(ロシア・モスクワで、改革派政党「市民イニシアチブ」のボリス・ナジェージュジン氏の立候補を支持する署名をするために同氏の選挙事務所に列をつくる人(2024年1月22日撮影)【1月23日 AFP】)
【猫の悲劇に怒るロシア世論 選挙を控えた政権はやや大袈裟な対応】
ロシア社会の最近の話題から。
****氷点下30度、列車から放り出された猫が死ぬ…ロシア世論が憤怒****
ロシアで氷点下30度の寒さの中を列車の外に追い出された猫の「ツイックス」が死ぬ事件が発生し公憤を買っている。
ロシアメディアによると、ツイックスは11日にロシアのエカテリンブルクからサンクトペテルブルクに向かう列車に乗っていたところ、ロシア西部の人里離れた地域であるキーロフ駅で放り出された。
問題は当時キーロフ地域の気温が氷点下30度まで落ちるほど寒さが深刻だったことだ。
ロシアメディアによると、ツイックスは11日にロシアのエカテリンブルクからサンクトペテルブルクに向かう列車に乗っていたところ、ロシア西部の人里離れた地域であるキーロフ駅で放り出された。
問題は当時キーロフ地域の気温が氷点下30度まで落ちるほど寒さが深刻だったことだ。
また、ツイックスは飼い主が手荷物切符を購入し合法的に列車に乗っていた。だが飼い主が寝ている間にツイックスがケージから逃げ出して列車内を歩き回っていた。
これを見た乗務員はツイックスを飼い主がいない列車に間違って乗り込んだ野良猫だと判断しキーロフ駅に停車している間にツイックスを放り出した。
この事実を知った飼い主は12日に鉄道当局に連絡し、数百人のボランティアメンバーがキーロフ駅周辺でツイックスを捜索した。しかし結局ツイックスは20日にキーロフ駅から8キロメートル離れた場所で死んでいるのが発見された。
これを見た乗務員はツイックスを飼い主がいない列車に間違って乗り込んだ野良猫だと判断しキーロフ駅に停車している間にツイックスを放り出した。
この事実を知った飼い主は12日に鉄道当局に連絡し、数百人のボランティアメンバーがキーロフ駅周辺でツイックスを捜索した。しかし結局ツイックスは20日にキーロフ駅から8キロメートル離れた場所で死んでいるのが発見された。
ボランティアメンバーはツイックスが凍傷とストレスに苦しめられる一方、大きな犬にかまれて死んだと推定した。ツイックスの死骸の周辺で大きな動物の足跡が見つかったためだ。【1月24日 中央日報】
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ロシア鉄道は車掌を乗務停止にしたとのこと。また、世論の批判を受けてロシア連邦捜査委員会が動物虐待の疑いがないか調査するとも。
猫一匹にしては大騒ぎになっているようにも思えますが、政権批判に重ねるような投稿もあるとかで、3月に行われる大統領選挙を前にして、「国民の圧倒的支持を得てプーチン再選(通算5選)」を演出したい政権側は国民の不満に神経質になっているのでしょう。
私も猫を飼っている猫好きですので「可愛そうに」と思いますが、「猫もかわいそうだけど、ロシアの攻撃にさらされているウクライナ市民はどうよ?」といった意地悪な印象も。
もっとも、捨て猫に同情する人が浮浪者に対しては「汚い」としか思わない・・・というのが日本を含めて世の中の常ですので、上記のような言い方はロシアに対して不公平でしょう。
昔は「鬼畜米英」なんて言葉がありましたが、日本・欧米では印象が悪いロシアにしても、市民は決して“鬼畜”ではなく、猫の悲劇に痛める心を持っているということでしょうか。
【ウォッカの売り上げが記録的な水準に ウクライナ侵攻との関係は?】
****戦争中のロシア 「ウォッカ」が記録的な売り上げ 依存症患者も増加****
ウクライナへの侵攻を続けるロシアでウォッカの売り上げが記録的な水準に達しています。ロシアメディアは、飲酒量の増加は軍事作戦が終了するまで続くだろうと予測しています。
ロシアの経済紙「RBC」によりますと、2023年のビールなどを除く度数の高いアルコール飲料の販売量は22億9500万リットルに上っているということです。 ウクライナへの侵攻後、記録的な売り上げとなった2022年に比べてさらに4.1%増えました。
なかでもウォッカの売り上げは、侵攻が始まった2022年には前の年より6%多い7億6200万リットルを記録しました。 2023年は0.8%減ったものの7億5600万リットルで、高い水準を維持しています。
