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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  国軍のクーデター、不透明な「出口」 注目される米中の対応

2021-02-01 23:23:31 | ミャンマー

(1日、ミャンマーの首都ネピドーで、議会近くの道路を封鎖する戦車(ロイター)【2月1日 産経】)

 

非常事態宣言が1年で終わるのか、再選挙はいつやるのか・・・不透明】

ミャンマー情勢については、一昨日の1月30日ブログ“ミャンマー  民意は軍とのバランス、穏健な段階的改革か けん制圧力を強める軍の動向”で取り上げたばかりです。

 

そのなかで、スー・チー与党が圧勝し、国軍系政党が大敗した昨年11月の総選挙で不正があったと主張・抗議する軍による不穏な動きはあるものの、「常識的には、軍としても今更、(おそらく中国をのぞいて)国際的に容認されないクーデター云々という手荒い手段は“得策ではない”と考えているとは思いますので、いわゆる“けん制”なのでしょう。」と結論付けていました。

 

大外れでした。今日多くのメディアが一斉に報じているように、スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領を拘束し、非常事態宣言のもとで実権を握るという憲法に規定されたものではあるものの、事実上のクーデターに踏み切っています。

 

これまで欧米国際世論は、スー・チー氏の軍への宥和的対応を非難してきましたが、両者の間には思った以上に強い軋轢が存在していたようです。

 

****ミャンマーでクーデター=スー・チー氏や大統領拘束―国軍が全権掌握、非常事態宣言****

ミャンマー国軍系のミャワディ・テレビは1日、全土に非常事態宣言が発令され、国軍のミン・アウン・フライン総司令官が全権を掌握したと報じた。

 

与党・国民民主連盟(NLD)筋によると、国軍はアウン・サン・スー・チー国家顧問やウィン・ミン大統領を拘束。同筋は「国軍によるクーデターが発生した」と非難した。

 

国軍はNLDが圧勝した昨年11月の総選挙後、初めてとなる国会が1日に招集されるのを前に、総選挙で不正があったと繰り返し抗議していた。

 

ミャワディ・テレビによれば、選挙管理委員会が不正に対処しなかったとして、1年間の期限で非常事態宣言を発令。暫定大統領に指名された元国軍幹部のミン・スエ副大統領がミン・アウン・フライン総司令官に立法・行政・司法の全権を授けた。

 

国軍系を除くテレビ局は放送を中断し、電話やインターネットはつながりにくくなっている。ロイター通信によると、最大都市ヤンゴンの市庁舎周辺には兵士が展開した。

 

上下両院の議席を争った総選挙では、NLDが改選476議席の8割を超す396議席を獲得。最大野党で国軍系の連邦団結発展党(USDP)は33議席にとどまった。【2月1日 時事】

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****ミャンマー、深まる混乱 国軍「選挙で不正」で行動正当化****

ミャンマー国軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らを拘束した背景には、スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が昨年11月の総選挙で圧勝したことで求心力が低下することへの軍指導部の危機感があるとみられる。(中略)

 

選挙結果に対して、国軍は一貫して反発を続けた。国軍報道官は1月26日に「選挙に不正があった」と主張し、クーデターの可能性を否定しなかった。

 

27日には国軍トップのミン・アウン・フライン総司令官が「法律を守らない人がいるなら、憲法であっても廃止されるべきだ」と述べた。真意は不明だが、クーデターを示唆したのではないかとの観測が広がった。

 

国軍は不正の証拠を示しておらず、選挙管理委員会は「選挙は公正だった」とコメント。選管の主張に対し、国軍は「公正に実施されたことを示す証拠の提示」を求め、主張は平行線をたどっていた。

 

国軍には、1日から始まる予定だった国会を経て第2次スー・チー政権が正式発足した場合、存在感が低下するとの焦りが募っていた。そもそも国軍には2015年総選挙に勝利して政権を握ったNLDへの不満がくすぶっていた。根強い「スー・チー人気」などで、求心力低下が顕著となったためだ。

 

