孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴでエボラ出血熱拡大 ナイジェリアのラッサ熱、南アのリステリア感染 日本の麻疹流行

2018-05-19 22:53:27 | 疾病・保健衛生

(コンゴ民主共和国でエボラ出血熱への対応にあたる人々 【5月9日 CNN】)

エボラ出血熱 コンゴで都市部に感染拡大
エボラ出血熱というと、2014年3月に西アフリカ・ギニアで集団発生し(最初の感染者は2013年12月)、その後リベリア、シエラレオネに拡大、WHOの完全終結宣言が出された2016年3月まで2年間にわたり、死者1万1300人以上を出す事態となった最悪の流行がまだ記憶に新しいところです。

致死率の高さ(50~90%とも)、犠牲者の多さ以外にも、感染地域が強制隔離され、なかに人々が取り残されるといった、パンデミック映画さながらの惨劇が印象に残っています。

エボラ出血熱はアフリカ大陸で10回ほど突発的に発生・流行しており、最近もコンゴ民主共和国における発症が話題になっています。

かつては、有効なワクチンや治療薬がなく恐れられたエボラ出血熱ですが、現在はまだ実験段階ながらも有効と思われるワクチンが存在し、WHOは感染地域でのワクチン投与を集中的に行っています。

****エボラ流行のコンゴ、WHOがワクチンや対応チームを送る****
世界保健機関(WHO)は15日までに、エボラ出血熱の流行が宣言されたコンゴ民主共和国(旧ザイール)に対し、流行の抑制に向けて4000回分のワクチンと緊急対応チームを送った。同国では39人の感染が疑われており、そのうち19人が死亡している。

WHOは、エボラが流行している地域での予防接種実施に向けて、同国の保健省や国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」と連携している。

感染者と接触した人や、その接触者と接触した人に予防接種が行われる予定。
WHOの広報担当によれば、4000回分のワクチンがすでに発送されたほか、ワクチンの第2便も送られる見通し。

今回のエボラの流行は、同国北西部のビコロ地区で起きている。4月5日以降、39件の感染が報告された。

WHO幹部によれば、エボラが流行しているのは隣国のコンゴ共和国や中央アフリカと非常に近い地域。また、百万都市であるムバンダカにも近いことから状況を深刻に受け止めているという。

WHOによれば、「rVSV−ZEBOV」と呼ばれるワクチンは実験段階のものだが、人体に安全でエボラウイルスに対する高い効果がみられるという。2016年の研究では、14年から15年にかけてエボラが流行したギニアでの治験で100%の効果がみられたという。【5月15日 CNN】
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しかし、上記記事でも危惧されていた都市部への感染拡大が起きているようで、今後の封じ込めが難しくなっています。

****エボラ熱、都市部に拡大 「流行が新たな段階に」 コンゴ****
アフリカ中部コンゴ民主共和国(旧ザイール)で流行宣言が出されたエボラ出血熱に関連して、世界保健機関(WHO)は17日、都市部で新たな感染者が確認されたことを明らかにした。

同国衛生省は、都市部に感染が拡大したことを受けて16日、流行が新たな段階に入ったとの認識を示した。

WHOによると、エボラ熱の新たな症例は、同国北西部、赤道州の州都ムバンダカ(人口約120万人)で確認された。地方から都市部へと感染が拡大したことで、感染拡大のペースが速まり、対応が難しくなる恐れもある。

衛生省の17日の発表によると、今回の流行ではこれまでに45人の症例が報告され、うち25人が死亡した。14人については検査で感染が確認された。

これまでの感染や死亡の報告は、ムバンダカから150キロほど離れたビコロ地区に限られており、当局が患者と接触した疑いのある全員にワクチンを接種する対策を試みることができていた。しかし人口密集地で患者が確認されたことで、そうした対策は難しくなる。