コニャックの売上は2022年より9.4%増加し、ウイスキーやジン、ラムなどアルコール度数25%を超えるその他のアルコール飲料も14.6%増えました。
RBCは専門家の話として、アルコールの消費量は軍事作戦が終了するまで増え続けるだろうと報じています。
消費量の増加に伴って、アルコール依存症の患者数もロシア国内で増えています。 ウクライナ侵攻の前まで減少傾向にありましたが、2022年に12年ぶりに増加に転じたということです。【1月23日 テレ朝news】
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話の前提として、かねてよりロシアでは(寒さのせいか、ストレスのせいか、文化の問題か)アルコールの過剰摂取が平均寿命を日本や欧米より著しく縮めるなど深刻な社会問題になっており、プーチン大統領も飲酒対策を重視して取組み、その成果も一定に出始めていました。
****ロシア、アルコール離れじわり 健康志向で量より質へ****
ロシアで都市部を中心にアルコール離れが進んでいる。健康志向の高まりを背景に飲まない若者が増加。プーチン大統領が推し進めてきた節酒政策も浸透した。
ウオッカの消費量は減少傾向が続き、お酒の嗜好は量より質へと移っているとみられる。短い平均寿命に密造酒による中毒死――。長らく社会問題とされてきた“暴飲”のイメージを塗り替えつつある。(後略)【2018年12月12日 日経】
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それがここにきて、ウォッカの売り上げが記録的な水準に・・・という状況。何が原因なのか?
コロナ禍の巣ごもりが原因というならわかりやすいですが、記事は“アルコールの消費量は軍事作戦が終了するまで増え続けるだろう”とウクライナ侵攻と結び付けています。
基本的にはプーチン大統領のウクライナ侵攻を国民は支持しているとのことですが、経済状況の悪化などアルコールに走るようなストレスを国民に与えているのでしょうか? もしそうだとしたら、単なるトピックではなく、かなり重要な現象になります。
そのあたりの因果関係は非常に知りたいところですが、残念ながら記事はそのあたりの説明がありません。
ウクライナに侵攻しているロシア軍兵士が撤収したあとには大量の酒ビンが散乱しているという話は聞きます。
寒さもありますし、不十分な装備で、兵士の命を軽視した「人海戦術」で捨て駒のように扱われるとあっては、酒でも飲まなきゃやってられない・・・のでしょう。
ただ、軍では兵士が勝手にアルコールを入手でき飲めるのでしょうか? そうした兵士の飲酒需要は上記のアルコール需要にも含まれているのか? 知りません。
【中西部バシコルトスタン共和国での活動家の解放要求 “反プーチン”と連動も】
****ロシア中西部で大規模デモ 警官隊が鎮圧 活動家の解放要求から“反プーチン”と連動も****
ロシア中西部に位置するバシコルトスタン共和国で、拘束された活動家の解放を求めたデモが大規模化し、治安部隊が参加者を警棒で叩くなどして鎮圧する事態になっています。
デモは15日、バシコルトスタン共和国で拘束された活動家の解放を求めて裁判所前で始まりました。
独立系メディアなどによりますと、デモの参加者は日々、増えていき、マイナス30℃の気温のなか、最大1万人が参加したということです。
治安部隊は17日、閃光手りゅう弾を使用したり、警棒でデモ参加者らを叩いたりして鎮圧しました。 また、デモを報じているSNSのニュースチャンネルが閉鎖されました。
デモは当初、ウクライナへの侵攻とは直接関係がないとみられていましたが、17日になって反プーチン運動と関連付ける動きが表面化してきました。
プーチン大統領のスピーチライターだった政治評論家のアッバス・ガリアモフ氏は17日、地元住民だとする女性の映像を公開しました。
女性はウクライナで戦っている兵士に対して「あなたがプーチン大統領1人の野望のために戦っている間に住民は警棒で殴られている」と語り、地元を守るために戦場から帰還するように呼び掛けました。
独立系メディアによりますと、鎮圧にはロシアで最も訓練されている特殊部隊の一つとされる「グロム」が加わったということです。
2カ月後に控えた大統領選挙を意識して、ロシア当局がデモを強硬に鎮圧しようとしているという指摘が出ています。【1月18日 テレ朝news】
デモは15日、バシコルトスタン共和国で拘束された活動家の解放を求めて裁判所前で始まりました。
