（飢えから逃れるべく中国への脱北を試み、失敗して河原に横たわる女性の死体 凍った川面の氷に閉じ込められているようにも見えます。 “flickr”より By gspark1148 http://www.flickr.com/photos/17010459@N04/5477268074/ ）
【収容者の多くは、自分がどのような罪で収容されているのかさえわからない】
北朝鮮の人権無視・強権支配の政治体制については今更の感がありますが、最近目にした強制収容所に関する記事２件。
１つ目の記事によれば、政治犯収容所、強制収容所、教化所といった区分はよくわかりませんが、強制送還される脱北者の増大などで、拘束されている人員が増大しているとのことです。
＊＊＊＊北朝鮮の強制収容所、厳しい実態が明らかに＊＊＊＊＊
北朝鮮には政治犯収容所以外も少なくとも480か所の強制収容所があることが明らかになった。
韓国の社団法人・北朝鮮人権情報センターの北朝鮮人権記録保存所は27日、北朝鮮で拘束されていた経験のある50人に対し行った調査結果を発表した。
調査結果によると、国家安全保衛部の収容所では収監者を廊下に拘束しなければならないほど、収監者であふれているという。2001年に同収容所に拘束されていた北朝鮮脱出住民（脱北者）は「その年だけで5000人が新しく収監され、廊下から外まで女性がぎっしりと座っていた」と証言した。
一般犯罪者を収容する教化所は8か所以上が存在することが分かった。北朝鮮は公式には教化所は3か所だけと主張している。中国から強制的に送還される脱北者と女性収監者が急増し、教化所を新設したとみられる。（後略）【4月27日 聯合ニュース】
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２つ目の記事はアムネスティ・インターナショナルが発表した、強制収容所の過酷な実態です。
収容者の多くは、自分がどのような罪で収容されているのかさえわからないまま、動物の排せつ物からトウモロコシの実を拾い出したりして生き延びている・・・とのことです。動物の方がずっとめぐまれた生活をしているということになります。
＊＊＊＊北朝鮮 強制収容所の「おぞましい」実態、国際人権団体＊＊＊＊
北朝鮮で過去10年間、政治犯収容所の規模が急速に増大しており、収容者たちは「おぞましい」状況に置かれていると、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルが4日に発表した報告書のなかで明らかにした。こうした強制収容所には、約20万人が収容されているとみられる。
報告書では、日常的に公開処刑が行われ、ネズミを食べて生き延びるという悪夢のような収容所の実態が、元収容者の証言によって明らかにされている。（中略）元収容者の1人は、「奴隷に近い状況での労働を強いられた。拷問や残酷で非人道的で屈辱的な扱いも、頻繁に受けた」と語っている。
咸鏡南道耀徳の政治犯収容所の元収容者らは全員、公開処刑を目撃していた。
アムネスティによると、2001年時の情報と比較すると、収容所の規模は急激に拡大している事実が分かるという。
アムネスティのサム・ザリフィアジア太平洋支部長は、「北朝鮮が金正恩（キム・ジョンウン）氏への権力移行と政治の不安定期に向かうとみられるなかで、収容所が拡大していることが最大の懸念だ」と語った。
アムネスティによると、耀徳第15号管理所だけでも、連座制の適用や親戚が収容者だという理由だけで数千人が収容されている。収容者の多くは、自分がどのような罪で収容されているのかさえ把握できていないという。
■ネズミを食べる
耀徳収容所に2000年から3年間、収容されていたチョン・ギョンギルさんによると、1日の労働は午前4時に始まり午後8時まで続いた。労働の後には、2時間の思想教育が科せられる。「道徳に関する10項目を覚えさせられた。覚えられないと眠ることを許されなかった」（チョンさん）
チョンさんによると、お椀1杯のトウモロコシ粥の食事を配給されるのは、ノルマを達成した者だけで、収容者の餓死は日常茶飯事だったという。
なかには、空腹に耐えかねてネズミを食べたり、動物の排せつ物からトウモロコシの実を拾い出して、飢えをしのぐ収容者もいるという。
耀徳の元収容者の1人は、1999年から2001年の間に収容者の40％程度が栄養失調で死亡したとみている。
拷問手法の1つとして、立つことも横になることもできない箱型の「拷問部屋」の存在も明らかになった。精神的に支障をきたした収容者が1週間程度、この小部屋に放置されるという。また、子どもの収容者が8か月も、この拷問部屋に入れられていた事例もあったという。
元収容者たちからは、同様に過酷で生命が脅かされかねない事例が数多く得られている。
米国務省の2010年人権報告書によると、北朝鮮の収容所には15万から20万人が収容されているとみられる。【5月4日 AFP】
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【一般生活も困窮 33%が栄養失調】
「おぞましい」強制収容所の様子ですが、北朝鮮では収容所外の一般の暮らしも相当に逼迫していることが報じられています。
＊＊＊＊北朝鮮では33％が栄養失調、世界銀行の報告書＊＊＊＊＊
米国の海外向け放送、ボイス・オブ・アメリカ（VOA）は21日、世界銀行の報告書を引用し、2005～2009年に北朝鮮の人口の33%が栄養失調だったと報じた。
1人当たり国民所得が1000ドル（約8万2280円）以下の低所得国の平均栄養失調率（31%を）上回っている。
