孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア  「ワグネル」創始者プリゴジン氏は現代の怪僧ラスプーチンか?

2023-01-23 23:09:37 | ロシア
(プーチン大統領の信頼があつい「ワグネル」創始者プリゴジン氏と、ロシア皇帝夫妻の信頼があつかった怪僧ラスプーチン)

【“聞きたい情報ばかり提供する”強硬派集団を側近に集めるプーチン大統領のいびつな権力構造】
ウクライナで短期で勝利できるという見込み違いを犯したロシア・プーチン大統領の去就については、失脚・クーデター・亡命などを含めて面白おかしく取り上げられることも多いですが、おそらく来年3月の次期大統領選挙に自身が立候補するか、傀儡として操れる人間を出すか・・・して、権力を維持しようとするのでしょう。

****「プーチン氏の来年の大統領選立候補に向けた準備始まる」ロシア有力紙****
ロシアの有力紙は、次のロシア大統領選が予定通り来年3月に行われ、大統領府内でプーチン大統領の立候補に向けた準備が始まったと報じました。

13日付けのロシアの有力紙「コメルサント」は政権に近い関係者の話として、次の大統領選が来年3月17日に行われるとした上で、大統領府の担当者が最近、プーチン大統領の立候補に向けて専門家らと協議を行ったと伝えました。

プーチン氏はこれまで立候補するかなど、自らの去就について明らかにしていません。
政権としては、今年9月に予定される統一地方選の状況を見極めながら、次の大統領選に備えていくとしています。

現在、通算4期目のプーチン氏は2020年の憲法改正によって再出馬が可能となっていて、ウクライナ侵攻が続く中、5期目を目指し、今後も政権を担うのか注目されます。【1月15日 TBS NEWS DIG】
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プーチン大統領周辺の権力構造が強硬派を中心とした“同氏が聞きたい情報ばかり提供する”集団になってしまっており、プーチン大統領に正確な情報がタイムリーに伝わっていないのでないか・・・という指摘が多くなされています。 絶対的な権力者が陥りやすい罠でしょう。

****孤立し不信抱くプーチン氏、頼るは強硬派顧問****
聞きたい情報ばかり提供する権力構造、ウクライナ戦争で露大統領の誤算を助長

ロシア軍がウクライナ東部の小都市リマンの戦闘で敗北しつつあった9月下旬、モスクワから暗号化された回線を通じて前線の司令官に電話がかかってきた。電話はロシアのウラジーミル・プーチン大統領からで、兵士たちに退却しないよう命じるものだった。

当時のやりとりについて概要の説明を受けた欧米の現・元当局者らやロシア情報当局の元高官によると、プーチン大統領は実際の戦況をあまり理解していなかったようだ。

欧米が提供した大砲の援護を受けて前進するウクライナ軍は、装備の不十分なロシアの前線部隊を包囲していた。プーチン氏は、自身の指揮下にある将校たちの命令を覆す形で、兵士たちに陣地を死守するよう指示したという。

ウクライナ軍の不意打ち攻撃は続き、ロシア軍兵士は10月1日、何十体もの遺体と大砲を置き去りにして撤退を急いだ。残された大砲はウクライナ軍の武器貯蔵庫補充に使われることになった。

プーチン氏は、ウクライナ戦争が迅速なもので、国民の支持を得て確実に勝利を収められると考えていた。それどころか戦争は費用のかさむ泥沼と化し、同氏は何カ月もの間、その現実と折り合いをつけるのに苦労するとともに、自身の好戦的な世界観を強化し、悲観的なニュースから彼を守るよう設計された権力構造の頂点で孤立し、不信感を抱いていた。

事情に詳しい関係者によると、大統領との会合に参加した軍事専門家や武器メーカーの代表団は夏の間中、プーチン氏が戦場の現実を理解しているのかと疑問を呈していた。大統領はそれ以来、戦争の実態をより明確に把握するためにあらゆる努力をしてきた。

だが、同氏の周りにいるのは依然として、人的・経済的な犠牲が増大しているにもかかわらず、ロシアは成功するという彼の確信に応える政府高官らだという。

11月にプーチン氏に解任されるまで、同氏が選んだ人権委員会のメンバーだったエカテリーナ・ビノクローバ氏は「プーチン氏の周りにいる人たちは自分たちを守っている。彼らには大統領の気分を害するべきでないという深い信念がある」と述べた。

その結果生じた間違いが、ロシアの悲惨なウクライナ侵攻の基盤となった。(中略)兵役に就いたことのないプーチン氏は、時間が経つにつれ、自身の指揮系統に対する強い不信感から、前線に直接命令を出すようになった。
 

この記事は、現旧のロシア当局者や大統領府に近い人々に行った数カ月にわたる取材に基づく。その証言が描き出したのは、おおむね、ウクライナが成功裏に抵抗することを信じられないか、信じようとしない孤立したリーダー像だ。

