなどが原因とみられる。”【5月9日 毎日】

【「双頭体制」の“すきま風”】
“プーチン氏は12日の会合で「大統領も国民戦線創設を支持している」と述べ、「双頭体制」の合意を強調”とありますが、メドページェフ大統領は批判的との報道もあります。

****ロシア下院選、大統領選へ新組織 プーチン氏始動****
・・・・統一ロシアは下院で約7割の議席を握るが、最近の世論調査や地方選挙の結果からは12月の下院選での現状維持が困難な情勢とみられていた。首相は人民戦線の創設で統一ロシアの支持層を広げ、下院選での圧勝につなげる考えだ。

 ◆現大統領は批判
メドベージェフ大統領は13日、「権力の過度の集中は危険であり、過去には停滞か内戦につながった。特定の個人の下に権力を打ち立てる試みは近い将来、国とその個人に大きな問題をもたらす」とプーチン氏の動きを暗に批判した。

プーチン氏が現時点で権力基盤のてこ入れに動いた背景には、メドベージェフ氏が2期目続投への意欲をほのめかし、とりわけプーチン前大統領期に築かれた国家資本主義的な経済体制を批判して独自色を強めていたことがある。
たとえば大統領は4月、主要経済分野を牛耳る国営企業の民営化を加速するべきだとし、政府の閣僚が国営企業の幹部兼任をやめるよう命じた。これは国営石油ロスネフチの会長を兼ねていたセチン副首相ら忠実なプーチン派の面々に打撃を与える行為でもある。

これに対し、プーチン首相は下院の演説で「必要なのは何十年にもわたる安定した静かな発展だ。後先を考えない行動や、自由主義と社会的デマゴギーの混ざった軽率な実験ではない」とリベラル派への警戒をにじませ、国家主義の基本路線を強調していた。

 ◆狙いは実権保持
次期大統領選をめぐっては、「双頭政権」の両者が出馬の可能性を排除しておらず、観測筋の間では(1)プーチン氏の返り咲き(2)メドベージェフ氏の続投(3)双方の出馬(4)第3の候補擁立-と見方が錯綜(さくそう)している。
ただ、プーチン氏にとって重要なのは、大統領選のあり方について自らが裁量をもち、選挙後も実権を保持することだ。
「人民戦線」運動の成否はなお不透明ながら、メドベージェフ氏が特定の支持基盤をもたない状況で、プーチン氏が「双頭政権」の重心をいっそう自らの側に動かしつつあるのは間違いない。【5月16日 産経】
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上記記事にもあるように、経済の在り方については、両氏の考えには差があるようです。
メドベージェフ大統領は先月25日、モスクワ近郊スコルコボに先端技術産業の集積地を建設する計画の加速を指示するなど、資源輸出に依存してきた産業構造の改革に取り組む独自の姿勢をアピールし始めています。

“これまで二人は次期大統領選の候補者を話し合いで一本化する方針を繰り返してきたが、メドベージェフ氏は先月、中国テレビ局との会見で自らの判断で出馬を決める考えを表明。これをプーチン氏が「時期尚早」とたしなめるなど、微妙なすれ違いが関心を呼んでいる。”【5月9日 毎日】とのことです。

15日は、ロシアのイワノフ副首相ら5閣僚が北方領土の国後、択捉両島を訪問し、東日本大震災への人道支援など日本への友好姿勢を見せていたロシアが、領土問題では譲歩しない姿勢を改めて示していますが、これについても、“ロシアでは今年12月の下院選、来年3月の大統領選をひかえ、プーチン首相が今月6日、超党派が結束する「全ロシア国民戦線」の発足を呼びかけるなど存在感を強めている。主導権を握られた形のメドベージェフ大統領には、今回の政府代表団の国後、択捉島への派遣で指導力を誇示する狙いがあるとの見方もある。大統領は昨年11月、旧ソ連・ロシアの国家元首として初めて北方領土の国後島を訪れ、北方領土対策を積極的に進める姿勢を印象づけたが、この時も次期大統領選への再選出馬をにらんだ動きとの指摘が出ていた。”【5月15日 毎日】と、両氏の主導権争いが背景にあるとの指摘もあります。

メドベージェフ大統領とプーチン首相両氏は「対独戦勝記念日」の9日、モスクワ中心部の「赤の広場」で、恒例の軍事パレードをそろって参観しましたが、これについても“二人の間のすれ違いもささやかれるなか、協調路線の堅持を内外に示す狙いがあるとみられる。”【5月9日 毎日】とも。
ただ、軍事パレードをそろって参観するのは当然のことで、これ自体はそれほど深読みすることでもないでしょう。

いずれにしても、結論は、相も変わらず“よくわからない”というところです。
ただ、メドベージェフ大統領誕生の頃の“プーチン首相の操り人形”というイメージからすれば、最近の大統領の続投への意欲、プーチン首相との“すきま風”云々は、やや意外な感もあります。

コメント
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