孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ウクライナ支援  主力戦車供与で苦悩するドイツ  日本では・・・・

2023-01-24 22:48:56 | 欧州情勢

(現地の病院などに支援物資を届けたデヴィ夫人【1月24日 TBS NEWS DIG】)

【対ロシアで突出することを恐れるドイツ】
欧米各国のウクライナ支援に関してウクライナが求める独製戦車「レオパルト」の供与が焦点となっていること、ドイツが供与に消極的姿勢を崩していないこと、そうしたドイツの対応にウクライナや関係国から不満が出ていることは連日の報道のとおりです。

****ドイツ製戦車「レオパルト」の供与決まらず…ウクライナ支援巡り米英と違い鮮明****
ロシアの侵略を受けるウクライナへの軍事支援を巡り、約50か国の国防相らが参加してドイツで開かれた20日の国際会合で、ウクライナが求める独製戦車「レオパルト」の供与を巡っては結論が出なかった。ドイツと米英などの立場の違いが鮮明になった。

ウクライナは冬の間に軍の装備向上を図り、雪解けが進む春以降の大規模攻撃に踏み切りたい構えだ。戦車を操作する訓練に数か月かかる見込みで、できる限り早期の供与を求めている。

主宰した米国のオースティン国防長官は会合後の記者会見で「我々が重視しているのは、ウクライナの成功に必要な能力確保だ。(戦闘激化が予想される)春までの間にそう長い時間はない」と述べ、早期の独製戦車の供与実現に強い意欲を示した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日のビデオ演説で「近代的な戦車の提供を受けるために我々は戦い続けなければならない」と無念さをにじませた。

ボリス・ピストリウス独国防相は会合後、記者団に、独製戦車供与を巡って参加国の意見が一致しなかったと明らかにした上で「賛成も反対も、ふさわしい理由がある。慎重に検討されなければならない」と述べた。

ピストリウス氏は、ドイツが供与に一方的に反対しているとの指摘について「間違いだ」と反論した。独軍と製造企業が保有する在庫をリストアップするよう指示したことを明かし、各国と合意できれば、速やかに戦車を差し出す意向を強調した。

会合では、英国が欧米製戦車で初となる「チャレンジャー2」、米国も装甲車ストライカーの供与を報告した。カナダは新たに地対空ミサイルシステム「NASAMS」供与を表明するなど防空や装甲能力の支援を強化することで一致した。【1月21日 読売】
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なお、ドイツだけでなくアメリカ・バイデン政権も米軍の主力戦車M1エイブラムスの供与に踏みこんでいません。
ドイツからは「アメリカがM1エイブラムスを供与するなら、ドイツも・・・」という声も。

ドイツが「レオパルト」供与を渋る理由は、ゲームチェンジャーともなりうる兵器を供与して突出することでロシアの怒りの標的になりたくない・・・という思いがあるのでしょう。

また、アメリカなどには理解し難い感情でしょうが、ドイツは(最近でこそNATOとして軍事的共同歩調をとることもあるようにはなっていますが)日本と同様に先の大戦の経験から、軍事行動に直接関与することへ慎重な国民感情があります。(このあたりはアメリカより日本の方が、その感情は理解できるかも)

****米独が主力戦車をウクライナに供与できない本当の理由****
レオパルト2供与を躊躇する理由は何か

ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナへの戦車支援をめぐって米国とドイツが正面衝突している。

ドイツ西部にあるラムシュタイン米空軍基地で1月20日、ロイド・オースティン米国防長官(軍人出身)などおよそ50か国の代表が参加して、ウクライナへの軍事支援について協議する会合が開かれた。

焦点となったのは、欧州各国が保有する攻撃力抜群のドイツ製戦車、「レオパルト2」(1両574万ドル=約7億4000万円)をドイツはじめ保有国がウクライナへ供与するかどうか、を決めることだった。8回行われた会合でも結論は出なかった。