WHOは調査のために専門家約30人を同市に派遣するとともに、同国衛生省や医療支援団体の国境なき医師団と協力して、治療や啓発などの対応に当たる。

ムバンダカとビコロでは、感染者と接触した可能性のある514人が、当局による経過観察の対象となっている。病院には隔離区画が設置され、エボラ治療施設も増設されている。

ムバンダカで感染の疑いのある患者2人が隔離されたのは14日。流行発生地域が隣国コンゴや中央アフリカ共和国に近いことも懸念されている。【5月18日 CNN】
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ただ、感染が起きているコンゴは、反政府武装組織が跋扈していることでたびたび取り上げているように、政府の統治が全土に及んでいるとはとても言えない国だけに(隣接する中央アフリカも同様です)、今後の展開が心配されます。

コンゴ民主共和国内でエボラ出血熱が確認されたのは今回で9回目で、今回ビコロで見つかったエボラウイルスは西アフリカで流行し1万1300人を超える死者を出した「ザイール型」だとのことです。【5月13日 AFPより】

WHOは「最悪の事態を含めてあらゆる可能性に備えている」としながらも、現時点では国際的な対応が必要とされる「公衆衛生上の緊急事態」には当たらないとしています。

ナイジェリアのラッサ熱 南アフリカではリステリア菌感染
エボラ出血熱ほど関心を集めることはありませんが、アフリカでは様々な感染症で多くの犠牲者が出ています。

****ラッサ熱による死者142人に ナイジェリア****
ナイジェリアで、今年に入ってからのラッサ熱による死者数が142人に上った。ナイジェリア疾病対策センターが5日、発表した。死者数はここ1か月では32人増加した。
 
NCDCは「2018年の(ラッサ熱の)流行が始まってから、142人が死亡した」と発表。感染はナイジェリア36州のうち20州で報告されているという。またNCDCは、「8州では流行のピークは脱したが、12州では依然、流行が続いている 」とし、最も被害が大きいのは南部のエド州、オンド州、エボニー州だと述べている。
 
世界保健機関は先月、ラッサ熱の感染が過去最高を記録したと述べ、感染拡大の抑制と感染者の治療を支援していくと言明していた。
 
ラッサ熱は、感染すると発熱や嘔吐、最悪の場合には出血を伴う、エボラ出血熱やマールブルグ病と同じウイルス性出血熱。【4月5日 AFP】
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厚労省【FORTH】によれば、“ラッサ熱は、西アフリカの風土病で、毎年、季節に伴う流行が12月から6月に発生します。2018年4月20日にWHOから公表された情報によりますと、ナイジェリアでの流行はかつてない規模となり、疑い患者の数は1,800人を超えました。”【4月23日 FORTH】とのこと。

その後どうなっているのかは・・・知りません。アフリカの風土病で何百人死のうが、何千人感染しようが、世界はあまり関心がないようです。

ラッサ熱はマストミスというネズミの一種が自然宿主だとか。

南アフリカでは、リステリア菌の感染が史上最悪規模になっているとか。

****南アフリカのリステリア感染、死者200人以上に 史上最悪の被害****
南アフリカで、食品を媒介して広がるリステリア菌の感染による死者数が200人以上に上っていることが、17日に発表された最新の公式統計で明らかになった。今回の被害は史上最悪の規模だという。

同国の国立感染症研究所の報告によると、2017年1月からこれまでに確認されている、リステリア菌感染による死者数は少なくとも204人。2か月前に報告された死者数は183人だった。

各週の症例数は減少しているものの、これまでに計1033人がリステリア症にかかったという。リステリア菌は土壌や河川、植物、動物のふんなどに分布する細菌で、肉などの生鮮食品を汚染する。

保健当局は3月、感染源が首都プレトリアの北東300キロにある食品加工メーカー「エンタープライズフード」であると突き止め、汚染された製品の全国的な回収を即座に命じたと発表した。

