孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

新型コロナワクチン接種に伴う問題 「優先順位」とワクチンパスポート

2021-02-06 22:45:25 | 疾病・保健衛生

(新型コロナウイルスの免疫パスポートのイメージ...... Tanaonte-iStock【1月29日 Newsweek】)

 

【世界的に突出してワクチン不信感が強い日本社会 政府・メディアの責任も】

日本社会のワクチン懐疑論というか、恐怖症は、以前取り上げた記事“ワクチン懐疑論、世界で後退=接種希望急増、日本は停滞―国際調査・新型コロナ”【1月30日 時事】にもあるように、世界的に突出しています。

 

英調査会社によれば、「もしワクチンを接種できるなら、接種しますか」との質問に対する回答で、「ぜひしたい」の割合はブラジル(68%)、英国(66%)などが高かったのに対し、感染者、死者が世界最多の米国は42%。日本は17%と調査対象の中で最低だったとか。

 

「日本の常識、世界の非常識」といった類。そんな日本でもようやく接種準備に関するニュースなどが。

 

“日本でのワクチン不信は、被害をめぐる訴訟、メディアの誤情報、さらには政府の過剰なほどの慎重な姿勢の悪循環が原因”【下記AFP】だと専門家らは指摘しています。

 

****過去の苦い記憶 日本のワクチン展開の影響を懸念****

(中略)日本人がワクチン接種に「消極的」なのは「政府の情報に対する信頼がないから」と、感染症学専門で国際医療福祉大学の矢野晴美教授がAFPに語った。

 

■信頼の喪失

古くは1970年代、天然痘ワクチンの副反応やその他ワクチンをめぐり政府相手に集団訴訟が起きた。

さらに、ジフテリア、百日咳、破傷風の三種混合ワクチンの副反応が問題になったこと、また投与後に2人が死亡したことで接種は一時中断された。数か月後、接種年齢を引き上げるなどして再開されたが、信頼は回復しなかった。

 

1980代末から90年代初頭にかけ、はしか、おたふくかぜ、風疹の新三種混合ワクチンを受けた子どもたちに無菌性髄膜炎の副反応が報告され、予防接種騒動が再燃。同ワクチンは中止となった。

 

重要な転機となったのは集団訴訟における1992年の東京高裁判決だ。北里生命科学研究所の中山哲夫特任教授(臨床ウィルス学)によると、科学的な根拠がないような現象も副反応と認めるという判決だった。

 

「訴訟をいろいろ抱えた後、ワクチンを積極的にやろうとして何かがあったら訴えられる」と国は考えたのだろう、と中山氏は話す。

 

「ワクチンを打つと、いろんなことが起きるのでは」と思われてきたと教授は付け加えた。日本のワクチン制度は「結果15年、20年、何も進まなかった」。(中略)

 

■「適切なリスクコミュニケーション」

(中略)ワクチン接種率が、医療従事者による明確な説明や責任ある報道に左右されると矢野教授は言う。「100%安全はありえない。そういうのを望まれると、ワクチンも立ち行かないと思う」

 

また、メディアは何が「うける」かではなく「何のために報道するのか」考えてほしい、と話した。 【2月1日 AFP】********************

 

メディアは何が「うける」かではなく「何のために報道するのか」・・・おそらく、実際にワクチン接種が始まれば、「当然に」副反応事例はでますので、メディアはこぞって取り上げるのでしょう。視聴率が稼げますので。

「街の声」として「やっぱり、ワクチンって怖いわ」といったものが紹介されて・・・。

 

「政府の情報に対する信頼がない」のは日本に限った話ではないので、僅かでも問題が起きるとやみくもに大騒ぎし、そうしたメディアで増幅された「大きな声」に流されやすい日本独自の社会風潮、極力「責任論」を回避しようとする政治風潮が大きく影響しているように個人的には思います。

 

【欧米では、ワクチン接種「優先順位」に関する主張も表面化】

日本ほどではないにしても、ワクチン不信感が強いアメリカですが、一方では、順番を待っていられない、一日も早く接種したいということで「ワクチンチェイサー」といった人々が出現しているとか。

 

****米・LA 急増する「ワクチンチェイサー」****

アメリカ・ロサンゼルスで、廃棄される前の新型コロナウイルスのワクチンを追い求める、「ワクチンチェイサー」と呼ばれる人々が急増しています。

接種会場の近くで並んでいたのは、優先接種の対象ではない「ワクチンチェイサー」と呼ばれる人々です。ロサンゼルスでは現在、医療従事者や、65歳以上の市民などが接種の対象となっていますが、予約当日に何らかの事情で会場に現れないことがあります。