スー・チー氏は少数民族武装勢力との和平を推進しようとしたが、政治的影響力を維持したい国軍はスー・チー氏の思惑どおりに動かなかった。

 

スー・チー政権は昨年、軍政下で制定された憲法の改正に乗り出したが、国軍の反対に直面し、国軍に有利な条項は残る結果となった。

 

ただ、都市部を中心にNLDへの支持は厚く、国民の支持が得られるかは未知数で、政局の混乱は続きそうだ。【2月1日 産経】

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「軍指導部の危機感」とは言うものの、軍は憲法改正を阻止できる数の議員を軍人から指名できる仕組みなっており、「どうしてそこまで?」という疑問もあります。改憲には全議員の4分の3を超える賛成が必要で、議席の25%を軍人枠として握る国軍には事実上の拒否権があります。

 

スー・チー政権の攻勢で、軍人議員の中からも“寝返り”が出るような事態を憂慮したのでしょうか?

 

“国軍側には、総選挙で2度にわたって大敗した焦りや、軍に有利な現在の憲法を改正することで民主化を推進しようとするNLDへのいら立ちがあったとみられる。”【2月1日 朝日】と言われていますが、ひょっとしたら、トランプ前大統領のように、本気で「不正選挙で勝利を盗まれた。正しくやれば国軍系政党がもっと大幅に伸びていたはずだ」と信じているのかも。

 

ただ、おそらく何回選挙やっても、特にこういうクーデター後に選挙やっても、国軍系政党はスー・チー与党には勝てないでしょう。

 

非常事態宣言は1年間の期間限定です。

再選挙をやるとは言っていますが、国際社会が容認しないよっぽど強引なことをやらない限りは勝てないでしょう。

どういう「出口」を描いているのでしょうか?

 

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 ――非常事態は1年間で終わるのでしょうか。

 憲法上は1年が限度だが、軍政側が強権発動をして非常事態宣言を延長したり、憲法を捨てて軍政を敷いたりする可能性もある。民政に戻す場合は総選挙のやり直しだが、よほどの不正をしない限り、軍側が議席を大幅に伸ばすことは考えられない。1年後をどうするのかは現時点では見えてこない。【2月1日 朝日】

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【国民に抵抗を呼びかけるスー・チー氏】

スー・チー氏側は軍への抵抗を呼びかけています。

 

****スーチー氏が声明 国軍の行動を批判 「軍のクーデターに心から抗議」****

 ロイター通信によると、ミャンマーの与党・国民民主連盟(NLD)は1日、党首のアウンサンスーチー氏の名前で声明を発表した。

 

「国軍の行動は、この国を独裁政権下に引き戻すものだ」と批判し、「人々がこうした行動を認めず、軍のクーデターに対して心から抗議することを強く求める」と述べた。【2月1日 毎日】

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“軍は重要な人物をすべて拘束した。拘束された人の中には作家や文化人が含まれているという情報もある。今後の反対運動も意識して、政治家だけでなく、発信力のある知識人らを前もって拘束した可能性がある。”【2月1日 朝日】ということもあり、軍が街に展開する非常事態宣言下でどのような抗議行動が可能かも注目されます。

 

現在は“銀行は停止、品薄の米、携帯使えず…混乱のミャンマー”【2月1日 朝日】ということはあるものの、それ以上の混乱は起きていないようです。

 

【注目されるバイデン新政権、中国の対応】

国際的な反応は欧米は批判、日本は様子見といった感じで想定内。

そうしたなかでも注目されるのは、アメリカ・バイデン新政権の対応。

 

****米政権、アジアで最初の試練 ミャンマーのスー・チー氏拘束を非難****

ブリンケン米国務長官は1月31日、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相ら複数の高官が国軍に拘束された問題に関し「重大な懸念と不安を表明する」との声明を発表した。

 

バイデン大統領は、「アジア重視」を掲げてミャンマーの民政移管と民主体制の発展を支持したオバマ政権の副大統領だった経緯があり、今回の政変はバイデン政権のアジア政策をめぐる最初の試練となりそうだ。  

 

