孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ベネズエラ  破綻した経済 しかし、マドゥロ大統領は再選の見込み 命綱の石油生産は減少 

2018-05-14 22:42:46 | ラテンアメリカ

(お札で作ったバッグ【2月14日 BQ NEWS】「紙幣を持っていたって何も変えないから、みんな平気で捨てているよ。新聞やノートには使いみちがあるのに、お金が使えないんだよ。使えないけど、投げ捨てるよりはマシな使いかたがないかと思ってね」 バッグやサイフ、ハットに生まれかわったお札のファッションアイテムは、タバコや肉と物々交換出来るため、本来のお札よりも価値があるとか。)

それでもマドゥロ大統領再選の見込み
経済破綻している南米・ベネズエラでは、大統領選挙が今月20日に行われます。

****ベネズエラ大統領選 前倒しから一転延期 批判かわす狙いか****
独裁色を強めている南米ベネズエラのマドゥーロ政権は、ことし12月から来月(4月)に前倒しすると一方的に発表していた大統領選挙を5月に延期することを明らかにし、周辺国をはじめ国際社会からの批判をかわす狙いがあるとみられます。

ベネズエラでは、ことし12月に予定されていた大統領選挙について先月、マドゥーロ政権が来月22日に前倒しすると一方的に発表し、これに対して野党側が、公正な選挙が行えないとして選挙をボイコットすると表明したほか、南北アメリカ諸国でつくる米州機構も日程の変更や国際的な監視団の受け入れを勧告しました。

こうした中、ベネズエラの選挙管理当局は1日、大統領選挙を5月20日に延期し、国連の監視団を受け入れることを明らかにしました。

マドゥーロ大統領をめぐっては、独裁色を強めているとして内外の反発が高まっており、来月開かれる米州首脳会議への出席を開催国のペルーが拒否したばかりで、今回の決定には、周辺国をはじめ国際社会からの批判をかわす狙いがあるとみられます。【3月2日 NHK】
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マドゥロ大統領は、経済破綻の責任及び強権支配を理由に、国際的には批判の集中砲火を浴びていますし、国内的にも野党勢力からの強い批判・抗議はあります。

ただ、国内にはチャベス前大統領以来の現政権を支持する層も存在することも事実で、野党勢力の足並みがそろわないこともあって、今回大統領選挙も現職マドゥロ氏が再選されることになりそうです。

****経済破綻も、現職マドゥロ氏優勢=ベネズエラ大統領選まで1週間****
経済破綻に陥っている南米の産油国ベネズエラの大統領選挙(20日)が1週間後に迫った。4人が立候補しているが、国会多数派の野党連合「民主統一会議(MUD)」はボイコットを表明しており、独裁色を強める反米左派の現職マドゥロ氏の再選が濃厚だ。

マドゥロ氏は、国の苦境は原油を狙う米国などの策謀のせいだと主張。仮想通貨「ペトロ」を通じた外貨獲得や通貨切り下げなどで乗り切るとしており、「帝国主義者や裏切り者の寡頭政治家に教訓を与えるため、圧勝する」と自信を示す。
 
一方、対抗馬と目されるファルコン前ララ州知事も「20日に国民は変化の勝利を祝い、国際社会はわれわれの勝ちを認めるだろう」と強気。ただ、同氏はMUDの反対を押し切って立候補したため野党勢力の支持は得られておらず、苦戦している。
 
ベネズエラは世界最大の原油確認埋蔵量を誇るにもかかわらず、国際原油価格の低迷と失政で経済破綻。昨年のインフレ率は2600%を超え、食料や生活必需品の欠乏にあえぐ国民が雪崩を打って国外に逃れている。
 
マドゥロ政権下での過去の選挙は与党寄りの中央選管による組織的な不正が強く疑われ、中南米や欧米諸国は大統領選中止などを求めてきた。【5月12日 時事】
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インフレ率1万3779%に加速 飢えに苦しむ国民の体重が11キロも減少
“昨年のインフレ率は2600%を超え”とありますが、足元では大幅に加速しています。

****ベネズエラ、インフレ率1万3779%に加速 国会が公表****
南米ベネズエラの国会は7日、4月時点の物価上昇率(インフレ率、年率換算)が前年同月比1万3779%に達したことを明らかにした。ハイパーインフレがさらに加速した。ベネズエラのインフレ率は群を抜いて世界最高であると推定されていたが、今回の統計でそれが裏づけられた格好だ。
 
