孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

人口分布的に世界の中心となるアフリカ 未だ遠い平和と安定 西アフリカのマリ・ブルキナファソでは

2019-06-19 23:23:37 | アフリカ

(マリ中部にある、襲撃を受けたドゴン人の村ソバヌクーで掘られた墓穴(2019611日撮影)【613日 AFP】)

 

2050年には、サハラ以南アフリカの人口は現在の2倍に増加】

現在、アフリカの人口は約12億人ほど。

急速に増加する世界人口にあって、その増加の中心はアフリカです。

 

****世界人口、2050年には97億人に 国連予測****

国連(UN)の経済社会局(DESA)は17日、現在77億人の世界人口が、2050年には97億人に達するとの見通しを明らかにした。サハラ以南アフリカの人口は現在の2倍に増えると予想されている。

 

国連の報告書「世界人口予測(World Population Prospects)」最新版によると、世界人口はさらに2100年までに110億人に達するという。

 

報告書によると今後、少数の国では平均寿命の伸びにより人口の増加が見込まれる一方で、世界全体の人口増加率は出生率の低下により鈍化する。

 

2050年までに増える世界人口の半分以上は、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア、インドネシア、エジプト、米国の9か国に集中する見通し。

 

現在世界で最も人口の多い中国では、2019年から2050年の間に約3140万人減り、2.2%の人口減少が予測されている。

 

また、ベラルーシ、エストニア、ドイツ、ハンガリー、イタリア、日本、ロシア、セルビア、ウクライナでは死亡数が出生数を上回るが、人口減少は移民の流入によって相殺されると予想される。

 

1人の女性が生涯に産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率は、世界全体で1990年には3.2だったが、2019年には2.5に減少。2050年にはさらに2.2まで下がる見通しだという。

 

人口移動がなかった場合、人口維持に必要な合計特殊出生率は最低でも2.1だといわれる。【618日 AFP】

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人口増加は地域的に大きく偏っています。

 

“サブサハラ・アフリカの人口は2050年までに倍増(99%)する一方、その他の地域の予想人口増加率(2019-2050)は、オセアニア(オーストラリア・ニュージーランドを除く)56%、北アフリカ・西アジア(46%)、オーストラリア・ニュージーランド(28%)、中央・南アジア(25%)、ラテンアメリカ・カリブ諸国(18%)、東・東南アジア(3%)、欧州・北米(2%)と、地域によって異なる。”【618日 飯山みゆき氏 国際農研】

 

人口分布で見る限り、世界の中心はアフリカに向かっており、「アフリカの平和・安定」が「世界の平和・安定」に寄与する程度は現在以上に高まります。

 

【未だ遠い「アフリカの平和と安定」】

問題は、その「アフリカの平和・安定」が現在のところ最悪な状況で、近い将来好転する兆しも見つけにくいことです。

 

北アフリカ・アルジェリアでは、憲法評議会が2日、7月4日に予定していた大統領選の中止を発表しました。同国では4期20年の長期政権を敷いたブーテフリカ大統領が4月に辞任した後も、支配体制の刷新を求める反政府デモが毎週続いています。新たな選挙日程は未定で、政情不安が長期化しそうとの見方も。

 

スーダンでは、バシル前大統領失脚後の軍部と民政移管を求める勢力のせめぎあいが続いています。「双方は協議再開で合意した」という話ではありますが。

 

エジプトもテロ活動を抑えきれていない状態で、モルシ元大統領が17日裁判開廷中に急死したことで、ムスリム同胞団関連の反発も懸念されています。

 

南スーダンは最近あまり情報を目にしません。キール大統領派とマシャール副大統領派の間では、ひと頃ほどの衝突はないのでしょうが、状況が大きく改善したという訳でもなさそう。“国連の3機関は本日(614日)、南スーダンでは過去最多の696万人(人口の61%)が危機的な食糧不足に直面する恐れがあると警鐘を鳴らしました。”【ユニセフHP】

 

武装勢力が割拠するコンゴでは、エボラ出血熱対策もままならず感染拡大が止まりません。隣国ウガンダにも感染は拡大しています。

 

そのウガンダは、かつては盟友関係にもあった隣国ルワンダとの関係が急速に悪化し、国境を閉鎖し、スパイ行為や政治的理由に基づく暗殺、内政干渉を行っていると非難の応酬が繰り広げられています。

 

2013年から紛争が続く中央アフリカでは今年2月に、政府と14の武装勢力が権力分担などを規定した和平合意に達したと発表されています。ただ、5月にはフランス系スペイン人の修道女が頭部を切断されるといった事件も報じられていますので、まだ安定している訳でもなさそうです。

 

西アフリカの人口大国ナイジェリアでは相変わらずボコハラムのテロが止んでいません。“アフリカ・ナイジェリアの北東部で、少女2人と少年1人を使った自爆テロが立て続けに起こり、30人が死亡、39人が負傷した。”【618日 CNN】

 

