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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル  オバマ米大統領提案の「67年境界線」を拒否

2011-05-26 23:00:32 | 国際情勢

(24日、米議会で演説するネタニヤフ・イスラエル首相 後ろはバイデン副大統領とベイナー下院議長 “flickr”より By urbancn http://www.flickr.com/photos/urbancn/5757947820/

イスラエルの反発を覚悟しつつも、アラブ諸国が賛同する「67年案」を持ち出す
中東諸国での民主化運動が高揚する状況下で、停滞する中東和平交渉に積極姿勢を見せることでアラブ諸国での反米感情が高まることを防ぐ意味合いもあって、オバマ米大統領は19日の演説でイスラエル・パレスチナ和平交渉について「(イスラエルがヨルダン川西岸を占領する第3次中東戦争以前の)1967年の境界線に基づき双方の境界を定めるべきだ」と主張、イスラエルに領土面での譲歩を求めました。

****中東和平:米大統領新政策…「アラブの春」反米化懸念*****
・・・・・背景にはムバラク政権の崩壊や、同様に和平を支持してきたヨルダンの不安定化といった事情がある。アラブ諸国での民主化のうねりがいつ何時、反米、反イスラエルへ向かうか分からないとの懸念もありそうだ。米主要調査機関のアラブ・イスラム諸国に対する最新世論調査でも反米感情は根強く、オバマ大統領への支持も軒並み低迷していることが明らかになっている。

イスラエルが東エルサレムとヨルダン川西岸、ガザ地区を占領した67年の第3次中東戦争以前の国境に立ち戻るべきだとの主張は、国際社会では一般化していたが、歴代米大統領の口からは直接聞かれなかった。
オバマ大統領も就任以来、和平達成の理念は説いても、同盟国イスラエルに配慮し、具体的な指針を示さずにいた。だがイスラエルの入植地拡大による交渉停滞状況にしびれを切らし、イスラエルの反発を覚悟しつつも、アラブ諸国が賛同する「67年案」を持ち出したとも言えそうだ。

一方で大統領はパレスチナに対し、今年9月の国連総会で国家承認決議採択を求めることを「イスラエルを孤立化させる」と戒めた。「67年案」の提案は、和平交渉の破綻を決定づけるこうした動きをやめさせ、パレスチナ側を交渉テーブルに引き戻すという現実的な狙いもあった。
また大統領は、双方の合意があれば領土交換は可能との付帯条件を付けた。イスラエルが大規模入植地などを維持する代わりに、パレスチナに別の土地を提供できると示唆した。さらに交渉の難題であるエルサレムの帰属、パレスチナ難民の帰還権に関しては指針を示さなかった。【5月20日 毎日】
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【「67年の境界線では(イスラエルの)安全を保てない」】
オバマ大統領の中東演説の翌日20日には、イスラエルのネタニヤフ首相が訪米し、オバマ米大統領とホワイトハウスで会談。当然のごとくネタニヤフ首相は、「1967年以前の境界線まで戻ることは、(国の安全を)守ることができない」として、オバマ提案を拒否する姿勢を見せています。

****イスラエル:首相「67年境界線戻れぬ」 米大統領に反発****
訪米中のネタニヤフ・イスラエル首相は20日、オバマ米大統領とホワイトハウスで会談した。大統領が前日の中東政策演説で示した第3次中東戦争(1967年)直前の境界線を前提にしたパレスチナとの交渉再開を求めたのに対し、ネタニヤフ首相は「67年の境界線に戻ることはできない」と述べ、大統領提案を明確に拒否した。

ネタニヤフ首相は会談後、報道陣に「67年の境界線では(イスラエルの)安全を保てない」と明言。67年の同戦争で占領したヨルダン川西岸地区に多数のユダヤ人入植者が居住している現実が「考慮されていない」と大統領の提案に反発し、ヨルダン川西岸地区東部のヨルダンとの境界付近に軍を展開し続ける考えを強調した。

首相はまた、パレスチナの穏健派組織ファタハと統一政府樹立に合意したイスラム原理主義組織ハマスを「イスラエルを破壊するテロ組織」と非難し、ハマスが加わった統一政府とは交渉しない考えを改めて強調。ファタハを率いるパレスチナ自治政府のアッバス議長に向けて「ハマスと関係し続けるかイスラエルとの平和を選ぶかを決めなければならない」とし、統一政府樹立を解消するよう求めた。