南アフリカ政府は17日、「感染源を特定し、関連のある製品を回収して以来、リステリアの症例数は大幅に減少した」と発表していた。

国連によれば、今回の南アフリカでのリステリア症の流行は、世界的にも史上最悪の規模だと考えられるという。【5月18日 AFP】
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リステリア感染症の推定患者数は年間200人(平成23年)、食品由来によるリステリア症は、年間住民100万人あたり0.1~10人とまれ【厚労省 FORTH】ということで、今回の死者200人超という発生は異常事態ですが、感染源がはっきりしているので、対応は可能でしょう。

毎年多大な死者を出し続けるマラリア
熱帯地域の感染症の代表はマラリア。

“世界保健機関(WHO)によると2015年の新症例は2億1200万件以上、死亡者は42万9千人に上り、その9割以上がアフリカで発生している。”【2017年8月18日 産経WEST】と桁違いです。

これだけの規模の疾病への有効・実用的なワクチンが未だ開発できていないというのは、先進国製薬会社としては、購買能力のないアフリカなどの疾病の薬を開発しても儲けにならない・・・という市場原理でしょう。
個人的には、日本で盛んにおこなわれているガン研究より緊急性が高いと思いますが。

まあ、何もやっていない訳でもないようです。

****マラリア制圧に大きな一歩 渡航者向けワクチン来年にも治験開始、72%の予防効果、阪大など世界初の実用化へ****
大阪大微生物病研究所と製薬ベンチャー「ノーベルファーマ」が、世界初となるマラリア流行地域への渡航者用ワクチンの実用化に向け、来年にもドイツで治験(臨床試験)を始めることが(2017年8月)17日、分かった。ビジネスや人道支援で流行地域に向かう渡航者らの保護に役立てるため、2025(平成37)年にも製品化を目指す。
 
感染症のマラリアはアフリカ、東南アジアなど広い地域で流行し、年間約2億人が感染して40万人以上が死亡。予防薬や治療薬もあるが、副作用があったり耐性ができたりしている。(中略)
 
亜熱帯、熱帯地域に流行するマラリアは、世界的な健康課題となっている感染症だ。媒介する蚊によって罹患(りかん)しやすく、命を落とす危険もある疾患。ただ、その予防ワクチンは現在、実用化されたものがなく、開発が急がれている。(中略)

新薬開発にも助成
一方、日本では製薬会社や厚生労働省などでつくる官民ファンド「グローバルヘルス技術振興基金(GHITファンド)」が、大阪大学とノーベルファーマが開発を進める流行地域用の予防ワクチンをはじめ、エーザイ、武田薬品工業といった国内企業が取り組む抗マラリア薬開発にも助成を行ってきた。
 
GHITの広報担当者は「マラリア制圧に向けた種が日本の企業や研究機関にはある。新薬の開発が進めば、世界に大きなインパクトが与えられる」とする。
 
また、流行地域であるアフリカには近年、ビジネスや人道援助、軍隊派遣などを目的にした渡航者が増加。さらに新たな労働力として中国やインドからの出稼ぎ労働者も急増しているとの指摘もあり、非流行地域からの渡航者に向けた予防ワクチンの開発が急がれている。【2017年8月18日 産経WEST】
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麻疹 ワクチンへの不信感が生む感染犠牲者
日本国内で最近問題になったのは“はしか”(麻疹)の流行。

麻疹は有効なワクチンがあるのですが、日本の場合、その副作用が過度に取りざたされる傾向もあって、ワクチン接種が十分に行われていないことが背景にあります。

“ワクチン接種が感染症対策に効果的と言われながら、日本はワクチン接種の「後進国」とも言われてきた。厚生労働省や国立感染症研究所によると、2010年度以降、第1期(1歳児)では95%以上の高い接種率を保っているが、それでも根づよくはびこるのが、「(ワクチン接種は)百害あって一利なし」「なぜこんな副反応が出るの」「知られざる“ワクチン”の罪」といったネガティブな話だ。”【2016年10月14日 漆原次郎氏 WEDGE Infinity】