南アフリカでは5月の総選挙で、ラマポーザ大統領を擁する与党アフリカ民族会議(ANC)が勝利を収めたものの、多くの課題に直面しており、マンデラの遺産を将来につなげることができるか今後の状況は不透明です。

 

明るい話としては、東アフリカ・エチオピアのアビー首相が、国境線を巡り紛争に発展した隣国エリトリアとの関係正常化に尽力していることでしょうか。

 

もちろん、上記のようなネガティブな話題だけではなく、アフリカ諸国では人口増加に伴う「人口ボーナス」によって、急速な経済成長も実現されてはいます。

 

ただ、これだけネガティブな状況が存在すると、将来に対しての楽観的な見方はなかなか困難です。

 

【西アフリカのマリでは民族間の“血で血を洗う抗争”】

そうした中にあって西アフリカのマリでは、イスラム過激派は仏軍によって掃討されたものの、その後も治安は安定せず民族対立による「殺し合い」が横行しています。

 

****マリ内閣総辞職、160人死亡の民族間衝突で政府対応に非難***

狩猟民族が牧畜民族の村を襲撃して160人を殺害した事件をめぐって政府批判が高まっていた西アフリカのマリで18日、内閣が総辞職した。

 

大統領府の発表によると、スメイル・ブベイ・マイガ首相と全閣僚の辞任を、イブラヒム・ブバカル・ケイタ大統領が承認した。

 

マリでは、情勢が不安定な中部モプティ州で民族間の衝突が激化しており、政府の対応に批判が集まっていた。

 

特に先月23日、狩猟民族のドゴン人がブルキナファソとの国境に近いオゴサグ村を襲い、土地利用をめぐって長年対立してきた牧畜民族フラニの村人160人を虐殺した事件では、マイガ政権への退陣圧力が高まっていた。

 

首都バマコでは今月5日、数万人規模のデモが行われ、襲撃事件の増加防止策が不十分だと政府を非難。17日には与野党の議員が共同で、マイガ政権は社会不安を抑え込めていないとして内閣不信任決議案を提出していた。

 

マリでは北部の広大な砂漠地帯を2012年に国際テロ組織「アルカイダ」系のイスラム過激派組織が掌握。20131月にフランス主導の軍事作戦が開始され、過激派の大半は掃討されたものの、今なお国土の広域が無法地帯と化しており、政府は治安の回復・安定化に苦慮している。 【419日 AFP】AFPBB News

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その後も、現代の出来事かと疑うような襲撃・殺戮“血で血を洗う抗争”が続いています。

 

****マリの村襲撃事件、当局が死者数を35人に訂正****

西アフリカのマリ中部で、武装集団が村を襲撃して当初95人が死亡したとみられていた事件で、当局は12日、最終的に確認された死者数は35人だったと発表した。

 

今回の発表によると、犠牲者のうち24人は子どもだったという。さらに「定期の巡回」により6人の身柄が拘束されていることも明らかになった。

 

ドゴン人の村ソバヌダまたはソバヌクーは9日夜、銃で武装した集団による襲撃を受けた。生存者らの証言によると、住民が殺されて家々が焼かれ、攻撃は7時間にも及んだという。

 

複数の少数民族の集落が隣接するこの地域では、2015年にイスラム過激派の集団が姿を現してから情勢が不安定となっており、今回の事件が報復の暴力行為を招くという懸念も生じている。(後略)【613日 AFP】

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地元当局者の話では、約300人が暮らす村に襲撃者らがやって来て「銃撃と略奪、焼き討ちを開始した」「ドゴン人の村1つが事実上消滅した」とも。【610日 AFPより】

 

“この地域では、イスラム過激派の説教師アマドゥ・クーファ師が率いる主に牧畜民族フラニ人のグループが、バンバラ人やドゴン人を標的とし始めたことで報復の連鎖が始まった。

 

フラニ人はもともと、牛の飼育および取引で生計を立ててきたが、バンバラ人とドゴン人は伝統的に農耕に携わってきたという。”【610日 AFP】

 

更に、襲撃は続きます。

 

****武装集団が村襲撃、38人死亡 マリ中部****

西アフリカのマリ中部で、武装集団がドゴン人の村二つを襲撃し、38人が死亡、多数が負傷した。政府が18日、明らかにした。死者数は暫定的なものとしている。

 

政府の声明によると、ブルキナファソとの国境に近いガンガファニ村とヨロ村が17日夜、「テロ攻撃」の標的とされたという。

 

この襲撃に関してこれまでに犯行声明を出した勢力はない。しかしマリでは今年、ドゴン人とフラニ人の間で血で血を洗う抗争が続いている。

 

フラニ人は主に牛の飼育や取引で生計を立てているのに対し、ドゴン人とバンバラ人は伝統的に定住し、農耕に携わってきた。

 

マリでは中部の民族対立だけでなく、イスラム過激派の活動も続いており、政府が鎮圧に苦慮している。 【619日 AFP】

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【ブルキナファソで相次ぐイスラム過激派のテロ活動】

一方、やはり西アフリカのブルキナファソではイスラム過激派の活動が火を噴いています。

 

