孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ギリシャ  資金が底をつきかけているギリシャの選択は・・・ 実質的「ユーロとドラクマ」併用案も

2015-03-30 22:08:31 | 欧州情勢

(23日 メルケル首相とチプラス首相との会談後の共同記者会見 友好ムードの演出に努めましたが・・・ “flickr”より By Bundesregierung https://www.flickr.com/photos/bundesregierung/16917602265/in/photolist-rLX8KF-qPXeUJ-runh8Q-rsCviZ-qPXeJo-qPiezG-rrYxog-rsCuvr-qPXeQf-rungpL-rsCvpR-rsCuNa-rLX9EM-rLbK6Y-rLi4HD-rtJwXW-rHZBiG-rJg9eE-rtJqL7-rLsM1r-rLsLSk-qPYFrd-rL7m2P-rLhCzH-qPujBT-rLaW4b-rJ16o9-rrXXHa-rHZD5s-rrXDLi-rLakpm-rtQdvT-rHZxsA-rrXW1c-rrXBGZ-rtJ6du-rLb89s-rtGpuw-rtJ7UL-rJ14Ku-rLcRLD-rtJmA3-rrXA1H-rtPqVp-rtPrSz-qPtTYV-rtPmW2-rtFR6y-rtQcCv-rHZT5w)

金融支援を数週間以内に受けられなければ4月末までに財政破綻に陥る恐れ
ギリシャへの金融支援の問題、うまく進まなければユーロ離脱も・・・・という話は、いささか聞き飽きた感もあります。

しかし、ギリシャがEUから金融支援を受ける条件である財政改革を巡って、ギリシャとEUの協議が難航しており、一方でギリシャの資金も底をつきかけています。

****<ギリシャ>資金繰り緊迫 改革案で「72億ユーロ」正念場****
ギリシャが欧州連合(EU)から金融支援を受ける条件である財政改革を巡って、ギリシャとEUの協議が難航している。EUはギリシャに対し緊縮財政を実行する改革案策定を求めているが、「緊縮策放棄」を掲げるギリシャが踏み込んだ対応を示さず、EUが不信感を募らせているためだ

ギリシャとEUは19日、ギリシャが改革案の詳細を数日中にEUに提出することで合意したが、EUの求める改革を提示する保証は無く、問題打開のめどは立っていない。

EUは2月末、ギリシャが財政緊縮策を実行することを条件に金融支援を4カ月間延長することを決めた。EUなどが4月末までにギリシャの改革案を承認すれば、72億ユーロ(約9250億円)の融資が実施される運びだ。

だが、改革案を巡るギリシャとEUの実務者レベルの協議で、ギリシャは財政状況の詳細な説明を拒んできた。

ギリシャ議会は17日、貧困世帯の電気代無料化などを盛り込んだ法案を可決。「財政再建目標を損なう一方的な措置を取らない」と定めた2月の延長合意を無視するようなチプラス政権の行為に、ドイツなど支援側はいらだちを募らせてきた。

EUとギリシャ、ドイツ、フランスの首脳は19日、ブリュッセルで会談し、会合後の声明で「(支援延長決定時の)合意を順守する」と確認。記者会見でドイツのメルケル首相は「合意から我々(の立場)はみじんも変わっていない」と強調した。だが、チプラス首相は「不況を生む政策を行うつもりはない」と明言し、隔たりを浮き彫りにした。

ギリシャの資金繰りは緊迫度を増している。欧州メディアによると、ギリシャの政府部門の手持ちの現金は20億ユーロ程度だが、3~4月に国際通貨基金(IMF)への20億ユーロ近い借金返済を抱える。

チプラス首相は19日の会談で支援融資の一部前倒しを求めた模様だが、改革案提示を先決とするEU側は認めなかった。

ギリシャ政府は政府支出を切り詰めたりして当面の資金不足を乗り切る方針だが、金融市場では借金を返せなくなる債務不履行(デフォルト)を懸念してギリシャ国債利回りが急騰するなど、不安感が高まっている。【3月20日 毎日】
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ギリシャのチプラス首相は23日、最大の支援国ドイツを訪問し、キーマンであるメルケル首相と会談しました。
「犬猿の仲」とみられてきた両者は極力友好ムードの演出に努めましたが、互いの不信感は簡単には克服できておらず、両者の溝は残ったままです。

