孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ロシア大統領選挙  獄中で行方不明のナワリヌイ氏 「プーチン大統領は無名の女性候補を恐れた」

2023-12-23 23:05:06 | ロシア

(大統領選挙に立候補した無名の女性地方議員、エカテリーナ・ドゥンツォワ氏【12月21日 時事】 選管は無所属での出馬を認めないことを決めています。)

【プーチン大統領の選挙「演出」】
既定路線であったプーチン大統領の来年3月に行われる大統領選挙へ出馬表明・・・でも、どうしてこんな臭い演出をするのでしょう。ロシアではまともに受け取る人がいるのでしょうか?

****ロシアのプーチン大統領 来春の大統領選に出馬表明****
 ロシアのプーチン大統領は来年3月の大統領選に出馬すると表明しました。

アルチョム・ジョガ氏:「あなたは私たちの大統領であり、私たちはあなたのチームであり、私たちはあなたを必要とし、ロシアもあなたを必要としています」

プーチン大統領:「ありがとうございます」「今こそ決断の時です。私はロシア大統領に立候補します」

プーチン大統領は8日、ロシア大統領府で行われた軍の授賞式でドネツクのスパルタ大隊の司令官、アルチョム・ジョガ氏らに対して来年3月の大統領選へ出馬の意向を明らかにしました。

プーチン大統領は2017年にも訪問先の自動車工場で従業員からの求めに応じる形で出馬表明するなど、国民に求められる形で立候補の意向を明らかにするという演出を繰り返してきました。

ロシアの大統領選は来年3月15日から17日にかけて投票が行われることになっています。【12月8日 テレ朝news】
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プーチン氏の勝利は間違いないですが、プーチン氏が気にしているのは投票率と得票率。 国民からの圧倒的支持を受けて選ばれた・・・と、その正当性を西側にアピールしたい狙いです。

正当性を西側にアピールという点では、ちゃんと対立候補がいて、まともな選挙戦が行われた・・・という形を演出することも重要。また、対立候補なしでは投票率も上がりません。もちろん、脅威となりそうな人物は刑務所に収監して、選挙になど出させないというのが実態ですが。

【行方不明のナワリヌイ氏 選挙への影響力警戒か】
ここ数年、プーチン大統領の正当性を揺さぶっているのがプーチン体制の腐敗、汚職を暴露してきた反政府指導者ナワリヌイ氏ですが、周知のように同氏は禁錮19年の判決を受けて今獄中にあります。それでもその影響力は大きいようです。

****「プーチンのいないロシア」 大統領選挙を控え反体制派と現政権の攻防始まる****
来年3月17日のロシア大統領選挙に向け、ロシアの反体制派とプーチン政権の攻防がはじまりました。

ロシア反体制派のナワリヌイ氏陣営は7日、プーチン大統領以外の候補者への投票を呼びかけるキャンペーン「プーチンのいないロシア」を開始しました。

ナワリヌイ氏の陣営は、モスクワやサンクトペテルブルクなどの各都市に、当局の目をかいくぐるようにナワリヌイ氏と無関係を装った看板を設置しました。QRコードを読み取ることでキャンペーンのサイトにアクセスできる仕組みです。

しかし、看板の存在がSNSで広まると、「早速、警察官が来て看板をチェックしています。警察官がチェックに来てからわずか数十分後、すぐに看板は取り外されました」。

ナワリヌイ氏の陣営は、「投票結果は改ざんされるだろうが、我々の任務はロシアがプーチンを必要としていないことを誰の目にも明らかにすることだ」として、抵抗を続けるよう訴えています。(ANNニュース)【12月8日 ABEMA TIMES】
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そのナワリヌイ氏はこれまでの刑務所からどこかへ移送され、「行方不明」となっています。

