孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

“激変”香港からの大量移住・資金流出は起きるのか?

2021-02-04 22:23:31 | 東アジア

(【2月4日 AFP】)

 

【習近平主席 香港は国安法で「正常軌道」に】

香港では香港国家安全維持法(国安法)が昨年6月30日に施行され、徹底した民主派封じ込めが進行していることは周知のところ。中国・香港当局は今後も更に取締り強化の方針です。

 

****中国、香港民主派の取り締まりを一段と強化の方針=関係筋****

香港警察は6日、民主活動家ら50人超を香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで逮捕したが、今後もさらなる民主派取り締まりに向けて中国政府が一段の措置を講じる見通し。事情に詳しい2人が明らかにした。

計画はまだ最終決定されていないが、関係筋によると、香港立法会選挙で民主派の影響力を殺ぐような改変が行われる可能性がある。同選挙は新型コロナウイルス感染拡大を受け、既に9月に延期されることが決まっている。

ある中国政府高官は、香港政府と協力して行う措置への中国政府の関与度は「かなり大きい」と語る。同筋はロイターに対し、民主派の一斉逮捕は、活動家を沈黙させ、大規模な抗議デモが香港市内を占拠した1年半前のような事態を再び起こさないようにする措置の一環だと述べた。

その上で、中国は「あまりに長く忍耐し過ぎた。これを最後に、きっぱりと事態を鎮静化させる必要がある」と指摘。さらに厳格な措置が「少なくとも1年以内に」実施されると述べた。

一方、香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の報道官は、昨年6月の国安法施行により、香港に安定が戻り暴力行為が減少したとの認識を示した。また9月5日実施の立法会選挙についても、公正で開かれたものになるよう準備を進めているとした。

中国政府はコメントの求めに応じていない。【1月12日 ロイター】

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最近の動きとしては・・・

“香港で著名弁護士ら11人逮捕 台湾密航支援の疑い”【1月14日 産経】

“香港、国安法でネット初封鎖 政府批判、さらに困難に”【1月15日 産経】

“香港民主派弁護に圧力 中国当局、資格剥奪を通知”【1月19日 朝日】

“香港警察、民主派締め付けで銀行口座記録まで監視=関係者”【1月27日 ロイター】

 

中国としては、中国の意に沿わない香港・民主派への長年鬱積してきた不満を一気に解消しようとのことのようです。これでやっと香港が「正常」に戻る・・・という評価です。

 

****中国主席、香港政府を評価 国安法で「正常軌道」に****

中国の習近平国家主席は27日、香港政府トップの林鄭月娥行政長官からテレビ会議方式で香港情勢の定例報告を受け、香港国家安全維持法(国安法)に基づき混乱を制し、香港を「正常な軌道」に戻すよう努力したことを評価すると伝えた。国営テレビが報じた。

 

習氏は、香港で続いた大規模デモに林鄭氏と香港政府が「落ち着いて対応した」と指摘。新型コロナウイルスの打撃もある中、「秩序の維持に成果を上げた」と述べた。

 

習氏は、米国が林鄭氏や香港当局者に制裁を科したことに触れて「心からのお見舞い」も示した。林鄭氏は「中央の思いやりと支持に感謝する」と述べた。【1月27日 共同】

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【香港を離れる民主活動家】

こうした状況では、香港における民主化活動は表立っては不可能になっており、活動家の拘束も現実の問題にもなっていますので、活動家は「海外へ逃れる」という選択も。

また、自由が失われること、中国の統制が厳しくなることを嫌気して、香港から逃避する資本も。

 

****国安法施行から半年 “激変”香港から逃れる活動家、市民、企業…****

香港政府や中国共産党への抗議活動を取り締まる「香港国家安全維持法」(国安法)が6月30日に施行されて半年が経(た)ち、香港は激変した。共産中国の影響力が増す中、香港を離れる民主活動家が後を絶たない。脱出の動きは住民や企業の間でも起きている。

 

香港に隣接する中国広東省深●(=土へんに川)(しんせん)の裁判所で28日、8月に台湾に密航しようとして失敗し、南シナ海上で中国当局に拘束された香港の民主活動家らの初公判が行われた。