****破綻警告・歴史カード…ギリシャが独に揺さぶり でも「債務」進展なし****
ギリシャのチプラス首相は23日、就任後初めてベルリンを公式訪問し、ドイツのメルケル首相と会談した。

ギリシャ側は首脳会談直前まで第二次大戦の損害賠償問題を持ち出したり財政の破綻を警告したりし揺さぶりをかけたが、債務問題で進展はなかった。

ロイター通信によると、チプラス氏は23日、会談後に「過去の影は過去のものにしよう」と述べ、未来志向の両国関係構築を呼びかけた。

これに先立つ22日、ドイツは、ギリシャが求めたナチス・ドイツによる占領の損害賠償を議論する場の設置について、「法的にも政治的にも解決済みだ」との立場を伝えていた。それでもチプラス氏は24日、ホロコースト記念館訪問を日程に入れ、“歴史カード”をちらつかせた。

メルケル氏は債務問題について会談で、ドイツ一国で決められる問題ではないと指摘し、資金繰りに苦しむギリシャが構造改革で経済成長を回復させ、高い失業率を克服することが重要だと述べるにとどまった。

英紙フィナンシャル・タイムズによると、チプラス氏は会談に先立ち、欧州連合(EU)からの金融支援を数週間以内に受けられなければ4月末までに財政破綻に陥る恐れがあると訴える手紙をメルケル氏に送っていた。譲歩を引き出す狙いがあったという。

ギリシャは2月に延長された金融支援で融資を受けるため、4月末をめどに財政改革の内容でEU側と合意する必要がある。【3月24日 産経】
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ギリシャはこれまでに、学生や観光客らに録音機やビデオを持たせて脱税業者の摘発に生かすといった具体策を提案してはいますが、EU側は「真剣さが足りない」と不信感を強めており、20日のEU首脳会議で、2月に合意した4カ月の金融支援延長の条件である経済改革について、ギリシャ側が詳細なリストを数日中にEU側に提出することを約束しています。【3月25日 朝日より】

その財政改革案はすでにEUに送られていますが、EU側が求めている抜本的な支出削減がどうなっているかは明らかにされていません。ただ、ギリシャ側は「景気後退につながる措置は含まない」とも発言しています。

4月末までに承認されないと、EUからの金融支援が受けられず、ギリシャの資金繰りが破たんすることも考えられます。

****ギリシャが新財政改革案 30億ユーロ歳入増が柱 ****
ギリシャ政府は27日、金融支援の継続に必要な財政構造改革案を欧州連合(EU)などに送付した。

2015年の歳入30億ユーロ(約3900億円)底上げを柱とするが、年金削減などの詳細は明らかになっていない。債権者のEUや国際通貨基金(IMF)と28日にも協議に入る。ロイター通信などが報じた。

独メディアによると、新たな改革案は徴税システムの電子化による脱税防止、オンライン賭博の免許発行、付加価値税の引き上げなど18項目からなる。国民の反発の大きい年金削減や公務員の賃下げなど「景気後退につながる措置は含まない」との高官発言も伝わっている。

同年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字幅を国内総生産(GDP)比で現在義務付けられている値から半減の1.5%、経済成長率が1.4%となる見通しも示した。

税収の落ち込みによりギリシャの資金繰りは悪化している。4月にも債務返済や行政運営に必要な資金が底をつく恐れが生じている。

これまでに、脱税防止など7項目の改革案を提出済みだが、EU側はより詳細で包括的な計画の提出を融資実行の条件としている。

EU側は30日以降、臨時のユーロ圏財務相会合を開いて対応を話し合う可能性がある。

チプラス首相は23日にドイツのメルケル首相と会談した際、「必要な構造改革を遂行する」と発言した。従来の反緊縮路線から債権者側に歩み寄る現実路線に転じざるを得ない状況に追い込まれている。【3月28日 日経】
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なお、ギリシャは現在、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字幅を国内総生産(GDP)比3.0%とするように義務付けられていますが、その足元の達成も困難と見られています。

****ギリシャ、今年の財政収支目標は達成困難 トロイカが予想=独誌****
独週刊誌シュピーゲルによると、ギリシャ向けの支援策を仕切っている国際支援機関の欧州連合(EU)・欧州中央銀行(ECB)・国際通貨基金(IMF)から成る「トロイカ」は、ギリシャは今年、基礎的財政収支(プライマリーバランス)目標を達成できないと予想している。(後略)【3月30日 ロイター】
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今後予想されるギリシャの選択肢
2月に緊縮策の基本継続と引き換えにEUとの4カ月の支援延長で合意した時点で、チプラス政権はすでに非常に困難な立場にあります。

