孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トルコ・エルドアン大統領 S400問題、シリア、更にはリビアと問題山積、国内でも新党の動き

2019-06-29 22:53:40 | 中東情勢

(「茶道」を体験するエルドアン大統領夫妻【627日 TRT】 心の平安は得られたでしょうか?)

 

【イスタンブール市長選の再選挙という賭けは失敗】

トルコ・エルドアン大統領が、僅差で与党候補が敗北したイスタンブール市長選挙を「不正があった」と強引に再選挙に持ち込んだあげく、僅差の前回とはことなり、今回は大差で明確な再敗北を喫したことは周知のところです。

 

強引なエルドアン大統領のやり方に反感が強まった結果でもあり、「手痛い敗北」「求心力に陰り」とも評されています。

 

****トルコ市長選、民主政治は生きている****

野党候補が3月の地方選より得票差を拡大して再び勝利

 

トルコに関する良いニュースは、最近ほとんどなかったが、23日のイスタンブール市長選挙での有権者らの行動は、苦境にあった民主主義支持者らに希望を与えた。

 

野党・共和人民党(CHP)のエクレム・イマモール候補は、トルコ最大都市イスタンブールの市長選挙で、54%の票を獲得して勝利した。レジェプ・タイップ・エルドアン大統領率いる与党・公正発展党(AKP)の候補、ビナリ・ユルドゥルム元首相は23日夜、敗北を認めた。大統領も勝者に祝意を伝えた。

 

これは、3月に行われた当初の市長選でのイマモール氏の僅差での勝利という結果を覆そうしたエルドアン氏にとって、新たな打撃となった。

 

イマモール氏は3月の選挙後、市政府の運営を開始したが、先月市長の座を追われた。エルドアン氏が、あいまいな根拠に基づいて選挙不正があったと指摘し、同氏の強い求めに応じて最高選挙管理委員会が選挙結果を無効としたためだ。

 

選挙結果を覆そうとしたエルドアン氏の試みは逆効果となり、23日の選挙でイマモール氏に勝利をもたらした得票差は、3月の約13000票から70万票余りに拡大した。

 

49歳の新市長は、これまでの不正をただそうと有権者に働きかけた。同氏はまた、サービスの改善のほか、無駄な支出の削減と汚職対策の重要性を強調した。(中略)

 

エルドアン氏の政界での運勢は、25年前にイスタンブール市長になった後に上昇し始めた。同氏の下で首相を務めていた人物が市長選に出馬したことがそれを物語っている。

 

イマモール氏は依然として自らが有能な指導者であることを証明する必要があるが、大統領選でのエルドアン氏に対する挑戦者として、野党にとって一番の期待の星になる可能性がある。

 

エルドアン氏はかつてないほどの権力を掌握しようと試みているが、それが政治の不確実性と経済的失策につながっている。

 

トルコリラは昨年、対ドルで30%近く下落し、2019年も下落し続けている。第1四半期の経済成長率は1.3%と、18年下半期のリセッション(景気後退)を埋め合わせるには十分でない水準だった。 

 

AKPは今年3月の統一地方選挙で全投票数の50%超を獲得するなど、トルコの地方部において引き続き人気を保っているものの、同国に81ある県のうちAKPが政権を維持した自治体は、選挙前の48県からわずか39県へと減少している。この地方選でAKPはアンカラ市長選でも敗北したが、今回、同国都市部の代表格となるイスタンブールでも敗北を喫した。

 

今後注目すべき決定は、同国と他の北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国との関係冷却化を招いたロシア製の地対空ミサイルS400導入をエルドアン氏が撤回するかどうかである。

 

エルドアン氏が導入にこだわれば、米国は制裁措置をとるとみられ、最新鋭ステルス戦闘機F35の多国間共同開発プログラムへの参加も認めない可能性がある。

 

これらの措置はトルコ経済にとってさらなる圧力になるとみられる。イスタンブール市長選の敗北は、エルドアン氏に独裁主義的なやり方を改善するよう求める警告である。しかしエルドアン氏が敗北を十分に受け入れたことは、かつて一度もない。【624日 WSJ

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 AKPはイスラム保守層を固い支持基盤とした選挙で強さを発揮し、2002年から長期政権を担ってきた。エルドアン氏が前身政党時代の1994年に市長に当選して以来のAKPの牙城(がじょう)だったイスタンブールは「成功物語」の原点だ。エルドアン氏自身が「イスタンブールで負ければトルコで負ける」と語っていただけに、今回の敗北の影響は計り知れない。【627日 朝日】

