孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ  後を絶たない銃乱射事件 病んだ心と銃規制

2012-07-20 23:28:29 | アメリカ

(左は、20日未明、銃乱射事件のあったアメリカ西部コロラド州デンバー近郊オーロラにある映画館 右は事件当時、先行上映会が行われていた「バットマン」シリーズ最新作「ダークナイト ライジング」 “flickr”より By lfdeale http://www.flickr.com/photos/lfdeale/7608701164/

憎しみの連鎖の中でさらに動きを活発化
およそ1年前の2011年7月22日、ノルウェーの首都オスロ都心の政府庁舎前で自動車爆弾が爆発し、8人が死亡。その約1時間半後、オスロ近郊のウトヤ島で、労働党青年部のキャンプに参加していた若者らが襲われ、逃げ惑う69人が次々に射殺されるという衝撃的な事件がありました。

犯人のブレイビク被告は、イスラム教や移民を嫌悪しており、移民受け入れ政策をとる労働党に対するテロとして犯行に及んだとみられています。

****乱射に屈せず、萎縮せず ノルウェー連続テロから1年****
77人が犠牲になったノルウェーの連続テロ事件から22日で1年。乱射現場の島は、さびれた無人島と化していた。生き残った人々はつらい記憶に苦しみながらも、「開かれた社会」を守ろうと訴えている。

■被告への「共感」に深い衝撃
・・・・「運が良かっただけだ」。トーレ・ベッケダルさん(24)は、カフェのトイレにいて難を逃れた。銃声は1時間半近く続いた。血の海に横たわる仲間の姿が脳裏に焼きついている。
(中略)「テロは大変だったな。でも、移民政策は考え直した方がいい」。昨年9月の統一地方選で、労働党の選挙運動を手伝っていた時に、何人かの有権者からそんな言葉を浴びせられた。

アンネシュ・ブレイビク被告(33)は「欧州をイスラムの支配から救うため」として、積極的に移民受け入れを進めた労働党の若者たちを標的とした。その主張に共感するかのような声の存在に、ベッケダルさんはショックを受けた。
裁判も試練だった。被告が「テロは正当防衛」「また同じことをする」との発言を繰り返したからだ。
(中略)
■若者、増える政治参加
組織に属さず、単独で犯行に及んだブレイビク被告の「一匹おおかみ」型のテロは、欧米の治安当局を震え上がらせた。不穏な動きはその後も絶えない。

フランスでは今年3月、「イスラム戦士」を自称する男がユダヤ系学校などで連続銃撃事件を起こした。同月末には、被告が共鳴した英国などの極右集団がデンマークで「サミット」を開き、反イスラムを訴えた。イスラム過激派と極右の双方が、憎しみの連鎖の中でさらに動きを活発化させていく構図だ。

被告のように、インターネット上で過激化する若者も少なくない。近く開幕するロンドン五輪でも、「一匹おおかみ」型のテロは最大の警戒対象とされている。
ノルウェーでは、政府がテロ訓練キャンプへの参加を非合法化する新法を準備中で、来年の制定をめざす。公共施設の警備強化も行う方針だ。ファーレモ法相は「開かれた社会と治安の両立が大切だ」という。

一方で、前向きな変化もあった、との受け止めもある。若者の間に政治参加の意識が高まり、労働党青年部のメンバーは4割ほど増えた。全政党に共通の現象だという。
ウトヤ島の事件で生き残ったスティアン・ルーケンさん(21)は、昨秋の統一地方選でオスロ郊外の町ラーレンスクーグの議員になった。「テロを機に監視社会ができたら、ブレイビクの思うつぼだ。そうさせないのが、生き残った僕らの役割だ」と話す。【7月20日 朝日】
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「テロを機に監視社会ができたら、ブレイビクの思うつぼだ。そうさせないのが、生き残った僕らの役割だ」・・・思慮深い見識です。

チケットを入手できなかった不満?】
銃乱射事件という面で見ると、今月16日、カナダ・トロントでも発生しています。
こちらはテロ云々ではなく、“けんか”によるもののようです。

****銃乱射で2人死亡、19人負傷=カナダ****
カナダからの報道によると、最大都市トロントで16日夜、屋外パーティーの会場で銃の乱射事件が起き、2人が死亡、幼い子供を含め、少なくとも19人が負傷した。死亡したのは20代の男性と10代の女性。パーティーには200人以上が参加していたとみられている。