“チプラス首相の与党・急進左派連合は「緊縮策の放棄」を掲げて1月25日の総選挙で勝利し、反緊縮派の保守政党「独立ギリシャ人」と“反緊縮政権”を発足させた。チプラス政権は緊縮策を伴う現行の支援策を「諸悪の根源」と位置づけ、撤廃を画策した。だが、支援打ち切りによる財政破綻の危機が迫る中、民営化の一部実施や労働市場改革などの緊縮策の継続をのまざるを得なかった。”【2月27日 毎日】

与党内強硬派は、緊縮策の継続を含む合意を「労働者階級に対する裏切り」「債権者に対する降伏」と批判していますし、今回の財政構造改革案次第では連立相手の組換えも迫られるかも。

何より、すでに疲弊している国民が年金削減や公務員の賃下げといった、これ以上の痛みに耐えられるのか?
国民からはチプラス政権の公約違反への批判もさることながら、「苦しむギリシャがいくらお願いしても、一歩も譲らない」と、EUへの批判が強まっています。

今後予想されるギリシャの選択肢については、ギリシャがEUに譲歩して支援を受け、ユーロにもとどまる(ただし、国内政治は調整も)、根本的な合意には至らないがすぐには離脱せず、なし崩し的に事態が進む、デフォルトを起こしてユーロ離脱し大混乱・・・といったものが想定されます。

****ギリシャがユーロ離脱なら、実はこんな展開も-混乱のプロセス****
A:ギリシャの離脱(GREXIT)回避
チプラス首相が降参して債権団の要求に従う。ユーロ離脱か緊縮かの選択を迫られた首相は後者を選んでギリシャは現金を手にし、ECBも同国の金融システムを支え続ける。この場合、チプラス政権への反発が国内で強まり、首相は欧州寄りの政党と新たな連立を組んで政権を存続させるか総選挙実施となる。

B:ホテルカリフォルニア
ギリシャのバルファキス財務相はユーロという通貨同盟への参加を、いつでもチェックアウトはできるが決して去ることができないと歌う米ロックバンド、イーグルスの1976年のヒット曲「ホテルカリフォルニア」に例えたことがある。

チプラス首相がドイツ政府や自身の急進左派連合(SYRIZA)内の強硬派を含め全当事者が受け入れられるような妥協策を見つけられない場合、このシナリオは現実となる可能性がある。

つまり、救済融資は引き続き実行されず、政治指導者も行動を渋るので、ECBはギリシャの銀行の頼みの綱である緊急流動性支援(ELA)を制限。資金は十分ではないので、資本統制が必要になる。銀行の実質閉鎖もあるだろう。

さて、このシナリオBはここからB1「どんでん返し」とB2「チェックアウト」に別れる。

B1:どんでん返し
預金の引き出しや送金を制限する資本統制が、チプラス首相に妥協を余儀なくさせるという劇的な結果につながる。首相は欧州寄りの野党議員らと新たな連立を組み、資本統制と銀行閉鎖の環境下で国民投票を実施する。国民は首相に方向転換へのお墨付きを与え、挙国一致内閣ができる。ギリシャはユーロ圏にとどまるが、まずリセッション(景気後退)に陥る。

B2:チェックアウト
銀行閉鎖で政治情勢は悪化し市民の抗議行動が強まる。ドイツを標的とした反感が強まり、世論はユーロ離脱へと傾く。

政府は資本統制を敷いている間に、国内の決済のための新紙幣または借用証書を印刷する。ユーロ圏諸国はギリシャ経済の完全崩壊を避けるために融資を提供する。

公的部門へのギリシャの債務は再編され、国際通貨基金(IMF)の融資は返済される。新通貨とユーロが並行して流通し、ギリシャはユーロ圏を正式に離脱したわけではないので戻る道は残されるが、国内の金融は混乱を極める。

C:大惨事
ギリシャが無秩序なデフォルト(債務不履行)を起こしてユーロ圏を離脱する。
デモが発生し、国民の多くはますます困窮、政府は全てをドイツのせいにする。新通貨を支えたり国債やIMF融資の利払いや返済をするための支援は得られない。政府と銀行が破綻し、新たな枠組みができるまで何年もかかる。

