孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イランとアメリカ 戦争は望まないが交渉上の優位性を求める戦いが その過程で不測の事態も

2019-06-20 22:50:43 | イラン

(オマーン湾で攻撃を受け炎上するタンカー 【618日 WSJ】)

 

【国際社会には「ほんとですか〜〜??」というアメリカへの不信感も】

オマーン湾で起きたタンカー2隻への攻撃については、「証拠」写真なるものを公開してイランがやったと主張するアメリカと「やってない」とするイランが対立していることは周知のとおり。

 

「真犯人」が誰かはわかりませんが、アメリカ主張に対して「どうも、アメリカの言うことは信用できないからな・・・」という国際社会のアメリカへの不信感も感じられます。

 

****イラク戦争と同じ構図か。ホルムズ海峡タンカー攻撃の「真犯人」****

(中略)

それにしても、なぜ「証拠を提示した」にも関わらず、アメリカの主張は、信じてもらえないのでしょうか?一番の理由は、「イランの動機がわからん」ということでしょう。(中略)

 

もう一つは、「アメリカが提示した証拠、説得力がイマイチ」ということでしょう。このこと、指摘している人もいます。(中略)

 

アメリカは、ウソつきすぎで信じてもらえない

もう一つ、「アメリカの話に説得力がない理由」。それは、アメリカが「ウソを多用しすぎ」ということ。なんというか、国際社会から「オオカミ少年」のように見られている。いろいろいろいろあるのですが、代表的な例を二つあげておきます。

 

一つは、イラク戦争。開戦理由は二つでした。すなわち、「フセインは、9.11を起こしたアルカイダを支援している」「フセインは、大量破壊兵器を保有している」でした。新しい読者さん、これ二つとも「大うそ」だって知ってました???????????(中略)

 

もう一つ。20138月、オバマさんは、「シリアを攻撃する!」と宣言しました。理由は、「アサド軍が化学兵器を使った」から。これもウソだった可能性が高いのです。なぜ?20135月、国連は、こんな報告書を出していた。(中略)

二つ例をあげましたが、同じような例は、たくさんあります。最近のアメリカの情報戦は非常に稚拙。日本は「米英情報ピラミッド」に組み込まれているので、こんな重要情報も拡散されないのですね。

 

アメリカはこんな感じ。それで、この国が「イランがやった!!!」と主張しても、「ほんとですか〜〜??」というリアクションになってしまうのです。【619日 北野幸伯氏 MAG2 NEWS

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シリアの化学兵器についてはともかく、イラク開戦は上記のとおりでしょう。

更にあげるなら、ベトナム戦争本格化の引き金となった「トンキン湾事件」もあります。

 

そんなこんなで「ほんとですか〜〜??」ということになりますし、しかも言っているのが平気でウソをつくトランプ大統領と、イランを攻撃したくてたまらないボルトン補佐官などですから・・・。

 

“アメリカが「ウソを多用しすぎ」ということ”に加えて、(日本・安倍政権は違いますが)欧州ドイツ・フランスなどとアメリカ・トランプ政権の溝がこれまでになく深いということも影響しているでしょう。

 

一方、イギリスがいち早くアメリカ主張に賛同したのは、従来からの米英の「特別な関係」というだけでなく、EU離脱後は(トランプだろうが何だろうが)アメリカを頼らざるを得ないという切羽詰まった状況のあらわれのようにも見えます。

 

個人的には、タンカー攻撃だけなら「ほんとですか〜〜??」というところですが、後述するような、その後の一連の攻撃・挑発の動きと併せて考えると、「(ロウハニ政権が絡んでいるかどうかはわかりませんが)やっぱり、イラン関係筋の仕業かな・・・」という感も。

 

【戦争は望んでいないトランプ大統領・イラン】

タンカー攻撃に関して、トランプ大統領は以下のようにも。

 

