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孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

インドの性犯罪 「必要なのは固定観念の変革、法律の厳格化、そして迅速な司法制度だ」

2015-03-22 22:41:58 | 南アジア(インド)

(相次ぐ女性への性的暴行事件に抗議する人々 【http://www.helloworldmedia.tv/news/documentary-on-2012-delhi-gang-rape-banned-in-india/】)

依然として憂うべき状況
インドでは、2012年12月16日夜にニューデリーのバス車内で起きた女子大生レイプ事件をきっかけにして、頻発する性犯罪に対する抗議が全国的に広がっています。

インド政府は相次ぐレイプ事件を受けて、2013年に性犯罪を厳罰化したが、女性を狙った性犯罪は後を絶たず、外国人観光客が被害に遭うケースも多発しています。

今年1月には、インドを旅行中の日本人女性を監禁して現金を奪い、強姦したなどとして、男5人が逮捕されました。また2月にも、日本人女性が地元の観光ガイドに強姦されたとジャイプールの警察に訴え出ています。

首都ニューデリーにおける2014年のレイプ件数は前年比で3割も増加していますが、問題が表面化していることで名乗り出る女性が増えた結果だと当局は認識しています。
多分それは正しいとは思いますが、依然として性犯罪が多発していることも事実です。

****インド首都のレイプ件数、2014年は3割強の増加****
インドの首都ニューデリーの警察は2日、2014年に同市で起きたレイプ被害の届け出件数が前年から30%以上も増加したことを明らかにした。ニューデリーにおける女性への暴力が、依然として憂うべき状況にあることが浮き彫りになった。

デリー警察のビム・サイン・バッシ本部長は報道陣に対し、2014年年始から12月15日までに報告されたレイプの件数は2069件で、前年の1571件から31.6%増加したと語った。

ニューデリーでは2年前、バスに乗り込んだ女子医大生が集団レイプされて死亡。これを機にインド全土に抗議行動が広がった。これを受け、ニューデリー市は「レイプの首都」との汚名を返上すべく、警備の強化や法制度改革に取り組んできた。

それでもレイプ件数が増加したことについてバッシ本部長は、ニューデリーが女性にとって、より危険な街となったのではなく、レイプ被害にあって名乗り出る女性が増えた結果だとの認識を示した。【1月3日 AFP】
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レイプの危険にさらされている低カースト女性 女性被害に動かない警察
インドの性犯罪の背景には、カースト制や女性蔑視の風潮があると指摘されています。

****インド社会が抱える闇 カースト制度、男尊女卑がもたらした恐るべき因習****
・・・このように、インドでは今、急激に凶悪なレイプ犯罪が問題となっている。しかし、これは過去から黙殺されていたものが明るみに出たに過ぎない。

実は、インドでのレイプ犯罪は日常茶飯事。夜中に複数の男に家に侵入され、抵抗したら硫酸をかけられ顔を破壊された女性。レイプ被害を警察に訴えても相手にされず、挙句の果てに犯人との婚姻を勧められて自殺した少女など。

しかも、加害者の男はお咎めなしで釈放される……。

これには、宗教的な思想が少なからず影響しているはずだ。
インドでは、国民の約7割がヒンズー教である。ヒンズー教にはカースト制度という世界的にも有名な身分差別がある。(中略)

昨年11月には、小さな村に住む最下層のダリット(不可触 アンタッチャブル)の16歳の少女が3時間近くにわたり7人の男にレイプされた。男たちの1人がレイプの様子を携帯で撮影。その映像を村中に流され、それを見た被害者の父親は絶望し殺虫剤を飲んで自殺した。

また、別の村の16歳のダリットの少女が、昼食を取ろうと畑から自宅に向かっていたところ、2人の男たちに別の家屋に連れ込まれ、レイプされた。叫び声を聞いた父親が現場に駆けつけたときには、男たちの姿はなかった。少女はその後、灯油をかぶり焼身自殺した。

そのほかにも、ダリットの女性はレイプされたうえに、手足を切断されたり、火あぶりにされたり、人糞を食べさせられることを余儀なくされたり、悲惨な事件が後を絶たない。

低カーストやダリットの女性に対するレイプは上位カースト男性の力を示すものであり、彼女らは常にレイプの危険にさらされているのだ。

しかし、このカースト制度がもたらした影響だけが、レイプ犯罪を誘発しているわけではない。昨年12月にバス車内で起きた集団レイプ事件の被害者女性は中流階級のカーストだったといわれている。

インドには、カースト制度がもたらすレイプ事件誘発以外に、強烈な男尊女卑が残っているのだ。

未亡人殉死の恐るべき因習「サティ」。夫が死んで火葬されるとき、妻も火に身を投げて自殺することを強要させるというもの。これは近年まで続いてきた。

さらに、女性が結婚する時に持参金を持ってくる「ダウリー」という制度。法的には禁止されているものの、まだまだ健在である。嫁から持参金を搾り取るために、虐待したり、充分でないと火をつけて焼き殺したりする場合もある。ダウリー殺人と言われる。