実は、ポーランドはすでに供与することを表明、フィンランドもドイツ政府の許可が得られれば、レオパルト2を供与するとしている。

レオパルト2は、ドイツ以外にポーランド、フィンランド、カナダなど15か国が保有しており、その数はあわせて2000両を超える。

問題は、供与には製造国のドイツ政府の再輸出許可が必要で、ドイツが供与に踏み切るか、また、ほかの国の供与を認めるか、だ。

就任したばかりのドイツのボリス・ピストリウス国防相(中道左派・社会民主党、前内相)は1月20日時点では判断を先延ばしした。

攻撃力の高いドイツ製戦車レオパルト2のウクライナ供与については、ドイツは条件を付けてきた。
中道左派・社会民主党(SDS)のオラフ・ショルツ独首相は米国も主力戦車の「エイブラムズ」(1両621万ドル=約8億円)をウクライナに提供することを条件としていると、ドイツ紙に報じられたのだ(ドイツ政府は否定している)。

報道によると、ショルツ氏は1月17日のジョー・バイデン米大統領との電話会談でこう述べた。
「米国からエイブラムズが提供される場合に限って、レオパルト2を供与したい」

こうした動きに対してウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は1月19日、憤りを隠さなかった。
「『別の誰かが提供するならば』と言ってためらっている場合ではない。ことは急を要するのだ」

ドイツの「国防体制大転換」は大嘘?
なぜ、ドイツがそこまで供与を躊躇しているのか。米シンクタンク、「グローバル・パブリック・ポリシー研究所」(ベルリン)のソーセン・ベナー所長はずばりこう指摘する。

(中略)「高い機動性を有するレオパルト2がウクライナの戦場に投入されることで戦闘はエスカレートし、ロシアがドイツに対して報復に出る可能性は十分考えられる」

「ドイツは、供与した後の米国からの最大限の保証が欲しい。ショルツ氏は躊躇する理由について具体的な言及は避けているが、ロシアがドイツを標的にするのではないか、と恐れている」

さらに別の米シンクタンクのドイツ問題専門家P氏は次のように分析する。
「ドイツは自分が直に供与することは言うに及ばず、ポーランドやフィンランドがウクライナに供与するのを承認することにも消極的だ」「供与によってウクライナに対する武器支援の拡大が、遅かれ早かれ北大西洋条約機構(NATO)とロシアの全面衝突につながりかねないことを懸念しているのだ」

「とくに社会民主党は過去20年間、平和主義を掲げてきた。自分たちが武器支援拡大の先駆けになることだけは避けたい」

「ウクライナ問題はいずれ収拾するだろうし、その時になって自分たちが独ロ関係に致命傷を与えた張本人にはなりたくない」「そこで、自らは先頭には立たずに、米国を巻き込みたいのだろう」

ドイツ世論もウクライナへのレオパルト2の供与については、賛成47%、反対37%と二分されている。

ショルツ氏は、ロシアがウクライナを侵攻した3日後、戦後ドイツの平和主義への傾倒との決別、『Zeitenwende』(転換点)と宣言し、米国を喜ばせた。それがレオパルト2の供与では及び腰になっている。まさに総論賛成各論反対だ。

米国との国家安全保障関係を深化させるドイツに強い警戒心を抱いてきたロシアもほっとしているのではないのか。
それよりも何よりもレオパルト2という「恐るべき助っ人」の導入をめぐる新ウクライナ陣営のごたごたは、2月以降に大攻勢を準備しているロシアにとっては朗報だ。少なくとも時間稼ぎにはなる。(後略)【1月23日 高濱 賛氏 JBpress】
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【アメリカの国内事情】
アメリカ・バイデン政権がなんだかんだ技術的理由をあげて主力戦車「エイブラムズ」供与に躊躇している背景には、「このままズルズルとウクライナ支援を続ければ、米国および米国の同盟国の武器・弾薬の在庫は目減りしてしまう」というウクライナ支援に消極的な共和党保守派の存在があるとも指摘されています。

