相も変わらず根拠なき反日キャンペーンで、国をまとめようとする輩が存在する。
「石油産業の拠点として栄えてきたヒューストン・・・」 と記されているそのヒューストン市が、「エネルギー転換を目指すために 二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)や水素事業に注力 していく 」と、一念発起して脱炭素の街に変貌しようとしているのだ。
それと言うのも、町中に「CO2用のパイプライン網 がすでに整っている 」と言うことで、地球温暖化のもととなるCO2を、同市の各企業から回収してメキシコ湾の海底に埋め込む事業を始めるのには好都合であるようだ。
海底に埋め込んだCO2が大気中に漏れ出すことのないように願いたいものだが、そうでもしないと地球の温度上昇を1.5℃以内に抑えられない、と言うことである。当面はCO2を出さないに越したことはないがそれは不可能なことなので、出したCO2は回収して地中深く埋める、と言うことぐらいしか今は出来ないようなので、そうするより他はないのだ。
日本でも、それと似たようなそんな動きが始まっている。日本の場合はCO2を出さない運動と言ったところか。大規模に「水素 」を利活用しようとする動きである。それも東京などの中央ではなくて、地方の中部圏からの動きである。
中部圏における大規模水素利活用へ 中部圏水素利用協議会と岐阜県、愛知県、三重県および名古屋市や経済団体が連携
編集部:谷川 潔 2022年2月21日 17:37
2022年2月21日 発表
2月21日、トヨタ自動車が会員として参画する「中部圏水素利用協議会 」は、中部圏における水素の大規模な利用・活用を目的として、岐阜県、愛知県、三重県および名古屋市に加え、名古屋商工会議所、中部経済連合会、中部経済同友会と「中部圏における大規模水素社会実装の実現に向けた包括連携協定 」を締結した。
包括連携協定締結式に臨んだのは、愛知県知事 大村秀章氏、岐阜県知事 古田肇氏、三重県知事 一見勝之氏、名古屋市長 河村たかし氏、名古屋商工会議所 専務理事 内田吉彦氏、中部経済連合会 専務理事 小川正樹氏、中部経済同友会 専務理事 田中喜好氏、中部圏水素利用協議会 会長寺師茂樹氏 。
この締結の背景には、「2050年のカーボンニュートラル 」を目指す中で「水素社会 」の実現は重要な役割を担っており、大規模水素のサプライチェーン構築 に向けては政府・自治体・経済界・産業界が一体となった取り組みが必要となるという認識があり、中部圏は多様な産業が広く展開していることから協定締結に至った。
この協定に関する連携事項としては、以下の3項目を挙げている。
・水素の輸入・貯蔵・供給・利用を促進するためのインフラ整備や計画の策定等の各種取り組み
・水素の利活用促進に資する取り組み
・その他、水素社会の早期実現のために必要な取り組み
(略)
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1389996.html
この(略)の部分には、プロジェクター用の画像があり、次のようなことが書かれている。
1.中部圏の魅力、意義………・水素のサプライチェーン構築が容易
2.水素量促進の取り組み・・・・・・・・・・工場、コンビナート、発電所等で利用可能
3.実現のための課題と役割・・・・・・・行政、業界、経済界、金融界の連携がある。
中部圏水素利用協議会が中心
詳しくはこの画像を拡大してみることをお勧めする。
ヒューストン市もやがては二酸化炭素・CO2を出さない水素などの燃料へと切り替わってゆくことでしょうが、この中部圏での動きも、水素を利用・活用することでCO2を出さない活動である。要は水素と言うエネルギーを利活用することにある。JERA などではすでに碧南火力発電所 で、石炭に水素を混ぜて燃やす活動を始めている。
ただ水素を直接運搬・貯蔵するには技術的、コスト的に問題が沢山あるため、水素をアンモニア・NH3 として利用している。
JERAとは、J apan、E nergy、era (時代)からそれぞれの語を組み合わせて作った造語である。
東京電力(の子会社)と中部電力が出資する発電会社であるとWikipediaには記載されている。
大型の商用石炭火力発電機におけるアンモニア混焼に関する実証事業の採択について
