孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イスラエル オバマ政権に“マジ切れ” トランプ新政権に関係改善を託す ネタニヤフ首相に汚職疑惑も

2017-01-05 21:36:42 | 中東情勢

(ネタニヤフ首相の汚職疑惑に関する事情聴取のため、エルサレムにあるイスラエル首相公邸の入り口に止められた警察のパトカー(2017年1月2日撮影)【1月3日 AFP】)

【「中東唯一の民主主義国」の司法制度を揺るがしかねない大論争
昨年3月、イスラエル軍兵士が負傷して路上に倒れていたパレスチナ人男性の頭部に銃弾を撃ち込んで「処刑」する場面を映した動画が公開され注目を集めました。

この事件は、一昨年10月以降、エルサレムやヨルダン川西岸などでパレスチナ人がイスラエル人を襲撃したり、イスラエル当局と衝突したりする事件が相次ぎ、死者は双方で200人を超えるという険悪な状況で起きたものでした。

****イスラエル軍兵士、負傷し倒れたパレスチナ人に銃撃で拘束****
イスラエル国防軍は26日までに、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸ヘブロン市で、刃物による襲撃事件に関連して負傷し、路上に倒れていたパレスチナ人男性の頭部に銃弾を撃ち込んでいたイスラエル軍兵士を拘束したと発表した。

拘束は、イスラエルの人権擁護団体「ベツェレム」が現場で撮影した銃撃場面のビデオ映像の公表がきっかけとなった。映像は、少人数の軍兵士と医療担当兵士が倒れているパレスチナ人男性(21)の周辺に集まっている様子などをとらえていた。

ベツェレムは映像と合わせた声明で、負傷し倒れているパレスチナ人への銃撃は周辺にいた多くの兵士らが気付いていない状況の中で起きたとみられると述べた。

イスラエル軍によると、撃たれた男性は同じ現場で直前の時間帯に発生していた軍兵士1人の刺傷事件の容疑者2人のうちの1人。残る容疑者も21歳のパレスチナ人で刺傷事件が起きた際に発砲を受け、死亡していた。

イスラエルのヤアロン国防相は、拘束された兵士の行動はイスラエル軍の価値基準に反するとし、最も厳しい方法で対処すると述べた。憲兵隊が調査を開始した。イスラエル軍は、ベツェレムの映像が公表される前に現場の司令官が今回の不祥事を報告していたとも主張した。

パレスチナ自治政府のジャワド・アウワド保健相は「戦争犯罪」の行為と指弾し、イスラエル軍がパレスチナの民間人に対して行う現場での処刑を物語る非常に明白な証拠と主張した。【2016年3月26日 CNN】
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事件を起こした兵士に対する軍事裁判では、4日、故殺罪で有罪判決が出されました。

****パレスチナ人射殺の兵士に有罪=負傷後、頭部銃撃―イスラエル****
イスラエルのメディアによると、同国の軍事裁判所は4日、負傷したパレスチナ人容疑者の頭を撃って死なせたとして、軍の兵士に対し、故殺(計画性のない殺人)罪で有罪判決を言い渡した。量刑は後日言い渡されるが、最高20年の禁錮刑を科される可能性がある。
 
ヨルダン川西岸ヘブロンで昨年3月、別の兵士を襲撃したパレスチナ人容疑者が負傷して地面に倒れていたところ、有罪判決を受けた兵士に頭を撃たれて死亡した。兵士はパレスチナ人が自爆ベルトを装着していた可能性があったなどと主張していた。
 
裁判官は「差し迫った脅威はなかった」として兵士の行為の正当性を否定、軍の交戦規定に違反したと述べた。【1月4日 時事】 
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まっとうな判決だと思いますが、軍のパレスチナ人への強硬姿勢を支持するイスラエル国内保守派はおそらくこの判決を批判して騒ぐのでは・・・・とも感じました。
案の定、イスラエル国内で議論を呼んでいるようです。

