孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

リビア  暫定首相など統一行政機関メンバーを選出 12月選挙に向けた態勢 先行きは不透明

2021-02-07 22:17:43 | 北アフリカ

(スイス・ジュネーブで開かれたリビア政治対話フォーラムで行われたリビアの暫定首相と暫定統治評議会メンバーを選ぶ投票の模様(2021年2月5日撮影) 【2月7日 AFP】それにしても広い会場)

 

【12月選挙に向けて統一行政機関メンバーを選出】

内戦が続く北アフリカ・リビアでの「統一」に向けた動きが報じられています。

 

こうした紛争地域の常で、いろいろな「合意」がなされても結局実態は変わらなかった・・・ということが繰り返されていますので、今回の動きの評価はまだ難しいところではありますが、無視するのもいかがなものか・・・ということで、情勢が改善することへの「期待」をこめて、その関係の報道をピックアップします。

 

リビアでは西部の首都トリポリを支配する暫定政権(国民統一政府)と東部を拠点とする代表議会が対立し、内戦を繰り広げてきました。

 

西部の首都トリポリを支配する暫定政権は、その誕生のいきさつもあって、国連からは正統な政権と認められています。支持するのはイスラム主義民兵組織で、イスラム主義的な傾向が強いと言われています。そしてトルコが積極的に軍事支援しています。

 

東部を拠点とする代表議会を実質的に率いるのは、カダフィ時代からの生き残りハフタル司令官。支援する国はロシア、フランス、イスラム主義勢力拡大を懸念するエジプト、UAEなど。

 

リビアは重要な産油国ですから、その利権の問題、更にイスラム主義への温度差などが絡んで、関係国が関与・介入を強めてきました。

 

トルコはシリア人傭兵を、ロシアは民間軍事会社の傭兵を、それぞれ派遣しています。

 

そうしたなか、今月1日から、スイス・ジュネーブで国連が主導する形で、総選挙までの間の統一行政機関を選ぶための、関係各派の会議が行われました。

 

****リビア情勢****

リビア問題については種々の情報が錯綜していますが、al sharq al awsat net は、国連の主催で総選挙までの間の統一行政機関を選ぶための、関係各派の会議が1日からジュネーブで開かれると報じています。

会議では国連が取りまとめた候補者の中から、大統領評議会メンバー3名、首相及び副首相2名を選ぶことになっていて、これらの人物が12月24日に予定されている選挙までの移行期間の行政を行うことになっているとのことですが、記事もリビアに関してはこれまで多くの合意がされたが、いずれも「紙の上のインク」に過ぎない・・・要するに実効性がなかったという意味‥‥と評している通り、今回の国連主催の会議で、合意ができても、実効性の問題は残りそうです。

そもそも今回の会議は国連リビア代表代理が主催するが、実はごく最近事務総長は新しい国連代表を任命しており、なぜ彼ではなく代理が行うのか?なんだか裏がありそうです。

また記事も書いている通り、国連の対リビア武器禁輸決議にもかかわらず、現在でも紛争の2当事者の後ろにいる勢力(統一政府の後ろにはトルコ、haftar将軍の後ろにはロシア、UAE等)は依然として武器等の空輸を続けているとのことです。

外国軍隊と傭兵の撤退を呼びかける合意があったが、ロシア(wagner社の傭兵)もトルコも(シリア人等からなる傭兵)引き上げる気配を見せていないようです

またリビア問題をここまで紛糾させた男は、このhaftarですが、この移行期間で、彼がいかなる役割を果たすのか一切名前が出てこないことで、彼は今後も裏の黒幕として、実際上の影響を保持するのでしょうか?

記事によると、国連主催の会議は1日から5日までジュネーブで開催され、75名の各派代表が、国連の取りまとめた45名のリストから、大統領評議会メンバー3名及び首相、副首相2名を選ぶことになっている由。

記事は首相候補としてはミスラタ出身の統一政府内相のfathi al bashagah(現首相のセラージと不仲とされる)や現大統領評議会副議長のmuaiteeqの名前が挙がっている由

他方大統領評議会には統一政府国防相のnamroush等の名前が挙がっている模様【2月1日 中東の窓】

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【いわゆる“実力者”を含まないメンバー】

“75名の各派代表”というのが、どのように各勢力に割り振られているのかは知りませんが、協議・選挙の結果、一応、大統領評議会(暫定統治評議会)メンバー3名および首相が決定したようです。

 

****リビア、暫定首相ら選出 12月に選挙へ 懐疑的な見方も****

ムアマル・カダフィ大佐の独裁政権が崩壊してから約10年にわたって混乱が続いていたリビアは6日、今年12月の国政選挙まで国を率いる暫定首相の選出を受けて新たな移行段階に乗り出した。

 

アブドルハミド・ドベイバ氏は5日、スイスのジュネーブで開かれた国連主導の和平協議で、リビアから出席した75人の投票によって暫定首相に選出され、昨年11月に始まった対話プロセスは結果を出した。

 

統一政府の樹立に向けて12月24日に予定されている選挙に国を導く、暫定統治評議会メンバーの3人も選出された。

 

選挙は昨年10月に発効した停戦を前提に国連主導で進められている複雑なプロセスの一環だが、停戦が続くのか不透明感もある。

 