 

この密航未遂は、かつて中国本土の民主活動家らが自由を求めて逃れてきた香港も今や、安住の地ではなくなったことを象徴する事件として関心を集めている。

 

28日は、拘束された12人のうち不法越境の罪などで起訴された10人の公判が行われたが、米英など外国の領事館関係者は傍聴を認められなかったとされる。

 

国安法施行後、海外に亡命する香港の民主活動家が相次いでいる。報道によると、香港の旧宗主国、英国に亡命を申請した香港出身者は今年9月末までにすでに44人(男性28人、女性16人)を数え、昨年1年間の13人を大幅に上回った。

 

英国への移住を希望する香港住民も増えており、英政府は5年以内に30万人以上が移住する可能性があるとみているという。

 

また、香港政府の調査によると、香港の外資系企業の総数が今年、11年ぶりに減少に転じた。業種別では「金融・銀行業」が昨年より52社減少、「出版・メディア」が12社減った。外資系企業における香港の「法治・司法の独立」への評価も10ポイント急落した。

 

香港の有力紙、明報は、新型コロナウイルスの影響だけでなく、「国安法で一国二制度が終焉(しゅうえん)したことへの懸念が影響している」との見方を紹介している。【2020年12月28日 産経】

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【1万人以上が台湾移住・・・多いと見るか、少ないと見るか・・・大量受入れには台湾側も慎重姿勢】

香港の人々は普段の生活でも英語を使用する機会が多いので、イギリス移住というのも日本人が考えるほどはハードルは高くないのかもしれませんが、やはり同じ中華圏で、政治的にもおなじく中国と対峙する台湾への移住というのがもっとも現実的でしょう。

 

その台湾への移住に関しては、下記のようにも。

 

****香港から1万人以上が台湾移住、2020年 前年のほぼ2倍****

中国政府によって国家安全維持法(国安法)が導入された香港では昨年、前年の約2倍に当たる1万1000人近くが台湾に移住した。

 

時間がせわしく流れ、家賃が非常に高い香港に暮らす人々にとって、民主的な台湾は長らく魅力的な場所だった。

 

しかし、台湾の内政部移民署によると、国安法の導入が香港からの人の流入を加速させ、昨年短期居留許可を取得した香港市民の数は、2019年の5858人から1万813人に増加した。

 

これまでの最多は、香港で民主派デモ「雨傘運動」が行われた2014年の7506人だった。

 

中国本土からの人の大量流入が発生することへの懸念から、台湾は亡命や難民についての法律を定めておらず、難民認定申請も受け付けていない。ただし、香港市民は投資ビザ(査証)などの別の手段で台湾に在留申請できる。

 

台湾政府は香港の民主化運動への支持を表明しており、昨年は台湾在留を希望する香港市民に対応するための事務所を新設した。 【2月4日 AFP】

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“前年のほぼ2倍 1万人以上”という数字をどう見るか・・・確かにこれまでに比べたら急増しているのでしょうが、そんなに“雪崩を打って”という状況でも、欧州に押し寄せた大量移民みたいな状況でもないようにも。

 

政治的理由のある活動家はともかく、一般市民にとって、これまでの生活のすべてを失う「移住」というのはそうそう選択できるものでもないでしょう。

多少の不満はあっても、それを表沙汰にしなければこれまで同様に生きていけるのなら・・・

 

台湾側も、必ずしも大量受入れに「賛成」という訳でもないようです。

 

****香港からの亡命実態を公表しない台湾当局 意外に冷たい市民*****

香港国家安全維持法(国安法)の施行(6月30日)から半年が経った。この間、香港を脱出しようとする多くの若者たちが目指したのが、同じ中華圏で地理的にも近い台湾だった。

 

支援者によると、香港で反政府デモが本格化した昨年以降、密航などさまざまな形で台湾に入ってきた若者は数百人規模といわれる。デモの最前線で警官と戦った勇武(武闘)派のメンバーも多い。

 

台湾で対中政策を担当する大陸委員会によると、香港市民の今年の居留申請は10月までで過去最多の7474人に達し、昨年1年間の5858人を上回った。

 