「対ウクライナ軍事支援は米国防費の一部だ。終わりなき支援は、史上最高額に達している米国防費を青天井のリスクに陥れる」(軍事外交サイト「SPRI」の共同創設者、ステファン・セムラー氏)という批判も。

もっとも、共和党には「エイブラムズ」供与を渋るバイデン政権を批判する声もあり、よくわかりません。

****米共和党「M1エイブラムス戦車を提供すべきだ」…ウクライナ軍事支援でバイデン政権批判****
(中略)
「重要な兵器の提供をためらうのは弱腰だ。ウクライナ人の命を犠牲にする」
共和党のマイケル・マコール下院外交委員長とマイク・ロジャース下院軍事委員長は18日に連名で声明を出し、独製戦車レオパルトの供与に二の足を踏むドイツと、米軍の主力戦車M1エイブラムスの供与に踏み切らないバイデン政権を批判した。(後略)【1月22日 読売】
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ドイツ同様に、アメリカが戦車や長射程兵器を供与してロシア領内の攻撃に使われた場合、米露間の緊張が過度に高まることへの懸念、ロシアの核兵器使用の脅威が高まりかねないことへの懸念もあります。
「支援」といっても、実際問題となるとなかなか難しい側面もあります。

【日本政府の対ウクライナ支援】
なお、日本政府は下記のようなウクライナ支援に取り組んでいます。

ドローン、防弾チョッキ、ヘルメット、防寒服などの提供
医療・食料等の緊急人道支援(2億ドル) 令和4年度補正予算措置による人道支援、復旧・復興支援(5億ドル)
ウクライナへの財政支援(6億ドル)
越冬支援(257万ドル)
在留ウクライナ人の在留延長許可
ウクライナからの避難民受入れ 【12月14日 「日本はウクライナと共にあります」首相官邸HPより】

いろいろ行ってはいますが、欧州からは遠いアジアということもあって、主力戦車供与で首までどっぷりロシアとの戦争に浸かることを求められているドイツとは雲泥の差がある状況です。

もちろん、日本も国際政治への関与、世界平和への貢献が求められています。

****日本、非常任理事国入り=石兼大使「世界平和に貢献」―国連安保理****
国連安全保障理事会の非常任理事国10カ国の半数が1日、入れ替わった。12回目の非常任理事国入りを果たした日本の石兼公博国連大使は3日、安保理議場前で国旗設置式に出席し、「世界の平和と安全に積極的に貢献していく」と抱負を語った。

日本の安保理入りは2016〜17年以来で、任期は24年末までの2年間。モザンビーク、エクアドル、マルタ、スイスも同時に非常任理事国となった。【1月4日 時事】 
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とりわけ、(私個人はかなり懐疑的ですが)今後常任理事国入りを目指すということであればなおさらです。

日本は地雷除去ではカンボジアで実績がありますが、こんな支援の取り組みも。

****ウクライナ政府職員、カンボジアで地雷除去訓練 日本が後押し****
カンボジア・バタンバン州で19日、ウクライナ政府職員が地雷除去の研修を受けた。研修は、日本政府がカンボジア地雷対策センターと共同で実施した。

カンボジアでは約30年に及ぶ内戦が1998年に終結したが、当時埋められた地雷の除去作業が現在も続いている。同国は世界有数の地雷埋設の一つとなっている。

研修では、ウクライナ政府職員15人が、地雷探知機など機器の使い方や、地雷探知への動物の活用法などを学んだ。

対人地雷は1997年の国際条約で使用が禁止されており、130か国以上が署名している。だが、ロシアはこの条約に加盟していない。

「ヒューマン・ライツ・ウオッチ」は、ロシアはウクライナへの侵攻開始後、少なくとも7種類の地雷を使用したと指摘している。

CMACのオム・プムロ副長官は、「カンボジアで1週間訓練を行う。その後はオンラインで訓練を継続し、ウクライナでの地雷除去に備える」と取材陣に語った。

カンボジアはウクライナ職員への継続訓練に向け、年内に最大4人をポーランドに派遣する予定だ。 【1月22日 AFP】
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【デヴィ夫人「私に怖いモノはないです」 ウクライナ支援に名乗りを上げる】
こうしたなかで、目に見える形での支援に個人レベルで名乗りをあげたのが、あのデヴィ夫人。