2021/05/24
株式会社JERA(以下「JERA」)および株式会社IHI(以下「IHI」)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/アンモニア混焼火力発電技術研究開発・実証事業」に共同で応募し、このたび、採択通知を受けました。
水素を低コストで効率良く輸送・貯蔵できるアンモニアは、エネルギーキャリアとしての役割に加え、火力発電の燃料として直接利用が可能であり、燃焼時にCO2を排出しない燃料として、温室効果ガスの排出削減に大きな利点があると期待されています。
本事業は、今後の環境負荷の低減に向け、大型の商用石炭火力発電機において石炭とアンモニアの混焼による発電を行い、ボイラの収熱特性や排ガス等の環境負荷特性を評価し、アンモニア混焼技術を確立することを目的とした実証事業で、事業期間は2021年6月から2025年3月の約4年間です。
本事業では、両社は、JERAの碧南火力発電所4号機 (発電出力:100万kW)において、2024年度にアンモニア20%混焼を目指す計画です。JERAはアンモニア貯蔵タンクや気化器等の付帯設備の建設やアンモニアの調達を、IHIは実証用バーナの開発を担当し、今後、設計や工事を進めてまいります。
なお、大型の商用石炭火力発電機において大量のアンモニアを混焼する実証事業は世界初となります。
(略)
https://www.jera.co.jp/information/20210524_677
(続く)
■自治体の政策に反映
ハービー氏は「当初は誰もヒューストンが低炭素を目指すとは思わなかった」と振り返る。ただ、世界の石油大手も脱炭素へと大きくかじを切るなか「技術などの課題があるのは分かっているが(地球温暖化防止の)目的を達成する必要がある。『さあ、始めよう』という気持ちだ」と、新産業の創出を側面支援することに意欲を示した。
石油メジャーも脱炭素へと大きくかじを切る(ヒューストンでのイベントに出展したシェブロン㊧とエクソンのブース)=ロイター
低炭素でGHPが注目するのはCCUS や水素エネルギー だ。CCUSなどのワーキンググループを設置し、参加企業などが商用化に向けた課題を洗い出している。各社の意見をまとめ、自治体の政策 に反映させるように働きかける。CCUSのワーキンググループには米エクソンモービルなど十数社が参加しており、ハービー氏は「小規模なパイロットプロジェクトを実施したい」と述べた。
Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage(二酸化炭素の分離・回収、有効利用、貯蓄)
CCUSについてはエクソンがテキサス沖のメキシコ湾の海底 にCO2を大量に注入する計画を進めている。ハービー氏は「CCUSなどは、かつては企業が研究・開発をしていただけだった。いまや企業のビジネスの担当部門が立ち上がり(商用化に向けて)動き始めている」と語り、計画実現に期待を示した。
■日本の技術力にも期待
日本企業については三菱重工業のCO2回収・貯留(CCS)技術 を例示し「日本は技術力があり、ヒューストンとリンク(接続)させたい」と話した。三菱重工はテキサスの石炭火力発電所にCCS装置を設置した実績がある。
Carbon dioxide Capture and Storage 二酸化炭素の回収と貯留
ヒューストンでCCUSを開発しやすい背景には、同地にCO2用のパイプライン網 がすでに整っていることもある。CO2は生産中の油田に注入して生産量を増やす「EOR 」でこれまで活用されてきたため、パイプラインが整備されてきた。エクソンは周辺の製油所や石油化学プラントからCO2を回収するビジネスを検討している。
Enhanced Oil Recovery:原油増進回収
CCUSの導入に向け、連邦政府は免税措置「45Q」を打ち出している。ハービー氏は「CCUSの事業化にはCO2排出に課税する『カーボン・プライス』も必要になる」と追加の政策が必要との見方を示した。
「脱シリコンバレー」組の誘引カギ
「石油の街」ヒューストンが脱炭素の技術の集積地となれるかは、不動産や生活費が高騰するシリコンバレーから流出するスタートアップ企業の受け皿になれるかにかかってくる。