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S400問題 トランプ大統領「エルドアン氏のせいではない」と同情も 制裁は「検討している」】

各紙が共通して指摘しているのは、今回の「手痛い敗北」に加えて、アメリカが強く反対しているロシア製の地対空ミサイルS400導入問題がこじれており、アメリカの対トルコ制裁などの事態になれば、トルコ経済に大きなダメージとなり、エルドアン政権を更に大きく揺さぶるであろうという点です。

 

この問題は大阪のG20における首脳外交でもひとつの焦点ともなりました。

トルコはNATO加盟国であり、事態がこじれれば、トルコ・エルドアン政権だけでなく、NATOも大きく揺らぐことにもなります。

 

****トランプ氏とトルコ大統領、ロシア製ミサイルで攻防****

トランプ米大統領は29日、大阪市内でトルコのエルドアン大統領と会談した。ホワイトハウスによると、トルコがロシア製の地対空ミサイルシステムS400購入を決めたことに懸念を表明した。また、北大西洋条約機構(NATO)の同盟関係強化に向け連携を求めた。

 

トランプ氏は会談冒頭、エルドアン氏を「私の友人」と呼び、融和的な姿勢を見せた。トルコに制裁を科すかどうかの言及は避けた。

 

一方、エルドアン氏は29日の記者会見で「引き渡しの段階に入った契約を否定することはトルコに似合わない。7月上旬にも引き渡される」と述べ、購入見直しには応じない姿勢を示した。

 

その上で「オバマ政権時に米国から(地上配備型迎撃ミサイル)パトリオットを購入しようとしたが、米議会が許可しなかった」と主張。制裁は「あり得ないと思う」と語った。【629日 時事】

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アメリカ政府はトルコ・エルドアン大統領に厳しい姿勢を示していますが、トランプ大統領自身はエルドアン大統領に対し、“同情的”な姿勢も見せており、そのあたりがエルドアン大統領の強気の背景にあるのかも。

 

****トルコの露地対空ミサイル購入、トランプ氏が懸念表明 首脳会談****

(中略)米国は同盟国トルコがS400を導入すれば、軍事機密情報がロシアに流出すると憂慮。「S400購入かNATO残留かを選択しなければならない」(ペンス副大統領)などと圧力を強めている。

 

29日の会談冒頭、トルコが導入した場合、制裁を発動するかどうか記者団に問われたトランプ氏は「検討している」と述べた。

 

一方でトランプ氏は、オバマ前政権がトルコによる米国製地対空ミサイルの購入に制限をかけていたと指摘。「問題は複雑だ」と述べ、トルコに同情的な姿勢もみせた。その後の記者会見でも「エルドアン氏は不公平な扱いを受けた。彼のせいではない」と述べた。

 

ロイター通信によると、エルドアン氏はトランプ氏との会談に先立ち、プーチン露大統領と会談。7月中にS400を納入する方針を確認した。【629日 毎日】

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トランプ大統領が「エルドアン氏は不公平な扱いを受けた。彼のせいではない」と言っているのですから、エルドアン大統領の言うように「制裁はあり得ないと思う」ということでしょうか?

 

今回の首脳会談でも先行きはまだ不透明なままです。エルドアン大統領としては、ここまで突っ張った以上、今更後には引けないでしょう・・・・というのは一般人の発想で、エルドアン大統領にしても、トランプ大統領にしても、常識の枠外にありますので・・・。

 

【トルコがS400にこだわる背景】

トルコがアメリカのパトリオットPAC3ではなく、ロシアのS400にこだわる背景には、アメリカが技術移転を認めないことが、武器国産化を進めるトルコの方針に合わないということ、更にはアメリカ・NATOへの不信感が背景があるとも指摘されています。

 

****トルコ、進む武器国産化 無人機・攻撃ヘリなど…自給率7割に****

中東の地域大国トルコが20年足らずの間に武器の国産化率を大幅に増やした。その自信を背景にロシアから地対空ミサイル購入を決め、米国の強い反発を招いている。トルコは西側から離れていくのか。

 

