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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国主導のアジアインフラ投資銀行への“参加ドミノ” 日米の意向にかかわらず「世界は止まらない」 

2015-03-29 22:39:39 | 中国

(AIIBをてこにして中国が目指す「一帯一路」 中国の思惑、実効性、日本への影響等々は別にして、壮大な戦略です。地図から日本がはみ出していることをどのように考えるべきか・・・ 【3月12日 Nikkei Asian Review】)

参加表明、すでに41か国
中国が設立を主導する国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に関しては、これまで日米とともに国際金融秩序を支えてきたイギリスが参加表明したのを受けて、3月16日ブログ「中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への相次ぐ参加表明」http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150316で取り上げました。

すでに前回ブログの時点で予想されたことではありますが、その後、3月31日の「創設メンバー」になるための申請期限を控えて、まさに堰を切ったような参加表明ラッシュが起きています。その状況は“参加ドミノ”とも評されています。

****アジア投資銀行、参加ドミノ ブラジル・ロシアに豪州も****
中国が提唱するアジアインフラ投資銀行(AIIB)へ参加する動きが28日、有力新興国に広がった。ブラジルとロシアが相次ぎ参加を表明、オーストラリアも続く見通しとなった。アジアの成長力の魅力や米国優位の国際金融秩序への反感も追い風に、中国の構想に加わる国々が増えている。(後略)【3月28日 朝日】
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ロシアの事情については、“ロシアは、中国が旧ソ連の中央アジア諸国で経済的影響力を強めていることを警戒し、1月にカザフスタンなどと「ユーラシア経済連合」を発足させたばかり。「連合」の投資機関と競合するAIIBにも慎重な立場だった。
しかし、中央アジア諸国が相次いでAIIBへの参加を表明し、ロシアの経済力低下も鮮明になる中で、新たな枠組みとの連携が得策と判断したもようだ。”【3月28日 産経】とも。

すでに、ドイツ、フランス、イタリア、そしてアメリカの強い制止を振り切って韓国も参加を決めています。
トルコ、台湾、香港なども。

AIIBの資金を利用して今後行われる建設、通信、交通などのインフラ事業に自国企業が関与していくうえで、AIIB参加は避けて通れない、また、世界第2の経済大国である中国との結びつきを強めたいという思いが各国にはあります。

29日時点で、日米を除く主要国、新興国、アジア諸国の相当部分の国、合計41か国が参加を表明しています。

****アジアインフラ投資銀 参加表明41か国に****
中国が設立を提唱するアジアインフラ投資銀行を巡り、先進国やアジア域外の国の間で参加の動きが広がっていて、参加の意向を表明した国の数は合わせて41か国となりました。

アジアインフラ投資銀行は、アジアの発展途上国のインフラ整備を金融面から支援するとして中国が設立を提唱しているもので、去年10月に設立に向けた覚書を交わしたときは、東南アジアなどの21か国が参加を表明していました。

その後、参加の動きが広がり、今月に入ってからはイギリスをはじめ、ヨーロッパの先進各国が相次いで参加の意向を表明したほか、先週、韓国やロシア、ブラジルなどが、さらに29日はオーストラリアが、新たに参加の意向を表明しました。

これにより、銀行への参加の意向を正式に表明した国の数は、合わせて41か国となりました。

一方、日本とアメリカは、銀行の運営に不透明な点が残るなどとして、依然、参加に慎重な姿勢を崩していません。

中国政府は、31日までにアジアインフラ投資銀行への参加を表明した国については、創設メンバーとして銀行の枠組み作りの交渉に加われるとしていて、習近平国家主席も28日の演説で、「銀行は開放的なものだ」として各国に参加を呼びかけています。

各国には、世界第2の経済大国である中国との結びつきを強めたいという思惑もあり、節目の31日を間近に控え、参加に向けた動きがどこまで広がるかが焦点です。【3月29日 NHK】
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AIIBの問題点として、ビジョン・理念、ガバナンス、融資政策・条件、ドナー間の協調の4点が挙げられることは前回ブログで取り上げました。

