孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フィリピン  戦闘が続くミンダナオ島 求心力を失うアロヨ大統領

2009-03-29 12:34:47 | 国際情勢

(昨年2月29日、マニラで行われたアロヨ大統領の退陣を求める大規模集会に出席した、マルコス独裁政権を打倒した「民主化運動」の象徴コラソン・アキノ元大統領と、恩赦後政治活動を復活したエストラダ前大統領 “flickr”より By gmaresign
http://www.flickr.com/photos/gloriaresign/2325624949/in/set-72157604091600236/)

【ミンダナオ島 交渉再開のめど立たず】
フィリピンのミンダナオ島では、反政府活動が相変わらず続いています。

****フィリピン:ミンダナオ島で戦闘 27人が死亡*****
フィリピン国軍は28日、南部ミンダナオ島マギンダナオ州で反政府勢力「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)の一部部隊と国軍の間で26日から2日間、戦闘があり、MILF側20人、国軍側7人の少なくとも計27人が死亡したと発表した。住民の犠牲者はないとみられる。今年に入って最大規模の戦闘で、犠牲者数も最多という。【3月28日 毎日】

昨年8月、MILFと政府が5年間かけてまとめてきた和平合意の覚書を、土壇場になって最高裁が違憲と判断したため交渉が振り出しに戻り、国軍とMILFの一部部隊の戦闘が再燃した経緯があります。
国際停戦監視団の主力をなすマレーシアは、こうした状況を不服として監視団メンバーを引き揚げ、汚職問題などで求心力を失っているアロヨ政権では解決の目処がたたない状況です。

****比ミンダナオ島:戦闘激化半年、交渉再開のめど立たず*****
フィリピン南部ミンダナオ島で、反政府勢力「モロ・イスラム解放戦線」(MILF)と国軍側の戦闘が昨年8月に激化し、和平交渉が中断して半年が過ぎた。住民約30万人が自宅を追われ避難生活を強いられる状況が続き、比政府は日本など国際社会に対し、交渉再開への支援を強く呼びかける。だが、MILFや仲介役のマレーシアには比政府への不信が根強く、交渉再開のめども立たないままだ。

「国際停戦監視団に参加するマレーシア、ブルネイ、日本、リビアのほか、欧州連合(EU)や米国に和平への支援を期待している」。アロヨ大統領は1月26日、具体的な国名を挙げて、和平交渉への協力を求めた。各国は停戦を呼びかけていたが、それ以上の動きは出ていない。
MILFと政府は昨年8月まで5年間かけて、和平合意の覚書を練り上げた。しかし土壇場になって最高裁が覚書を違憲と判断したため交渉が振り出しに戻り、国軍とMILFの一部部隊の戦闘が再燃した。
交渉を仲介するマレーシアは交渉難航に業を煮やし11月末、停戦監視団の全メンバーを引き揚げた。比政府はMILFとの接触を試みるが、「仲介国を通すのが筋」と門前払いを食らっている。

国軍関係者は「和平実現を退陣の花道とする筋書きが崩れかけているため、アロヨ大統領は危機感を募らせている」と説明する。大統領は10年6月までの任期中の和平構築を公約に掲げるが、MILFは、一度は双方が合意した覚書を最高裁がひっくり返したことに強い不信感を抱いており、大統領の任期中の和平合意は困難になったとの見方が強い。
政府への不信感は現地のNGOにも広がる。避難民への支援を行う「ミンダナオ民衆幹部会」のサリさんは「この半年間、状況は全く変わっていない。アロヨ政権に何かを期待するのは幻想だ」と語った。【2月7日 毎日】
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【「最も不人気な大統領」 お騒がせ前大統領】
アロヨ大統領はまだ任期が1年以上残っていますが、政権が絡む汚職疑惑などで大統領の支持率は低迷、「もはや政権末期」、1986年にマルコス独裁政権が倒れてから「最も不人気な大統領」とも言われています。
国民の関心はすでに次期大統領選挙に移っており、有力候補者はすでに事実上のキャンペーンを開始しているとか。【08年11月22日 共同】

次期大統領選挙と言うと、現段階でどのようになっているのかは知りませんが、昨年4月の報道では、不正蓄財で終身刑の判決を受けた後、恩赦で釈放されたエストラダ前大統領(70)が次期大統領選への立候補に意欲を示しているとも伝えられていました。
もっとも、エストラダ前大統領はアロヨ大統領に反対する野党勢力の結集に向けて動いており、大統領選出馬をちらつかせながら、キングメーカーとしての地位を確立するのが狙いとの見方もあるとか。【08年4月9日 毎日】

エストラダ前大統領は庶民層に根強い人気を持っており、昨年2月末にマニラで行われたアロヨ大統領の退陣を求める大規模集会には、マルコス独裁政権を打倒した「民主化運動」の象徴コラソン・アキノ元大統領とともに出席して、政治活動を再開しています。

前大統領は恩赦の際に、「政治活動は慎む」というのが恩赦の条件だったとされ、今後どのような公職にも就かないことを約束した発表されていましたが・・・。
もともと、この恩赦自体が、中国企業と政権幹部の癒着疑惑、大統領府から州知事らへの贈賄疑惑、04年の大統領選の不正疑惑などで足元が揺らぐアヨロ政権側が、逮捕・軟禁下でも政界に影響力を持ち、07年5月の上院選では野党候補を大量に当選させたエストラダ前大統領と政治的に妥協したものと見られていましたので、アロヨ大統領の力次第でいかようにもなるのかも。

そのエストラダ前大統領に関する最近のニュースとして、こんなものが。

****フィリピン前大統領、レプリカ銃付き車両で走行し取り調べ****
フィリピンのジョセフ・エストラダ前大統領が、車上にレプリカの銃を装備したジープで首都マニラの街中を走り回ったとして、取り調べを受けている。フィリピン警察が24日明らかにした。
フィリピン国家警察のヘスース・ベルソーサ長官は、レプリカを含む銃での威嚇を禁止する法に違反したとして、前大統領とジープに同乗していた野党連合の指導者ヘヨマール・ビナイ・マカティ市長の罪を問う方針だと発表した。問題となったレプリカ銃はすでに地元警察に押収された。 
エストラダ氏の広報担当者は警察の動きについて、退任後も人気の衰えない前大統領の「脅威」に対する政府の政治的嫌がらせだと見解を述べた。【3月25日 AFP】
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「脅威」を未だ保持しているのかどうかは知りませんが、元銀幕のスターのエストラダ前大統領と“レプリカの銃”・・・何を考えているのやら。

労働力人口の2割が海外で就労する「出稼ぎ大国」のフィリピンですが、金融危機に伴う世界的な景気後退によって、就労先の海外企業から解雇された労働者が相次いで帰国しています。
海外からの送金に国家経済を依存する政府は、この対策に苦慮しています。

こうした経済問題、ミンダナオ島の反政府活動など問題は山積していますが、国内政治が“空白”状態で有効な対策が打ち出せないのはどこの国も同じのようです。


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