解凍して準備していたワクチンは、保存時間に限りがあり廃棄処分となるため、残ってしまった分を、会場近くにいる希望者らに接種するという状況が生まれているのです。

残ったワクチンを接種しに来た人「午前4時半にここに来た。新型ウイルスは間違いなく脅威だ。ワクチンは私にとって最も重要だ」

関係者によりますと、この会場では連日、数十回分がワクチンチェイサーらに使用されているということです。【1月29日 日テレNEWS24】

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日本以外の国では、実際にワクチン接種が始まれば、ワクチン供給がスムーズに進んでいないという実態もあって、この「優先接種」「接種の順番」が問題になります。

 

****ワクチン不足、欧州で優先接種求める声強まる****

教員や慢性疾患ある人などが政府に働きかけ

 

新型コロナウイルスのワクチン不足が欧米の接種推進の足かせとなる中、優先グループに指定されていない人々は何とか先に接種を受ける権利を得ようと画策している。

 

現在ワクチンの接種を進めている大半の国では、コロナ感染による死亡・重症化のリスクが最も高い層(介護施設の住人やケアワーカー、医療従事者、高齢者)の接種が優先されている。

 

ここ何カ月かは、ウイルス感染の抑制より死者数を減らすことを重視する戦略について、その方針を疑う向きはほとんどなかった。

 

だが、感染者数が高止まりし、変異ウイルスを巡る懸念が高まる中、必要不可欠な業務に従事するエッセンシャルワーカーから教員、慢性疾患を持つ人々に至るまで、さまざまなグループが優先接種を求める声を強めている。

 

米国は早くからワクチン接種に取り組み、進展も比較的速い。多くの州が65歳以上や特定の疾患を持つ人々への投与に動き出している。利益団体からの圧力を受け、複数州で教員や農業従事者の接種も開始された。

 

一方、官僚主義と生産障害により、欧州のワクチン配布は極めて遅い。そうした中で、リスクが最も高い層以外への優先的な接種を求める声も強まっている。

 

ただ、それは道徳上の難しい問いを含むため、政治的に極めて扱いにくい問題ともなる。例えば、寝たきりであったり100歳を優に超えていたりする高齢者を、若いがん患者に優先させるべきか否か。

 

あるいは、教員や警察官、小売業の従業員、バス運転手など、統計的に死亡の確率は低いが時に新型コロナ感染が重症化することのある人々より、経済活動で大きな役割を果たさなくなったグループを優先させるべきなのか。

 

高リスク層を優先させれば、公衆衛生システムの維持につながるものの、それは同時に、職業柄ウイルスに最も接触しやすい人々が順番待ちになることを意味し、教育や経済を犠牲にすることになる。こう指摘するのは、オックスフォード大学で倫理的ワクチン配布を研究するアルベルト・ジウビリーニ上級研究員だ。

 

ジウビリーニ氏は「優先順位付けという概念は、一定の価値観を犠牲にしなければならないことを意味する」とし、「バランスを取るのは極めて難しい」と述べた。

 

フランスではコロナ流行下でも学校はほとんど休校していない。12月初旬から1日当たりの新規感染者数が一貫して増えており、教員たちはワクチン接種の優先対象になろうと政府に働きかけている。(中略)

 

イタリアでも教員労働組合が、他グループに先がけて教員にワクチン接種をするよう政府に嘆願している。欧州の大半の国より長く閉鎖されている学校の再開を進めるため、高齢者や医療従事者に次ぐ優先グループとするよう検討を求めている。

 

一方、英国のワクチン接種は欧州連合(EU)諸国よりはるかに迅速に進んでいる。政府当局は教員や警察官など現場に出て業務に従事する労働者について、優先順位を上げるべきかを検討している。英北部のある教員による嘆願書は50万人近い署名を集め、議会での審議開始を後押しした。

 

英政府は現在、教員など第一線の労働者より先に、50歳以上の全員にワクチン接種を受けさせたい考えだ。配布ペースを踏まえれば、春まで実現しないかもしれない。

 

ボリス・ジョンソン首相は、高リスク層から他のグループへワクチンを振り向ければ、死者数が増えかねないと指摘しており、今後のワクチン計画や段階的なロックダウン(都市封鎖)解除について2月22日の週に道筋を示す予定だ。

 

高リスク層の優先順位が高くなっている国がほとんどではあるものの、中には自分たちは見過ごされていると不満を示す人々もいる。

 