国連が仲介し、ファイズ・シラージュ氏が率いる国民統一政府の樹立につながった2015年の政治合意は崩壊した。こうした流れを経てリビアは新たなスタートを切った形だ。

 

リビアは首都トリポリを本拠とする国民統一政府と、東部を拠点に国民統一政府と敵対するハリファ・ハフタル司令官の政府が並立する事態となり、混乱が続いた。

 

英国やフランス、ドイツ、イタリア、米国は、転換点になり得る今回の合意を歓迎しつつも慎重姿勢を崩していない。

 

今回暫定指導者に選出された4人はリビア西部と東部、南部の出身で、2つの対立政権と無数の民兵によって分裂した国を統一する課題に直面する。

 

アナリストはひとまず懐疑的な見方を示している。ドイツ国際安全保障研究所のシニアアソシエート、ウォルフラム・ラッハー氏は、新たな暫定統治体制が「リビア東部に影響力を行使するのは非常に困難で、西部で抵抗に遭う可能性さえある」と分析し、「(5日に)暫定指導者に選出された4人は、権力の掌握と維持を除けば共通の関心がそれほどない」と語った。 【2月7日 AFP】

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“アナリストはひとまず懐疑的な見方を”・・・・普通、“ひとまず”という言葉に続くのは“ひとまず歓迎”といった具合ですが、“ひとまず懐疑的”という表現が、これまでの経緯を物語っています。

 

今回の人選は、西の暫定政権首相セラージ氏や東の実力者ハフタル司令官はだけでなく東西両勢力の実力者といった人物を避け、予想とは異なるものだったようです。

 

****リビアの新体制?****

(中略)アラビアメディアによると、会議は5日これまであまり名前の出ていなかった者たちの名簿を選出したと報じています

記事によると、会議は大統領評議会メンバーとして、議長にmuhammad yunes al manfah,2人の副議長にmusah al kuni,abdallah  al lafi,そして首相にabd al hmid al dabibaからなるリストを選出したとのことです。

記事はいずれも、これは予想外の選出で、このリストが船渠参加者73名中39票を得たのに対して有力と思われていた、(東の)リビア議会議長や(西の)統一戦線の内相等を含むリストは34票を獲得したとのことです

これまで内戦を指導してきた、統一戦線のセラージュや、これに対抗してきた議会議長のアキーレ、更にはその背後に居た軍閥のhaftar将軍等が含まれていないこの「新統一政府」がどこまで実行力を持って、内戦を押さえて、12月の総選挙を実施できるか、はなはだ心もとないところではありますが、米と欧州諸国は連名で、新機関の選挙を歓迎し、トルコやカタール、クウェイトやサウディ更にエジプトやUAEも歓迎したとのことです

(これで見るとロシアの名前が抜けていますが…意図的に抜けているのかその辺は不明。それ以外の関係者は挙って新体制を歓迎しているようで、やはり米国のバイデン政権が明確な立場をとったことが大きいかもしれません。

これだけ関係者が歓迎している以上、多分12月の総選挙に向けて、停戦の実施などに新体制が動いていくのだろうと思いますが、別の記事ではUAEはスーダンの傭兵と直接接触しているともされており、これまでhaftar側最大の資金、武器弾薬の提供者だったUAEが真面目に停戦合意を守ろうとするか、また例の軍閥のhaftarが権力の温存を狙って蠢動しないかの問題もあります。

 

やはりリビア問題は、今後とも要注意でしょうか?)【2月6日 中東の窓】

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【トルコ・エルドアン大統領は「歓迎」】

首相に選ばれたアブドルハミド・ドベイバ氏など、今回選任されたメンバーがどういう背景を持つ者なのかは知りません。

 

いわゆる名の知れた実力者ではなく、“実務者内閣”的な存在なのでしょうか?(それにしても、東西どちらを背景にしているか・・・というところはあるように思うのですが)

 

少なくとも、これまで西を軍事的にも支援してきたトルコ・エルドアン大統領は「歓迎」しているようです。

 

****エルドアン大統領、リビアの新リーダー達と電話会談****

大統領府通信局から出された声明によると、エルドアン大統領はリビア政治対話フォーラムで実施された投票の結果、同国で2021年12月24日に実施が予定されている選挙まで任務を行う大統領府評議会議長に選出されたメンフィ氏と首相に選出されたデイバ氏の健闘を祈った。

 

トルコはリビアが政治的統一と領土の一体性を維持しつつ安定を取り戻し、リビア人が平和、安全、繁栄を獲得することに貢献し続けると明かしたエルドアン大統領は、リビアとの協力を今後も発展させていくと強調した。

 

国連の主導でスイスのジュネーブで招集されたリビア政治対話フォーラムの議員投票の結果、2021年12月24日に実施が予定されている選挙まで大統領評議会議長にはメンフィ氏、暫定首相にはデイバ氏が選出された。【2月6日 TRT】

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ここまで来るのは難事業だったでしょうが、これから12月の総選挙に向かうのは更に何倍も難事業です。

総選挙が仮に行われたとして、その結果を東西両勢力が受け入れるのか・・・

 

まあ、不安を並べて足引っ張るののではなく、期待を込めて支援するのがよろしいでしょう。

 

コメント
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