 ■きっかけは米国禁輸の衝撃

「設計から生産まで、防衛産業の全段階を自国でまかなう目標に着実に近づいている」。4月30日、イスタンブールで開かれた国際防衛産業フェアの開幕式で、エルドアン大統領は言葉に力を込め、2000年代初頭に約2割だったトルコの防衛装備品の自給率が約7割に達したと強調した。生産対象は長距離砲、攻撃ヘリ、装甲車から電子戦システムに及ぶ。(中略)

 

トルコが武器国産化を強く意識したのは、キプロスをめぐる対米関係悪化だ。1974年にギリシャ系勢力によるクーデターが起きると、トルコ軍はトルコ系住民の保護を理由に出動、島北部を制圧した。

 

反発した米国は、北大西洋条約機構NATO)の同盟国であるトルコに3年にわたる武器禁輸措置をとった。その衝撃が自前の防衛企業設立につながった。

 

80~90年代に経済の混乱などで進まなかった武器国産化は、02年からのエルドアン氏率いる公正発展党の長期政権下で進んだ。この間、03年にイラク戦争があり、10年末からの中東の主化運動アラブの春」をきっかけとするシリア内戦で地域の混乱が続いている。(中略)

 

 ■西側依存避けロシアに接近

国産化が進んでもハイテク武器は輸入頼み。トルコはNATOと緊張関係にあるロシアから地対空ミサイルシステムS400を買うと決めた。ところが米トランプ政権は猛反発。「S400を導入するなら最新鋭戦闘機F35は売らない」と制裁を示唆して翻意を促している。

 

トルコ国内にも懸念の声はあるものの、エルドアン氏は「携帯無線機すら米国製頼みだった74年と今は違う」と国産化の進展を強調しつつ、S400購入方針を変えていない。

 

ここに至るには長い経緯があった。イランやシリアなどのミサイルによる攻撃能力の高まりを受け、トルコは米国製PAC3の購入を目指したが実現しなかった。価格面のほか、トルコが関連技術の移転にこだわり、折り合いがつかなかった。

 

13年にはトルコの要請に応じたNATOが、内戦のシリアから飛来するミサイルを警戒するため米独などの地対空ミサイル部隊を国境地帯に展開した。しかし、配備の規模や期間が不十分とトルコ側は感じ、NATO依存のリスクを認識したとされている。

 

さらに、16年に起きたクーデター未遂事件では、関与が疑われた軍の操縦士が260人以上免職となり、戦闘機の稼働率に影響が出ているとされる。カサポール氏は「戦闘機による防空能力低下を一時的にしのぐ手段がS400だ」とみる。ロシアは技術移転や共同生産にも前向きと伝えられる。

 

S400は近くトルコへの搬入が予定される。ペンス米副大統領から「(NATOの)パートナーであり続けるのか、無謀な決断で同盟を危険にさらすのか」と迫られているが、トルコが西側から離れる可能性はあるのか。

 

トルコを代表する政治ャーナリストのムラット・イェトキン氏は「米国との関係悪化の原因は短期的なものではなく、70年代のキプロス問題から積み重なってきた相互不信にある」と指摘する。

 

トルコの政治家や軍人、官僚には、米国を中心とするNATOへの依存を減らし、ロシアや中国、イランとの関係をより強めるべきだと考える「ユーラシアニスト」という一定の層がいるという。

 

ただ、トルコの元外交官の一人は「西側にとどまるかどうかの選択は、自由と民主主義という価値にかかわる。ユーラシアニストが主流になることはない」と話す。【620日 朝日】

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【多忙なエルドアン大統領 シリアでも さらにリビアでも】

内政におけるイスタンブール市長選敗北、外交面でのS400をめぐるアメリカとの緊張・・・・それだけでも大変ですが、トルコ・エルドアン大統領はそうした状況でシリアでのイドリブの反体制派をめぐるアサド政権・ロシアとの対立も抱えています。

 

****政府軍とトルコ軍の衝突(イドリブ)****

シリア政府軍がイドリブ、ラタキア、アレッポ地方等で、大規模な反政府軍掃討作戦を行い、一部では大損失を受けて、ロシア軍特殊部隊も支援したというニュースは、どこまで正確な話かは知りませんが、取りあえず報告しました。

 

この作戦と関係がありそうなのは、アラビア語メディアがいずれも報じているトルコ国防省の発表です。

 

それによると、トルコ国防省は、27日シリア政府軍支配地域から砲弾及び臼砲弾が、イドリブの停戦地域のトルコ軍監視ポストに落下し、兵1名が死亡し、3名が負傷したと発表し、この攻撃は意図的なもので、シリア政府軍に責任があるとしたとのことです。