****石油確保での武力行使明言せず=タンカー襲撃「影響小さい」―米大統領****

トランプ米大統領は18日の米誌タイム(電子版)に掲載されたインタビューで、ホルムズ海峡付近でのタンカー襲撃を踏まえ、石油輸送路確保のため軍事力を行使する可能性について「(質問の)疑問符は、そのままにしておく」と述べ、明言を避けた。イランによる核兵器保有を阻止するためなら、武力行使をためらわないという姿勢も示した。

 

トランプ氏は、エネルギー輸出国となった米国にとって、タンカー襲撃の起きた海域の重要性は以前と比べ大幅に低下したと指摘。襲撃の影響は「今のところ、極めて小さい」と語った。

 

襲撃にイランが関与したとする米情報当局の分析に関しては「同意しない人は少ないだろう」と述べた。その一方、「(2015年の)イラン核合意調印時、イランはいつも『米国に死を』と叫んでいたが、今はあまり耳にしない」とも話し、イラン政府がここに来て米国への敵対姿勢を強めているわけではないとの見方を示した。【619日 時事】

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トランプ大統領は相手を追い詰めて有利な交渉をしたいという狙いで、カネのかかる戦争や(票につながらない)中東への関与には消極的とされています。政権内には、ボルトン補佐官らの好戦的勢力との対立があるとも言われています。

 

上記の発言には、トランプ大統領の「衝突・戦争はしたくない」という思いがにじんでいます。

 

戦争になれば壊滅的な打撃を被るイランとしても、(一部好戦的な勢力を除けば)戦争をしたくないのは当然です。

 

****イラン、「米国との戦争は起きない」=IRNA****

イラン最高安全保障委員会のシャムハニ事務局長は19日、同国と米国の間で軍事対立は起こらないと述べた。国営イラン通信(IRNA)が報じた。

シャムハニ氏は「戦争をする理由はなく、イランと米国の間で軍事対立は発生しないだろう。他国に圧力をかけようとするなかで、他国を非難することは米当局者の一般的な慣行となっている」と述べた。(後略)【619日 ロイター】

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イランは、1980年代の8年間に及ぶイラン・イラク戦争を孤立無援のなかで戦い抜いたという自信を持っていますが、当時と比べて都市化が進んだ現在は食糧を輸入に頼る経済構造に変化しており、当時の話が現在に通用する訳でもないという指摘もあります。

 

市民の不満が高まれば、体制が動揺する可能性も。

 

【レバレッジ(交渉上の相対的優位性)を巡る戦い】

戦争をしたくないというのが本音のトランプ大統領とロウハニ政権ですが、現在の対立を可能な限り有利な方向に持っていきたいということで、「最大限の圧力」かけあう両国でもあります。

 

イランは濃縮ウランの増産という核合意への「違反」に踏み切り、「このままでは合意を破棄して核開発を再開せざるを得ない、それでもいいか?」と欧州など関係国に圧力をかけています。

 

タンカー攻撃も、「いつでもホルムズ海峡の石油輸送を混乱させることができるぞ!」という示威行動だったのかも。

 

アメリカは、「イランのさらなる攻撃の抑止が目的」、「トランプ大統領は戦争を望んでいない」(ポンペオ米国務長官)としながらも、地対空ミサイル「パトリオット」1個大隊や有人・無人のISR(情報・監視・偵察)関連装備

を含む米軍約1000人規模を中東に追加派遣することを明らかにしています。

 

****米・イランの緊張増大、背後で何を駆け引き?****

イランが17日発表した濃縮ウランの増産は、急激に緊迫する中東情勢の背後にある「真実」をほぼ完璧に物語っている。

 

世界が今、目にしているのは、戦争へ向かう序章というよりは、レバレッジ(交渉上の相対的優位性)を巡る戦いだ。トランプ政権はこれまで、イランに対し著しいレバレッジを手にする一方、イランはそれに対抗するためのレバレッジを切実に必要としている。

 

だからといって戦争が起こらないという訳ではない(読み間違いをする可能性は高く、そのリスクはさらに高まっている)。

 

戦争は米・イラン双方とも望んでいる結果ではないということだ。校庭でにらみ合っている子供たちが、一線を越えずに済むことを願いながら、越える構えを見せようとするのと同じ「いちかばちか」の賭けだ。