独立系メディアなどによりますと、デモの参加者は日々、増えていき、マイナス30℃の気温のなか、最大1万人が参加したということです。
治安部隊は17日、閃光手りゅう弾を使用したり、警棒でデモ参加者らを叩いたりして鎮圧しました。 また、デモを報じているSNSのニュースチャンネルが閉鎖されました。
デモは当初、ウクライナへの侵攻とは直接関係がないとみられていましたが、17日になって反プーチン運動と関連付ける動きが表面化してきました。
プーチン大統領のスピーチライターだった政治評論家のアッバス・ガリアモフ氏は17日、地元住民だとする女性の映像を公開しました。
女性はウクライナで戦っている兵士に対して「あなたがプーチン大統領1人の野望のために戦っている間に住民は警棒で殴られている」と語り、地元を守るために戦場から帰還するように呼び掛けました。
独立系メディアによりますと、鎮圧にはロシアで最も訓練されている特殊部隊の一つとされる「グロム」が加わったということです。
2カ月後に控えた大統領選挙を意識して、ロシア当局がデモを強硬に鎮圧しようとしているという指摘が出ています。【1月18日 テレ朝news】
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選挙を控えたプーチン政権にとっては冒頭の猫の話より深刻な問題です。
バシコルトスタン共和国というのは、中央アジアのカザフスタンも近い地域で、民族的にはスラブ系ロシア人とは異なるバシキール人やタタール人が半数以上を占めています。
“反プーチン運動と関連付ける動きが表面化”とのことですが、ウクライナに送りこまれた兵士はモスクワなどのロシア中枢大都市出身者ではなく、地方のロシア系以外の民族出身者が多いと言われていますので、そのあたりも「プーチンの戦争」への住民感情に影響しているのかも知れません。(詳細は知りません。憶測です。)
【大統領選挙立候補のための署名活動で勢いが見られる反プーチン・反ウクライナ侵攻」を掲げるリベラル候補 不満の受け皿になるか? 政権がそれを認めるか?】
プーチン大統領にとって、猫やバシコルトスタン共和国の問題以上に気掛かりな問題になる可能性があるのが、大統領選挙に立候補している、「反プーチン・反ウクライナ侵攻」を掲げる候補の動向でしょう。
平和主義を掲げて3月のロシア大統領選に立候補を届け出ていた元市議会議員、エカテリーナ・ドゥンツォワ氏が書類不備を理由に立候補届が受理されなかった件は以前もとりあげましたが、プーチン大統領としても西側に“まっとうな選挙”が行われたことを誇示するために、プーチン氏を脅かさない程度の対立候補を“必要”としています。
そうした事情もあってか、リベラル系のボリス・ナジェージュジン元下院議員の立候補登録は受理されており、立候補に必要な署名集めを行っています。
立候補できなかったエカテリーナ・ドゥンツォワ氏も“同氏と志を同じくするロシア人は、市民イニシアチブ党のボリス・ナジェージュジン氏を候補者となるための署名集めにおいて支援できる”と語り、ボリス・ナジェージュジン氏を支援しているようです。【12月28日 AFPより】
上述のように、プーチン大統領は一定の対立候補は“必要”としていますが、問題はボリス・ナジェージュジン氏の署名集めが急ピッチで進んでいることで、国民不満の一定の受け皿になりそうな気配もあることです。
****ロシア大統領選「反戦」候補者への支持広がる 10万人署名集め正式な出馬目指す 侵攻めぐり「プーチン氏致命的間違い」****
プーチン大統領が再選を目指す3月のロシア大統領選に向け、反戦を訴える唯一の候補者への支持が広がっています。これまでに10万人の支持者の署名を集めたとし、正式な出馬を目指しています。
通算5期目を目指すプーチン大統領の選挙対策本部は22日、正式な出馬に向け支持者らの署名を中央選挙管理委員会に提出しました。無所属候補は30万人分の署名が必要とされ、プーチン氏の選挙対策本部は10倍の300万人以上の署名が集まったとしています。
プーチン氏の再選が確実視される中、候補者の中で唯一、ウクライナ侵攻に反対するナジェージュジン元下院議員への支持がここにきて急速に広がっています。
ナジェージュジン氏 「プーチン大統領は致命的な間違いを犯した。それは特別軍事作戦を始めたことだ」
改革派政党「市民イニシアチブ」が擁立したナジェージュジン氏は下院に議席を持たない政党の候補者として今月末までに10万人分の署名が必要とされ、モスクワ市内などの事務所には連日、支持者らが署名に訪れています。