声明で、ブリンケン氏は国軍に対して拘束された人々の即時釈放を要求するとともに、「(与党・国民民主連盟=NLD=が勝利した)昨年11月の総選挙の結果で示された民意を尊重すべきだ」と訴えた。  

 

ブリンケン氏は「米国は、民主主義と自由、平和、開発を切望するビルマ(ミャンマー)の人々とともにある」と強調した。  

 

サキ大統領報道官も声明で「(国軍による)一連の行為が撤回されなければ責任者らに措置をとる」と警告した。(中略)  

 

米国は、ミャンマー民政移管の翌年となる2012年、当時のオバマ大統領が同国を訪問し、民主化支持の立場を強く打ち出してきた。16年に軍政時代からの経済制裁を全面解除した。  

 

しかし、トランプ政権は19年、ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャの迫害に関与したとして国軍最高司令官ら軍幹部4人を制裁対象に指定。ミャンマー政府に対しても「迫害の責任追及に取り組んでいない」と批判していた。  

 

NLD政権はこれまで、日本や韓国、東南アジア諸国などからの投資拡大に努めてきた。かつての軍政が中国寄りだった経緯から、経済分野などで中国の影響力が強まるのを回避する思惑があった。  

 

米国も同盟諸国にミャンマーへの投資を奨励してきたが、今後、国軍の実権掌握が長期化し、米政権がミャンマーへの制裁に踏み切った場合、同国の対中傾斜が再び強まる恐れがある。  

 

一方、中国が今後、巨大経済圏構想「一帯一路」の推進に向け、インド洋沿岸の貿易の要衝であるミャンマーの取り込みを図るのは必至だ。「自由で開かれたインド太平洋戦略」を進めるバイデン政権としてもミャンマー情勢への一層の関与を迫られることになる。【2月1日 産経】

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その中国は国軍非難は避けて、今後の影響力確保を狙っているようです。

中国「一帯一路」にとって、中国の弱点であるマラッカ海峡を通らずにインド洋に出ることができる点でも、ミャンマーは要になる国のひとつです。

 

****ミャンマー国軍を非難せず安定化訴え=軍政時代から関係緊密―中国****

中国外務省の汪文斌副報道局長は1日の記者会見で、ミャンマー国軍のクーデターに関し「ミャンマーの関係各方面は憲法と法の枠組みの下、相違点を適切に処理し、政治と社会の安定を守るよう望む」と述べた。中国はミャンマーが国際社会で孤立していた軍政時代から蜜月関係を構築しており、国軍への非難は避けた。

 

中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(英語版)は1日、「ミャンマーの現政権と軍の両者と関係が良好な中国は、両者が妥協案を協議するよう願っている」という専門家の見方を紹介した。

 

巨大経済圏構想「一帯一路」を進める中国にとってミャンマーは、インド洋に通じる物流ルートの要衝で、東南アジア諸国連合(ASEAN)における友好国の一角を占める。

 

習近平国家主席は昨年1月に訪問し、アウン・サン・スー・チー国家顧問、ミン・アウン・フライン総司令官の両者と会談。習氏は総司令官に「両国がどう変わっても緊密な協力、相互支持という正しい道を歩んできた」と強調し、総司令官は「経済社会の発展と国防建設への長期の援助」に謝意を伝えていた。王毅外相も今年1月に訪れ両者と会談した。【2月1日 時事】 

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今後、国軍を批判する欧米の空白を埋める形で、中国がかつての軍政時代のように、再び存在感を強めることが予想されます。

 

****中国、国軍との関係でミャンマーへの影響力強める 欧米の制裁で加速か****

ミャンマー国軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らを拘束して全権を掌握したと発表したことは、中国がミャンマーへの影響力を強めることにつながりそうだ。

 

中国は、軍事政権時代のミャンマーにも経済支援を続けてきた経緯があり、欧米諸国が制裁など厳しい措置に踏み切れば、それを好機と捉えて関係強化を加速させるとみられる。(中略)

 