【オバマ大統領、占領地からの完全撤退を求める意図ではないと釈明】
オバマ大統領は19日の演説で、67年の戦争直前の境界線を基準に、ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の一部をイスラエルに併合する代わりに、イスラエル領土をパレスチナに編入する土地交換を行い、国境問題を決着させるよう促した。【5月21日 毎日】
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オバマ大統領の中東演説でも、イスラエル・パレスチナ双方の合意があれば領土交換は可能との付帯条件が付いていましたが、反発するするイスラエル側をなだめるため、その後はこの点が強調されています。

****イスラエル境界線、完全撤退求める意図は否定 米大統領*****
オバマ米大統領は22日、ワシントンの親イスラエルのロビー団体の会合で演説し、中東和平交渉でイスラエルによる占領が始まる前の1967年の境界線を基本に交渉するよう提案したことについて、占領地からの完全撤退を求める意図ではないと説明した。

オバマ氏は「米国・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」の会合で、提案について「67年6月4日に存在したのとは異なる境界線を、イスラエルとパレスチナ自身が交渉するという意味だ」と述べ、第3次中東戦争開戦前の境界線に戻る必要は必ずしもないとの考えを表明。「新たな人口統計の現実と双方のニーズを考慮することもできる」と説明した。
オバマ氏は「イスラエルの安全を守る米国の決意は鉄壁だ」と強調。提案は「過去の米政権を含む関係者が長い間、議論の土台としてきた基本的枠組み」で、「取り立てて新しいものではない」と訴えた。【5月23日 朝日】
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ユダヤ人入植地との土地交換は以前から現実的方策として検討されているものですが、交渉の最初から、占領地からの完全撤退を求める意図ではない旨をしきりに強調するというのは、いささか弱腰な感がします。こうした対応でイスラエル側に譲歩を促すことができるのでしょうか?

ネタニヤフ首相の米議会演説に、議場内でたびたび拍手
一方、ネタニヤフ首相は24日、米連邦議会の上下両院合同会議で演説し、パレスチナとの和平交渉をめぐり「入植地のいくつかはイスラエル国境の外に置かれるだろう」と述べ、入植地からの部分的な撤退には応じる考えを示したものの、「67年境界線」案を拒絶する姿勢を改めて明確にしています。

*****イスラエル首相、米議会演説で「67年境界線」拒否を強調*****
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は24日、米連邦議会の上下両院合同会議で演説し、パレスチナとの中東和平交渉に関して、ユダヤ人入植地を一部撤退させる方針を示しつつも、国際社会が提案している「67年境界線」案を拒絶する姿勢を改めて強調した。

バラク・オバマ大統領と国際社会は、暗礁に乗り上げている中東和平交渉を再開させるため、イスラエルとパレスチナの境界線を1967年の第3次中東戦争前の状態に戻すことを交渉の前提とするよう提案しているが、ネタニヤフ首相はこれを断固拒否している。

ネタニヤフ首相はまた、パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長と、ガザ地区を実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが統一政府の樹立で合意している限り、イスラエルが和平交渉の席に戻ることはないと断言。交渉の真の障害は、パレスチナ側がユダヤ国家としてイスラエルを認めることを拒否しているせいだと主張した。

ネタニヤフ首相は、イスラエル国民に「正直」であらねばならないとし、「この衝突を終わらせるいかなる和平協定においても、イスラエル側の国境を越えて入植地は残るだろう」と述べる一方、「将来のパレスチナ国家の大きさについては、わが国は非常に寛容でありたい」とも語った。

しかし、「67年境界線案」やエルサレム分割案については、これまでと同様に却下した。パレスチナ側は将来、パレスチナ国家を樹立した際には東エルサレムを首都することを望んでいるが、ネタニヤフ首相は「エルサレムを再び分かたれることがあってはならない。エルサレムは1つのままイスラエルの首都であらねばならない」と述べた。

ネタニヤフ首相の演説に対しては、議場内でたびたび拍手が起こり、少なくとも20人の米議員が終了後に起立して喝采した。【5月25日AFP】
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イスラエル世論には容認の声も
ネタニヤフ首相がオバマ提案を拒否する姿勢を見せる背景には、右派主導の連立政権を維持するため、アメリカと対立してでも国境問題で強硬姿勢を示す必要があったと見られています。