こうした“銀行の運営に不透明な点が残る”ことを理由に日米は参加に慎重姿勢を崩していませんが、要はライバル中国主導の枠組みを認めることができないということでしょう。

関与できないからと言って、世界は止まらない。気に入らないなら自分を責めるしかない。】
今の流れを決定づけたイギリスですが、下記記事はそうしたイギリスの立場・考えを示しています。

****中国主導のインフラ銀行を拒絶する愚****
英国は中国版世界銀行の一部になるとも指摘される金融機関の創設メンバーになることを選び、米国を苛立たせた。しかし、だからと言って、英国が不適切な決断を下したことにはならない。確かにリスクがないわけではないが、これはむしろ賢明な決断だ。(中略)

AIIBは貴重な貸し手になる可能性を秘めている。アジアの発展途上国は、このようなインフラ投資を切に必要としている。リスクがあって期間も長いプロジェクトとなれば、そこに投じられる民間の資金は存在しないか金利が高いかのどちらかである場合が多い。

また、世界銀行とアジア開発銀行の資源は、途上国のそうしたニーズに比べればかなり不足している。

AIIBの創設は朗報
従って、中国が3兆8000億ドルに上る外貨準備高のごく一部をAIIBに投じたいと思っていることは良いニュースだ。

しかもその投資を、中国がどれほど強い発言力を持つとしても、多くの参加国の1つになる多国間機関で行いたいと言っていることは、なお良いニュースである。

AIIBはグローバルな運営スタッフを抱えることになり、その結果、中国が資金を全額拠出する場合よりも政治色の薄い金融機関になるだろう。

こうした理由から、AIIBには米国も参加すべきだ。ホワイトハウスはこれに対し、参加したいのはやまやまだが、現在の連邦議会から承認を得られる見込みはないという答えを返してくるかもしれない。確かに、そうかもしれない。しかし、それは、他国の参加に反対する根拠にはならない。

それでも、不可解なものだとはいえ、米国には主張がある。西側諸国は外側にいることでもっと大きな影響力を行使できるという。米国のある政府高官は、「中国が拒否権を保有しないことに確信が持てない段階で参加する」よりは外側にいた方がいいと述べている。

しかし、外部の資金を必要としない金融機関に外部の者が影響力を及ぼすことはない。影響力を行使したいなら、内側に入り込むしかない。確かに、参加の条件に欧州勢が事前に同意していればもっと良かっただろうが、今さらそれを言っても始まらない。

米国のジャック・ルー財務長官は、AIIBは組織の統治や融資に関する「最も厳しい国際標準」に従わないのではないかという米国の懸念を表明している。

かつて世界銀行のスタッフだった筆者としては、苦笑せざるを得ない。世銀が関与したぞっとする事例は少なくないが、例えばザイールのモブツ・セセ・セコへの資金提供で世銀がどんな役割を果たしたか、一度調べてみることをルー長官にはお勧めしたい。

確かに、中国の主導する銀行が清廉潔白な金融機関であればそれに越したことはない。しかし、この世界はもう汚れてしまっている。少なくとも、多くの国々が参加する方が、そうでない場合よりもましだ。

米国は、既存の機関との競争が始まることに確かな根拠を掲げて反対することもできない。確かに、貸し付け基準の切り下げ競争になるリスクはある。しかし、面倒な上に不必要な手続きが一掃される可能性もある。

米国の真の懸念に対する4つの答え
世界経済に対する米国の影響力を弱める機関を中国が立ち上げるのではないかという懸念が、米国の本音だ。以下では、この懸念に4つの答えを提示しよう。

第1に、米国、欧州諸国、そして日本は、グローバルな金融機関に対する一定の影響力を大事にしているが、その影響力と、世界におけるこれらの国々の地位とのギャップは次第に大きくなってきている。

さらに、これらの国は国際機関の運営において、やるべきことをきちんとやってこなかった。特に、リーダーを指名する権利にこだわってきたが、そうしたリーダーが常に素晴らしい実績を上げてきたとはとても言えない。