こうした女性に対する暴力はインドで繰り返され、犠牲になる女性たちがどんなに多いことか。女性が危害を加えられたところで警察が動くこともなければ、裁かれることもない。

女性に対して罪を犯しても罰せられないことがまかり通っているインド社会では、「女性に対していくらでも酷い虐待をしてもいい」という認識に繋がっている。【2013年3月1日 白神じゅりこ氏 ハピズム 】
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【「辛い現実」を全員が見るべきだ
女性蔑視の社会的風潮を反映したものか、2012年12月のニューデリー・バス車内集団暴行事件で死刑判決を受けた男らのうちの1人が、「まともな女性なら夜には出歩かない」「彼女は黙ってレイプを許しておけばよかったんだ。事が済めば(バスから)降ろしていただろう」などと、被害者に責任転嫁する発言をしているそうです。

この発言を含んだドキュメンタリー番組の放映を、インド当局は公衆の怒りをあおる恐れがあるとして禁止しましたが、その放映禁止への批判も起きています。

****集団レイプ殺人事件、番組の放送禁止に静止画面で抗議 インド****
2012年にインドの首都ニューデリーで女子学生が複数の男に性的暴行を受け死亡した事件のドキュメンタリー番組の放送が禁止されたことに抗議し、インドのニュース専門チャンネルNDTVは8日夜、放送が予定されていた時間帯に1時間にわたって放送を中止し、静止画を映した。

NDTVでは「国際女性デー」の8日、午後9~10時に、英国放送協会(BBC)が制作した、2012年12月にニューデリーでバスに乗っていた女子学生(当時23歳)が6人の男に性的暴行を受け死亡した事件に関するドキュメンタリー番組「India's Daughter(インドの娘)」を放送する予定だった。

放送禁止措置について同局では公式コメントは発表していないが、編集ディレクターのソニア・シン氏が今回の抗議に先立ち、マイクロブログのツイッターに「私たちは叫ぶつもりではない、聞いてほしいのだ」と書き込んでいた。

このドキュメンタリー番組には犯人の1人で、強姦(ごうかん)と殺人罪で死刑判決を受けたムケシュ・シン死刑囚のインタビューが含まれていた。

インド当局は今月3日、公衆の怒りをあおる恐れがあるとして番組の放送を禁じる裁判所命令を獲得していた。

このインタビューの中でシン死刑囚は「まともな女性なら夜には出歩かない」などと、被害者に責任転嫁する発言をしている。

シン死刑囚の発言について、ラジナート・シン内相は「女性の尊厳を傷つける、極めて軽視した発言」だと強く批判した。

放送禁止に対する抗議はインド全土に広がり、多くの人々はNDTVの対応に賛同している。
また被害者女性の父親は、インドの女性たちに向けられる態度の「辛い現実」を示しているこのドキュメンタリーを全員が見るべきだと述べた。【3月9日 AFP】
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当局としては、“公衆の怒り”が政府へ当局・政府に向けられることを嫌ったというところでしょう。
ただ、“公衆の怒り”が行き過ぎた行動に及ぶ事例も実際に起きてはいますので、当局の懸念も全く根拠のない話ではありません。

****怒った群衆がレイプ容疑者を引きずり出し撲殺、インド****
インド北東部ナガランド州で5日、女性を複数回にわたって強姦した容疑で逮捕・拘留されていた男を、住民らが拘置所から引きずり出して撲殺する事件があった。インドでは相次ぐ女性への性的暴行事件に国民の怒りが高まっている。

事件が起きたのは、ナガランド州の商業中心地ディマプール。インドPTI通信など現地からの報道によると、同地ではこの日、女性に対する暴力に抗議する大規模デモが行われたが、参加した群衆がデモ後に約7キロ離れた拘置所まで行進。女性1人を複数回レイプした疑いで先月24日に逮捕され拘留されていた男を引きずり出したという。

インド紙ヒンドゥスタン・タイムズによれば、群衆は拘置所の2つの門を倒して内部に押し入り、容疑者の男をとらえると市中心部の時計台の前まで引きずっていった。そこで男を裸にして殴るなどの暴行を加え、死亡させた後、男の遺体を時計台に吊るしたという。

地元警察は、現地の状況について「非常に緊張している」と同紙に述べ、秩序の回復に努めていると説明している。【3月6日 AFP】
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警察官の3分の1に女性を起用
性犯罪減少を目指す政府も、罰則強化の法律改正だけでなく、女性警官の増員なども決定しています。