シリコンバレーからテキサス州に移転する企業が目立ってきた。これまでヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)などが表明した。移転先はヒューストンのほか、オースティンの場合もある。ヒューストンが企業を誘致するためには魅力的な街づくりも必要になりそうだ。ヒューストンの多くの大企業は郊外に移転し、中心部は昼間でも閑散としている。
その中心部で2つのインキュベーター施設が21年に相次いでオープンした。地元の大学が中心となり今後数年かけて周辺の区画も開発される予定で、街のにぎわいを取り戻したい考えだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2308S0T21C21A2000000/
ヒューストン市(City of Houston )には、ジョンソン宇宙センター(旧有人宇宙船センター)がある。
1969(S44)年7月20日 20時17分(協定世界時)に世界初の月面着陸を果たしたアポロ11号の月着陸船・イーグルから、船長の「ニール・アームストロング」が直陸第一報を送った先が、このヒューストン(ジョンソン)宇宙センターであった。
「ヒューストン、こちら静かの基地。鷲は舞い降りた」 「了解、静かな基地。月面にいる君たちの声、よく聞こえるよ。・・・・・・」と管制官は興奮して答えていた、その「ヒューストン 」である。
そのヒューストン市が「脱炭素の町 」へ、街全体を変革しようとしている、と言うことである。
ヒューストン市には、スーパーメジャーと言われる6大石油会社 のうち、4社が主要業務拠点 を置いている、とWikipediaには説明されている。
イギリスのシェル (旧ロイヤル・ダッチ・シェル)の本社、エクソンモービル の上流部門と化学部門がヒューストンに拠点を置いているし、シェブロン のヒューストンオフィス、コノコフィリップス の本社もヒューストンにある。
もともとは綿花の集散地として栄えたが、1901年に油田が見つかる と、ヒューストンは石油精製・石油化学産業の中心地 として成長していった。更に20紀に入ると篤志家が彼の全財産を市に寄付したことから1941年にテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターが設立され、現在のテキサス医療センターの基となり、1961年にはNASAのジョンソン宇宙センターが設置されますます発展し、フォーチュン500に入る企業の本社数がNYに次いで多い都市となっている、ともWikipediaに記載されている。
ヒューストンはメキシコ湾に面しており、全米最大級の貿易港であるヒューストン港 を持っており、更には空の玄関口であるジョージ・ブッシュ・インターコンチネンタル空港 もあり、全米有数の交通の要衝 でもある。
(続く)
考えてみれば、水素のサプライチェーンの構築は、とても難しいように思われて、この28年間で成就できるか疑問が残るものであるが、頑張るしかないのである。
だが地球規模的な気候変動に対しては、我々はCO2削減に待ったなしの状況なのである。そのため、全地球的規模で各国政府・自治体と財界・企業、学会、全個人も含めてオール世界でのCO2フリーの水素社会化が必須なのである。
そうしないと、「世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求できない」ことになり、地球環境が取り返しのつかないことになりかねないのである。だから遅くとも2050年までには、我々は水素社会の実現を完遂 しなければならない状況なのである。
このことを肝に銘じておくことだ。全世界的なCO2撲滅と水素サプライチェーンの構築である。
水素を燃料とする水素エンジン やFCV 、そして水素と二酸化炭素を原料とする合成燃料 は、有望な近未来技術であり、CO2フリーの一番手の技術である。だからICE・内燃機関も捨てたものではないのであり、ICEでもCO2フリーに(簡単に)なれるのである。
米ヒューストン、低炭素の街へ転換 CO2回収や水素振興
GHP会頭 ボブ・ハービー氏に聞く
2022/2/6 2:00
日本経済新聞 電子版
インタビューに応じたGHPのボブ・ハービー会頭