ドイツでは、障がい者や慢性的な希少疾患を持つ人、さらにはがん患者たちが、優先対象になるために当局に働きかけており、訴訟を起こす例まで出ている。(中略)

 

こうした圧力に直面し、独政府の助言機関であるロベルト・コッホ研究所の予防接種委員会は先月、助言内容を更新。新型コロナへの感染で死亡リスクが高くなるかもしれない疾患のある人に関しては、統計的な裏付けがなくてもケース・バイ・ケースで判断することを勧告した。

 

医療当局者は優先順位を付けるという戦略について、特定の人口層へのリスクを巡る新たな研究が発表されたり、新しいワクチンが承認されたりするのに伴い、時間と共に変化するとみている。

 

ドイツの場合、優先順位が低いグループの一部でも、より早期にワクチン接種を受けられるかもしれない。アストラゼネカの新型コロナワクチンを巡り、政府が65歳以上への使用を承認しないことを決めたため、より若い成人向けに供給が回る可能性が出てきた。【2月6日 WSJ】

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日本の場合は、もともとワクチン接種希望圧力が弱いことに加え、「自分たちを先に」といった自己主張はしずらい社会風潮がありますので、この「優先順位」は「お上」の決定どおりで、あまり問題になることはないと思います。

 

【ワクチンパスポートによる「区別」は健康状態による「差別」か?】

ワクチン接種が進むにつれて表面化するもうひとつの問題は、ワクチン接種をすませて免疫を獲得した可能性が高い者と未接種の者を、「自粛」措置などで同列に扱うのか、区別を設けるのかという問題。

 

****世界でワクチン接種が進むなか、「免疫パスポート」は有効?の議論が再燃****

<史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている...... >

 

世界初の新型コロナウイルスワクチンの集団接種が2020年12月8日に英国で開始されて以来、米国、ドイツ、フランス、シンガポールなど、世界60カ国で8640万回以上の接種が完了している(2021年1月28日時点)。

 

史上最大規模の世界的なワクチン接種がすすめられるなか、新型コロナウイルスへの免疫を持つ人に「お墨付き」を与え、行動制限を解除する「免疫獲得証明書(免疫パスポート)」の是非が再び議論の的となっている。

 

検疫措置を免除し、国境を超えた往来を後押しするのが狙い

免疫獲得証明書」は、2020年春、新型コロナウイルスの急速な感染拡大により世界各国で都市封鎖の措置が講じられた際、出口戦略のひとつとして提案された。新型コロナウイルス感染症から回復して免疫を獲得した人から優先的に社会経済活動に復帰させるというアイデアだ。

 

北欧アイスランドでは、2021年1月から、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した国民に対して「ワクチン接種証明書」を発行している。渡航先で「ワクチン接種証明書」を提示することで検疫措置を免除させるなど、国境を超えた往来を後押しするのが狙いだ。

 

世界最速のペースで集団接種をすすめているイスラエルでも、新型コロナウイルスワクチンを2回接種した人と新型コロナウイルス感染症から回復した人に「グリーンパスポート」と呼ばれるワクチン接種証明書を発行し、イベントの参加や外食、海外への渡航などを認める案を検討している。

 

観光立国では、今夏のバカンスシーズンに向けて、感染拡大のリスクを抑制しながら、多くの観光客を迎えるための方策を模索している。ギリシアのキリアコス・ミツォタキス首相は、2021年1月、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に、欧州連合(EU)全体でワクチン接種証明書を導入するよう促す書簡を送った。

 

スイスの非営利団体「コモンズプロジェクト」や世界経済フォーラムらは、個人のプライバシーを保護しながら、渡航先の検疫で必要な健康データを共有できる世界共通の電子証明書「コモンパス」を共同で開発している。健康状態申告書やPCR検査証明書、ワクチンの接種履歴などのデータを記録できる仕組みだ。

 

分断を招き、格差がさらに悪化するおそれ

しかし、「免疫獲得証明書」には、依然として多くの懸念が示されている。社会経済活動に復帰できる人とそうでない人との分断を招きかねず、格差がさらに悪化するおそれがある。

 

優先的に行動制限を解除してもらおうと、偽造が横行したり、新型コロナウイルスに意図的に感染しようとする人が増えるおそれもある。

 

また、「ワクチン接種によって新型コロナウイルスへの免疫がどれだけ持続するのか」、「新型コロナウイルス感染症から回復した人はワクチン接種と同等の免疫を保持しているのか」といった点がまだ十分に解明されておらず、「免疫獲得証明書」の有効期限をどのように定めるのかも不明だ。