アメリカでは麻疹の予防接種はほぼ義務化されており、余程の理由がない限り接種してない子は学校への入学が許可されないとのことで、感染者数も全米で年間100人程度。その多くは日本などからの“輸入”感染。

もっとも、麻疹ワクチンへの不安から接種が不十分なため、結果的に犠牲者が発生するというパターンは日本だけでもないようです。

****ワクチンに対する親の不信感で子ども多数が死亡、ルーマニア****
ルーマニアでは依然としてはしかが若者の命を奪っており、ここ2年弱で40人近い子どもたちが死亡している。これについて多くの人々が、はしかの予防接種は危険だという噂に親たちが振り回されたことに起因していると非難している。
 
欧州連合で2番目に貧しい同国では、2016年後半以降約1万2000人がはしかにかかり、うち46人が死亡している。
 
死亡者のうち39人は、予防接種を受けていない3歳未満の子どもだった。欧州ではしかの流行が続く中、ルーマニアは最も感染者が多い国の一つとなっている。
 
同国南部のプラホバ県公衆衛生当局のシルバナ・ダン医師は、「人々は、インターネットであらゆる種類の話を目にしているので、不信感を抱いています」と話し、予防接種が自閉症を引き起こすという根強い噂を引き合いに出した。(中略)
 
はしかは非常に感染力の強いウイルス性疾患で、とりわけ子どもの患者が多いが、これまで大幅に制御されてきた。世界保健機関によると、はしかによる死者は、2000年の55万100人から2016年のわずか9万人未満へと激減したという。
 
その一方で、この大きな成功によって人々の警戒感は弱まり、予防接種は本当に必要なのかという疑問の声が上がるようになってしまった。
 
医療従事者らは、はしかは根絶可能な危険な疾患だというメッセージを国全体とりわけ地方都市に広めるため、「最前線で」あらゆる手段を講じていると地方当局者は話す。だがそれは、一筋縄ではいかない。(中略)
 
■とりわけ感染者が多いロマ人
プラホバの北東約250キロメートルに位置するバレア・セアカでも今年2月、生後10か月の赤ちゃんがはしかで死亡した。
 
イオアン・プラバト市長はAFPに対し、「赤ちゃんの両親は、予防接種は死亡のリスクがあるというテレビ報道を見た後、自分たちの子どもに予防接種を受けさせることを書面で拒否した」と語った。
 
ルーマニア国立感染症監視・制御センターによると、はしか患者の多くは、社会的立場の低い貧しいコミュニティーで確認されており、その大部分を占めるロマ人はかかりつけ医がいないケースが多く、たとえいたとしても緊急の場合にしか助けを求めないと述べた。
 
WHOは、はしかの効果的な抑制のために予防接種の接種率を95%にすることを推奨している。しかし当局が発表した最新データによると、ルーマニアにおける2016年のはしかワクチン接種率は、1回目が87%で、2回目はわずか75%だった。
 
同国ではワクチンの供給が定期的に行われておらず、数量も不十分であることから、責任の一端は当局にあるという声も一部から出ている。
 
こうした声に急き立てられる形で、同国政府は、子ども用ワクチン10種を義務付けることで接種率向上を誓ったが、昨年提出された法案をめぐる議論はほとんど進展していない。
 
議会の衛生委員会で議長を務める、医師で社会民主党議員のフロリン・ブイク氏は、「われわれは多数の提案を受け取っており、現在、それらを分析しているところだ」と語った。
 
同氏によると、その大半は、ワクチン反対派の団体から提出されたもので、これらの団体は活動を活発化させているという。
 
これに対し、医療専門家らは激しい怒りをあらわにしている。
ルーマニアの微生物学会会長のアレクサンドル・ラフィラ医師は、「われわれは、(ワクチン接種を重視する)科学的な研究結果を擁護する必要性に追われているが、科学的根拠のない情報がなんの証拠もなしに真実のように受け取られている」と語っている。【5月4日 AFP】
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様々な情報が氾濫する社会における“フェイクニュース”の弊害の一例でしょう。
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