彼らは大統領が22年をかけて自身にこびへつらうためのシステムを構築してしまったと述べ、周囲の人々は彼を落胆させるデータを伏せたり、取り繕ったりしたと指摘した。(中略)

当局者によると、プーチン氏に最も近い側近の一部は、権威主義的指導者である大統領自身よりも強硬派だと判明している。(中略)

事情に詳しい関係者によると、戦地の最新情報がプーチン大統領に伝えられるまでに数日かかり、情報が古くなっていることもあるという。(中略)

プーチン大統領はクリミア侵攻作戦を個人的勝利と見なすようになった。彼の取り巻きグループは次第に縮小し、最もタカ派的なアドバイザーばかりで構成されるようになった。彼らはプーチン氏に対し、ロシア軍は数日でキーウを陥落できると断言した。(後略)【12月26日 WSJ】
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【ワグネルの成果を誇示して政権内で存在感を高めるプリゴジン氏 軍との対立も】
強硬派の取り巻きの筆頭が民間軍事会社「ワグネル」創設者のエフゲニー・プリゴジン氏ですが、存在感を強める政権内の強硬派とロシア軍主流派との対立があるとも言われています。

プリゴジン氏はロシア軍司令官らの責任を厳しく追及する一方、ワグネルの成果を誇示して政権内で存在感を高めているとされています。

そうしたなか、ショイグ国防相は11日、ウクライナ侵攻の総司令官に、制服組トップのゲラシモフ参謀総長を任命し、昨年10月に総司令官に就任したスロビキン航空宇宙軍司令官は副官は降格されました。

スロビキン氏は軍の立て直しを進め、「ワグネル」創設者プリゴジン氏ら強硬派などからも支持されていたましたので、今回人事は軍主流派の意向に沿ったものと見る見方があります。

当然、プリゴジン氏側からの巻き返しが予想されます。
プリゴジン氏「ワグネル」と軍主流の間には、久しぶりのロシア側の戦果となったソレダル制圧をめぐって、“手柄”を争う緊張関係があります。

****民間軍事会社ワグネル、ロシア国防省を批判…戦果を言及されず「勝利を盗もうとした」****
(中略)ソレダルでの戦闘で主力を担っているとされる露民間軍事会社「ワグネル」創設者のエフゲニー・プリゴジン氏は13日、SNSで、戦況発表でワグネルに言及しなかった露国防省を「ワグネルから勝利を盗もうとする試みが常に起きる」と暗に批判した。

露国防省はこれを受けて13日夜、「ワグネルの志願兵らの行動により、成功した」と改めて発表した。国防省に対する不満が広がるのを回避する思惑とみられ、露国防省とワグネルとの対立が浮き彫りになった。(中略)【1月15日 読売】
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いささか子供じみた手柄争いにも見えますが、当事者は“命がけ”でやっている訳ですから、不当に評価されるのは許せない・・・ということもあるのでしょう。

【多くの受刑者を捨て駒に使うワグネルの戦術 ブチャでは残虐行為も】
プリゴジン氏は11日、軍や国防省の発表を待たずに早々と勝利を宣言。戦闘員らがトンネルに並ぶ写真を投稿し、「ワグネル戦闘員以外は、誰もソレダル攻撃に加わっていない」と豪語しました。

ワグネルの戦闘員の多くは、プリゴジン氏が自ら各地の刑務所に出かけ、志願と引き換えに恩赦を約束して集めた受刑者だとされるますが、ロシア側の攻撃は多数の兵士の戦死もいとわない激しさだったとも言われています。

ロシア・ソ連伝統の人海戦術と言うか、受刑者を捨て駒に使うような戦い方・・・・でしょうか。

受刑者にそうした戦いをさせるには、人権云々とは無関係な相当の締め付け・強制も必要でしょう。

ワグネルはシリアやアフリカの紛争でも「影のロシア軍」として法の制約を受けない形で軍を補完する役割を果たしてきました。

ただ、ロシアで民間の雇い兵は本来は非合法で、これまではプーチン政権周辺で「日陰者」の役割を担ってきました。

プリゴジン氏がここに来て存在を誇示し始めたのは、侵攻の行き詰まりを機に自らの政権への影響力を確実にしたい思惑が働いたためとの指摘もあります。

「ワグネル」は、ドイツの調査によると、虐殺のあったブチャでは、主導的な立場で残虐行為を行っていたと言われています。

****ウクライナ侵攻で台頭してきたロシアの民間軍事会社「ワグネル」 受刑者を戦場に送り存在感を誇示する組織の実態とは?****
(中略)
■“プーチン大統領の料理人”
イギリスのメディアによると、プリゴジン氏は10代のころ、強盗などの罪で10年間刑務所に服役。出所後にホットドッグの屋台を開いて資金を貯め、自分のレストランを構えるまでに成り上がりました。