****イスラエル、全面撤退拒否…オバマ方針に抵抗****
・・・・右派主導の連立政権を維持するため、米国と対立してでも国境問題で強硬姿勢を示す必要があった。
オバマ大統領は19日、「67年以前の境界」を基に、イスラエルとパレスチナが「土地の交換」によって国境交渉を進めるよう促した。地元メディアによると、事前の打診はなく、ネタニヤフ首相は演説直前に猛抗議したという。

オバマ大統領は西岸へのユダヤ人入植停止を求めた経緯があり、イスラエル右派は同境界が交渉の土台となる事態を警戒。交渉が始まっても、パレスチナ側が大幅な土地交換に応じる見通しは立たない。首相が西岸からの全面撤退を拒否したのを受け、大統領は22日、「双方が67年以前とは異なる国境を交渉するという意味だ」と“補足説明”して事態を収拾した。【5月26日 読売】
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しかしながら、イスラエル国内の世論には、「67年境界線案」を容認する声も思いのほか多いようです。
****67年境界線案、受け入れるべき」イスラエル世論調査で約6割*****
イスラエルとパレスチナの中東和平交渉の再開を目指し、1967年の第3次中東戦争以前に戻した境界線を交渉の前提とするというバラク・オバマ米大統領の提案と、これを拒絶したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相について、イスラエル紙マーリブが25日に発表した世論調査の結果、国民の約6割が「首相はオバマ大統領の提案を受け入れるべきだった」と考えていることが明らかになった。

同紙の調査結果によると「ネタニヤフ首相は、(オバマ)大統領提案に無条件で支持を表明すべきだった」と考えている人が全体の10%、「条件付きで」支持すべきだったと考える人が46.8%で、合わせて56.8%の人が「オバマ提案を受け入れるべきだ」と考えていた。
一方、オバマ提案に対し、ネタニヤフ首相は反対を表明すべきだったとした人は36.7%だった。
調査はマーリブ紙のためにイスラエルの調査機関Telesekerが450人を対象に実施した。【5月26日 AFP】
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小規模な調査ではありますが、一部の右派強硬論者を除けば、一般国民は意外と冷静な判断をしているようにも見えます。もっとも、ネタニヤフ政権はその右派との連立政権ではありますが。

エジプト:ラファ検問所開放
イスラエルを巡る情勢は、イスラエルにとって“逆風”が強まっていることは、5月20日ブログ「パレスチナ  オバマ米大統領、占領地で入植活動を続けるイスラエルに譲歩を迫る」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110520)でも取り上げたところです。

なかでも、これまで親イスラエル政策をとってきたエジプトが、ムバラク政権崩壊で方針転換を示しつつあることが注目されます。
****エジプト:ガザ入り口のラファ検問所開放 07年以来初****
エジプト政府は28日から、パレスチナ自治区ガザ地区との唯一の出入り口であるエジプト境界のラファ検問所を常時開放し、地区の封鎖を緩和する。国営の中東通信が25日報じた。常時開放は、イスラム原理主義組織ハマスが07年にガザを実効支配して以来初めて。

エジプトでは、イスラエルの後ろ盾である米国の意向を受けてパレスチナ人のラファ通過を厳しく制限してきたムバラク前政権が2月に民衆蜂起で崩壊しており、軍最高評議会が後を引き継いで以来、今回の措置はエジプトの対外政策の大きな変化の一つだ。イスラエルが反発を強めるとみられる。

中東通信によると、検問所は休日である金曜日と祝日を除く毎日午前9時から午後5時まで。女性は誰でも、男性は18歳未満と40歳以上なら、パスポートを所持していれば事前にビザを取得せずに出入りできる。エジプトの大学在学者や医療を受ける患者も対象。

エジプトは4月27日、イスラエルがテロ組織と見なすハマスと、パレスチナ自治政府を率いるアッバス議長の出身母体である穏健派ファタハの和解を仲介することに成功。ラファ検問所の常時開放についてもアラビ外相が実施方針を表明していた。(後略)【5月26日 毎日】
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イスラエルもこうした国際社会の流れに一定に配慮して、孤立への道を避けることが、最終的に自国の安全保障にもつながるとは思うのですが。
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