第2に、国際通貨基金(IMF)で一部の国々が過大な影響力を持っている状態を緩和するために出資割当の仕組みを改革することについて、20カ国・地域(G20)が合意してから5年になる。世界はまだ、米国連邦議会がこの改革を批准するのを待っている。これは責任の放棄である。

第3に、途上国に長期資金が大量に流入すれば、世界経済は恩恵を享受するだろう。また、資本流入の「急停止」に見舞われた国々にIMFよりも大きな保険を提供する機関ができることも、世界経済の利益になるだろう。(中略)

最後に、米国は台頭する超大国たる中国への「絶え間ない配慮」について英国を批判している。だが、配慮に代わるものは対立だ。中国の経済発展は有益であり、不可避だ。そのため、必要なのは賢明な配慮だ。

中国が中国自身と世界にとって理にかなうことを提案する場合、傍からケチをつけるよりも関与する方が賢明だ。昔の米国の政策立案者はある時、中国に「責任あるステークホルダー(利害関係者)」になるよう求めた。中国はAIIBの創設で、まさにそれをやっている。

英国の決断の効用
(中略)
第2次世界大戦後の数年間、ふと冷静さを取り戻した時に、米国は現代世界の制度機構を築いた。だが、世界は先へ進んだ。

世界は新しい機関を必要としている。新たな大国の台頭に適応しなければならない。ただ単に、米国がもう関与できないからと言って、世界は止まらない。

もし米国がその結果を気に入らないのだとすれば、米国は自分を責めるしかない。【3月26日 Financial Times 】
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最後のアメリカへのメッセージはかなり辛辣です。
アメリカがもう関与できないからと言って、世界は止まらない・・・・

****孤立する米国、中国主導のAIIBで変わる世界構図****
・・・・いずれにせよ、AIIBをめぐる一連の動きによって、世界の構図には変化が生じている。

中国は、自国が主導するプロジェクトに多数の参加国を集めることで「成熟の最終段階」に入ったことを証明し、国際社会で「建設的なリーダーシップ」を発揮できることを示したと、プラサド氏(元IMF幹部 中国担当)は説明。「中国が世界に及ぼす影響力の拡大に、米国が対抗するのは一層、困難になる」との見方を示した。【3月27日 AFP】
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アジアの一組織は国際的影響力を競う場に格上げされ、しかもアメリカはその戦いに敗れつつある
少なくとも、アメリカが抑え込もうとしたAIIBに日本以外の各国がこぞって参加を表明する今の事態は、アメリカ外交の非常にわかりやすい“失策”だったと言えます。

****中国主導のAIIB構想とアメリカの手痛い失策****
アジア投資銀行加盟に踏み切る同盟国が続出、孤立するアメリカに残された選択肢とは

・・・・本来なら、(各国のAIIBへの参加表明という)これらのニュースはさほど注目度の高い話題ではない。だがアメリカがAIIBの設立に猛反発してきたせいで、AIIB構想への各国の対応は今や世界的な大ニュースだ。

同盟国に不参加を呼び掛けてきたアメリカは、イギリスの加盟表明を中国への融和政策だと強く非難した。だが、イギリス批判はアメリカの無力さをかえって際立たせるだけだ。

皮肉なことに、アメリカが警戒心をあらわにしたせいで、AIIBは米中の対立を象徴する存在となってしまった。

アメリカは、AIIBが米主導の世界銀行やアジア開発銀行の存在意義を脅かす事態を恐れていた。だが同盟国に不参加を呼び掛けることで、アジアの一組織は国際的影響力を競う場に格上げされてしまった。

しかもアメリカはその戦いに敗れつつある。

AIIBを無条件で受け入れるべきだったという意味ではない。(中略)それでも、AIIBが完全に中国の支配下に置かれる事態を回避するには、アジアにおけるアメリカの同盟国をAIIBに参加させるのが最善だろう。そのほうが、中国が権限を独占する場合よりもずっと厳格な統治体制を整備できるからだ。