中国は歴史的に、国境を接するミャンマーとの関係を重視してきたが、とりわけ軍政時代に欧米諸国がミャンマーに経済制裁を科す中で経済支援を通じて密接な関係を築いた。その後、2011年の民政移管を受けて欧米諸国が経済制裁を解除し、スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)主導の政権が発足。それにより外国投資の呼び込みが進んで、中国の影響力は相対的に弱まっていた。

 

風向きが変わったのは、ミャンマーのイスラム教徒少数民族ロヒンギャへの迫害問題だ。欧米諸国の圧力の強まりを機に同国は再び中国に接近し、昨年1月には習近平国家主席が中国の国家主席として19年ぶりにミャンマーを訪問。今年1月にも王毅国務委員兼外相がミャンマーでスー・チー氏と会談し、新型コロナウイルス対策として中国製ワクチン30万回分の提供を申し入れたばかりだった。

 

習氏は、ミャンマー訪問時にミン・アウン・フライン国軍総司令官とも会見するなど国軍側とも関係を築いている。欧米諸国の反発に直面する国軍に対し、中国は経済支援などを通じて接近する可能性がある。【2月1日 産経】

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ただ、中国もむやみに国軍に肩入れすると、将来民政に復帰した際に、そのつけを払うことにもならないでしょうか。そういうこともあってか、国軍のクーデターを支持という訳でもなく、“事態の評価を避けた”【同上】という対応です。

 

【対応が分かれるASEAN諸国】

ASEAN・東南アジア諸国の対応は、国軍を批判する国と、「内政干渉は行わない」と静観する国に分かれています。

 

****ミャンマー政変でASEANの見解分かれる 先進国・国連は批判****

ミャンマー国軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相らを拘束してクーデターを起こしたことに対し、先進国や国連が強く非難する一方で、ミャンマーと同じ東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国では批判する国と「内政問題」として静観する国など対応が分かれている。

 

ASEANでは、加盟国の中で最大の人口を抱える民主主義国家、インドネシアが1日、ミャンマー国軍の行動に「懸念」を表明する外務省の声明を発表。「自制と解決策を見いだすための対話」を全ての当事者に要求した。

 

シンガポール外務省も同日の声明で「重大な懸念」を表明してミャンマー国軍によるスー・チー氏らの拘束を非難。全ての当事者に自制を求めた。マレーシア外務省も国軍を非難した。

 

これに対し、同じASEAN加盟国でも、ミャンマーと同様に中国と近い関係を持つカンボジアは静観する姿勢だ。ロイター通信によると、同国のフン・セン首相は「内政問題」だとし、それ以上のコメントを避けている。

 

また、ASEANは内政不干渉を原則としており、フィリピンの大統領報道官は1日、国軍の行動は「内政問題」だとして、同国として干渉しない考えを明らかにした。タイも内政問題だとし、介入しない姿勢を示している。

 

一方、同じインド太平洋地域に位置する先進国のオーストラリアは、ペイン外相が「深い懸念」を表明する声明を出して「不法に拘束された全ての民間指導者やその他の人々」の即時解放を要求した。ニュージーランドのマフタ外相もミャンマー国軍の対応を非難する声明で「民政復帰を要求する」と述べた。

 

また、インド外務省も懸念を示す声明を発表し、「法の支配や民主的なプロセスが守られるべきだ」として今後の動きを注視することを強調した。

 

国連のグテレス事務総長は「強く非難する」との声明を発表。国軍が立法、行政、司法の全権を掌握することに「重大な懸念」を表明し、「ミャンマーの民主的改革に深刻な打撃を与える」と警鐘を鳴らした。

 

ミャンマーの人権状況を担当する国連のトム・アンドリュース特別報告者はツイッターで、「多くの人が恐れてい

たことが現実となった。常軌を逸している」と激しい言葉で国軍を批判した。【2月1日 産経】

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各国の民主主義の在り様がわかるリトマス紙のようです。

 

今後、スー・チー氏は自宅軟禁か、それに近い状態に置かれると思われますが、現実政治における「失望」から、このところすっかり失われていた欧米からの支持・信頼が、弾圧に対する抵抗のシンボルとして回復しそうなことは皮肉なところです。

 

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