報告書では2004～2009年に5歳未満の20．6%が体重不足で、43．1%は深刻な栄養不足による発育不良となっていると指摘した。また、北朝鮮乳児の死亡率は2009年末時点で1000人当たり26人となり、1990年の23人に比べてやや増えたが、5歳未満の死亡率は1000人当たり33人で、1990年の45人より減少したと伝えた。【4月21日 聯合ニュース】
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また、都市部住民の生活困窮も報じられています。
＊＊＊＊北朝鮮都市住民の6割、共同農場の親せきに食糧頼る＊＊＊＊＊
配給に依存しなければならない北朝鮮の都市部世帯の60%が、共同農場で働く親せきから食糧支援を受けている。聯合ニュースが20日に確認した国連世界食糧計画（WFP）と食糧農業機関（FAO）の北朝鮮調査報告書から明らかになった。
両機関は2月21日から3月11日まで北朝鮮の農村と都市地域で122世帯を訪れ、食糧事情と関連し住民にインタビューした。
それによると、インタビューした都市世帯の60%が、過去6か月の間に、農村の共同農場にいる親せきから食糧確保を助けてもらったと話している。（中略）
共同農場で働く世帯は畑の手入れや家畜の飼育のなかで付加的に食糧を賄うことができる。都市部住民にとり、共同農場の親せきに食糧支援を求めることは大変重要な生存手段だとの説明だ。
2400万人に達する北朝鮮人口のうち、共同農場で働くのは30%。残りは配給に依存していると報告者は説明している。
さらに、北朝鮮住民が食糧不足に対処するもう一つの方法は、食事量を減らすことだと、報告書は指摘している。
インタビューに応じた世帯の3分の2は、最少でも1週間に1日は食事量を減らしていると答えた。4分の1は毎日食事量を減らしている。約40%の世帯では、料理の際にかさを増やすため毎日水をたくさん入れていると話した。
WFPなどは報告書で、29万7000トンの穀物と13万7000トンの栄養強化食品などを610万人の北朝鮮弱者住民に提供すべきだと勧めている。【4月20日 聯合ニュース】
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【市場に依存する住民より軍の食糧不足が深刻】
先軍政治のもとで、軍人は一般人より優遇されているようにも想像されますが、むしろ市場経済から遠い軍人の食糧事情の方が厳しいとの報道もあります。
＊＊＊＊北朝鮮の食糧難、一般住民より軍人が深刻＊＊＊＊
配給に依存する北朝鮮軍人の食糧事情が一般住民より深刻だと、北朝鮮向けの韓国民間短波ラジオ「開かれた北韓放送」が7日に明らかにした。（中略）
平安南道・平城生まれで、先月11日に脱北したとするある男性はインタビューで、「軍人は3食の配給を受けるが、少量のトウモロコシやジャガイモのみ」とし、量的にも質的にも一般住民より足りないと話した。また、栄養失調の軍人が多いとも補足した。
同放送の河泰慶（ハ・テギョン）代表は、北朝鮮当局がデノミネーション（通貨呼称単位の変更）に対する不満をおさめるため軍用米を例年より少なく拠出した上、体制強化のため配給対象の軍兵力を増やし、市場に依存する住民より軍の食糧不足が深刻な状態になっていると説明した。【3月８日 聯合ニュース】
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【規制をかいくぐった「韓流ブーム」も】
もっとも、皆が飢えに苦しんでいる・・・という訳でもなく、当然ながら社会には格差がありますので、それなりの生活を享受できる層も存在しているのでしょう。
下記記事の北朝鮮における「韓流ブーム」などは、一応の衣食が満たされている者の間での話でしょうか。
＊＊＊＊北「韓流ブーム」…隠れて冬ソナ視聴、服装まね＊＊＊＊＊
情報統制が厳しい北朝鮮で、韓流ドラマや映画の海賊版ＤＶＤなどの映像ソフトがひそかに流入している。
韓国の生活習慣に憧れ、言葉遣いや服装をまねる若者も増えている。規制をかいくぐった「韓流ブーム」は脱北を促す恐れがあり、北朝鮮当局は取り締まりに躍起だという。
昨年韓国に逃げてきた脱北者や韓国の北朝鮮研究者によると、北朝鮮で計画経済が崩壊し、配給が途絶えた１９９０年代後半以降、生活物資を調達する闇市場を舞台に、北朝鮮の密輸業者が中国で仕入れた韓国のＤＶＤなどを販売するようになった。平譲や元山などの都市部には、数百～数千枚のＤＶＤを所有する業者も存在する。
北朝鮮では中国など一部を除き、外国製映像ソフトの売買や視聴は違法。密輸業者は秘密の保管場所まで客を案内し、販売する。人気ドラマの「冬のソナタ」「宮廷女官チャングムの誓い」や朝鮮戦争をテーマにした映画「ブラザーフッド」などが売れ筋で、家族や仲間内で見た後、証拠隠滅のため焼却するという。【4月23日 読売】
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【“石をぶつけられる”程度では済まない・・・・】
今、北朝鮮は金正恩（キム・ジョンウン）氏への権力移行が進められていますが、金正恩氏もこんな破綻した社会を引き継いでも困るのでは？
以前、金正日（キム・ジョンイル）総書記が現代グループの創業者、故鄭周永（チョン・ジュヨン）名誉会長に「北朝鮮住民から石をぶつけられる夢を見る」と話していたことが明らかになり、話題になったことがあります。
このまま国民の不満がたまっていけば、“石をぶつけられる”程度では済まない事態も起こるのではないでしょうか。