支持者 「唯一、この国で禁止されている言葉(=平和)に賛同している候補者に投票したいので署名に来ました」
「(出馬すれば)少なくとも真実を語る言葉がゾンビ化したロシアの人々に届きます」「1パーセントでも希望があるのなら、それを信じるべきです」
ナジェージュジン氏は23日、SNSを通じてこれまでに10万人の署名が集まったと明らかにしましたが、条件として定められた人数を満たしていない地域があるとして、引き続き15万人を目標に署名を集めるとしています。
ただ、たとえ条件を満たしたとしても中央選管に署名内容に不備があると判断され、無効にされる可能性もあるとして、ナジェージュジン氏の陣営は慎重に作業を進めているとしています。【1月23日 TBS NEWS DIG】
通算5期目を目指すプーチン大統領の選挙対策本部は22日、正式な出馬に向け支持者らの署名を中央選挙管理委員会に提出しました。無所属候補は30万人分の署名が必要とされ、プーチン氏の選挙対策本部は10倍の300万人以上の署名が集まったとしています。
プーチン氏の再選が確実視される中、候補者の中で唯一、ウクライナ侵攻に反対するナジェージュジン元下院議員への支持がここにきて急速に広がっています。
ナジェージュジン氏 「プーチン大統領は致命的な間違いを犯した。それは特別軍事作戦を始めたことだ」
改革派政党「市民イニシアチブ」が擁立したナジェージュジン氏は下院に議席を持たない政党の候補者として今月末までに10万人分の署名が必要とされ、モスクワ市内などの事務所には連日、支持者らが署名に訪れています。
支持者 「唯一、この国で禁止されている言葉(=平和)に賛同している候補者に投票したいので署名に来ました」
「(出馬すれば)少なくとも真実を語る言葉がゾンビ化したロシアの人々に届きます」「1パーセントでも希望があるのなら、それを信じるべきです」
ナジェージュジン氏は23日、SNSを通じてこれまでに10万人の署名が集まったと明らかにしましたが、条件として定められた人数を満たしていない地域があるとして、引き続き15万人を目標に署名を集めるとしています。
ただ、たとえ条件を満たしたとしても中央選管に署名内容に不備があると判断され、無効にされる可能性もあるとして、ナジェージュジン氏の陣営は慎重に作業を進めているとしています。【1月23日 TBS NEWS DIG】
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必要数の半分超となる5万以上の署名を集めたとSNSで公表されたのが21日、22日夜の時点では8万5000近く集まっていると公表され、23日時点で10万人を超えたというのは勢いが加速しているように見えます。
モスクワでは零下6度の寒空の下、若者を中心に多くの市民が行列に2時間並んで署名をしたとの報道もありますので、一部の市民の強い支持を受けていることがわかります。
****ウクライナ侵攻に反対候補の支持署名に列 ロシア大統領選****
ロシア大統領選で立候補を目指し署名集めを行っている、ウクライナ侵攻に反対するボリス・ナジェージュジン元下院議員への支持が拡大している。首都モスクワでは22日、極寒の中、署名をするため数百人が列をつくった。
現職のウラジーミル・プーチン氏は先月、大統領選への立候補を表明、5期目に挑戦する意向を示した。2年ほど近く続くウクライナ侵攻に対する批判は禁じられており、いまのところ実質的な対立候補はいない。
ナジェージュジン氏は、改革派政党「市民イニシアチブ」で大統領候補に選ばれている。2015年に暗殺されたリベラル派の反プーチン政権指導者ボリス・ネムツォフ氏と近かったが、同氏の死後は大統領府寄りの政界に移っていた。(中略)
ナジェージュジン氏はネットで公開したマニフェストで、「平和」について慎重に語り、ウクライナ侵攻を「致命的な過ち」だと表現している。
「(ウクライナでの)特別軍事作戦で掲げられた目標は一つとして達成されていない」「プーチンは過去から世界を見ており、ロシアを過去に引きずり戻そうとしている」と非難した。
ナジェージュジン氏以外の候補者は全員、ウクライナ侵攻を支持している。署名のため選挙対策事務所前に列をつくった人の多くは、同氏がロシアに別の視点を提供してくれるただ一人の候補だと考えている。(後略)【1月23日 AFP】