【ヒューストン=花房良祐】米ヒューストン広域経済圏の商工会議所「グレーター・ヒューストン・パートナーシップ 」(GHP )のボブ・ハービー会頭は日本経済新聞社の取材に応じ、石油産業の拠点として栄えてきたヒューストン がエネルギー転換を目指すために二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS) や水素事業に注力 していく方針を明らかにした。
■環境技術に照準
ハービー氏は「ヒューストンは世界のエネルギーの首都と呼ばれてきたが、今後は低炭素社会に向き合う 」と強調。「気候変動の技術開発も進んでおり、企業はヒューストンに来るべきだ」と、拠点の設置や投資を呼びかけた。
GHPは自治体への政策提言や、加盟企業の海外展開支援が主な業務。米南部テキサス州のヒューストン広域経済圏にある石油メジャーなど約900社が加盟する。エネルギー政策でヒューストン市とも連携している。
ヒューストンは石油メジャーを頂点にしたピラミッド型の産業構造だった。ただ、ヒューストン市とGHPも近年の脱炭素の潮流を意識しており、温暖化ガスの排出が少なく、環境分野の技術 で高い競争力を持つ産業の育成 を目指している。
■スタートアップ発掘
インキュベーター施設「グリーンタウン・ラブス」には日本勢もパートナー企業として名を連ねる
中心部には脱炭素技術を開発するスタートアップ向けのインキュベーター施設「グリーンタウン・ラブス」 が2021年春、開業した。石油会社や日本企業が有望な技術の発掘に取り組む。グリーンタウンに隣接するかたちで、スタートアップ向けのシェアオフィスなどを備えるビル「ion(アイオン)」も同年夏にオープンした。
GHPのハービー氏は「低炭素の技術を持つ企業はヒューストンで実証試験もできるし、ここを拠点に世界に展開できる」とアピールした。その理由としては「気候変動対策に投資する(石油会社などの)顧客もヒューストンにいるからだ」と述べた。
ヒューストン市やGHPが低炭素を唱え始めたのは20年ごろからだ。GHPは企業や大学を集めて数十回の打ち合わせを経て、21年夏にはGHPのエネルギー転換に向けた戦略 をまとめた。
(続く)
日本の場合、新車販売台数のうち、ハイブリッド車(HV)やEV、FCV(燃料電池車)など、次世代自動車が約40%(2019年時点)を占めている。2020年末のグリーン成長戦略で示された「2030年までに販売車を全て電動化する 」という目標に向けて順調に伸びているように見える。
しかし、保有車数全体に占める電動車の割合や保有年数を考慮すると、見方が変わる。2020年時点における自動車保有台数約8,185万台中、ハイブリッド車(約933万台)とEV(約12万台)、あわせて約945万台であり、その比率は約10%程度 にすぎない。(一般社団法人自動車検査登録情報協会調べhttps://www.airia.or.jp/publish/statistics/trend.html)
車の保有年数もここのところ長期化傾向にある。例えば、2020年3月末の乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数は13.51年となり、5年連続の増加で過去最高を記録している。つまり、新車販売を脱炭素化しても、保有車全体でみるとガソリン車など従来型の自動車が大きな割合を占める傾向は当面続くわけだ。したがって、自動車業界でカーボンニュートラルを達成するには、保有車の脱炭素化 も同時並行で進めていく必要がある。ハイブリッド車やガソリン車にそのまま使えて、 従来のガソリンよりエコな合成燃料 は、新たな切り札 として期待されている。
海外・日本の合成燃料の動向
海外での合成燃料の開発をみてみると、欧米を中心に、自動車会社・石油会社・スタートアップなどが共同で研究開発や実証プロジェクトへの着手を始めている。特に、環境規制の厳しいヨーロッパでは、政府の支援 によってプロジェクトが進んでいる。
なかでも、いち早くe-gasolin (Audiが使用している呼称)の研究に着手したのが、ドイツの自動車会社Audi だ。2017年に研究施設が設立され、2018年にはフランス化学会社、Global Bioenergies S.A.と共同で、エンジンテスト用に60リットルのe-fuelの生産に成功した。