****パレスチナ人銃撃のイスラエル兵に有罪 必要性巡り論争****
・・・・国民皆兵のイスラエルでは、軍幹部らが問題を認める一方、右派系の政治家らが擁護してきた。

右派連立政権を率いるネタニヤフ首相は4日、「(兵士に)恩赦を与えることを支持する」とフェイスブック上で発言した。

「中東唯一の民主主義国」を掲げてきた同国の司法制度を揺るがしかねない大論争になっている。【1月5日 朝日】
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こうした“戦争犯罪”とも批判されるような行為を不問に付すことがあっては「中東唯一の民主主義国」が泣きます。
敵愾心・憎悪が冷静な判断に優先するようでは、パレスチナ和平は絶対に実現しません。

【「二重基準」からの脱却を図ったオバマ政権 次期政権誕生を目前に控え、その効果は不透明
その「中東唯一の民主主義国」イスラエルが違法に進める占領地への入植活動に対する国連安保理の非難決議案採決において、これまで一貫して拒否権を行使してきたアメリカが“棄権”という形で成立に手を貸したこと、それにイスラエル・ネタニヤフ首相が“マジ切れ”とも言われる猛反発していることは周知のところです。

イスラエルをアメリカが支える形で両国は強固な同盟関係にありますが、アメリカ・オバマ大統領とイスラエル・ネタニヤフ首相の“犬猿の仲”も以前から周知のところです。

(歴代アメリカ政権同様に)イスラエルのユダヤ人入植活動を批判してきたオバマ大統領は任期切れの最後の最後で、イスラエルに対する強い不快感を意思表示した形ですが、背景にはイスラエル側の加速する対応もあるようです。

****<イスラエル入植地問題>米、二重基準の脱却図る****
イスラエルのユダヤ人入植活動を批判しながら、安保理ではその非難決議案に拒否権を行使し続けてきた米国の「二重基準」。オバマ米大統領は政権末期に従来路線からの脱却を図った形だが、「親イスラエル」を鮮明にするトランプ次期政権誕生を目前に控え、その効果は見通せない。
 
「イスラエルの政策に大きな打撃となる。国際社会全体の入植地非難であり、(パレスチナ国家建設を目指す)2国家共存への強い支持だ」。パレスチナ自治政府のアッバス議長の広報官は声明を出し、歓迎した。

イスラエル首相府は「この恥ずべき反イスラエル決議を拒否する。イスラエルは決議案の文言には縛られない」と反発。事実上、無視する構えを見せている。
 
オバマ氏が方針転換を図った背景には、拡大するイスラエルの入植活動や、違法な入植地建設を容認する新法制定の動きがある。
 
イスラエルが占領するヨルダン川西岸パレスチナ自治区アモナ地区では、裁判所が下した入植地からの退去命令に入植者が抵抗。強制排除による宗教右派の反発を恐れたイスラエル政府は、家屋の破壊代などとして実質的に約2400万ドル(約28億円)の公費を拠出する見通しで、新たな違法入植地建設に使われるとみられている。

また現在、新たな入植地の建設を独自に国内法で合法化する法整備を検討中で、来月20日のトランプ新政権の発足を待って、手続きを本格化する可能性もあるとされる。
 
パレスチナ問題を巡っては、米国の政権交代間際にその後の和平交渉につなげようとする動きがみられることがある。オバマ氏もイスラエルに対し「厳しい決断」をする可能性が指摘されていた。【2016年12月24日 毎日】
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なお、“入植者を支援するユダヤ系米国人も多く、西岸入植者の約15%はユダヤ系米国人だという報道もある。
”【12月29日 産経】とも。

“マジ切れ”のイスラエルは非難決議に賛同した各国大使を呼んで強く抗議、ネタニヤフ首相は報復措置として、国連への資金拠出拒否を決定し、決議に賛同したウクライナ首相らのイスラエル訪問をキャンセルしたほか、決議の共同提案国であるニュージーランドなどからイスラエル大使を本国に引き揚げています。

アメリカ・オバマ大統領とイスラエル・ネタニヤフ首相の“犬猿の仲”もさることながら、両国の間での交渉にあたっていたケリー国務長官も相当にイスラエルに対する“怒り・不満”がたまっていたようです。異例の“怒りの演説”となっています。