****デヴィ夫人がウクライナ訪問 「私に怖いモノはないです」****
乗り捨てられ、ボロボロの戦車の前に立つ、タレントのデヴィ夫人。
ウクライナの首都キーウなどを訪問し、支援物資を届けた。どのような思いで現地に向かったのか。
現地時間24日午前9時ごろ、FNNの単独インタビューに応じた。

デヴィ夫人「わたしたちは、ウクライナの人たちを勇気づける目的がある。ウクライナ大使館に寄付したり、いろいろなチャリティーで2〜3回、ウクライナのための支援資金を集めて送ったりしていたが、それだけでは足りなくて、私自身がここへ来てしまった。ウクライナを民主主義の墓場にさせることは絶対にできない」

22日にウクライナに到着したデヴィ夫人。
23日、キーウや民間人への虐殺があった近郊の街ブチャの病院などを訪問した。防寒着やおむつなどの支援物資を届けたという。

ウクライナのコルスンスキー駐日大使は、現地での写真をツイッターに掲載し、「彼女は勇敢で強い。Dewi Sukarnoのような友人がいて、わたしたちはとても幸運です」とつづった。

在日本ウクライナ大使館によると、2022年12月、デヴィ夫人から現地訪問について相談があったという。その際、大使館側は、集まっていた支援物資のウクライナへの輸送を依頼。デヴィ夫人が運営に関わる財団が、輸送に協力することになったという。

石油ストーブや医療品などが入ったコンテナ4個が、2月中にも現地に届く予定だという。

出国直前のデヴィ夫人。
ウクライナカラーでそろえたスーツケースには、支援物資が入っていた。
デヴィ夫人「今回わたしたち、手で持てるものは持ってきました。機能性インナー上下、それとカイロ、懐中電灯、便座シート、止血止め、おむつなど、たくさん持ってきました」

日本から輸送したコンテナが届くのは2月になるため、少しでも早く支援物資を届けるため、持てるものは持っていくことにしたという。

戦争に終わりが見えない中、日本政府は、ウクライナ全土に退避勧告を出し、渡航もやめるよう求めている。
そうした中で、ウクライナを訪問することは危ないのではという指摘もあるが、デヴィ夫人は「警備がついているので安全だ」と話している。

デヴィ夫人「ウクライナ警察とミリタリーポリスが警護してくださっています。私は戦争経験してますし、クーデターも経験していますし、革命も経験していますし、暴動も経験しています。怖いモノはないです」

一方で、松野博一官房長官は24日、「どのような目的であれ、ウクライナへの渡航はやめていただくよう、また、すでに滞在されている方は安全を確保したうえで、直ちに退避していただくよう勧告しています」と述べた。

松野官房長官は、日本政府として国際社会と緊密に連携しながら、ウクライナの人々に寄り添った支援を実施するとしている。【1月24日 FNNプライムオンライン】
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今でこそ面白いキャラとしてタレント活動をしているデヴィ夫人ですが、赤坂の有名高級クラブで働き、日本とインドネシアを結ぶ線のひとつとしてインドネシア・スカルノ大統領にのもとに送り込まれ、第3夫人となり、高度成長期、インドネシアへ経済進出する日本とインドネシアの橋渡しを行った稀有の経歴の持ち主です。

クーデターなどの修羅場を経験したのも事実です。「私に怖いモノはないです」というのも納得。

日本政府は迷惑気ですし、派手なパフォーマンスに眉を顰める向きもあるかもしれませんが、日本がこういう形で具体的に(遠い海の向こうの話のような)ウクライナ支援と向き合うことは良いことだと思います。

それにしても、フィクサー的な立場にもあったデヴィ夫人には、当時の日本とインドネシアの“裏話”を聞きたいところですが・・・相当にヤバい話ばかりでしょうが。

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