*****ナワリヌイ氏、不明2週間 大統領選へ反対派締め付け強化か****
ロシアのプーチン政権を批判する活動家ナワリヌイ氏が収監先のモスクワ東方ウラジーミル州の刑務所から移送され、行方不明となって2週間が過ぎた。18日に予定されていた法廷審理は来年1月11日に延期。

プーチン大統領が通算5選を目指す来年3月の大統領選に向け、当局側が反対派の締め付けを強めているとみられる。  

ナワリヌイ氏陣営によると、弁護士が6日に刑務所を訪れたが面会できず、7日以降に遠隔で参加予定だった審理にも「故障」を理由に参加しなかった。刑務所側は既に同氏は別の地域の施設へ移送されたと説明。陣営は各地に照会しているが所在を確認できていない。【12月20日 共同】
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獄中にあるナワリヌイ氏をどうしてプーチン大統領は警戒するのか?

****反プーチン 獄中のナワリヌイ氏の闘い*****
(中略)
獄中にあっても、ナワリヌイ氏は反プーチンの中でもっともカリスマ性があり、行動力のある指導者です。

今回の大統領選挙で、ナワリヌイ氏は、「プーチン以外の候補者に投票しよう」「それぞれが10人の知り合いを説得して反プーチンの輪を広げよう」と具体的な呼びかけをしていました。その意思を仲間がSNSを通じて拡散しています。

強権的なロシアでも立候補者の署名集めに協力することは法律で認められており、ナワリヌイ氏は戦争に否定的な候補者の署名集めに協力することで、選挙を利用して反戦争、反プーチンの意思を示すよう呼び掛けているのです。

2012年の大統領選挙ではナワリヌイ氏は同じようにプーチン以外の候補者に投票しようと呼びかけ、プーチン氏の得票率は最低の64%にまで落ち込みました。その再現を狙っているのです。

こうした活動を恐れた体制がナワリヌイ氏と外界との連絡を遮断した可能性もあります。(後略)【12月18日 NHK】
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【無名の女性地方議員が立候補届け出 選管は無所属での出馬を認めず 「プーチン大統領は無名の女性候補を恐れた」】
プーチン大統領の選挙演出としては、ナワリヌイ氏のような本当に脅威となる人物はあの手この手で選挙には出させない、しかし一方で、前述のように対立候補なしでは選挙の正当性に疑問が持たれ恰好がつかない、選挙戦が盛り上がらず投票率も下がる・・・ということで、自身の勝利に影響のない、負けると分かっている対立候補は必要です。

そのため、政権側が裏で画策して、敢えて反プーチンあるいは非プーチンの対立候補を出せるという「演出」も行います。

そうした状況で、平和と民主主義を掲げる無名の女性地方議員が立候補を届け出て、本当の対立候補なのか、上記のような政権側の「演出」なのかというところも含めて話題になりました。

****ロ大統領選、女性議員が立候補届け出=リベラル派初、プーチン氏に挑戦****
来年3月のロシア大統領選に向け、独立系の女性地方議員エカテリーナ・ドゥンツォワ氏(40)が20日、立候補を届け出た。書類を受理した中央選管は、5日以内に出馬の可否を判断。認められた場合、無所属での立候補に必要な30万人分の署名集めに移る。

届け出は通算5選を目指すプーチン大統領に続くもので、リベラル派からは初。現在はモスクワ北西のトベリ州ルジェフ市議を務めている。

最近までほぼ無名で、現地メディアは「3児の母、法律家、ジャーナリスト」と紹介。ロシアのウクライナ侵攻に反対しているほか、「(プーチン氏の政敵の元石油王)ホドルコフスキー氏に支援されている」(ロシア通信)といわれ、出馬を認められるかは不透明だ。 【12月21日 時事】
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ドゥンツォワ氏はプーチン大統領の対立候補の擁立を模索する運動「ナーシ・シュタープ」の支援を受けて11月に立候補を表明すると急速に支持を拡大し、今月17日、モスクワで集会を開き、届け出に必要な500人の推薦人を集めました。