 

「免疫獲得証明書」は、社会経済活動の回復に向けた手段のひとつとして有望ではあるものの、その実用化に向けて解決すべき課題が多く残されている。【1月29日 松岡由希子氏 Newsweek】

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「実用化に向けて解決すべき課題が多く残されている」のは、そうなんでしょうが、個人的な「本音」で言えば、「グズグズして先進国最後尾なった政府、異様にワクチンを警戒する社会風潮に引きずられて、せっかくワクチンで免疫できたのに、グダグダ言って接種を受けない人達と同列に自粛を強要されるのはたまんないな・・・」といったところ。(もちろん、心の中の「本音」であり、表だって言う際は、もっと差し障りのない言い方をしますが)

 

公的サービスにおいて「区別」を設けるのは問題があるでしょうが、民間の企業・店舗のサービス提供、コンサートなどのイベント、旅行などで「区別」がなされるのを、政府が「差別してはいけない」と禁止できるか?という問題が起きます。

ここ数日、「接種証明書」のニュースが。「接種証明書」が出されるということは、その後、それが何らかの形で「活用」されるという話になります。

 

“デンマーク、独自にデジタル・パスポートを開発、ワクチン接種証明書も表示、まずは出張で活用”【2月4日 トラベルボイス】

“スウェーデン、ワクチン接種の電子証明書を計画 夏までに”【2月5日 ロイター】

 

また、「世界共通仕様」作成の動きも。

 

****世界共通「ワクチン接種証明書」 Microsoftなど開発へ****

米マイクロソフトやオラクル、顧客情報管理のセールスフォース・ドットコムなどでつくる有志連合は14日、新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたことをスマートフォンのアプリ上で証明できる世界共通の国際電子証明書「ワクチンパスポート」を開発すると発表した。各国でワクチンの普及が進むのに合わせて早期から国境間の移動や経済活動の再開を促す狙いがある。(中略)

 

新たに導入をめざすワクチンパスポートは、利用客の接種記録をスマートフォンのアプリや紙に印刷されたQRコードで提示する。飛行機の搭乗時だけでなく、出勤や登校、イベントへの参加や食料品店での買い物などでの活用も想定する。

 

複数あるワクチンのうちどの種類の接種で入国を受け入れるかなど、独自のルールを設定できるようにする構想だ。

 

コモンズプロジェクトの最高経営責任者(CEO)を務めるポール・マイヤー氏は、今後はコロナ検査の陰性またはワクチンの接種済みのいずれかを証明すれば利用客が入国できるよう、複数の政府と協議を進めていると明らかにした。

 

現在はコロナ検査の陰性結果を示すデジタル証明書を発行しており、ワンワールド、スカイチーム、スターアライアンスの3大航空連合で使用されている。

 

(中略)欧州ではすでに、国や地域単位で電子証明書の作成を探る動きも出ている。デンマーク保健省はワクチンを接種した市民が、接種が義務付けられている国に旅行するためのワクチンパスポートの作成に着手した。

 

エストニアは世界保健機関(WHO)と、ワクチン接種データを国境を越えて共有できるようにする電子証明書を開発する契約に署名した。ギリシャ政府は欧州委員会に対し、全ての欧州連合(EU)加盟国を対象にした接種証明書の共通ルールを早急に作るよう求めている。

 

接種履歴を活用する上では、十分な免疫効果が得られているかの検証も必要となる。感染力が従来より強いとされる「変異種」がみつかった英国は、ワクチンの接種が感染や入院、死亡率の減少に効果がどの程度出ているかを精査するまで、ワクチンパスポートの検討は見送る方針だ。

 

共通証明書の導入をめぐっては、人々を健康状態で区別し、公共サービスを利用する権利や移動の自由を制限することも可能になるなど、個人情報や人権保護の観点から問題があるとの指摘もある。

 

ギリシャのミツォタキス首相はこうした懸念に対し、予防接種を受けた人には自由な旅行を認めるべきだとする一方で「予防接種を義務付けたり旅行の前提条件にしたりするつもりはない」と述べた。【1月15日 日経】

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人々を健康状態で区別することの人権保護の観点からの問題・・・すでに現在でも、多くの店舗で体温チェックとかごく普通に行われており、また、私の住む田舎では東京方面を過去2週間に訪問した者は歯の治療も断られるという実態があります。「今更・・・」という感も。

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