****米、イスラエル入植に異例の非難 国務長官、怒りの演説****
米国の仲介が2014年に頓挫したイスラエルとパレスチナの中東和平に関連し、ケリー米国務長官は28日に演説し、イスラエルによる入植活動の拡大を激しく批判した。

事実上の同盟国で歴史的に強く結びつくイスラエルに対し、公然と非難するのは異例だ。完全なイスラエル寄り姿勢を示すトランプ次期大統領を牽制(けんせい)する意味もあるとみられる。
 
「残念なことに、友好関係が、米国がどんな政策でも受け入れることを意味すると考える者がいるようだ。友人なら困難な事実を言う必要がある」
 
ケリー氏は、入植活動に批判的な米国に反発するイスラエル側をこう非難した。演説は1時間以上にわたり、時折、声を荒らげて怒りをあらわにした。
 
中東和平をめぐっては、国連安全保障理事会が23日、イスラエルの入植活動の即時停止を求める決議案を採択。国際舞台でイスラエルの立場を擁護し続けてきた米国は、拒否権を行使せずに棄権し、黙認した。イスラエルは猛反発した。
 
ケリー氏は、米国の棄権は、再三求めてきた入植拡大の停止をイスラエルが守らなかったことが理由だと強調。イスラエルによる入植は「平和への深刻な脅威だ」と批判した。米国はパレスチナ自治区を独立国家としてイスラエルと共存する形の和平実現をめざすが、その「2国家共存による解決」が「今、深刻な危機にある」と訴えた。
 
「2国家共存」は「イスラエル人とパレスチナ人との持続的な平和の唯一の道なのだ」とし、さもなければ「本当の意味での平和は訪れない」と断じた。
 
ケリー氏は「次期政権が違う道をとろうとしているのは私もオバマ大統領も知っている」と言及。「だが、良心に照らしても、平和への希望が消え入りそうな時、何もせず、何も言わずにいることはできない」と強い口調で訴えた。
 
一方のトランプ氏は、国連の採決の前日、米国が拒否権を行使するべきだと主張する異例の「介入」をした。採択後は、国連自体への批判も強めている。
 
28日には、ツイッターで「イスラエルが見下され、無礼な扱いを受けることを続けさせるわけにはいかない」とつづった。「イスラエル、強いままでいてくれ。1月20日(の大統領就任)は速やかに近づいている」と次期政権での政策転換を示唆した。【12月30日 朝日】
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****<米国務長官>イスラエルを酷評 入植「背景に過激派****
・・・・ケリー氏は2013年夏に再開された和平協議を積極的に仲介したが、イスラエルが入植活動を停止せず、14年春、交渉は頓挫した。

23日の決議採択について、ネタニヤフ首相は「友達なら、(イスラエルを批判する)安保理に連れて行ったりしない」と猛反発。

これに対しケリー氏は演説で「米国の友情」とは、やみくもに支持することではなく「厳しい真実を語り合う」ことだと反論。現在のネタニヤフ政権は「イスラエル史上最右翼で、(入植活動推進を求める)過激派に突き動かされている」と酷評した。
 
イスラエルの現閣僚には、入植者も含まれている。最近では、既存の大規模な入植地とは別に、パレスチナ自治政府の統治エリアに深く入り込んだ飛び地での新たな入植活動を合法化する法整備を検討し、過激化している。
 
ケリー氏は、オバマ政権発足後の09年以降、こうした飛び地で入植者が建設した住宅などが2万戸増加し、既存の大規模入植地を連結させ、将来のパレスチナ国家の領土を分断する役割を担い、イスラエル領土拡大の既成事実化を促すものだと指摘。

パレスチナ国家樹立による「2国家(共存による)解決」ではなく、イスラエルが占領地を併合する「1国家解決」に傾いている、との強い危機感を示した。【12月29日 毎日】
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ケリー国務長官の抱く不満・懸念は、パレスチナ和平の早期実現を願う国際世論にも合致するものではありますが、こんな“最後っ屁”と揶揄されるような形ではなく、もっと早い段階で表明し、オバマ大統領のもとで前進を実現してほしかった・・・というのが正直な感想です。(クリントン氏に引き継ぐつもりでいたので、ことを荒立てずにきた・・・というところでしょうが)

“米国の政権交代間際にその後の和平交渉につなげようとする動きがみられることがある”という点については、オバマ大統領が次期トランプ新大統領のイスラエルへのアプローチを意識して今回の“棄権”判断をしたのかどうか・・・そこは知りません。

