BE HAPPY!

大山加奈選手、岩隈久志選手、ライコネン選手、浅田真央選手、阪神タイガース他好きなものがいっぱい。幸せ気分を発信したいな

家族ができるまで(6)

2009-12-23 14:43:03 | リョウマくん
     ご近所のクリスマスイルミ


 クリスマスが近づいてきました
街はイルミネーションに彩られ、華やいだ気分が広がります。
キョウシロウさんもキョウコさんもクリスチャンではありませんが、楽しい気持ちになれるのはいいんじゃないかと思っています。
今年はリョウマくんがいるので、パーッとやることにしました。
二人はさりげなく、リョウマくんにほしいものを聞き出そうとしました。
「もうすぐクリスマスだから、そろそろサンタさんにプレゼントお願いしといた方がいいんじゃない? リョウマくんは何がほしいの?」
でも、リョウマくんはしょんぼりしています。
「サンタさん、ぼくとこにはこないの」
「何でー? くるよぉ」
リョウマくんは首を振ります。
「ぼく、やっかいものだから、サンタさん、こないの。去年もこなかったの」
リョウマくんは多分、やっかいものなんて言葉、ちゃんと意味がわかって使っているわけではないでしょう。誰か身近な大人に言われたようです。
「何か、最悪のパターンて気がする」
キョウコさんはキョウシロウさんに言いました。
二人にとって一番いいのは、リョウマくんを心配している身内が現れて、その人達に引き渡すことです。
でも、警察に届けてもそれらしい捜索願は出されていないようだし、リョウマくんが言ったことをつなぎ合わせると、どうも親を亡くして、引き取られた先でひどい扱いを受けていたようです。もし、リョウマくんの身元がわかっても、そんなところへ返すのは後味が悪いです。キョウシロウさんも何となくいやな予感がしていましたが、
「まだ事情がわかんねえうちから、ああだこうだいったってしょうがねえよ」
と、キョウコさんの肩を叩きました。

 リョウマくんは、二人がどんなに訊ねても、ほしいものを言おうとしません。
リョウマくんの気持ちは何となくわかります。
もし、ほしいものを言って、またサンタさんがこなければ、すごくがっかりします。リョウマくんはそれがいやなのです。
しかたがないので、二人は自分達でプレゼントをみつくろうことにしました。
リョウマくんぐらいの男の子がほしいものって、何でしょう。
二人とも、自分が小さな子供だった頃のことを思い出そうとしましたが、うまくいきませんでした。
こうなったら、それぞれ、自分が「これ、いいじゃん」と思ったものを買うしかありません。
キョウコさんは、エルモのぬいぐるみを見つけました。リョウマくんは「セサミストリート」が好きなのです。キョウコさんはクッキーモンスターが好きですが、リョウマくんはエルモが一番好きだと言っていました。
大きさがいくつかあったので、キョウコさんは、クマさんと同じぐらいの大きさのを選びました。
ケーキを買うのも、キョウコさんの担当です。キョウコさんは、大人っぽいチョコレートケーキにひかれましたが、リョウマくんは、もっと普通のがいいでしょう。
生クリームがたっぷりのって、賑やかに飾りがついたクリスマスケーキにしました。
キョウシロウさんはオモチャ屋で一度深呼吸をすると、無心にあたりを見回しました。これでピッと目にとまったものを買うのです。
キョウシロウさんの注意を惹いたのは、青い汽車でした。柔らかいエコ素材でつくられていて、なかなかしっかりしたつくりです。黄色い車輪と緑のえんとつがついています。えんとつを押すと、汽笛がやさしく鳴ります。自分も童心に返って遊びたくなるような汽車でした。
キョウシロウさんはこれをプレゼントにすることにしました。

 イブの夜がやってきました。
去年はのけものだったリョウマくんですが、今年はケーキの一番たくさん飾りがついたところを貰いました キョウシロウさんが食べられる飾りと食べられない飾りをより分けてくれました。
おうちはウエハースとチョコレートなのでOK、クリスマスプレートもチョコレートなので食べられます。もみの木とサンタさんはろうそくなので食べられません。
ケーキを口に入れると、やわらかいカステラと生クリームが口の中でしゅっと溶けるようでした。

 次の朝、リョウマくんが目を覚ますと、枕元にプレゼントが置いてありました。

サンタさんが来てくれたんだ

あけてみると、大好きなエルモのぬいぐるみと、青い汽車でした。
リョウマくんは、朝ごはんの仕度をしているキョウシロウさんに報告に行きました。
「おー、やっぱり来てくれたんだ。良かったな」
「プレゼント、2つもあるの」
「きっと去年の分も持ってきてくれたんだよ。去年来れなくてごめんなって」
リョウマくんはキョウシロウさんと一緒に朝ご飯を食べました。
お腹がよくなったので、キョウシロウさんと同じ、ベーコンエッグとトーストです。赤い発疹も、きれいに消えています。
リョウマくんはその日一日中、汽車で遊んでいました。
クマさんとエルモが、仲良く並んで見守っていました。

クリスマスの次の日曜日、おまわりさんが夫婦らしい男女を連れてキョウシロウさんの家にやってきました。
リョウマくんのおじさんとおばさんではないかというのです。
おじさん夫婦の住んでいる地域のおまわりさんが、最近リョウマくんを見かけないことに気づき、おじさん達にリョウマくんはどうしたのかと聞きに行きました。二人が、リョウマくんがいなくなっていることを認めたので、以前照会のあった情報と突き合わせ、キョウシロウさんのところへ確かめに行くよう命じたのです。
リョウマくんは、二人の顔を見るなり、
「いやーっ
と叫んで、キョウコさんの背中にかじりつきました。
「いやー、いやー。おばさんとこはとっても寒いんだ。ごはんもおいしくないし、ガンちゃんたちは意地悪ばっかりするんだ。クマさんもまた燃やされちゃうよ。ぼく、もういやだ。ぼく、もういやだよー
それをきくなり、おばさんの目がつり上がりました。
「おだまり! やっかいものの面倒みてやってるってのに、感謝するどころか、すぐそうやって同情ひこうとして、本当にかわいげのない子だよ。その人達だって、あんたにいつまでもいられちゃ迷惑なんだよ。どこにも行き場がくせに、うちにおいてやるだけでもありがたいと思いな!」
おばさんがリョウマくんの腕をひっつかもうとすると、リョウマくんはキョウコさんの後ろに隠れました。
「すみません、ちょっと待って下さい」
キョウシロウさんが口をはさみました。
「この子も興奮してるみたいだし、大人だけで外で話しませんか?」
キョウシロウさんは、おじさんとおばさんを近所の喫茶店に連れて行きました。
キョウコさんはリョウマくんと家に残りました。
3人が出て行くと、リョウマくんは、
「ぼく、おばさんとこ行かなきゃいけないの?」
とききました。キョウコさんは何と言っていいのかわかりません。成り行き上、リョウマくんを預かって面倒見ていましたが、あくまでも身元がわかるまでのつもりでした。リョウマくんがおばさんの家に戻りたくないことはわかりましたが、だからといって、ずっとここにいていいよとも言えません。
キョウコさんが返事をしないので、リョウマくんはまた泣き出しました。リョウマくんはこの家に来てから何度も泣いていますが、その中で一番やるせない、悲痛な泣き声でした。
キョウコさんは背中をさすってやろうかと思いましたが、何だか偽善のような気がして手が動きませんでした。
リョウマくんを引き取らないのなら、何を言ってもしてもきれいごとでしかありません。
キョウコさんはどうすればいいのかわかりませんでした。

(つづく)