Audiは、2017年以前からe-gasやe-dieselといったエコなモビリティーの可能性を模索してきた。例えば、g-tronモデル(Audiのラインアップの中のCNG=圧縮天然ガスモデルを指す。主に天然ガスと再生可能なメタンガスを燃料とし、バックアップとしてガソリンを使用する)でe-gasを使用すると、最大80%のCO2の削減が可能としている。e-gas、e-diesel、e-gasoline をe-fuel戦略の3本柱として、今後も精力的に合成燃料戦略を進める計画だ。
一方、日本における合成燃料の動向はどうだろうか。経済産業省は、合成燃料研究会 中間取りまとめ(2021年4月)において、2030年まで の高効率かつ大規模な製造技術の確立および、2040年まで の商用化を目指すべきとの考えを示した。そのために、2020年代 に集中的な技術開発や実証実験に取り組むべきであるとしている。
実際、国内においても関連技術の研究開発がおこなわれてきた。2020年には、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が「CO2からの液体燃料製造技術に関する開発シーズ発掘のための調査」を実施した。2020年末には、東芝エネルギーシステムズなど6社が「持続可能なジェット燃料」を検討し始めている(https://www.global.toshiba/jp/news/energy/2020/12/news-20201202-01.html?utm_source=www&utm_medium=web&utm_campaign=since202202ess)
。また、2021年になってからは、JPEC(石油エネルギー技術センター)と石油会社などが、「CO2からの液体合成燃料一環製造プロセス技術の研究開発」((https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101410.html))における連携を開始した。
図) CO2からの液体合成燃料一環製造プロセス技術の研究開発の概要
出典) 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
日本の自動車業界では、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社がe-fuelの研究開発に本格的に取り組み始めているが、実用化はまだまだ先になりそうだ。
課題と今後の展望
合成燃料も商用化に向け克服すべき課題がある。
まず、低い生産効率 だ。e-fuel製造のCO2からO2を取り除くプロセス(還元反応)には大きなエネルギーを要する 。還元後の生成プロセスにおいても、最適な触媒を開発する必要がある。
コストの問題もある。合成燃料の製造コストは化石燃料よりも高い。合成燃料はCO2とH2から作られているため、CO2の分離・回収コストとH2の製造コストや輸送コストを下げていくことが重要だ。海外には、水素を日本よりも安く製造できる地域もあるので、輸入も検討していくべきであろう。
また、「合成燃料」がカーボンニュートラルであるためには、DACやバイオマス由来CO2の活用が不可欠だ。つまり、これらの技術開発と平行して進めねばならない点にも留意せねばならない。
ガソリン車のみならず、日本が強みを持つハイブリッド車への活用も見込める合成燃料はカーボンニュートラルに向け、必要な技術の一つではあろう。しかし、ことはそう単純ではない。技術開発競争だけに目を奪われていてはならない。
カーボンニュートラルを巡る熾烈な国際競争
「合成燃料」で先行する欧州が、その定義などでデファクトを取ろうとする可能性は高い。EVの充電器規格で日本と欧州が互いに譲らず、異なるものができたのは記憶に新しい。21世紀の国際競争は単に商品の優劣だけで決まるものではない。周辺技術の標準化や、環境規制などでライバル国を蹴落とすことも相手に勝つための戦略的手段となる。
例えば、EUは2020年12月にEVバッテリーの製造・廃棄・リサイクルに関するLCA規制 を提案している。LCAとは「Life Cycle Assessment(ライフサイクルアセスメント)」の略で、製品の製造、輸送、販売、使用、廃棄・リサイクルまで、すなわちある製品やサービスの一生(ライフサイクル)の環境負荷を評価するものだ。今後はバッテリーのみならず、車体そのもののカーボンニュートラルも要求されることになるだろう。そうなると、電力の脱炭素化が遅れている日本は不利になる 可能性がある。