世界銀行とIMF(国際通貨基金)の変革が進まないことへの各国の不満を、アメリカが過小評価していた問題もある。

「IMFの穏やかで合理的な改革案をアメリカが実行しないことに途上国は不満を募らせていた。彼らが他の機関に目を向けたのは偶然ではない」と、ルー米財務長官は言う。

現時点ではもはや米政府に好ましい選択肢は残されていない。

加盟を拒み続ければ、アジア諸国が前向きに評価している中国主導の試みへの参加を断固拒否する頑固者という印象が強まる。一方、今になってAIIBに参加しても、友好国の協力を得られなかったせいでやむなく方針転換したことは明白だ。

米政府にとって最良の道は、AIIB加盟を見送る一方、同盟国に不参加の圧力をかけるのをやめることかもしれない。米外交問題評議会のエリザベス・エコノミーが言うように「成功するにせよ失敗するにせよ、AIIBに任せておく」のだ。

過去を変えられない以上、アメリカは今回の失策を将来の教訓にするしかない。中国は海路と陸路で現代版シルクロード経済圏を構築する「一帯一路」構想を進めており、アメリカは近い将来、対応を迫られる。

アメリカが中国の影響力拡大を懸念するのは当然だが、異を唱える際には同盟国に圧力をかけるよりもましな方法を模索すべきだ。

さらに米政府は、中国主導の構想に自ら加わることも本気で検討すべきだろう。最も重要なのは、「一帯一路」構想を米中双方のメリットになる形に落とし込むことなのだから。【3月31日号 Newsweek日本版】
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当面、アメリカは、中国主導のAIIBとアメリカ主導の世界銀行やアジア開発銀行(ADB)との共同事業という形で関与して方針を示しています。

****オバマ米政権が中国主導投資銀との共同事業を提案****
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は22日、中国主導で創設されるアジアインフラ投資銀行(AIIB)をめぐり、オバマ米政権が米国主導の世界銀行やアジア開発銀行(ADB)との共同出資事業を提案したと報じた。

オバマ政権は、AIIBの融資に際しての環境や労働条件に関する基準が既存の国際金融機関に比べて低くなる可能性などに懸念を表明してきた。シーツ財務次官(国際問題担当)は同紙に対して、「世銀やADBとの共同出資事業は、歴史的に有効性が証明された高い基準を確保することに役立つ」と話した。(中略)

オバマ政権は共同事業によってAIIB外部から影響力を及ぼす方法を模索しているとみられる。【3月23日 産経】
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中国は余裕の対応です。

****習国家主席「既存の国際金融を補完****
中国が提唱するアジアインフラ投資銀行について、習近平国家主席は「既存の国際金融を補完するものだ」と述べて、中国は新たな銀行でアメリカなどが主導する既存の国際金融機関に対抗しようとしているのではないかという警戒感を払拭(ふっしょく)するねらいがあるものとみられます。(後略)【3月29日 NHK】
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“習主席は「中国が強大になれば覇権を求めて脅威になるという人がいるが、中国の古くからの精神をみればそんなことを言う必要は全くない。万里の長城は自分自身の安全を守るためのもので、長城を越えてほかの国のものを奪おうと考えたことはない」と述べ、中国を脅威に感じる必要はないと強調しました。”【同上】とのことですが、まあ、そこは異論のあるところでしょう。

中国への対抗意識にいたずらにこだわらず・・・
安倍首相は27日、参議院予算委員会の集中審議でAIIBについて、参加には慎重な検討が必要だとして、公正な統治の確立などを明確に説明するよう、引き続き中国側に働きかけていく考えを示しています。

ただ、世界は動いています。日米が気にいる、いらないにかかわらず。日本も新しい世界に適応する必要があります。

中国が資金をアジアに流してくれるなら基本的には歓迎すべきことでしょう。問題点については、外で文句を言うより、中で主張した方が実効があります。

アジアのインフラ建設に日本が関与しないというのはあってはならないことです。
中国への対抗意識にいたずらにこだわらず、AIIBに参加してアジアのために日本が果たせる役割を考えるべきでしょう。

今更参加するのはみっともない・・・と言われるかもしれませんが、メンツや対抗意識にとらわれた姿勢の方がはるかに見苦しく情けないものがあります。
コメント (1)
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