一方で“一方で、リベラル派の一部からは市民の不満のガス抜きのためにプーチン政権が裏で操っている候補者だと警戒する声も出ています”【12月22日 テレ朝news】とも。

出馬表明後に、身の危険を感じることはあるかとの質問を受けたドゥンツォワ氏は、「懸念」はあるものの、自身の行為は「合法」だと述べたとのことです。【12月21日 AFPより】

プーチン氏の政敵の元石油王ホドルコフスキー氏との関係は否定しています。

****元石油王の支援受けず、ロ大統領選に出馬表明のドゥンツォワ氏****
来年のロシア大統領選への出馬を表明したエカテリーナ・ドゥンツォワ氏は21日、海外で反体制活動を行っている大手石油会社ユーコス元社長ミハイル・ホドルコフスキー氏から支援を受けていないと述べた。

ロシア国営通信RIAは、20日に大統領選出馬の正式な届け出を行ったドゥンツォワ氏について、「亡命中の新興財閥である(外国のエージェントの)ホドルコフスキー氏から支援と資金提供を受けている」と報じた。ロシアで「外国のエージェント」という言い回しはスパイとほぼ同じ意味で使われている。

ドゥンツォワ氏は野党勢力のユーチューブ番組のインタビューで、RIAの報道はでっち上げだと主張。ホドルコフスキー氏と「直接的な関係」はなく、同氏が亡命したロシア人を支援するために立ち上げたプロジェクトの責任者がドゥンツォワ氏を支持していることが根拠になっているのかもしれないと指摘した。

インタビューではプーチン氏を正面から批判することは避けつつ、ロシアはプーチン氏が政権を握ったこの24年間に間違いなく停滞していると述べた。【12月22日 ロイター】
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しかし、中央選管は23日、書類に不備が見つかったとして無所属での出馬を認めないことを決めたています。
ということは「演出」ではなかったようです。

****女性議員の出馬認めず=「無名候補恐れた」と政権批判―ロシア大統領選****
来年3月のロシア大統領選に立候補を届け出た独立系の女性地方議員ドゥンツォワ氏(40)について、中央選管は23日、書類に不備が見つかったとして無所属での出馬を認めないことを決めた。関係者が明らかにした。同氏は20日に立候補届を提出していた。

無所属での立候補には30万人分の署名が必要となるなどハードルが高く、ドゥンツォワ氏をリベラル系野党「ヤブロコ」が支援するシナリオもささやかれている。

反体制派指導者ナワリヌイ氏の側近は「プーチン大統領は無名の女性候補を恐れた」と政権を批判した。【12月23日 時事】 
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名前のスペルの間違いなど書類に100以上の誤りがあったとのことで、重箱の隅をつつくような選管の対応のようです。

リベラル系野党「ヤブロコ」から立候補する・・・ということになれば、ウクライナ侵攻反対といった主張がどれだけ得票できるか興味深いところですが・・・届け出は今月27日に締め切られることもあって、どうでしょうか?

プーチン政権の侵攻を非難する文化人への「締め付け」強化については、下記のようなニュースも。

****ロシア人気作家「過激派」に アクーニン氏、口座凍結****
ロシア金融監視庁は18日、ロシアの人気作家で日本文学研究者のボリス・アクーニン氏を「テロリスト・過激派」のリストに登録した。インタファクス通信によると、銀行口座が凍結され、金融サービスを受けられなくなる。同氏はウクライナ侵攻に反対の立場を公言していた。

タス通信は治安当局者の話として同日、ロシア軍に関する虚偽情報を流布し、信用を失墜させた疑いで、アクーニン氏に対する捜査が始まったと報じた。

ロシアの出版大手ASTは先に、侵攻に関する不適切な発言があったとしてアクーニン氏の作品の出版を停止すると発表。書籍販売大手も販売停止を決めた。アクーニン氏はロンドンを拠点に活動している。【12月19日 共同】
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