****インド直轄領、警官3割に女性起用へ****
インド政府は20日、デリー首都圏を含む7つの連邦直轄領で、警察官の3分の1に女性を起用する法案を承認した。

首都ニューデリーなどで衝撃的な性的暴行事件が相次ぐ中、ここ数か月の法律の強化による対策の一環として閣議で採択された。

政府は声明で「デリーを含む全直轄領で、警察官のポストの33%を女性に割り当てることを承認した」と発表した。この決定により、警察が性についていっそう配慮するようになることを期待するとしている。【3月21日 AFP】
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こうした改革で、これまで性犯罪をまともに取り扱ってこなかったと言われている警察全体の意識改革が進めばなによりです。
実際に女性警官起用が進むかどうかは、これからの話ですが。

一方で、護身用に女性用拳銃が販売されているそうですが、その実態は・・・。

****レイプ多発のインドで女性用拳銃が人気、ただし購入者は男性****
インドの首都ニューデリーで女子学生が集団レイプされ死亡した2012年の事件を受け、インドで初めて女性向けに開発された軽量の回転式拳銃が、好調な売り上げを記録している。だが購入者のほとんどは男性だ。

ヒンズー語で「怖いもの知らず」を意味する「ニルビーク」と名付けられた拳銃は、相次ぐレイプ事件に不安を募らせる女性たちの護身用に国営の武器製造会社が開発した。だが、これまでのところ約450件の注文中、女性からのものはわずか28件だという。

大半の女性にとって14万ルピー(約27万円)という価格は高すぎると、女性権利活動家らは指摘する。

また活動家の1人、ループ・レカー・ベルマ氏はAFPの取材に「レイプは基本的に法と秩序の問題ではなく、女性が拳銃を所持しても回避できない」と述べ、「必要なのは固定観念の変革、法律の厳格化、そして迅速な司法制度だ」と語った。【3月21日 AFP】
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銃社会の弊害は、アメリカの事例でも明らかです。「必要なのは固定観念の変革、法律の厳格化、そして迅速な司法制度だ」というのが正論です。

【「国は牛だけでなく、我々、すべての人間に対して責任がある」】
先述のように、インドにおける性犯罪の背景にカースト制や伝統的な女性蔑視の風潮があるとすれば、ヒンズー的価値観を重視するモディ首相のもとでの抜本的改革は難しいかもしれません。

****牛肉所持で禁錮刑に、インドの州で新法施行****
インド西部マハラシュトラ州でこのほど、牛の食肉処理さらには牛肉を所持することを禁止する法律が施行された。新たな法律は非常に厳格な内容となっており、牛肉を所持していただけで禁錮5年が科せられる可能性がある。同州首相らが3日、発表した。

ヒンズー教徒が大半を占めるインドでは牛は神聖なものとされており、すでに複数の州で食肉処理を禁じる法律が導入されている。

しかし、商業都市ムンバイがあるマハラシュトラ州で施行された法律は他州に比べても罰則が厳しく、牛肉の販売と所持を禁止し、違反した場合には禁錮5年または1万ルピー(約2万円)の罰金が科せられる。

同国紙インディアン・エクスプレスによると、プラナブ・ムカジー大統領の承認を受けて発効した法律は、約20年前にマハラシュトラ州議会で可決されていたものの、大統領の承認が得られなかったため施行には至っていなかった。

法律の施行を受け、ソーシャルメディア上では多くの人たちが個人の自由や宗教的信条、歴史、環境、さらには動物愛護など、さまざま観点から意見を闘わせている。【3月4日 AFP】
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****マハラーシュトラ、牛肉消費が飲酒運転より重罪に****
・・・同法は1995年、当時のマハラーシュトラ州知事に提出され、マハラーシュトラ州で最も長い19年近く保留されていた法案。右翼グループの長年に及ぶ強い後押しなどもあり、同法律が施行されることになり、牛肉の違法販売に阻止効果が期待されている。一方で、右翼グループの沈静化や政治的な票集めが目的という見方もある。

イスラム教徒が大半を占め、牛肉流通の大半を取り仕切るムンバイ牛肉販売業者組合は、同法により牛肉の販売業者や末端にいる何千もの酪農家が職を失うことや、マトン肉、鶏肉など牛以外の肉の価格高騰を懸念している。2月にはマハラーシュトラ州全域の牛肉販売業者が1週間のストライキを行った。

ヒンドゥー教徒が80%を占めるインドは、州ごとに独自の牛肉規制が行われている。(中略)

商業都市ムンバイではヒンドゥー教徒であっても牛肉を食べる人や、食事に宗教的制限のないキリスト教徒も多いため、今後飲食業などに影響が及ぶ可能性が高いという。【3月6日 みんなの経済新聞】
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牛肉はキリスト教徒とイスラム教徒によってだけでなく一部の貧しいおよび下のカースト制度ヒンズー教徒によって食べられています。
モディ政権のヒンズー至上主義の側面です。

今月、修道女がレイプされた事件を受けて、インド・カトリック教会は「国は牛だけでなく、我々、すべての人間に対して責任がある」と批判しています。
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