 

イランが17日、濃縮ウランの貯蔵量が2015年の核合意で定められた上限を近く超えそうだと明らかにしたことで、米国とイランのにらみあいは一段と危険を増した。

 

イランが核合意の存続を目指す欧州諸国を脅すことで、米国の対イラン制裁に対抗するよう必死の説得を試みていることは明らかだ。

 

イランは実際、米国の制裁を回避できるような金融システムを構築するという約束を欧州諸国が果たせば、濃縮ウランの製造に関する決定は覆すことが可能だと主張している。

 

米国とイランはこの対立において、それぞれレバレッジを手に入れる2つの大きな手段を持っている。トランプ政権はイラン経済を崩壊させる経済力、そして他国を従わせる外交力を有していることを見せつけた。

 

一方、イランはここで、自らが持つ2つのレバレッジ手段で対抗できることを示す必要がある。つまり、ホルムズ海峡の石油輸送に支障を生じさせる力と、核開発を再開できる力だ。

 

イランは最近、同国が行ったとされるオマーン湾航行中の石油タンカー攻撃により、一つめの力を持っていることを示した。

 

そして目下、核活動を活発化させることで、二つめの力をちらつかせている。

 

こうした行動に出る背景には、核合意を破棄する構えを見せることで、国際社会が結束してイランに反対するのではなく、むしろイランを支持してくれることに賭けている(しかもこれは大きな賭けだ)ことがある。

 

(中略)これ(トランプ大統領の対イラン制裁)により、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は窮地に追い込まれた。(中略)

 

イランが過剰な反応を示せば、米軍による攻撃を招きかねない。もしくは、国際社会から非難され、国際的な孤立を深める結果、経済を巡る市民の不満を高めることになろう。

 

こうした状況で、ハメネイ師には3つの望ましからざる選択肢しか残されていないと(カーネギー国際平和財団のイラン担当アナリスト)サジャドプアー氏は指摘する。

 

具体的には、トランプ氏よりも長く政権の座にとどまることを目指す、新たな核合意を協議するというトランプ氏の提案を受け入れる、もしくは一段と緊張を高めるの3つだ。

 

ハメネイ師は今のところ、緊張を高める方法を選んだ。ただ、慎重に線引きされた限度内にとどめている。

 

ハメネイ師はイラン沖のホルムズ海峡を通過中の石油タンカー船への攻撃を承認することで、原油価格の高騰を通じて米国民に経済的な痛みをもたらす一方、欧州や日本、中国を脅迫し、イランに対する圧力を軽減するようトランプ政権に強要することを狙ったようだ。

 

また同時に、イランの仕業ではないとして責任を逃れることができるよう石油タンカーへの攻撃を秘密裏に行うことで、説得力のある否定論拠を維持しようとしている。

 

さらに、核合意の破棄も辞さない構えを見せる一方で、実際に破棄を宣言し、核兵器能力の取得にまい進し始めるには至っていない。

 

イラン核合意を離脱すれば、公然と石油タンカーに攻撃を加えるのと同様、世界は一丸となってトランプ氏に対抗するのではなく、イランに対抗することになるだろう。 

 

イランはまた、最後にある読みを行っているように見える。つまり、トランプ氏と同盟国の関係は不安定で、トランプ氏個人の信頼も低く、世界はイラン側の主張を信じ、イランが緊張を増大させたとみるのではない――そして、米政府を批判する――と読んでいるフシがある。

 

要するに、イランの目的は公然と戦いを誘発することではなく、レバレッジを得ることだ。リスクの高い戦略だが、不合理なものではない。【618日 WSJ】

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【いつなんどき不測の事態が起きてもおかしくない状況も】

上記のようにハメネイ師が“石油タンカー船への攻撃を承認”したのかどうかは知りません。

 

ただ、タンカー攻撃以降も、イランの影響力が強いイラクやイエメンで、アメリカ関連施設やアメリカの同盟国サウジアラビアを対象とした同種の攻撃が相次いでいます。

 