世界一の原油確認埋蔵量を誇るベネズエラだが、国債は部分的なデフォルト(債務不履行)に陥り、国内では食品や医薬品の不足が深刻化している。
 
外貨準備も落ち込むなか、ニコラス・マドゥロ政権は紙幣を刷り続け、通貨ボリバルはほとんど価値がなくなっている。
 
インフレ率は、野党が多数を占める国会の財務・経済開発委員会が報告書の中で明らかにした。
同委員会のラファエル・グズマン委員長は記者会見で「われわれは世界で最も高いハイパーインフレに見舞われた国にいる」と述べ、「通貨を安定させるために新たな財政・為替政策が必要だ」と訴えた。【5/8 AFP】
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インフレ率100%の場合で物価が2倍。インフレ率200%で3倍になる訳ですから、インフレ率1万3779%ということは1年前に比べて物価が138倍になった・・・・ということでしょう。このような混乱状態になると、まともな数字の把握も困難でしょう。

ひと頃の南アフリカ・ジンバブエの天文学的数字のハイパーインフレーションに比べればまだましですが、これではまともには経済は機能せず、状況は加速度的に悪化していきます。

なお、“物価高騰により供給不足となっているキャッシュ(紙幣)を十分に持たない顧客を呼び込もうと、野菜売りからタクシー運転手まで多くの人がモバイル決済アプリに登録している。”【2月18日 ロイター】と、デジタル時代のイノベーションも進行しているようです。

それはいいとしても、食事が満足にとれない国民が多く、飢えに苦しむ国民の体重が11キロも減少したとか。

****経済危機のベネズエラで国民がやせ細っていく****
<石油依存経済が破綻して物質不足が深刻化。飢えに苦しむ国民の体重が11キロも減少している>

経済破綻と食料不足にあえぐベネズエラで深刻な数字が明らかになった。17年の1年間で国民の体重が平均11キロ減少し、貧困率は90%にも上るというのだ。

国内の3大学が毎年行っている調査によると、体重は16年が平均8キロ減だった。貧困率は14年が48%、16年が82%で、事態は明らかに悪化している。

17年の調査は、20〜65歳の6168人を対象に実施された。そのうち60%の人が、過去3カ月の間に空腹で目が覚めたことがあると答えている。ベネズエラの人口3100万人のうち、約4人に1人が1日2食以下で過ごしている。
その食事も、調査の報告書によると、ビタミンとタンパク質が不足している。

食生活の偏りの一因は超ハイパーインフレだ。ブルームバーグの調べでは、1月中旬までの12週間で年率換算約45万%と、驚異的な水準に達している。

複雑な通貨制度と外貨不足のために輸入代金の支払いがままならず、ベネズエラ国内では食料品と日用品を中心に物資不足が続いている。小麦粉など基本的な食料品を求めて、店に長蛇の列ができるほどだ。

「収入はないも同然だ」と、調査チームに参加したアンドレス・ベーリョ・カトリック大学のマリア・ポンセは言う。「物価上昇と人々の給料との差は社会全体に広がっている。貧困ではないベネズエラ人は事実上、1人もいない」

今回の調査は、ベネズエラの福祉について最も包括的に分析したものの1つと言える。政府が貧困に関するデータを発表したのは15年上半期が最後で、その際の貧困率は33%だった。

数十万人が国外に流出
つらい空腹は、国民の生産性を大きく損なう。石油生産など主要な経済部門でも、食べ物を買う余裕のない従業員は体力が落ちて力仕事をこなせない。

ベネズエラ国営石油公社の労働組合の幹部によると、17年11月と12月に北西部スリア州の掘削基地で栄養不良の従業員12人が倒れ、病院で治療を受けた。別の組合には、北東部の都市プエルト・ラ・クルスで仕事中に空腹のあまり意識を失った複数の従業員が窮状を訴え出た。

99年にチャベス政権が発足して以来、ベネズエラは社会福祉の財源を石油産業に頼ってきた。しかし、国の石油政策は失敗し、原油価格が世界的に急落したため、ベネズエラは国民の命さえ脅かされる人道的危機の瀬戸際に立たされている。