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ナジェージュジン氏が近かったという「反プーチン政権指導者ボリス・ネムツォフ氏」はエリツィン政権下では第一副首相も務めましたが、その後解任され、プーチン政権下ではリベラル系野党を率いて活動していました。
ロシアとウクライナを股に掛けた政治活動でもプライベートでも人目を引くような動きが目立ちましたが、2015年2月27日、ウクライナ人モデルのアンナ・ドリツカヤとモスクワ市内のレストランで食事をして帰宅する途中、モスクワ川にかかる橋の上で6発の銃撃があり、そのうち4発が背中に命中して死亡しました。
ボリス・ネムツォフ氏はクリミア併合を批判し、ウクライナ東部の親ロシア派へのロシアの軍事支援も糾弾していましたので、(ロシアではよくある)政治的な動機による暗殺とも見られています。
そのボリス・ネムツォフ氏とも近かったナジェージュジン氏がどれだけの支持を集められるか・・・。
****ロシアリベラル「最後の生き残り」、ボリス・ナジェージュジンに希望はあるか?****
<3月の大統領選に立候補する意向だが......。本誌「ISSUES 2024」特集より>
2024年3月、ロシアで大統領選挙が予定されている。現状では、ウラジーミル・プーチン大統領の5選が確実だが、政府も「ロシアは民主主義」だと言えるよう、野党系に立候補を促している、と伝えられる。
そのせいか、モスクワ市議会議員でリベラル系のボリス・ナジェージュジン(ロシア語のできる筆者でも舌をかむ発音だ)が、立候補の意向を明らかにしている。これまで所属政党を気軽に変えてきたが、いずれもリベラル系。過去にはリベラルの巨頭ボリス・ネムツォフ第1副首相(15年暗殺)の補佐官を務めている。
今年60歳。その家系には代々、音楽家が多く、彼自身ギターを抱えて歌う吟遊詩人スタイルで4枚のCDを出している。全国数学オリンピックで2位になったこともあり、コンピューターゲームにも興ずる。
テレビ討論番組の常連で、昨年5月には「プーチンが辞めなければ、ロシアは欧州に戻れない。24年の大統領選挙は、プーチン以外なら誰でもいい」と、大胆なことを言っている。
「ロシアのインテリ」は、18世紀初めにピョートル大帝が貴族のひげを剃り落とさせ、上層部の西欧化を図った時に生まれた階層だ。トルストイの『戦争と平和』にあるように、自宅でもフランス語を使い、西欧で年の半分も過ごすような貴族から、チェーホフの戯曲に登場する医師、教師などの貧乏インテリまでさまざま。ただ絶対少数で、大衆の海の中では浮いている「余計者」的存在だ。
大衆から嫌われるリベラル
彼らはソ連の時代も西欧文明と自分を同一視し、西欧の自由と民主主義に憧れた。1960年代のフルシチョフの「雪解け」、85年からのゴルバチョフのペレストロイカ、そしてエリツィンによる無秩序な自由化の時代に、彼らはやっと自分たちの時代が訪れたと思い、そのたびに裏切られてきた。
彼らはもともと絶対少数の存在だし、90年代には極端な自由化に走って経済、社会を混乱の極みに導いた張本人だと思われて、大衆に嫌われている。全てが国営だったロシアでは、今でも大多数が政府、国営企業に雇われているから、反政府主義者は異分子になる。「自由と民主主義は混乱の元」はロシアの公理なのだ。
この社会構造を公安警察KGBの後身FSBが津々浦々に張ったネットワークで監視する。00年、そのFSBを力の基盤とするプーチンが権力の座に就くと、リベラル分子は権力から遠ざけられた。(中略)
ナジェージュジンはそのような、裏切られたリベラルの最後の生き残りだ。ロシア当局が彼の大統領選立候補を認めるかどうかまだ分からないが、認められたとしても、リベラル嫌いの大衆は彼に投票するまい。投票したとしても、ロシアの電子集票システムがそれをきちんとカウントするかどうか......。
ナジェージュジンという名は「希望」というロシア語から派生している。次の選挙でも、リベラルの希望はつぶされることになるだろう。【12月22日 河東哲夫氏 Newsweek】
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ロシア社会では「余計者」「嫌われ者」のリベラルエリートのナジェージュジン氏ですが、国民の一部にある「反プーチン・反ウクライナ侵攻」の思いをつかめるか・・・? 仮につかめたとして、プーチン政権がそれを認めるか・・・?
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