トランプ氏はツイッターで「イスラエルに対するこうした軽蔑的で無礼な扱いを継続させることはできない」「イスラエルは(私が就任する)1月20日まであと少し、気丈でいてほしい」などと述べており、イスラエル側もトランプ氏に期待しています。

まあ、その意味では、意識したものかどうかは別にして“オバマ大統領の橋渡し”で、トランプ新大統領になればアメリカとイスラエルの協議が一気に深まりそうですが、問題はその中身です。あまり期待できませんが。

今後は“馬が合う”トランプ・ネタニヤフ両氏のもとで進められることになりますが、“トランプ氏は駐イスラエル大使に、入植推進派で、ヨルダン川西岸のイスラエル併合を支持するフリードマン氏を起用した。トランプ氏の長女イバンカさんの夫のクシュナー氏は、ユダヤ系で、イバンカさんもユダヤ教に改宗している。こうしたことも手伝い、過去の政権以上にイスラエル寄りの政策を進めそうだ。”【12月29日 産経】とも。

トランプ氏だけでなく、議会で多数派の共和党も国連への財政拠出拒否の対抗措置を検討しているとも報じられていますが、トランプ氏は国連新事務総長と電話会談して「会談は非常にうまくいった」と評しています。

***国連批判のトランプ氏、総長と会談「うまく…」***
国連のグテレス事務総長とトランプ米次期大統領が4日、電話で会談した。
 
トランプ氏は「人々が集まって話し、楽しむだけのクラブだ」などと国連を批判しているが、事務総長の副報道官は「会談は非常にうまくいった。米国と国連の関与や協力に向けた多くの分野について議論した」と述べた。会談内容については言及を避けた。
 
一方、ロイター通信によると、トランプ氏の報道担当者は4日、国連に「改革と変化を求めていく」との考えを改めて示した。親イスラエルのトランプ氏は、国連安全保障理事会が昨年12月、イスラエルによるパレスチナ占領地での入植活動を非難する決議を採択した後、国連とは一線を画す姿勢を示している。【1月5日 読売】
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ネタニヤフ首相「何もしていないのだから何か出てくるわけがない」】
一方のイスラエル側がネタニヤフ首相なのか・・・“汚職疑惑”という若干の不透明さも出ているようです。

****イスラエル首相が事情聴取 贈り物不正に受け取ったか****
イスラエルのネタニヤフ首相が、民間人から高額な贈り物を不正に受け取った疑いで、捜査当局の事情聴取を受け、捜査の進展によっては首相の進退問題に発展することも予想されます。

イスラエルの警察は2日、汚職捜査の一環として、エルサレムにあるイスラエルの首相公邸で、ネタニヤフ首相の事情聴取を3時間にわたって行いました。

捜査の詳しい内容は明らかになっていませんが、イスラエルのメディアの報道によりますと、ネタニヤフ首相は複数の民間人から、高額な贈り物を不正に受け取った疑いが持たれていて、贈り物をネタニヤフ首相に渡したとされる人物の聴取も、すでに行われたということです。

イスラエルの検事総長は2日、声明を発表し、ネタニヤフ首相をめぐる数々の疑惑について、去年6月から捜査を続けていて、首相本人の事情聴取を正当化できるだけの証拠が得られたとしています。

一方、ネタニヤフ首相は事情聴取に先立ち、「テレビ局のスタジオや、野党はお祝いムードに包まれているようだが、早まるな。何もしていないのだから何か出てくるわけがない」と潔白を主張しました。

捜査当局は首相への再度の聴取も含め、今後も調べを続ける方針で、捜査の進展によってはネタニヤフ首相の進退問題に発展し、政治の混乱につながることも予想されます。【1月3日 NHK】
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イスラエルでは、2006~2009年まで首相を務めたエフード・オルメルト元首相も汚職容疑で有罪となり収監されました。

オルメルト元首相を巡る汚職事件とは、彼が副首相についていた2004年に、エルサレムのホーリーランド地区に建てた私邸の購入費用の一部について、企業経営者から便宜を受けたというものでした。

ネタニヤフ首相の“疑惑”内容については知りませんが、日本の政界汚職からすれば小規模でも命取りになるようです。

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