混雑した現場でけんかが起きた後、銃が乱射されたという。負傷者には銃撃後の混乱でけがをした人も含まれている。複数が発砲した可能性もあり、警察は少なくとも1人の身柄を確保した。地元警察は「(市の歴史で)銃による暴力としては最悪の事件だ」と指摘した。
トロントで今年起きた銃撃事件は140件に上り、昨年から3割以上増加している。【7月17日 時事】
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“トロントで今年起きた銃撃事件は140件に上る”ということですから、治安の良い日本的な基準で言えば、かなり物騒な街です。
カナダでは法律的に国民がハンドガンやライフルを所持することは可能ですが、犯罪防止のために銃規制の法律が制定されています。ただ、“実際には陸続きになっているアメリカから密輸入された拳銃が犯罪に使われることが多い”【ウィキペディア】とも。

そのアメリカから、ついさきほど、映画館での銃乱射事件が報じられています。

****映画館で乱射、14人死亡=50人負傷、インド系の男拘束―米コロラド州****
米西部コロラド州デンバー近郊オーロラにある大規模商業施設の映画館で20日未明(日本時間20日夜)、人気映画「バットマン」シリーズ最新作「ダークナイト ライジング」の先行上映会の来場者に向けて男が銃を乱射、これまでに14人が死亡、約50人が負傷し病院で手当てを受けた。

地元警察によると、目撃証言から男はインド系とみられ、ガスマスクで顔を覆い、映画館入り口の階段に並んでいた人々の列に近づきながら、催涙ガスを放ち無差別に発砲。現場で巡回中の警察官が男を拘束した。死傷者には子供が含まれているという。

警察が動機などを調べているが、チケットを入手できなかった不満から犯行に及んだとの情報がある。
「ダークナイト ライジング」は記録的な興行収入を上げたバットマンシリーズ3部作の完結編で、日本では今月28日に公開予定。【7月20日 時事】
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“チケットを入手できなかった不満から犯行に及んだ”との情報もあるようですが、いずれにしても鬱積した不満に心を病み、歪んだ狂気に支配されている点では、思想的な「一匹おおかみ」型のテロと根っこは同じのように思えます。

映画「タクシードライバー」(1976年)で、ロバート・デ・ニーロが演じるベトナム帰りの元海兵隊員の主人公も同類でしょうか。
鏡に自分を映し、「俺に用か? 俺に向かって話しているんだろう? どうなんだ?」と話しながら銃を抜く姿が印象的でした。

3歳男児が父を誤って射殺
病んだ心による銃乱射事件を助長しているのが、簡単に銃が入手できる銃社会のあり方です。
先日も痛ましい事故が起きています。

****3歳男児が父を誤って射殺 米、自宅で****
米インディアナ州で13日夜、3歳の男の子が父親(33)を射殺する事件が起きた。AP通信などによると、男性が改修工事をしていた家でテレビを見ていたところ、息子が実弾が入っていた拳銃を見つけ、誤って発射したとみられる。拳銃は男性のもので、他にけが人はなかったという。【7月15日 朝日】
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合衆国憲法修正第2条という1789年当時の民兵に関する規定の有効性は法律論の問題であり、要は“自分の身は自分で守る権利がある”という信念であり、そのためには銃の使用も含まれ、相手をねじふせることも厭わないということでしょう。
社会全体・国家のレベルでの安全保障の考え方にも共通するものがあります。
“かつての”日本社会とはかなり異質な発想です。今の日本はどうでしょうか・・・、かなり近づいたのかもしれません。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-07-22 06:28:03
ブレイビク被告はテロリストですし過激派ですが狂人ではありませんよ。

政治的な主張も論理的に筋が通っていて狂人のそれではありません。
単に、政治を変えるために採った手段が非合法であった、というだけのことです。

暴力的な手段への反射的な拒絶反応が、ただの犯罪と政治的なテロとの混同を招き、理解を拒絶させ結論を歪ませてしまっているように思えます。

むしろ、これからは行き過ぎたグローバル化の反動で世界中でああいった事件が多くなるでしょう。いわば、白血球が自己を守るために異物を攻撃し始めるのと同じですから。

相容れない世界観を持つものを同じところに放り込めば争い始めるのは自明の理です。
争わせたくないならば、明覚に線引きをし、済み分けるしかありません、それが「国境」という先人の知恵なのですから。
返信する
Unknown (Joey)
2012-07-23 02:33:26
"国境"という"素晴らしい"方法を創り出した人類は所詮白血球のような行動を取ってしまうのじゃ、やはりコントロールに問題あるのだと思えますね…
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