13年にマドゥロ大統領が就任した後、ベネズエラは深刻な不況に陥っている。14年後半から食料は配給制になり、割り当てを管理するための指紋認証システムがスーパーに導入された。マドゥロは15年に、このシステムを全国2万店舗に拡大すると発表した。

マドゥロは5年前にトイレットペーパー不足が問題になった際に、「食べ過ぎ」のせいだと言ったこともある。当時の調査によると、ベネズエラの国民の9割以上が1日3、4食を取っていた。

多くのベネズエラ人が、食べ物と仕事を求めて祖国を後にしている。17年以降、50万人が国境を越えてコロンビアに入った。ガイアナやブラジルなど、近隣諸国に移り住む人も増え続けている。

ドイツに入国したシリア難民は60万人。ミャンマーでの激しい暴力行為を逃れて、バングラデシュに避難したイスラム系少数民族ロヒンギャは100万人。それに匹敵する危機が起きようとしているのかもしれない。【3月3日 Newsweek】
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それでも大統領が再選される見込み・・・というのが不思議なところですが、支持層にはそれなりに配給等がなされているということでしょうか?

マドゥロ政権も何もしていない訳でもなく、政府は2月、独自の仮想通貨として、確認埋蔵原油を裏付けとする「ペトロ」と、金が後ろ盾の「ペトロ・オーロ」を発行すると発表しています。

しかし、トランプ米大統領は3月、アメリカ国内での流通やアメリカ人による取引を禁止する大統領令を出しています。ベネズエラが仮想通貨を使って外貨を調達し、経済制裁を回避することを封じるのが狙い。【3月20日 時事より】

基本的には、市場を無視した経済政策を改めない限りは(つまりは、政権が代わらなければ)、状況脱出は無理でしょう。

差し押さえに走る債権者 石油生産減少で世界の原油価格高騰
このベネズエラの経済破綻は、世界経済にも影響します。

最近、トランプ大統領のイラン核合意破棄から、イランの石油輸出が減少することが見込まれ、原油価格が上昇していますが、実際のところは、イランの問題よりベネズエラの問題の方が原油価格に影響が大きいことが指摘されています。

****イランより深刻か、ベネズエラ発の石油危機****
原油生産に壊滅的な打撃を与えかねない2つのリスク

今週の原油関連のトップニュースは全てイラン絡みだった。だが南米ベネズエラで次々に持ち上がる厄介な事態はそれ以上に深刻かもしれない。

政権維持のために選挙日程が前倒しされるなど、物議を醸すベネズエラ大統領選の投票日まで2週間を切る中、同国の主な収入源である原油輸出がさらに急激に落ち込む可能性が出てきた。

S&Pグローバル・プラッツの推定では、同国の直近の原油生産量は日量141万バレルと、石油産業で大規模ストライキが発生した2002~03年を除き、少なくとも30年ぶりの低水準にある。1年前と比べても50万バレル以上少ない。現職のニコラス・マドゥロ大統領は今度の選挙で再選(任期6年)がほぼ確実視されている。
 
ベネズエラは2つのリスクに直面する。両方とも実現すれば、原油生産量の落ち込みは、イランへの経済制裁が再開された場合に同国で起きる減産の予想最大値を上回る可能性がある。

リスクの原因は、ベネズエラが国内で産出する重質原油にブレンドする軽質原油を輸入に頼っていることにある。国産の重質原油を運搬しやすく希釈するには、そうした軽質原油を米国から輸入する必要がある。

1つめの状況はすでに展開中だ。ベネズエラ沖のオランダ領キュラソー島およびボネール島には、ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)が保有する石油精製・貯蔵施設がある。

米 石油大手コノコ フィリップスは、ベネズエラ政府が2007年に同社の資産を接収した問題で国際仲裁機関に調停を申し立て、最近同社への補償を認める裁定が下ったため、PDVSA保有施設の実質的な差し押さえに動いている。

ベネズエラ政府はこれらの施設に原油を運び込まないように(コノコがそれも差し押さえるのを恐れて)指示している模様で、石油精製がストップする可能性がある。
 
米国がベネズエラへの希釈剤の輸出を停止すれば、2番目の状況が発生するだろう。この措置は、ベネズエラの残る原油生産量の半分以上を危険にさらすことになる。マイク・ペンス米副大統領はすでに同国の大統領選を「偽りの選挙」と非難している。
 