 

さらにトルコは駐トルコ・ロシア大使館の武官を招致し、この事件に抗議する(ロシアを呼びつけた理由はロシアに責任があるというよりは、トルコはアサド政権を認めていないので、お互いに大使館はなく、通信の手段としてはロシアを経由しているからではないか?)とともに、トルコの対応は厳しいものになると警告した由

 

この点一部のメディアは、トルコ軍は28日、シリア政府軍拠点に対して大砲戦車砲等を複数発撃ち込んだと報じている。 取りあえず【628日 中東の窓】

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それだけでなく、トルコは内戦状態にあるリビアにも統一政府側を支援する形で関与しており、ハフタル将軍側の激しい反発を受けています。

 

****リビア国民軍率いるハフタル氏、領海内のトルコ船舶の攻撃を命令****

リビアの元国軍将校で実力者のハリファ・ハフタル氏は、国民合意政府をトルコが支援していると批判した上で、自身が率いる軍事組織「リビア国民軍」に対し、国内におけるトルコの船舶と関係者らを攻撃するよう命じた。ハフタル氏の報道官が28日に明らかにした。

 

GNA(国民合意政府)は国際的に承認されており、ハフタル氏とは敵対している。

 

報道官のアフマド・メスマリ少将は、「空軍に対して、リビア領海のトルコの船舶を攻撃するよう命令が下された」と述べ、「(リビア国内にある)トルコ政府の戦略的地域、および同政府系の企業と事業は、LNA(リビア国民軍)の正当な攻撃対象と見なされる」と主張した。

 

リビア東部と南部の大部分を支配するLNAは、4月初めに首都トリポリをGNAから奪取するために進軍を開始している。

 

メスマリ氏は、「リビア国内にいる全てのトルコ人は逮捕されるだろう」として、「(リビアと)トルコ間を運航している航空機の便も全て禁止される」と発表。しかし、ハフタル氏の支配地域以外についての禁止措置の適用については言及を避けた。

 

同氏は、GNAがトリポリの南西100キロほどに位置するガリヤンを掌握する際にトルコが援助したとして非難。ハフタル氏は、42日にガリヤンを制圧して作戦本部を置いていたが、今月26日にGNAから支配権を奪われていた。

 

ハフタル氏陣営とGNAは、外国人の傭兵を雇って他国政府から軍事的支援を受けているとの非難合戦を続けており、アラブ首長国連邦とエジプトから支援を受けるハフタル氏は、GNAの後ろ盾となっているトルコとカタールを非難している。 【629日 AFP

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【かつての盟友ギュル元大統領が新党?】

アメリカと綱引きしながらシリアで政府軍と戦い、更にリビアでも・・・・忙しいことこの上ないエルドアン大統領ですが、国内的にも気になる動きが報じられています。

 

****トルコ与党幹部、年内のライバル政党結成を計画=関係筋****

関係筋によると、トルコのエルドアン大統領の与党・公正発展党(AKP)の幹部2人が年内にライバル政党を結成することを計画している。イスタンブール市長選での敗北を受けたエルドアン氏の求心力低下がさらに進む可能性がある。

関係筋によると、新党を計画しているのはともにAKP創設メンバーのババカン元副首相とギュル元大統領。

ババカン氏に近いアドバイザーは、両氏が秋に政党を結成する可能性が高いとの見方を示し、新党の政策は初期のAKPに類似したものになると述べた。AKPは2001年の結成当初、イスラム教に根ざした考え方と西側寄りの民主的で自由な市場アプローチを融合し、幅広い支持を得た。

別のアドバイザーによると、両氏は半年ほど前から新党結成を検討してきたが、3月31日の統一地方選挙でAKPが主要都市で敗北したことを受けて機運が高まったという。【628日 ロイター】

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ギュル元大統領はエルドアン氏の元盟友ですが、強引なエルドアン氏の政治手法に不満を強めており、2018年大統領選挙でもエルドアン氏に対抗する野党統一候補に・・・との話もありました。

 

与党支持層ではエルドアン氏の人気は絶大ですから、ギュル氏の新党ができたとして、どこまで支持をひろげられるかは疑問ですが、エルドアン大統領にとって更なる打撃となることは確かでしょう。

それにしてもタフですね。

 

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