正規のプロセスを踏まない密航者も少なくない。しかし、台湾には難民保護の法律が整備されていない。公になれば、香港へ送還しなければならなくなるため、香港市民の密航を発表しない方針をとっている。

 

密航者を収容した場合、国籍を尋ねず、「国籍不明者」として扱う。香港の家族などと連絡できないよう携帯電話も取り上げる。密航者の希望を聞いて、ひそかに米国などへ送り出すケースもあるという。

 

8月に香港の民主活動家ら12人が台湾に密航しようとして中国当局に拘束された事件があったが、台湾メディアは、別の5人が台湾への密航に成功したと報じている。これについて台湾当局は肯定も否定もせず、一切説明していない。

 

台湾当局が実態を公表しない背景には、中国や香港当局とのトラブルを避ける思惑以外に、台湾の人々が香港市民にそれほど強い関心をもっているわけではないという事情もある。

 

台湾住民の大半は自分を「中国人」ではなく「台湾人」だと思っている。これに対し、自分を「中国人」だと考える香港市民が少なくないことへの不信感がある。中国のスパイが亡命者の中にいることへの警戒心もあり、台湾の世論は必ずしも香港市民の大量受け入れに賛成ではない。

 

今春、特例措置で台湾南部の大学への編入が認められた20代の男性は「香港では勇武派のリーダーだったが、昨夏、仲間が次々と逮捕されたため、観光ビザで台湾に入った」と明かす。(後略)【2020年12月28日 産経】

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【旧宗主国イギリスが門戸開放 約30万人が申請との予測も】

香港市民の移住に関して最近話題になったのが旧宗主国イギリスの対応。

 

香港に住むイギリス海外市民(BNO)数百万人への英市民権獲得への道を開く新たなビザ(査証)の申請受け付けを開始。中国による言論弾圧から逃れることを望む香港市民に対し、旧宗主国であるイギリスが門戸を開いた形になっています。

 

****イギリス、香港市民への特別ビザ開始 30万人が申請か****

イギリス政府は1月31日、香港市民にイギリス市民権を獲得できる道を開く、新たな特別査証(ビザ)の申請受付を開始した。約30万人が申請するとみられている。

 

イギリス政府は昨年6月、中国政府が香港国家安全維持法(国安法)を施行したのを受け、特別ビザの導入を発表した。(中略)

 

中国政府はかねて、イギリスに内政干渉しないよう警告していた。外交部は、今後はBNOパスポートを旅券と認めないと述べている。

 

ボリス・ジョンソン英首相は、かつてイギリス領だった香港との「歴史と友情の固い絆」を尊重したものだと説明した。英内務省によると、昨年7月以降すでに7000人の香港市民がイギリスへの長期滞在許可を得ている。

 

特別ビザは、1997年の香港返還以前に生まれた香港市民が持てるイギリス海外市民(BNO)パスポートの保持者約290万人と、その扶養家族230万人が対象。しかしイギリス政府は、最初の5年で約30万人が申請するとみている。

 

BNOパスポートは本来は渡航許可証で、イギリスへの渡航についても、6カ月のビザなし渡航しか認められていない。保持者に自動的に就業や居住を認めるものでもなく、社会保障の対象にもならない。

 

しかし、今回の特別ビザ制度では、対象者はイギリスに5年間滞在でき、就業・就学も可能となる。5年の時点で永住権の申請ができるようになり、さらにもう1年滞在することで、市民権を得る資格が与えられるという。

 

また、特別ビザ制度の開始前にイギリスに移住した7000人についても、「相応の理由」があるとして特別に滞在許可が出ている。

 

ジョンソン首相は、「香港のBNO保持者がイギリスで暮らし、働き、生活できる新しい道を作れたことを大変誇りに思う」と述べた。

 

「イギリスは香港市民との歴史と友情の固い絆を尊重し、共に価値を置く、自由と自治のために立ち上がった」

プリティ・パテル内相は、香港市民が中国当局による摘発を恐れるなか、特別ビザは対象者への保護を拡大するものだと説明した。

 

中国は反発

中国外交部の趙立堅報道官は澎湃新聞の取材で、特別ビザ制度は中国の主権を脅かし、中国と香港の内政に深く介入するものだと述べた。

 