エネルギー問題のエコノミスト、フィリップ・バレジャー氏は、コノコの動きだけで、ベネズエラの原油輸出が最大で日量50万バレル減少するとの見方を示した。

この数字は、米国によるイラン制裁の再開で予想される影響の上限と一致する。さらに米国の禁輸措置が実施されれば、一段と大きな打撃となりかねない。原油市場の次のワイルドカード(波乱要因)は中東だと思ってはいけない。南米に要注意だ。【5月11日 WSJ】
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経済破綻を懸念する債権者が石油精製施設を差し押さえ、アメリカが希釈剤輸出を停止すれば、ベネズエラは石油輸出が出来なくなります。

アメリカはベネズエラから石油を輸入しており、国内ガソリン価格上昇という返り血を浴びる、そうした厳しい施策に踏み込むほどの本気度があるかどうかは不明です。

しかし、債権者の方は、上記記事の米石油大手コノコ フィリップスだけでなく、今後さらに加速しそうな気配です。
更に、“最大の債権者”中国がどうするのか?

****産油国ベネズエラが恐れる「死のスパイラル****
「死のスパイラル」というのは使い古された表現だが、現在のベネズエラの石油業界を表現するにはこの言葉がふさわしい。エネルギー消費国と投資家はこうした状況に注意を払うべきである。
 
ベネズエラ国営石油会社(PDVSA)の産油量はこれまで急減してきたが、投資家は同社が世界市場への原油供給を続け、同国に外貨をもたらし続けると想定していたが、そうした想定は崩れ始めている。
 
2007年にベネズエラ政府によって資産を接収された件に関連して20億ドルの調停金を受け取る裁定を受けた後、米 石油大手コノコ フィリップスはPDVSAのカリブ海にある施設の差し押さえに動いた。

ベネズエラの重質原油を海外で売りやすくするためには、軽質原油とブレンドするための貯蔵施設、精製施設が必要なため、この措置だけでも同国にとっては打撃となる。

エネルギー問題のエコノミスト、フィリップ・バレジャー氏は、この問題によってベネズエラが生産している日量140万バレルの原油のうち最大50万バレルが輸出できなくなるかもしれないとみている。これに加えて米国のイラン制裁措置が再開すれば、原油価格はこの数年間の最高値を上回る可能性もある。
 
コノコフィリップスのこうした措置に続いて他社も、タンカーや石油貨物船などPDVSAがベネズエラ国外に保有する資産の差し押さえにあわてて動いている。

例えばカナダの金鉱会社ルソロはPDVSAが保有する米製油所、CITGOホールディングを差し押さえようとしている。CITGOはベネズエラにとって米国市場にアクセスするために欠かせない施設であり、国境によって守られていない数少ない施設の1つでもある。
 
このような差し押さえの合法性には疑問の余地もあるが、事業運営にはすでに不透明感による影響が出ている。

PDVSA代表者のコメントは得られていないが、ロイターの報道によると、カリブ海の施設に向かっていた9隻の船が先週、ベネズエラとキューバの海域に進路を変更した。積み荷が差し押さえられるのを回避するためと思われる。
 
PDVSAには、コノコフィリップスよりずっと大きな債権者がいる。中国は同社に約500億ドルを貸し付けており、原油価格が現在の水準の半分ぐらいだった2016年に一部融資の返済猶予で合意している。

中国が万一、返済再開を要求してきたら、PDVSAは生産した原油の4分の1近くを中国に出荷することになり、原油輸出から得られる収入は大幅に減少するだろう。

中国からのさらなる圧力や5月20日の大統領選に関連して米国が行う恐れのある制裁措置がなかったとしても、ただでさえ不足しているベネズエラ政府の外貨収入は直近の困難でさらに減り、国内での不安がより深刻化する可能性が高まるだろう。
 
同国の産油量が2002-2003年のストライキを除き、数十年間での最低水準にあることが報道されると、世界の原油価格は急騰した。こうしたことが今後も繰り返されていく公算はますます大きくなっている。【5月14日 WSJ】
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いよいよ“崖っぷち”に向かって流されるベネズエラですが、そこに至るまでは、権力の暴力装置に守られ、一部支持層には利益ももたらす強権支配政権は揺るがない・・・ということのようです。
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