****米石油会社敷地にロケット弾=北部の基地も標的―イラク****

イラク軍は19日、南部バスラ近郊にある米石油大手エクソンモービルなどが操業する油田関連施設の敷地内にロケット弾が撃ち込まれ、3人が負傷したと明らかにした。油田の操業に影響はないという。ロイター通信が伝えた。

 

また、AFP通信によれば、この攻撃の数時間前には北部モスルの軍基地にもロケット弾が着弾した。基地には米軍が駐留しているとされる。いずれも誰が攻撃したかは不明。

 

イラクでは17日に、米軍要員も駐留する首都バグダッド北方の基地にロケット弾が着弾したばかり。米国とイランの緊張が高まる中、米国の権益を狙ったとみられる事件が続いており、イラクで活動する親イラン勢力の関与を疑う声が上がりそうだ。【619日 時事】

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****サウジ淡水化プラントにミサイル、イエメンから発射か ****

サウジアラビアの海水淡水化プラントがミサイル攻撃を受けた。隣国イエメンから発射されたとみられる。米政府高官が明らかにした。死傷者の有無は分かっていない。

 

今回の攻撃を受け、米政府機関の高官らが19日夜、ホワイトハウスに召集されたという。

 

サウジアラビア主導の連合軍はイエメン内戦に介入し、反政府武装勢力「フーシ派」と対立している。フーシ派はイランが支援しているとされる。【620日 WSJ】

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上記淡水化プラントへの攻撃と同じものかどうか判然としませんが、“al arabiya net al qods al arabi net は、hothy(フーシ派)軍報道官が、同軍のミサイル部隊が(サウジアラビア)ジャザーンのal shaqiq 発電所を巡航ミサイルで攻撃し、ミサイルは目標に正確に命中したと声明したと報じています(攻撃の日時等は不明)。”【620日 中東の窓】という情報も。

 

発電所攻撃の情報の方は、これまでの「弾道ミサイル」ではなく、イラン提供と推察される「巡行ミサイル」が使用された点に注目し、情報の真偽については「本当でしょうか?」としながらも、仮に本当ならイランのフーシ派支援について“質的変化”が生じている可能性を懸念しています。

 

更に、イランの精鋭革命防衛隊がアメリカの無人偵察機を撃墜する事態に。

 

****イラン革命防衛隊「米の無人偵察機を撃墜」 緊張高まる***

イランの最高指導者直属の精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」は20日、同国南部のホルムズガン州のオマーン湾に近いイランの領空内で、米国の無人偵察機を撃墜したと明らかにした。政府系のファルス通信などが報じた。

 

ホルムズ海峡周辺ではタンカー攻撃事件が起きるなど、米国とイランの緊張が高まっており、偶発的な衝突が懸念されている。(後略)【620日 朝日】

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撃墜はアメリカも認めていますが、イランが「イランの領空を侵犯した」としているのに対し、アメリカは領空侵犯を否定し、国際空域を飛行していたと主張しています。

 

“イランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」は20日、米国のドローンが撃墜されたことについて、米国への「明らかなメッセージ」だとし、米国の侵略には力強く対応すると表明した。”【620日 ロイター】とも。

 

アメリカ・イラン両国とも戦争を始める考えはなく、相手に圧力をかけ、交渉を有利に持っていきたいとしているだけ、両国ともに相手に甚大な被害を与える軍事力を有しており、両国間に一定の相互抑止が効くだろう・・・・というのが、一般的な見方ですが、上記のような動きが頻発すれば、いつなんどき不測の事態に発展してもおかしくもない現状でもあります。

 

大規模な衝突となれば、レバノンのシーア派武装勢力ヒズボラやイエメンのフーシ派も加わって、紛争はサウジアラビア・イスラエルを巻き込む形で容易に拡大します。(あるいはイスラエルがイラン核施設を空爆するか)

そうした事態は、中東原油に頼る日本にとっては悪夢です。

 

安倍首相のイラン訪問が今のところは成果がなかったにしても、今後とも間に入ってアメリカ・イラン双方に自重を促す取り組みを続けることは日本にとって必要なことでしょう。 

 

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