「合成燃料」は、日本が国際的なカーボンニュートラル競争の中で、産業競争力を保つための一つの手段に過ぎない。産官学、一体となった脱炭素競争戦略の必要性が今、一段と高まっている。
安倍 宏行 / Hiroyuki Abe
日産自動車を経て、フジテレビ入社。報道局 政治経済部記者、ニューヨーク支局特派員・支局長、「ニュースジャパン」キャスター、経済部長、BSフジLIVE「プライムニュース」解説キャスターを務める。現在、オンラインメディア「Japan In-depth」編集長。著書に「絶望のテレビ報道」(PHP研究所)。
株式会社 安倍宏行|Abe, Inc.|ジャーナリスト・安倍宏行の公式ホームページ
Japan In-depth (https://abehiroyuki.jp)
https://ene-fro.com/article/ef205_a1/
合成燃料 はCnH2n という化学記号(https://bizchem.net/what-is-ft/)になっているので、二酸化炭素・CO2と水素・H2から作られるのであるが、一般的に工場から排出されるCO2やDAC (Direct Air Capture)による空気中からのCO2と水・H2Oの電気分解による水素・H2を高熱で分解して合成ガス・CO+2H2を作り、それをFT合成 という方法で液体の合成燃料 ・CnH2n とするものである、とものの本には書かれている。
FT合成とは、CO2を高温の水蒸気・H2Oで分解してCOとH2の合成ガス を作り、その合成ガス
をコバルトや鉄の触媒 で再度つなぎ合わせることによって、液体の合成燃料・C2H2nを作る方法である。
FTとは、第二次世界大戦中に石油に事欠いたドイツのフランツ・フィッシャーとハンス・トロプシュが発明した燃料で、その頭文字をとってFT(Ficsher-Tropsch)合成 と呼ばれているものである。 (https://bizchem.net/what-is-ft/)
(続く)
ハイブリッド車こそ究極のエコカーである(今のところ)と、いわんばかりの書きっぷりであるが、そんなこんなで、トヨタの本格的なBEVの「bZ4X 」もこの春からトヨタの二番目の工場である「元町工場」で生産が開始されるようだが、まずは欧米への輸出が優先されて、日本国内での販売は相当遅れるようだ。遅れるようだ、とはいうものの、一般販売はせずにレンタカーやサブスクでの一時的なレンタルやリース的な販売となるようだ。
日本ではそれほど売れないし、まだまだ売り手にも買い手にも費用も掛かりすぎて商売にならないということではないのかな。BEVの最大の弱点は電池であり、電池は劣化するものであり、中古車価格が著しく下がってしまい、まともな中古車市場が形成できない不安もあるからでもあろう。
トヨタ初の量産EV、国内は当面販売せず サブスク限定で
2022/2/17 21:06
日本経済新聞 電子版
bZ4Xの国内投入はサブスクから始める
トヨタ自動車は2022年半ばに発売するとしていた初の量産電気自動車(EV)である「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」について、国内向けには当面販売しない方針を固めた。国内では5月にもサブスクリプション(定額課金)サービスに限定 して提供する。生産台数の半分超を北米や欧州 といったEVの主力市場に優先的に提供する。
bZ4Xは多目的スポーツ車(SUV)で、トヨタブランドとして初の量産EV 。トヨタが21年12月に新たなEV戦略を打ち出して以降、発売する車の第1弾となる。トヨタが1月下旬にサプライヤーに示した計画によると、生産は4月から始め 、22年度は世界で6万台弱になる見通し。トヨタの21年のEV販売台数(1万4千台)を上回る。23年度も約5万台を生産する計画だ。
環境規制が厳しく、すでにEV競争が激しくなっている欧米に優先的に供給 する。英国では4万1950ポンド(約650万円 )で発売すると発表している。
国内では価格の高さや充電設備の少なさがネックでEVがまだ浸透していないため、当初は販売店を通じた売り切りの形での提供はしない。国内に振り向けるのは生産台数の1割未満にとどまるとみられる。