「イギリス側は、香港が24年前に中国に返還された事実を軽視している」

中国政府は併せて、1月31日からBNOパスポートを旅券と認めないと発表。ただし、具体的な措置がどうなるかは明らかになっていない。

 

香港市民は同市から出る際、香港政府が発行した旅券や身分証を使う。中国に入る場合には、出入境管理局が発行する回鄉証(内地通行証)を使うか、外国の旅券でビザを申請する必要がある。

一方、BNOパスポートが必要になるのはイギリスをはじめとする、BNOを旅券と認める国への入国時のみ。(中略)

 

<解説>ジェイムズ・ランデイル外交担当編集委員

イギリス政府は、世界のためになることをすると約束してきた。BNOパスポート保持者が香港から脱出できるよう支援するこの特別ビザ制度は、その約束を端的に表す最も明確な実例かもしれない。

 

抑圧を口で非難するのと、抑圧に対抗する具体的な対策を実施するのは、別の話だ。イギリスは今回、香港市民を守るという20年以上前の約束を実行したことになる。

 

ただし、数々の疑問が残る。

まず、このビザでイギリスに移住した香港市民は、どういった支援を受けるのだろうか。

この人たちは、長期的にはいずれイギリスの経済と文化を豊かにしてくれるかもしれないが、短期的には支援が必要だ。

 

どこに住むのか? どうやって仕事を見つけるのか? 最初の5年で想定された約30万人より大勢が申請したら? イギリス在住者は移民受け入れをどう思うだろうか?

 

そして何より、中国はこれまで報復を約束していたが、それはどういうものになるのか。

BNO保持者を公職から除外したり、投票を禁止したり、出国さえ禁じたりとしたら、イギリスはどう対応するのだろうか。【2月1日 BBC】

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通常はBNOパスポート以外に香港政府が発行した旅券も保持しているようですが、中国が激しく反発するなかで出国できるのか?

移住後のイギリスでの生活支援等の問題は言わずもがなです。

 

そもそも、前述のように「移住」という選択は究極の選択であり、それが可能な者は経済的にも恵まれた者でしょう。イギリスが言及しているような「30万人」といったレベルになるのか?

 

【香港当局 国安法を理由とした資金流出は見られていない】

資金流出については、香港当局は香港国家安全維持法を理由とした流出は見られていないとしています。

 

****香港、国安法施行に伴う資金流出は見られず=HKMA副総裁****

香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)の阮国恒(アーサー・ユエン)副総裁は4日、中国政府による香港の統制を強める香港国家安全維持法(国安法)について、昨年の施行に伴う不透明感を理由とする資金流出は見られていないとの認識を示した。

また、各銀行からはいかなる意味においても香港から去るとの話は聞いていないと述べた。

HKMAによると、香港の2020年の預金総額は前年比5.4%増加した。【2月4日 ロイター】

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なお、イギリス移住の結果として下記のような試算も。あくまでも「試算」ですが。

 

****香港から今年3兆7500億円流出も、英国への市民移住で-BofA****

英国に移り住む香港市民が25年末までに32万1600人に達する可能性

移住だけで香港ドルを許容変動幅下限に押し下げるには十分ではない

 

中国による香港国家安全維持法(国安法)導入を嫌い香港市民が英国に移り住むことで、香港は今年、2800億香港ドル(約3兆7500億円)の資本流出に見舞われる可能性がある。バンク・オブ・アメリカ(BofA)が最近のリポートで指摘した。

  

香港の旧宗主国である英国は、香港全住民の3分の2余りが英国の市民権取得を目指す資格があるとしており、今月末に申請が正式に始まる。

  

BofAのストラテジスト、チュン・ヒム・チャン氏は英政府の推計に基づき、2021年に香港から15万3300人が英国に移住する可能性があると分析。こうした人々が自宅を730万香港ドルで売却し、年金貯蓄を引き出すと、香港からの流出額は2800億香港ドルに達し得ると試算した。

 

これは香港への20年の純流入の半分に相当するという。英国に移り住む香港市民が25年末までに32万1600人に達する可能性にも言及した。(後略)【1月15日 Bloomberg】

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