****教会襲撃、6人死亡 武装勢力が乱射 ブルキナファソ****

AFP通信などによると、西アフリカブルキナファソの北部の村で28日、キリスト教会が武装勢力に襲われ、6人が死亡した。同国では、各地でイスラム過激派による襲撃が相次いでおり、今回の事件にも関与している可能性がある。

 

襲撃は28日午後1時ごろ、北部スム県の村で起きた。バイクに乗った武装勢力が、教会の牧師や礼拝に訪れた人々に向け、銃を乱射したという。

 

同国では、国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)などが根を張る。首都ワガドゥグでは昨年3月、フランス大使館や軍本部などが襲撃され、複数の死傷者が出た。2017年8月にも、首都のレストランが攻撃される事件があった。【430日 朝日】

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****仏軍、ブルキナファソで人質4人救出 兵士2人死亡****

フランス軍は、アフリカ西部ブルキナファソ北部で、何者かに拉致されていた仏人2人の救出作戦を実施し、この2人に加え、米国人1人、韓国人1人の計4人の人質の救出に成功した。ただその際、仏兵2人が死亡したという。仏大統領府が10日、発表した。(中略)

 

仏人観光客2人はベナンで拉致された後、国境を越えてブルキナファソへ連行されていた。ブルキナファソではここ数か月、イスラム過激派が攻撃を激化させている。

 

フランスは、貧困にあえぎ武力衝突が絶えないサヘル地域の北西部で「バルハン作戦」を展開しており、軍と特別部隊が数千人規模で駐留している。 【519日 AFP】AFPBB News

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****ブルキナファソで武装集団が教会襲撃、司祭と信者ら6人死亡****

アフリカ西部ブルキナファソの北部ダブロで12日、武装集団がカトリック教会を襲撃し、ミサを行っていた司祭1人と信者5人が死亡した。治安筋と地元当局が明らかにした。

 

ダブロ市長がAFPに語ったところによると、午前9時ごろ、ミサの最中だったカトリック教会に武装集団が突入し、礼拝者が逃げる中、発砲し始めた。実行犯らは礼拝者の一部を閉じ込めそのうちの5人と、ミサを執り行っていた司祭を殺害し、6人の死者が出たという。(後略)【513日 AFP】

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テロを繰り返すイスラム過激派はISやアルカイダとの関連も指摘されています。

 

****ISやアルカイダに忠誠 西アフリカで武装勢力が過激化****

アフリカ西部ブルキナファソで、武装勢力による襲撃や外国人を狙った拉致事件が相次いでいる。過激派組織「イスラム国」(IS)とのつながりが指摘される勢力もおり、治安の悪化が懸念されている。

 

AFP通信などによると、同国北部の二つのキリスト教会では先月28日と今月12日、武装した男たちが銃を乱射する事件が起き、少なくとも計12人が亡くなった。13日にも北部の街でキリスト教徒が襲われ、4人が死亡。政府は「テロリスト集団は我々を分断する目的で、宗教を標的にしている」との声明を出した。

 

また、隣国ベナンとの国境沿いにある国立公園では、今年に入ってフランス人観光客2人が武装勢力に拉致された。今月9〜10日に仏特殊部隊が救出作戦を実施。この2人のほか、以前から拉致されていたとみられる米国人と韓国人の女性も助け出されたが、作戦中に隊員2人が銃撃戦で犠牲になった。

 

いずれの事件も、武装勢力の目的や規模は分かっていないが、イスラム系の集団とみられる。イスラム教徒が多いブルキナファソではここ数年、国際テロ組織アルカイダやISに忠誠を誓う勢力が台頭しているからだ。AFP通信によると、2015年以降に約400人が殺された。

 

背景にあるのが、2011年にリビアのカダフィ政権が崩壊し、大量の武器が周辺国に流出したことだ。また、隣国マリでアルカイダやISに忠誠を誓う勢力がブルキナファソへ活動範囲を拡大しているとの見方も出ている。

 

昨年3月に同国の首都ワガドゥグにある軍本部とフランス大使館が襲撃され、兵士ら8人が死亡した事件では、マリを拠点にし、アルカイダ系とされる過激派「イスラムとムスリムの支援団(JNIM)」が犯行声明を出した。

 

ISも4月29日、最高指導者のアブバクル・バグダディ容疑者だとする動画を公開し、ブルキナファソやマリの勢力を称賛した。

 

マリのドゥラメ外相は14日、ベルギーで欧州諸国の外相らと会談した後、「我々は支援を必要としている」と国際社会の支援を求めた。【516日 朝日】

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こうした西アフリカを含むアフリカでの治安悪化は、欧州への難民流入圧力となりますので、アフリカの平和と安定が達成されない限り、欧州の安定もありえません。

 

中米からの移民・難民が流入するアメリカの場合も同様で、いくら壁を高くして自国を守ろうとしても・・・という話は、また別機会に。

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