国内では当面、トヨタの新車サブスクサービス「KINTO(キント) 」に販売経路を限定し、早ければ5~6月にも開始 する。一部はトヨタレンタリース店などで法人向けリースも扱う。料金や先着順かといった詳細は未定。
国内では中古車市場に出回るEVが少なく、バッテリーの劣化で、中古車として再び販売する際の価値が低いとされる。サブスクなら残価率や下取り価格にかかわらず月額で利用できるため、顧客にとってもメリットがある。
この記事の英文をNikkei Asiaで読む
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFD17B990X10C22A2000000/
さて超小型EVだけではCO2の削減とはならないし、BEVの代替にもなりCO2フリーとなる水素エンジン と合成燃料(車) について、今一度話題にしてみたい。
世界の流れはEV化 で、CO2の排出を限りなくゼロにしようとすれば、BEVの使えない国や地域はクルマを使うな、と言った議論が優勢になりかねない雰囲気であったが、そんなところでも合成燃料であれば、その障害は少しは下がるのではないのかな。
ガソリンと同じように使える合成燃料であれば、新興国でもちょっとした工夫で、CO2フリーのモビリティの恩恵にあずかることが出来る、と言うことである。
だがまだ製造方法が複雑でコストが高いという欠点が解消されていないので、ガソリンに代わるにはある程度の時間が必要となる、と言うところである。しかしカーボンニュートラル(CN)に迫られて、各自動車メーカーはその合成燃料の開発に乗り出している、ようだ。
(続く)
「脱炭素へ、今必要なのはEVよりハイブリッド車」欧米が絶対認めたくない"ある真実"
日本だけがものにできた先端技術
PRESIDENT Online 2021/11/14 12:00
山崎 明 マーケティング/ブランディングコンサルタント
「人類の未来のために脱炭素社会の実現を目指す」というビジョンに異論はないだろう。その一方で、急激な変化が原油価格の高騰、LNG争奪をはじめ世界同時多発的なエネルギー危機を引き起こしている。「10~20年というレンジで考えたとき、ハイブリッド車の効果を再評価すべきだ 」と自動車業界に詳しいマーケティング/ブランディングコンサルタントの山崎明氏は指摘する──。
「ハイブリッドは時代遅れの技術」は本当か?
COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催され、脱炭素化の話題がまた盛り上がっている。
脱炭素の話になると決まって出てくるのが、「日本の自動車メーカーは脱炭素に消極的だ」「遅れている」という議論だ。そういう主張をする人はテスラが最も進んでいて、欧州、特にドイツの自動車会社がそれに続いているという認識のようだ。
日本のメーカーが遅れていると言う人の主たる論点は、日本のメーカーはハイブリッドには力を入れているがEVには消極的というものだ 。ハイブリッドはもう時代遅れの技術であって、EVこそ最新の技術だ、という主張だ。だからEVを積極的に売ろうとしない日本のメーカーは取り残される、という。
果たして本当だろうか。ここでハイブリッドとはどういう技術なのかをあらためて考察してみたい。
写真=iStock.com/nrqemi
※写真はイメージです 全ての画像を見る(6枚)
ハイブリッドの方式は大きく2つある
ハイブリッドとは、異種のものを組み合わせた仕組みをいい、自動車の世界では内燃機関と電気モーターを組み合わせたものを一般的にハイブリッドと呼んでいる(以下、内燃機関をエンジンと記す。ちなみに英語ではエンジンとモーターは同じ意味で、電気モーターをエンジンと言うこともある)。
ハイブリッドといってもその仕組みにはさまざまな種類がある。大きく分けると「シリーズハイブリッド」と「パラレルハイブリッド」という2つの考え方がある。
シリーズハイブリッド とはエンジンで発電し、その電気で駆動用電気モーターを回すというものだ。パラレルハイブリッド とはエンジンによる駆動と電気モーターによる駆動を切り替えて走る方式のことをいう。