ギリシャは大恐慌に陥り、資本主義始まって以来の大規模デフォルトの打撃で欧州もリセッションに逆戻り。ギリシャはEUも離脱する羽目になる。

国内では極右ないし極左勢力が政権を握り、逃げられる者は国を後にする。北大西洋条約機構(NATO)加盟継続にも疑問符が付き、不安定な新ギリシャはロシアに頼って、プーチン大統領に地中海への足場を提供する。【3月27日 ブルームバーグ】
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実質的に「ユーロとドラクマを併用」する苦肉の策
“B2:チェックアウト”の“借用証書を印刷”という選択は、実質的に“借用証書”が自国通貨のように流通し、「ユーロとドラクマ(自国通貨)を併用」する形態になります。

****焦点:ユーロとドラクマ併用論浮上、資金難のギリシャで苦肉の策****
ギリシャ政府は支援の見返りに実施する改革案を債権団に提出したが、合意までにはまだ時間がかかりそうだ。

こうしたなか、資金枯渇の可能性に直面するギリシャでは、IOU(借用証書)を発行して国内の支払いに充て、その分節約したユーロで対外債務を返済するという、実質的に「ユーロとドラクマを併用」する苦肉の策が現実味を帯びてきた。

ギリシャは現在、債券市場での資金調達ができず、国際支援機関は改革案の実施開始を見届けるまでは、追加支援には及び腰だ。関係筋が今週、ロイターに明かしたところでは、新たな融資が受けられなければ、ギリシャは4月20日までに資金が枯渇する可能性が高い。

ユーロ圏当局のある関係者は、ロイターに対して「公務員の給与など国内向けの支払いに充てるユーロがなくなった場合には、IOUの発行を開始するという手がある。つまり、将来のある時点に、いくらいくらのユーロをIOUの保有者に支払う、と約束した証書だ」と述べた。

関係者は「そのようにして発行されたIOUは、本物のユーロに対して大幅にディスカウントされた水準で流通、実質的には『通貨』と同じような位置付けになり、ユーロと共存する」と述べた。

<IOUで当座しのぎ>
ギリシャ政府が給与や年金など国内向けの支払いを行うためのユーロに窮するような事態に陥った場合には、ユーロが国外に大量に流出するリスクが高くなる。

これを回避するには、資本規制の導入が必要とみられる。2013年のキプロスのように、現金の引き出しや、海外送金が制限される可能性も否定できない。

そこで登場するのがIOUだ。ギリシャ政府は国内向けの支払いをIOU発行でしのぎ、同時に税収で上がってくるユーロを貯めておいて、債務を返済。デフォルト(債務不履行)を回避するという寸法だ。

ユーロ圏の別の関係筋は、IOUについて「債権者との協議がまとまって追加支援が受けられるまでの間の暫定的な措置」と述べた。

ギリシャ政府はこれまでにも、国内向けの支払いを遅らせて債務返済に必要なユーロを確保することに前向きな姿勢を示したことがある。

ギリシャ政府は、ロイターの取材に対して、こうした二重通貨制度に関する質問に回答することを拒否。追加融資に関する国際債権団との合意は、近いうちにまとまる、との見方をあくまでも繰り返した。【3月30日 ロイター】
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ナチス・ドイツによる占領の損害賠償
ところで、ギリシャ側がドイツを揺さぶるために持ち出したナチス・ドイツによる占領の損害賠償ですが、賠償金の請求それ自体はいい加減なものではありません。ギリシャ政府の言い分にも一理あると考える法律家はドイツにも存在するとも言われています。

ただ、今のギリシャ金融支援という問題と絡めて論じるものではなく、ドイツの国民感情を逆撫でするだけで、ギリシャにとってメリットはないでしょう。

“ギリシャの要求は次の3つに分けられる。第1は、ナチス侵攻の犠牲となった国の政府に当然支払うべきと考えられる一般的な賠償金の問題。第2が、犠牲者1人ひとりに対してドイツが負うべき精神的なもしくは法的な責務。そして第3は、占領時代にギリシャがドイツに強要された融資である。この融資はアフリカでの戦争の戦費として使われた。”【3月26日 日経ビジネス】とのことです。

中国や韓国との間の戦後処理を抱える日本(“もう終わった”というのが日本の立場ですが)としても関心があるとこですが、詳しくは上記【3月26日 日経ビジネス 「ナチスの歴史を巡るドイツとギリシャの確執」】http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20150324/279097/?rt=nocnt をご覧ください。
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