その後、プーチン氏が来店し、繰り返しケータリングを受注する中で、親密な仲になったといいます。
2002年には、プーチン氏とブッシュ元大統領との食事会が、プリゴジン氏の経営する水上レストランで催されました。(中略)

■世界の中でも特殊な民間軍事会社「ワグネル」
実は、この民間軍事会社、ワグネルだけではなく、アメリカやイギリスなどに、数多く存在します。イラクでは2007年、アメリカの軍事会社「ブラックウォーター」が要人の警護中に銃を乱射。民間人17人を殺害、大きな問題となりました。

軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は、そもそも、民間軍事会社の主な業務は、警備や物資の補給など、後方支援でワグネルのように、最前線で戦闘に参加するなど、戦争そのものに大きな役割を果たすのは、極めてまれだといいます。

ワグネルの問題点として、正規軍ではないため、例えば多数の死者を出しても『戦死者にはカウントされない』ことなどをあげます。プーチン政権は、戦場で大きな犠牲を出したとしても、隠ぺいが可能となります。

事実上、ロシアの“影の軍隊”として暗躍する、民間軍事会社。国際社会は、どう対処して行けばいいのでしょうか。
【「サンデーモーニング」2023年1月15日放送より 1月15日 TBS NEWS DIG】
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【「ポスト・プーチン」として名前が上がるプリゴジン氏】
高まる存在感を背景にプリゴジン氏が自らの政党を設立するという見方もロシアでは出ています。

当然ながら、ロシア大統領府は軍とワグネルの対立を否定しています。

****ロシア大統領府、軍とワグネルの対立否定****
ロシア大統領府(クレムリン)のドミトリー・ペスコフ報道官は16日、同国軍と民間軍事会社ワグネルが、ウクライナ東部ドネツク州ソレダル制圧をめぐる功名争いで対立しているとの臆測を否定した。

ペスコフ氏は記者団に対し、そうした見方はメディアや軍事ブロガーによるでっち上げだと一蹴。ロシア軍もワグネルも「祖国のために戦っている」と述べた。(後略)【1月17日 AFP】
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困難な政治状況に直面するプーチン氏ですが、「ポスト・プーチン」について“「プーチン氏が身の安全を確保するため、先手を打ってプリゴジン氏を後継者に指名する可能性もある。」”(筑波大学の中村逸郎名誉教授)【1月20日 夕刊フジ】といった憶測も。

プリゴジン氏はプーチン大統領をウクライナに突っ込ませ、どうしようもない状況に追い込み、プーチン失脚後の権力を狙っている・・・・なんて“話”も。

【帝政ロシア末期に暗躍した怪僧ラスプーチンとの類似性指摘も 参戦については真逆の対応】
なにかと注目を集めるワグネルのトップ、プリゴジン氏ですが、BBCは帝政ロシア末期に皇帝ニコライ2世の妻に取り入って陰の実力者となった僧侶ラスプーチンとの類似性を指摘しています。

****ワグネルのトップ、「ラスプーチン」と比較の英紙記事に反応****
ウクライナ侵攻に兵士を派遣しているロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏は22日、帝政ロシア末期に皇帝ニコライ2世の妻に取り入って陰の実力者となった僧侶ラスプーチンと自らの類似性を指摘した英紙の記事に反応した。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の記事について、ラスプーチンの歴史には詳しくないと前置きした上で「ラスプーチンの重要資質は若い王子の流血を呪文で止めたことだ」と指摘。「残念ながら、私は流血を止めることはしない。私は呪文ではなく、直接的な接触によって祖国の敵に血を流させる」と主張した。広報担当が発言内容を公表した。(後略)【1月23日 ロイター】
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“若い王子の流血を呪文で・・・”云々は、遺伝的に血友病を患っていた皇太子の治癒をラスプーチンが行ったため、皇帝夫妻のラスプーチンに対する信頼は揺るぎないものとなったことを指しています。

怪僧ラスプーチンとプリゴジン氏が大きく異なる点がひとつ。

ラスプーチンは第一次世界大戦でのロシアの対ドイツ参戦に「戦争が始まれば、ロマノフ家とロシアの君主制は崩壊してしまう」と強く反対しました。

しかしニコライ2世はラスプーチンの懇願を受け入れず、1914年7月31日にロシア軍総動員令を布告しドイツ軍との戦端を開きました。 結果、「クリスマスまでには終わる」と言われていた戦争は長期化し、東部戦線では150万人以上のロシア兵が戦死しました。その後、ロシア革命に至るのは周知のところ。

この点では、ウクライナで先陣を切るプリゴジン氏とは真逆です。

なお、非主流派として権力者の寵愛を集めたラスプーチンは敵も多く、反ラスプーチン派によって暗殺されました。
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