一般的には、電動は低速時に効率に優れ、高速時はエンジンのほうが優れているためそのように切り替えることが多い。さらには発進時のみ電気モーターを補助的に使う簡便なマイルドハイブリッドもハイブリッドの一種として扱われている。
トヨタ・ホンダ・日産の違い
それでは日本メーカーのハイブリッドはどのようなものなのか
ハイブリッドといえばトヨタだが、トヨタのシステムはシリーズハイブリッドとパラレルハイブリッドの両方の利点を兼ね備えているシステムだ。
エンジンは発電用モーターと駆動輪に遊星ギアでつながれていて、その力の分配をシームレスに変化させられるようになっている。発進はバッテリーに蓄えた電気のみで行い、エンジンがかかっても低速ではエンジンの力はほぼ100%発電用モーターに使われ、その電気で駆動用電気モーターを回して走る。
速度が上がるにつれその配分は変化し、高速走行時はほぼ100%エンジンの力が駆動輪を回すことに使われる。そして減速時は、そのエネルギーを電気として回収してバッテリーに蓄え、それを走行に使う。発進時や低速走行時にエンジンがかからないのは、その電気を使っているからだ。
ホンダのシステムは、かつてはパラレル式だったが、最近のものはシリーズ式メインにパラレル式を加えた考え方になっている。基本的にエンジンがかかってもその力で発電し電気モーターで走り、高速走行時にはエンジンが直接駆動するモードに切り替えることもある、というものだ。
日産のE-POWERは完全なシリーズハイブリッドである。エンジンは発電に徹し、駆動はすべて電気モーターで走る。エンジンは車輪とまったくつながっていない。日産のものはEVに発電用ガソリンエンジンを積んだ車と理解すれば良い。そのかわりバッテリーは小型のもので済ましている。
「EV+発電機」がハイブリッド車の正体
トヨタとホンダのシステムは日産より複雑で、EVとしての機能に加え、エンジンでも駆動する機能を加えている。その意味では、トヨタのシステムは3社の中でも極めて高度であり、エンジンと2つの電気モーターとバッテリーの制御を非常に緻密に行うシステムとなっている。
つまり、ハイブリッド車とはEVに備わる技術はすべて備えたうえで、エンジンを発電機ないし駆動用にも使うという仕組みなのである。最もシンプルな日産のものでさえ、技術的にはEVよりもはるかに高度なものなのである。
欧州メーカーもかつてはハイブリッド車の開発に取り組み、2010年代の初頭にはそれなりの数のモデルがリリースされた。しかし彼らの技術では燃費の向上はたいしたことはなく、車重が増えて運動性が悪くなったり、トランクが狭くなったりとデメリットのほうが目立つものばかりだった。
当然の結果としてあまり売れず、今では欧州メーカーでプラグインでないハイブリッド(マイルドハイブリッドを除く)を作っているのはルノーだけである(ご存じの通り、ルノーは日産とアライアンスを組んでいる)。つまり、ほとんどの欧州メーカーは日本メーカーのような高性能ハイブリッドを開発することができなかったのである。
日本だけがものにできた、世界に誇る先端技術
そこで欧州はプラグインハイブリッド(PHEV)の燃費基準を、電動走行部分を過大に評価するものとしてそれに力を入れている。
しかしガソリン走行時の燃費は依然として褒められたものではなく、たとえばBMW3シリーズのPHEVモデル、330eの日本基準(WLTC)の燃費は13.5km/lだが、同じエンジンを積むガソリンモデルである320iはなんと13.8km/l。PHEVでない普通のガソリン車のほうが好燃費なのである。PHEVにすると重くなってしまうため、ハイブリッドモードでも燃費が悪化してしまうのだ。
しかしヨーロッパ基準ではプラグイン充電での走行距離66kmを勘案し、なんと76.9km/l(WLTP)と評価され、素晴らしく環境に良い車と見なされているのだが……(320iのヨーロッパ基準の燃費は14.9km/l)。
このように欧州メーカー(および米国メーカー、そして中国メーカーも)は優れたハイブリッド車が開発できなかったため、 やむなくより単純な技術で作れるEVおよびまやかし基準のPHEVに特化している のである。
ハイブリッドはガソリン車とEVの中間にあるもはや時代遅れの技術、という見方が根本的に間違っていることをご理解いただけたであろうか。ハイブリッド技術とは、日本だけがものにできた、世界に誇る先端技術なのである。
(続く)